当サイトのレビュー記事はアフィリエイトリンクを通して製品を購入いただくことで少額の収益を得ています。

【忖度なしの自腹レビュー】ZANE ARTS YAR-1 レビュー:ダブルウォールで860g!居住性を犠牲にせずに軽量化を実現した本格山岳テントを北アルプスで実践レビュー

装備は「できるだけ軽く」をモットーに低山からアルプスまで歩く筆者。

食料や燃料などを除いた装備の重量を5Kg以下にすることをUL(ウルトラライト)と呼びますが、昨今ではULへの関心が高まり、各ブランドから軽量なギアがラインナップされています。

装備の中でも1,2を争う「重たい」ギアがテントです。テントを軽量にすることで総重量に与える影響は大きくなります。

テントにはさまざまな形状がありますが、山岳地帯での使用において主流なのが「ドームテント」

自立式のドームテントは設営のしやすさや、居住性の高さ、耐候性の高さから山岳テントとして人気で、山の中で見かけるテントのほとんどがダブルウォールのドームテントです。

今回紹介するのは2024年に発売したZANE ARTS YAR-1(ゼインアーツ ヤール1)です。

ヤール1は山岳地帯での使用が可能な機能を備えたダブルウォールのドームテントであるにも関わらず、最小重量が860gと超軽量であること、そしてそんな超軽量テントが驚きの価格で購入できるということです。

この記事ではヤール1の特徴や機能をお伝えしつつ、実際に北アルプスで使ってみて感じたことをレビューします。

ヤール1は「携行性」「居住性」「耐候性」の三拍子揃ったテントでした。3シーズン用の山岳テントを探している人で、コストも抑えたい人にとってはドンズバなアイテムです。

ZANE ARTS YAR-1の主な特徴

ZANE ARTSは2018年に北アルプスの玄関口でもある長野県松本市で誕生したアウトドアブランド。アウトドアアクティビティの中でもキャンプシーンにおいて人気を呼んでいるのがゼインアーツが作るテントです。

そんなゼインアーツのブランド初となる山岳テントがYAR(ヤール)です。

YAR-1(ヤール1)は「設営性」「耐風性」「居住性」「携行性」のバランスに優れたベーシックなクロスフレーム構造を採用したドームテントで、軽量である秘密は生地の「加工」です。

フライシートには15D、インナーテントはウォールが7D、ボトム20Dという超極薄な生地を採用しつつ、シリコーン加工を施すことで引裂強度を向上させ、極薄ながら高い引裂強度を得ています。

ベーシックなドーム型の吊下げ式テントは日本の山岳域に特化して作られていて居住性に優れ、設営が簡単でありながらもフレームをインナーに引き寄せる力を強くすることでスリーブ式に劣らない耐風性を備えており、全12箇所のペグを打込むことで最大限の耐候性を発揮。

インナーとフライシートの間隔をしっかりと設けることで結露を防ぎ、またインナーがフライにくっついてしまうことを防いでいます。

長辺側に設けられた広い出入り口はテント内へアクセスが容易なだけでなく、適度な前室があり、登山靴などを置いておくことができます(出入り口を大きく開放することでテント内から眺望を楽しむことができる)。

テント内にはサングラスなどを入れておくのに便利なポケット、室内の上部にはライトなどを吊り下げるのに便利なループが5箇所あり、ロープを活用することでテント内に濡れたものを干しておけます。

購入時にはシームテープ加工が施されており、フットプリントやペグ、ロープも付属しているので買い足すものがなく、そのまま山へと出かけることが可能。

お気に入りポイント

  • ドーム型のなかではかなり軽くてコンパクト
  • 雑に詰め込んでも余裕で入る大きめな作りの収納バック
  • 軽量設計ながら結露の起こりにくくて対候性の高いダブルウォール型
  • 長辺に間口があることで出入り口が広く、全室のスペースも十分
  • 高身長にありがたい長辺210cm(日本のブランドとしてはめずらしい)
  • 直感的にわかる設営の簡単さと、扱いやすいよう工夫されたディテール
  • 山岳地帯での使用が可能な耐候性の高い仕様
  • シームテープ処理済みですぐに使用可能

気になるポイント

  • 高さ95cmで座った時の圧迫感(高さ)
  • 吊下げフックが少ないことによる1箇所あたりにかかる負荷(耐久性)
  • 出入り口に設けられたメッシュ部分の小ささ(換気性)

主なスペックと評価

アイテム名ZANE ARTS YAR1(ゼインアーツ ヤール1)
構造吊下型・ダブルウォール式ドームテント
就寝人数1名
サイズ間口210×奥行90×高さ95 cm
収納サイズφ13.5×37cm
最小重量860g(フライシート、インナーテント、フレームのみ)
総重量1,150g(バック、ロープ、ペグ、フットプリント含む)
フライシート素材15Dナイロンリップストップ・シリコーン & PU加工(耐水圧1,500mm)
インナーテント素材

ウォール : 7Dナイロンリップストップ
ボトム : 20Dナイロンリップストップ・シリコーン& PU加工(耐水圧1,500mm)

フットプリント素材20Dナイロンリップストップ・シリコーン & PU加工(耐水圧1,500mm)
ポール素材DACフェザーライトNFL・φ8.7mm
付属品
  • ペグ(12本)
  • 2mロープ×4本(2mmダイニーマ)
  • ポールリペアパイプ
Outdoor Gearzine評価
快適性★★★★☆
設営・撤収の容易さ★★★★☆
重量★★★★★
携帯性★★★★★
耐候性★★★★☆
耐久性★★★☆☆

詳細レビュー

ドーム型のなかではかなり軽くてコンパクト

総重量の実測値

少しでも「軽さ」を優先させたい人にとってヤール1の重量は魅力的にうつるはず。

それもそのはず、フライシート、本体、フレームの最小重量は860gで、ペグやフットプリント、ロープなどを合わせた総重量も1,150gと山岳用テントとしては最軽量クラスです。

現在、国産の同様のテントでは1kgを切るテントは数えるほどです。実際に重さを計測してみると、メーカー公表重量よりも軽かったのでさらに驚き(実際にはメーカーが公表する重量よりも重たいことはよくあります)

本体、フライシート、フレームの重量(実測値)

シリコーン加工を施すことで薄い生地に強度を持たせ、居住性・耐候性を犠牲にせずにここまで軽量化を実現させています。

本体とフレームをそれぞれ別に収納できる専用バックが付属しているのもありがたいところ。これでフレームはバックパックのサイドポケットに、本体はバックパック内に収納することができます。

雑に詰め込んでも余裕で入る大きめな作りの収納バック

山行中でも家でも基本的にきちんと折りたたんで収納するのが苦手な筆者。

テントだけでなく、シュラフなどでもよくあるのが収納サイズをよりコンパクトにするためにギリギリまで収納バックが小さく設計されていて、収納時に大変なこと。

ヤール1の収納バックは大きめの作りで、折りたたまずに雑に押し込んでいっても余裕で入ります。これがすごくありがたく、実際に北アルプスで使用した時も撤収時に雨が降っており、できるだけ早く撤収を完了させたい状況でしたが、専用バックに押し込むことで素早く撤収を済ませることができたのはかなり効率的でした。

軽量設計ながら結露の起こりにくくて対候性の高いダブルウォール型

ヤール1は国産ブランドのテントとして最軽量クラスでありながら、インナーテントとフライシートが分かれたダブルウォールテントで快適な居住空間を確保することができます。

インナーテントの高さが95cmなのでテント内で座った時に若干の圧迫感は感じるものの、頭が干渉してしまうほどでもなく、実際にテント内で過ごす時間の多くは横になっていることが多いので気になるほどではありません。

吊下げ式のインナーテントとフライシートの間にしっかりと空間が設けられるようになっていて、フライシートとくっつきにくくなっているのでインナーは結露しにくく、テント内に水が侵入しにくくなっています。

北アルプスで使用した時は、夏でしたが夜は10℃ほどまで気温が下がり、テント内と外気温の差でフライシートは結露しましたが、インナーテント内はドライな状態をキープしてくれました。

長辺に間口があることで出入り口が広く、全室のスペースも十分

筆者がテントを選ぶときにこだわっているポイントが長辺側に出入り口があること。

長辺側にあることで出入り口が広く、出入りが容易にできます。それと、ドームテントは短辺側よりも長辺側の方が角度があり、雨などが入りにくく、悪天候の時の出入りもテント内への雨の吹き込みを最低限に抑えることができます。

ジッパーを開け、出入りする時に気をつけないと生地が地面に干渉してしまうので注意が必要です。

ジッパーを無造作に開けてしまうと地面に干渉し、インナーが汚れてしまうので注意

ヤール1は全室の奥行きがが最大で45cmあり、靴などを置くのに十分なスペースが確保されています。

設営時に雨が降っていましたが、広い出入り口と十分な前室があったおかげで素早くテント内に逃げ込むことができました。

高身長にありがたい長辺210cm(日本のブランドとしてはめずらしい)

身長が180cmを超える筆者にとってテント選びの時は長辺の長さはシビアに確認します。

長辺が短いテントだと200cm、国産のテントは日本人の体型に合わせて作られていて、1人用テントの長辺の長さは平均は205cmほどですが、ヤール1は210cmあります。

たかだか5cmの差ですがこれが思いのほか大きく、210cmあることでシュラフがテント本体に干渉しにくくなり、ダウンのロフトが潰れてしまい保温力が低下してしまったり、テント本体に触れていることでシュラフが濡れてしまうことがなくなります。

直感的にわかる設営の簡単さと、扱いやすいよう工夫されたディテール

本体とフレームを接続するコーナーパーツは引っ掛けるだけのシンプルな構造

ポールと本体を接続するためのコーナーパーツはアルミ製のパーツで、直感的に組み立て方が分かる簡単な構造になっており、慣れない人でも簡単に設営が可能。

フライシートは張り具合を調整できるようアジャスターが2箇所設けられ、設営後にしっかりと調整できるようになっています。

フライシートについたアジャスター。設営後に簡単に調整できる

空気の通るスペースは少なく、通気性に関しては少し気になった

インナーテントには下から上へ空気の循環を作り出せるよう上下にベンチレーションが設けられ、インナーテントの上部のベンチレーションからは手を出すことができるので、テント内からフライシートのベンチレーションの開閉操作もできます。

フライシートのベンチレーションはテント内から開閉が可能

上下にベンチレーションは設けられていますが、実際に使ってみると、出入り口に設けられたメッシュ部分が小さく、通気性に関しては少し気になりました。テント内にいても通気を感じることがなく、日中は暑さを蒸し暑さを感じました。

軽量化のためか小さめのメッシュ部。もう少し大きいと通気性が良くなりテント内でも快適に過ごせるが、「軽さ」と「快適さ」は時にトレードオフになることも

山岳地帯での使用が可能な耐候性の高い仕様

ペグダウンは全部で12箇所、本体、フライシートを直接地面に固定できる8箇所と、張り綱を4本。これらを全てペグダウンすることで最大限の耐候性を発揮します。フライシートはフレームと接続できるベルクロが4箇所あるのでフレームと固定することでバタつきを抑え、強風時にも安定してくれます。

気になる点を挙げるとすれば、インナーテントの吊下げ箇所が9箇所で1箇所にかかる負荷が大きくなることによる耐久性。私が以前使用していた吊下げ式のテントは全部で13箇所の吊下げ箇所があり、さらにコーナーはスリーブになっていることでかかる負荷を分散させていましたが、それと比べると4箇所も少なくなっている分、耐久性の面ですこし気になるところです。

ヤール1には2mmのダイニーマロープが4本と、Vペグが12本、それと万が一フレームが破損した時のリペアパイプが付属しています。ほとんどが別売であるフットプリントも付属しているので、追加で買い足す必要はありません。

標高2,600mを超える場所でテント泊をした時は明け方に風が強くなりましたが、しっかりと12箇所ペグダウンしていたので風で煽られるようなこともなく、安心して過ごすことができました。

専用のフットプリントも付属しているのでありがたい

買ったときからシームテープ処理済みで、自前でシーム処理の必要なし

購入するテントによっては縫目の止水処理が施されておらず、自身でシームテープを貼って止水処理をしなくてはならないテントもありますが、ヤール1はシームテープ処理済みなので、そのまま使うことができます。

経験者や慣れている人なら止水処理もそれほど難しくないとは思いますが、慣れない初心者にとっては止水処理がされているのはありがたいところ。

必要なものは全て付属していて、止水処理もされているヤール1はエントリーモデルとして初めての山岳テントにもおすすめです。

まとめ:「対候性」と「軽量性」を両立したドームテント。さらにコストパフォーマンスのおまけつき

ここまでヤール1のレビューをしてきましたが、最後にもうひとつ、コストパフォーマンスについてです。

山岳テントとして、最軽量クラスのダブルウォールテント、快適な居住空間と使いやすさを考えられ、こだわったディテールが盛りだくさんで、必要なものは全て付属しているのヤール1。

ハイスペックなテントですが、価格は37,950円(税込)で、40,000円でお釣りがきます!

昨今のインフレやドル高で価格の高騰、特に海外ブランドのテントは驚くような価格になっていることも多い中で、このコスパの良さはユーザーが心配になるほど。

ギア選びで無視できないコストも最強レベルに高いヤール1。「携行性」「居住性」を兼ね備えたテントです。

Yosuke(ヨウスケ)

不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。

春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。

一年中アウトドアを楽しんでいるフリーのライター。 自身の経験や使ってみて良かった道具を発信しています。

opoアウトドアブログ