Review:SOTO サーモスタッククッカーコンボ 二兎を追い数兎をも得る!これさえあれば他に何もいらない
山に行く醍醐味は、やっぱり山で作るご飯!という人は結構な数いるのではないでしょうか。特にこの時期、寒い中の温かい食べ物・飲み物は本当に癒やされますし、続く山行の活力にもなります。
そこで必須になるのは調理道具であるバーナーやクッカー。特にクッカーは調理後は食器にもなるので、調理したてで熱くても持ちやすいものがいい、寒い時は冷めにくいものがいい…などと要望は耐えません。もちろんそれぞれ対応したものはありますが、山に行くなら荷物は少なく軽いほうがいいに決まってます。すべて満遍なく万能に使えるクッカーがあればなーと思いながらどこか妥協して使っている人も多いとおもいます。
今回紹介するSOTOのクッカーは、ワンセットで何でもこなせるクッカーセットです。そんなわがままなに応えてくれるクッカーセット、ソロ向けということですが、どこがどう万能なのか、比較も織り交ぜながら実際に使って評価してみました!
目次
SOTO サーモスタッククッカーコンボの大まかな特徴
SOTOのサーモスタッククッカーコンボは、多彩そして軽量なソロキャンピング向けのクッカーコンボです。750ml・400ml・350mlのマグセットと蓋などで構成されており、それぞれのマグは異なる金属から作られているので、それぞれの特性にあった使用が可能です。単体での使用はもちろんのこと、収納ケースが保温ケースと兼用だったり、400マグと350マグを重ねれば保温・保冷もできるダブルウォールカップとして使用できるなど、さまざまな工夫も光り、英国のアウトドア展示会では、キャンプ・ギア部門で2019 Award Finalist賞を受賞した実績も持ちます。
おすすめポイント
- これがあれば十分というほど、とにかく汎用性が高い。
- アイディアによる保温性の確保
気になったポイント
- 蓋が金属製なら、もっと汎用性が上がったのに
- ジョイントの接合部がタイト
主なスペックと評価
セット全体の重量は306gでした。以下セット内容の詳細スペックを紹介していきます。
容器・スペック
- マグ750(750ml・アルミ製)
- マグ400(400ml・チタン製)
- マグ350(350ml・ステンレス製)
スペック | ||||
---|---|---|---|---|
アイテム | マグ750 | マグ400 | マグ350 | ダブルウォール 350+400マグ |
材質 | アルミニウム | チタニウム | ステンレス | − |
公式重量(g) | 84 | 50 | 80 | − |
実測重量(g) | 85 | 49 | 77 | 147(蓋含む) |
容量(ml) | 750 | 400 | 350 | − |
寸法(mm) | 直径102×高さ120 | 直径85×高さ94 | 直径84×高さ98 | − |
付属品・スペック
- マグリッドL(マグ750用フタ)
- マグリッド(マグ350・400兼用フタ)
- ジョイント(ダブルウォールマグ用)
- コジー(保温ケース)
- リフター
スペック | |||||
---|---|---|---|---|---|
アイテム | マグリッドL | マグリッド | ジョイント | コジー | リフター |
材質 |
|
|
|
|
|
公式重量(g) | 17 | 12 | 12 | 40 | 13 |
実測重量(g) | 17 | 11 | 11 | 42 | 14 |
用途 | 750ml用蓋 | 350&400ml用蓋 | 350&400mlダブルウォールマグ用 | 収納・750ml保温カバー | 加熱時の容器保持用 |
詳細レビュー
大きさ・素材の異なるマグカップ3つからなります。各容量および素材は、マグ750(750ml・アルミ)、マグ400(400ml・チタン)、マグ350(350ml・ステンレス)となっています。あえて異なる金属にすることによって、その金属の特性を生かした使い方ができます。マグ750・マグ350の内側には容量がわかるように、目盛りがついています。
付属品はマグリッド2種類(750用、350・400兼用)、ジョイント、コジー、リフターです。マグリッドはマグの蓋で、周囲にはシリコンのパッキンがついているので、しっかりと固定はできますが、完全に密閉はできません。注ぎ口と空気穴があるので、保温性はやや劣りますが、調理時や他の容器に注ぐ時に便利です。マグリッド自体は樹脂製なので、マグの加熱時は使用できません。
ジョイントはこのクッカーコンボの見どころです。350マグと400マグの間にジョイントを挟むことで、内側ステンレス・外側チタンのダブルウォールマグになります。通常のダブルウォールマグは直接加熱できませんが、このダブルウォールマグであれば、内側だけ外して加熱できるので熱を有効に使え無駄がありません。
コジーは、セットの収納ケース兼保温ケースです。内側はアルミフィルムが蒸着してあるので、マグを入れておけば保温性の向上や、熱伝導率を低下させ手に持つことができます。
どのマグにも取っ手がついていません。ダブルウォールにしたり、コジーに入れれば持てないことはありませんが、バーナーから下ろしたりする時はそうもいかないので、マグの縁にリフターを引っ掛け持ち上げられます。見た目以上に丈夫なので、マグ750でお湯を沸かしても不安なく持ち上げられます。
オプションとして、色違いの蓋とダブルウォールカップ用ジョイントが用意されています。
換えるだけで、かなり見た目がかなり変わります。
実際に使ってみたインプレッション
非常に幅広い汎用性
3つのマグは、それぞれ異なった金属で作られています。これは、それぞれの金属の特性を鑑みてその金属を採用しています。マグ750はアルミ製で、特性は軽量。熱伝導率が高い事が挙げられます。炎の熱を金属全体ムラ無く伝わえるので、お湯を沸かす、調理をするなどに適しています。一番大きい750mlのマグをアルミにしたのもうなずけます。炊飯もできそうですが、付属の樹脂製の蓋は加熱時には使えないので、アルミホイルや金属製の蓋を用意する必要があります。蓋には湯切り穴があるので、パスタなどの調理はとても楽です。
マグ400はチタン製です。チタンといえば強靭さと耐久性、そして熱伝導率の低さ。軽量性は?という方もいるかもしれませんが、実はチタン、アルミよりも重いのです。しかし強度がアルミの約2倍もあるため薄く作ることができ、結果重量を抑えられているのです。熱伝導率は非常に低く、熱いものをいれても飲み口が熱くなりにくいので、シングルウォールカップとしては優秀です。熱伝導率の低さのおかげで、火に掛けても熱が全体に伝わりにくく調理には向きませんが、比熱は高くそして薄く作られているため、お湯を沸かすことに関してはスピーディーです。
マグ350はステンレス製です。錆びにくい、丈夫で重い、熱伝導率が低いということが挙げられます。かなり丈夫なので、何も考えずにガシガシ使っていけ、アウトドアには最も適した金属でしょう。ただし重量は重くなってしまうので、使うシーンは限られます。熱伝導率と比熱も低く、温まりにくいので、調理や湯沸かしには不向きではありますが、一度温まると冷めにくいという特性を持ちます。飲み物が冷えてきたら、マグ350だけ外してサイド火にかけることもできます。
このような金属の特性から見ても、このクッカーコンボ非常に考えられ配分されています。マグ700は一番容量も大きいことから、軽量で熱の伝わりもよいアルミを採用することにより、持ち運びの負担を軽減し、調理にも対応させています。アルミの熱されやすく冷めやすいという特性に対しても、収納袋をコジーにすることにより火から下ろして熱い状態でも持てるし、保温も効かせてくれます。マグ400は、チタン製にすることにより軽く高耐久性にし、火に掛けたあともマグとして使いやすくなっています。最も単体での使用頻度が高まりそうなマグです。ステンレス製のマグ350は、他と比べると単体での使用の機会は少なそうです。しかし高い耐久性・易メンテナンス性から使いやすさは高めでしょう。
ダブルウォールマグとして使うとなると、このチタンとステンレスの組み合わせは最高です。一度熱されると冷めにくいステンレスを内壁にし、熱の伝わりにくいチタンを外壁に持ってくることにより、寒い環境でも外の気温に熱が奪われにくく、中は冷めにくいというダブルウォールカップの鑑みたいな構成です。ジョイントの接合部がややタイトなので、外す時は注意が必要です。
これだけ幅広く汎用性が高いコンボですが、重量は付属品など全部含めても306gです。これだけの機能性をもってこの重量はかなり軽量でしょう。ソロでもっと軽くしたい時や、夏期でダブルウォールカップが不要であれば合計でも220gほどになり、さらに蓋もいらねぇ!ってなれば200gを下回ります。収納も良くできていて、マグ750の中にすべて収まります。ダブルウォールカップ内にはリフター、そして小型のバーナーが収納できます。
ダブルウォールカップは逆さにして入れると、蓋が緩衝材になり、金属が当たり合う不快な音もしません。ちなみに小型のガス缶であれば、ぴったりと収納袋に収まります。
保温性の検証 普通のダブルウォールマグと遜色なし!
保温性がどれくらい違うのか、マグ750・マグ400・マグ350それぞれに、半分の容量の沸騰したお湯を入れて付属の蓋をし、30分後・60分後の温度変化を計測してみました。ちなみに室内で検証し、室内気温は17.5℃でした。
次に、マグ750には収納ケース・保温カバー兼用のコジーを取り付け、マグ350+400をダブルウォールカップにして温度の変化を計測しました。マグ350+400が本当にダブルウォールとして機能しているかを測るために、検証対象としてダブルウォールマグカップであるスノーピーク・チタンダブルマグ300とコールマン・ダブルステンレスマグ300を使用し、同じように計測してみました。
保温性の検証結果 | |||
---|---|---|---|
アイテム | 注湯時 | 30分後 | 60分後 |
マグ750 | 88.7 | 55.0 | 41.9 |
マグ400 | 88.4 | 58.3 | 44.8 |
マグ350 | 88.6 | 57.8 | 44.4 |
マグ750+コジー | 89.1 | 69.3 | 51.9 |
マグ350+400 | 89.1 | 70.5 | 54.3 |
スノーピーク(チタン) | 89.1 | 67.8 | 54.4 |
コールマン(ステンレス) | 89.1 | 68.2 | 53.9 |
そのままだと、外気温17℃では60分で約半分の温度にまで低下しました。予想では、熱伝導率の低いチタン製マグ400の保温性が高いのかと思いきや、アルミ製のマグ350とほぼ変わらずという結果でした。
しかし、コジーを装着したりダブルウォールにすると、60分後の温度は10℃ほども高く保温の効果はありそうです。スノーピーク・コールマンのダブルウォールマグと比較しても、60分後の温度はほぼ同じで、しっかりとダブルウォールマグとしての役割を果たしてくれています。マグ750+コジーの保温性も、90℃のお湯が60分後に50℃あれば十分な保温性と言えるでしょう。
容器・付属品を駆使した便利な使い方
便利な使い方の一例として公式ホームページでも紹介されていますが、ダブルウォールマグをうまく利用したコーヒーの淹れ方を試してみました。やはり取手がないと不便に感じますが、うまく使える様になれば意外に取手ってなくてもいいんだ!と思わせてくれました。まずマグ400でお湯を沸かします。その間にマグ350にドリッパーを準備しておきます。
沸騰したらリフターを使ってマグ350にお湯を注ぎます。コーヒーの入れ方は個人々々こだわりがあるでしょうから、その辺りはご自由にお願いします。
コーヒーを淹れ終えたら、マグ350をマグ400mlに装着すれば、ダブルウォールマグに早替わりです。沸かしたお湯が残っていても、そのまま装着すれば保温性が若干向上します。
コーヒーだけでなく、工夫次第では両マグを駆使した様々な使い方があるでしょう。そこも面白味の一つです。冷めてきたら、マグ350だけ取り出して加熱することもできます。マグ750で料理もしてみました。料理と言ってもラーメンを作っただけですが…作り立てのカップでもコジーに入れれば、手で持てます。保温性も上がるし言うことなし。取手は壊れやすいし重量もやや増えるので、実はなくても良いのかもしれませんね。
まとめ
サーモスタッククッカーコンボは、ただの収納に便利なサイズを寄せ集めたクッカーのセットではありませんでした。金属の特性をうまく活かし、最小のセットで最大限の幅広い使い方を提供してくれました。だてにアウトドア展示会で賞をとっていません!どのメーカーも、特徴が出にくいクッカーにおいて、このように読み解いていくと、いかにSOTOが考え抜き作り出したかがわかります。
ソロの山行ではこのセット一つあれば、のんびり楽しむような登山ではフルセットを使いこなし、温かい食べ物・飲み物を十分堪能できますし、ウルトラライトハイカーのような重量を気にする人は、組み合わせによっては軽量ながら十二分な装備になるでしょう。また2名でも、うまく使いこなせば十分対応できるクッカーです。目玉とも言えるダブルウォールマグも、他社のしっかりとしたダブルウォールマグと比較しても保温性は劣らず、しっかりと性能を発揮してくれました。
クッカー欲しいけど、違いがわからなくてどれ買ったらいいのかわからない…という人は、これ一つで長く使えるので確実に後悔はないし、今後も長く使っていけるはずです。逆にこれまで様々なクッカーを見て使ってきた人にも、ぜひ使ってほしい!メーカーの努力・工夫に脱帽し、よりクッカーに対しての想いが強まっていくことでしょう。