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ワークマンからついにこの秋登場、山歩きにも使えるウォーキングシューズ「アクティブハイク」最速レビュー

これからとあるシューズを開発しようと思っているので、相談にのって欲しい――。

そんなメールが届いたのは昨年の秋ごろ。

このサイトでは昨年からワークマンのアンバサダーとなってはみたものの、やっていることはこれまでと同様、相変わらずギアレビューを書いていただけ。特にそれで不満があるわけではないけれど、せっかくなのでもっとこの立場でしかできないことがしてみたいとも思っていたところでした。

淡い期待を膨らませ、打ち合わせ場所であるオフィスへ。着いて開口一番出てきたのはなんと、「1,900円の山歩きもできるシューズを作るので、どんなシューズがいいと思うか、意見を聞かせて欲しい」というお題。「むむむ……」しばらく言葉が出ませんでした。

本格的な登山靴ではないとはいえ、ある程度のハイキングも可能なシューズを、1,900円で……そんな都合のいい話、少なくとも自分はこれまで聞いたことありません。これまで数万円もするような高価で高機能な登山靴をたくさん履いてきたけど、そんなシューズですら当たりはずれのある世界がアウトドア向けのシューズ。アウトドアという過酷な環境で安全性と快適性を両立させる必要のあるシューズには普段遣いの靴に比べて高い機能性や耐久性等が求められ、それにはどうしたってそれ相応のコストは避けられません。つまり少なくとも今回は、アウトドアバカである自分にとって理想のアウトドアシューズが作れるわけではないということは、その時点で想像がつきました。

理想の登山靴づくりに参加するのは無理だけど、最強の1,900円オフロードシューズ作りには参加できる

とはいえ、いや待てよ、と。

もちろん、最低限守らなければならないクオリティはあるものの、山専門メーカーの靴でなければ山に登れないわけではないし、高価格にもかかわらず自分に合っていない、あるいはデザインだけで機能そのものが平凡な靴だってたくさんある。

道具には必ず用途や目的があって、いい道具かどうかは、それが目的のために必要な機能・品質を有しているかどうか。つまり、極論すれば、いい靴かどうかにとって問題なのは価格ではないし、機能の数でも、スペックの高さだけでもない。

今ここでぼくが引き受けなかったとしても、いずれ他の誰かの手によって靴は完成するでしょう。こんな小さな一WEBサイトが、商品開発に参加できるなんてそう何度もあることではありません。ならば、ここはひとつ、自分の理想をとことん伝えて、その結果どんな靴ができ上がるのか見てやろうではないか。それによって最高の1,900円オフロードシューズが生まれてくれれば、これほどおもしろいことはない。

当初微妙な話しにモヤモヤしていた自分ですが、話をするうちにいつしか変なテンションで前向きな気持ちに変わっていました。

そんなわけで完成したこの「アクティブハイク(2020年8月下旬~9月上旬発売予定)」は、Outdoor Gearzine が開発段階から意見を述べさせてもらい、試作品時点で指摘したフィードバックのうちのいくつかを製品に反映させてもらった、はじめてのアイテムです。

今回はその完成版を発売に先駆け、7月の梅雨の合間を縫って、都内近郊の低山ハイキングで試してみたレビューをお伝えします。

レビューを読んでいただくにあたって

以上の経緯を踏まえてですが、念のためこのレビューを読む前に、みなさんに話しておきたいことを書きます。

ワークマンのアイテムは近年低価格にもかかわらずクオリティの高いものが増えてきたとはいえ、今回のシューズは当然登山専門メーカーによる「登山靴」ではありません。言い換えると、ハイキングなどに活用できる特徴を備えてはいるものの、タフでシビアな状況が長く続くような「登山」での使用を想定して作られたものではなく、またその使用を推奨しているわけでもありません。ユーザーは使用するにあたって、その点を十分に理解しておくべきだと思います。

ただ、だからといってワークマンの道具は登山に使ってはいけない、というのも違うかなと思っています。これは逆を考えてみれば分かることです。いくら高価でハイスペックな「登山用具」を揃えていたとしても、その使い方を間違えていたり、実力にそぐわない行動をとれば、事故や遭難は起きるからです。どんな道具であれ、それを使う人間が正しく取り扱わなければ、リスクを回避することはできません。

その意味で、このサイトではワークマンを取り上げ始めた当初からお伝えしてきたこととして、ワークマンのアイテムは登山初心者が何も気にせず安心して使えるといった類の道具ではなく、ユーザーが「使える部分」と「不十分な部分」を理解したうえで、自分の実力と使い方を鑑みて、自己責任であることを理解した上で利用し、はじめて価値のあるアイテムだということを知っておいて欲しいのです。

どんな道具であれ、大切なのは使う人それぞれにとっての目的・レベルに合っていること。正解は一つではありません。専門ブランドじゃないからといって切り捨てるのではなく、いろいろな道具から、自分だけの最適な使い方を工夫できたときの喜びもアウトドアという奥深い世界の醍醐味です。

偉そうに長々と話していますが、懸命な読者の皆さんはわざわざ口酸っぱく言われなくても、すでにご理解いただいていると思っています。ただ、ブームによって近年あまりにも多くの無自覚な情報が増えているなか、登山という危険を伴うアクティビティでの使用を想定したレビューをお届けするサイトとしての立場をふまえ、ワークマンのアイテムの楽しみ方と注意すべき点についてあらためて述べておくべきかと考え、あえて冒頭に書かせていただきました。

ワークマン 高耐久シューズ アクティブハイク ここが◎&気になる

ここが◎

  • 驚きの低価格
  • 垢抜けたデザイン
  • ある程度の長時間・重荷でも快適な履き心地
  • 分厚いミッドソールによるクッション性の高さ(つかれにくさ)
  • 踏み込み・グリップ・ブレーキとバランスのとれたアウトソール(靴底)
  • 耐久性と撥水性に優れたコーデュラ製アッパー生地と補強パーツ

ここが気になる

  • 通気性
  • 撥水ではあるが、防水ではない
  • 濡れた硬い地形での滑りやすさ

高耐久シューズ アクティブハイク 詳細レビュー

垢抜けたデザイン

新しいウォーキングシューズを作るうえで、やはり最初に話したのは見た目いついて。

本格的な登山靴でもない、かといってトレイルランニングのようなスニーカーでもない。街中から近場の自然までを安心して歩くことができる、オフロード靴。その靴の特徴から真っ先に思い浮かんだのは「アプローチシューズ」でした。

アプローチシューズのイメージ(Google画像検索)

そもそもはクライマーが岩場の取り付きまでのちょっとしたトレイルや岩稜帯を歩くために開発された靴で、細かい用途や目的で微妙な違いはあるものの、共通の特徴としては「全天候型・多様な地形に対応・街でも履けるこなれたデザイン」が特徴。簡易登山靴的なアウトドアシューズともいえ、自分はこれを普段履きのシューズとしてかなり前から愛用していました。機能はさておき、その履き心地とこなれたデザインのバランスの良さは今回作ろうとしているシューズにはピッタリだと思いました。

幸いぼくの考えには担当の方も気に入ってくれた様子で、すぐにこの話をベースに何パターンかプロトタイプの制作に入りました。いくつかの候補から絞り込み、微調整を経て落ち着いたのがこのデザイン。

つま先付近まで伸びたアシンメトリーなシューレースはアプローチシューズをイメージ。

デザインに関して自分の役割は大まかに方向性を述べるまでなので、最終的にこれが個人的な理想とピッタリと合致しているという分けではありませんが、一見して安っぽさを感じさせない垢抜けたルックスは、十分に合格点とはえないだろうか。

アプローチシューズの特徴である、つま先近くまで伸びたシューレースはデザイン的なアクセントであるだけでなく、締め上げたときのフィット感にも少なからず貢献してくれるはず。

ちなみにカラーリングに関してはノータッチですが、落ち着いたブラックはともかく、ワークマンらしいカモ柄は、最初こそ個人的に軽く拒否反応を起こしましたが、履きつぶしていくごとに味が出てきて、意外と見慣れていくものです。

カラーはカモとブラック。街でも十分使えるデザイン。

ある程度の長時間・重荷でも快適な履き心地

アウトドアアクティビティは、日常に比べてより長い時間歩くことが多いことから、やはり長時間歩いても快適さが続くことは重要な要素といえます。ましてや歩き方に慣れていないユーザーであれば、長時間歩くことによる怪我などのリスクも少ないに越したことはありません。

このため、低価格シューズとはいえ、履き心地に関しては個人的にも慎重に多くの意見を伝えさせてもらいました。もちろん最新テクノロジーを駆使したハイテク素材や技術を潤沢に使用することはできませんので、本格登山靴に比べれば見劣りするのはしょうがないところですが、完成版はかなり健闘しているところまで来ている気がします。

足を入れてみてすぐに感じるのは、ライナーのメッシュやシュータン、足首周辺の豊富なクッションによる全体的に柔らかい肌触り。値段からすれば破格のラグジュアリーさといえます。

足首周りには履き心地と靴ずれしにくさを考え可能な限り多めのクッションを。

靴型(ラスト)はEEEと幅広め。個人的にはもう少し狭い足型なのでジャストフィットしているわけではありませんが、トゥーボックスはゆとりがありストレスなく足の指も動かせ、大概の日本人にとって少なくとも窮屈感は感じないはずです。

今回、かかとから足首にかけてのヒール全体部分は、歩きにくくならない程度でやや深めにしてもらいました。この方がかかとのホールド感も良く、歩きやすいし、脱げにくく、小石なども入りにくい。個人的には足首を捻りやすく、少しでも高い足首によって歩行をサポートしてくれるので、より安全・ローストレスです。

かかと~足首はローカットの中でも深めになっており、安全・ローストレスを心がけた。

ワークマンがこれまで手掛けてきたワークシューズは、分野こそ違うものの、アウトドアと同じように過酷な環境を想定して作られているわけで、その点では、自分が言わずとも随所に気配りが見てとれます。たとえばアッパーのシュータン部分が靴のライナーと一体化しており、アッパーが足に少しでも密着しやすくなっています。

シュータンはアッパーのライナーと一体化しており、フィット感が増したり、ゴミが入りにくかったりする。

さらに今回、当初は普通の平たいインソールだったところを、土踏まず部分にクッションを当ててもらいました。

そのままだとどうにも土踏まずのサポートが薄く靴のなかで足も滑りがちだったことを伝えたところ、最後の最後に何とか滑り込ませてもらいました。たったこれだけですが、歩きやすさや疲れにくさは格段に向上、快適さにさらに磨きがかかりました。

テストの最終段階で滑り込ませた、土踏まずの盛り上げ。これで歩きやすさも及第点に。

そして案外見逃せないのが、シューズの軽さです。少しごついと思われるかもしれませんが、履いてみると意外に軽い328g(26.5cm片足実測)。サクサク歩けます。

靴はボリュームのわりに軽量。

クッション性を重視した中厚底ミッドソール

軽めのハイキングとはいっても、多かれ少なかれ荷物を背負って行動するわけで、アウトドアで使用するシューズには、自分の体重プラス荷物を加えた重量で足に荷重がかかったとしてもそれを支えてくれるだけのクッション性と安定感(ブレにくさ)が求められます。

分厚いミッドソールは重力による衝撃も、地面からの突き上げもある程度吸収してくれる。

その点今回のソールは今流行り(?)のやや厚底系。厚みのわりにやや固めですが、しっかりと荷重の際の衝撃を受け止めてくれます。またクッション性がありすぎてグニャグニャとブレやすいということもありません。超長距離を歩けば多少のアラは出てくるのですが、日帰りや数時間のハイクならば十分に快適です。

彫りの深いラグによる踏ん張りのきくアウトソール

アウトソール(靴底)に関してはとにかく多くの地形でスリップしにくければしにくいほど良いという以外、特に具体的な注文は出していません。完成版のアウトソールは泥抜け、踏ん張り、ブレーキの良さをバランスよく取り入れたパターンになっているようです。そしてラグはやや深め。つま先とかかとには踏ん張りとブレーキ力を高めるためのための切れ込みが入っています。

バランスの良いソールパターンと深いラグによって砂利や土の上では無理なく歩ける。

実際に歩いてみると、砂利や小枝などの敷き詰められたいわゆるオフロード地形ではおおむね問題なく、気持ちよく歩けていました。少しぬかるんだ土のトレイルでも泥抜けよく、スニーカーなどと比べれば格段にスリップしにくく、しっかりと地面を掴んでくれます。

硬めラバーは濡れた岩場等でのスリップに注意

ただし、一方で濡れた岩の上や木の根、丸太の階段、深すぎる泥などでは、流石にハイエンドな登山靴ほどの粘り強さは感じられず、山の歩き方を知らない人であれば簡単にスリップしてしまうので注意が必要です。岩の粒度がきめ細かいほど濡れた時の滑りやすさは高くなります。

濡れた岩場や木の根を歩くときには要注意。

見た目こそアプローチシューズっぽいものの、機能についてはアプローチシューズというわけにはいかず、濡れた岩には思った以上に弱い。ただ、本格登山靴といえども一般的にはこうしたツルツル地形が苦手なので、この靴だけが特に劣っているというではありません。この辺が低価格シューズの限界といったところで、逆に言うといかに本格アウトドアシューズで使用されているソールのラバー素材が技術的に優れた高価な部品であるかということが分かります。要はつまり、10分の1価格のシューズにビブラムメガグリップのグリップ性能を望んではイケナイよ、ということだけです。

特に、下のような川を横切らなければならないくらいのアドベンチャーになると分かっているのであれば、自分の実力を過信せず、それなりの覚悟で注意して履きましょう。

川の渡渉等があるルートでは特に過信せず慎重に歩こう。

耐久性と撥水性に優れたアッパー

過酷な状況で履きつぶす作業靴を長年作り続けているワークマンにこちらから耐久性について何か物申す必要はありませんでした。生地は信頼性抜群のコーデュラ製生地による高耐久仕様となっています。

アッパー生地は信頼性抜群のコーデュラ製。

そしてアッパーの周囲はプロテクションのための軽量な樹脂フィルムが巻いてあり、多少の衝撃や傷から靴や足を保護してくれます。

靴の周囲には軽くて耐久性の高い樹脂が圧着されている。

さらにこのアッパー生地には特別な耐久撥水加工が施されており、ちょっとした水はねや小雨程度なら、水をバチバチと弾いてくれます(もちろんシュータン部分は水を通しまくるので、靴全体としては防水性があるというわけではありません)。

もちろん、本格登山靴ならば靴全体が防水仕様であることが望ましいことは確かですが、この優れた耐久撥水加工によってそのハンデはかなり埋まっていると思われます。

ただその代わり、「高耐久+撥水加工」の素材には通気性がまったくもって期待できません。何とか通気するのはシュータン部分のメッシュのみで、ここも潤沢なクッションが邪魔してスースーと空気が通るというわけでもなく…。

実はここに関しては開発段階で分かった上でやむなしとしたところです。テストした秋冬にはそれほど気になりませんでしたが、夏に履くとやはりちょっと蒸れやすいなという感じはします。

まとめ:クセを知りテクニカルな地形でなければ十分使える、安心して気兼ねなく履き潰せるオフロードシューズ

数多くあるアウトドア道具の中でも、シューズは最も重要で、なおかつ最適解を選ぶことが難しい道具のひとつだと思っています。だからということもあり、かなり慎重なレビューになってしまったかもしれません。ただ製品づくりに関わらせてもらったことを抜きにして、あらためてざっくり言えば「この価格でここまでのものができるなんて、ようやるわ」という驚きでいっぱいです。

完全な防水仕様でないことや、濡れた路面やつるつるの岩などのテクニカルな地形ではややスリッピーであるという部分には注意が必要ですが、それ以外、里に近いオフロードであれば、足入れのフィット感やクッション性の高さ、踏み込みやすさや耐久性など、どれも一般的なハイキングシューズに決して引けを取らない実力はあると感じています。とはいえ山歩きのように長時間酷使するシューズは自分の足型に靴があっていることも性能と同じように重要ですので、購入にあたっては試し履きすることもお忘れなく。

最後に何度もいうように、もちろん、いくらコスパがいいからといっても、誰もがこれ1足で事足りるなんてことはまったくなく、ある程度の足慣れたハイカー以外は、あくまでもキャンプや自然散策、マイルドな地形での短めのハイキングコース程度と考えた方が無難です。その目的にハマる人にとっては、これ以上ないお買い得な選択肢になるはずです。

また、アウトドアの世界に本格的に足を踏み入れるならば目的にあった確かな性能の登山靴を必ず一足は持っておくべきですが、そうした靴をすでに所有している初級以上の登山者にとっては、この迷いなくガンガン履きつぶすことのできるコスパの高さは何にも変え難く、1足持っていて損はないと思わせてくれるでしょう。全国のワークマンで、8月下旬~9月上旬に順次発売予定だそうです。

それを踏まえて、アウトドアのベテランも初心者も、そして日常使い目当ての人も、興味が湧いた方はぜひ手に取って試してみてください!

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