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ZEROGRAM Thru Hiker 1p ZEROBONE / EL CHALTEN ZEROBONE 1.5Pレビュー 今どきな快適さをしっかり押さえつつ、さりげない個性も魅力なダブルウォールテント 2モデル

トレンドをしっかり押さえつつキラリと光る個性で魅せる、韓国発世界行きの良品質テント

今や日本に負けず劣らずアウトドア産業が盛んなもうひとつのアウトドア大国、韓国。ポールやキャンプ用品のDAC(Helinox)、燃焼機器のKOVEA、ハイエンドなアパレルのBLACKYAKなど良質ユニークでな韓国発の世界的アウトドアブランドは数多くありますが、その中でも個人的に密かにずっと注目してきたブランドのひとつがZEROGRM(ゼログラム)です。

およそ6年ほど前の「TOAD (Trail Open Air Demo) 3」で初めて目にしたときには小さなガレージブランドかと思いきや、スマートなULテントや驚くほど軽くてパフィーなシュラフなど、本場のULブランドにまったく引けを取らないほど洗練された品質の高さに驚かされた記憶があります。

今回はそんな彼らの最新テント「Thru Hiker 1p ZEROBONE」と「EL CHALTEN ZEROBONE 1.5P」をお借りして自由にレビューさせてもらう機会ができましたので、さっそくそれらを実際に使用してみて分かったことをまとめてみます。

ZEROGRAM Thru Hiker 1p ZEROBONE

ここがお気に入り

  • とにかく簡単でスピーディな設営
  • 便利な前頭部の前室
  • 結露しにくいモノフィラメントのインナーテント
  • 1人用テントとしては広々としたヘッドスペースのクリアランス
  • フライが地面までしっかりと張れて対候性も高い
  • 細かな部分まで配慮された快適さや使い勝手の良さ

ここが気になる

  • 側面の前室がやや狭い
  • フライに吊るしているインナーテントが室内のポーチに荷物を入れると若干弛みがち
  • 非自立式テント全体に言える、ペグダウンが難しい場所での設営の難しさ

主なスペックと評価

項目スペック・評価
就寝人数1名
重量
  • 最小:978g (フライ、インナーテント、ポール3、ペグ4)
  • パッキング:1,206g (フットプリント含む)
フライ素材15D N/R silicone/PU coated
インナー(フロア)素材
  • インナー:20D monofila
  • フロア:15D N/R silicone/PU coated
ポールZERO-BONE UL (ジェラルミン)
寸法・面積
  • インナー 210(L) x 85(W) x 100(H)cm
  • アウター 220(L) x 95(W) x 106(H)cm
ドアの数1
収納サイズ14(L) x 14(W) x 39(H)cm
フロア面積約1.6 m2
付属品
  • フライ
  • インナーテント
  • フットプリント
  • ペグ10
  • ポール3
  • ガイライン2
  • スタッフサック
居住快適性★★★★☆
設営・撤収の容易さ★★★★★
耐候性★★★★☆
耐久性★★★☆☆
重量★★★★☆
携帯性★★★★☆
汎用性★★★☆☆

詳細レビュー

1:とにかく簡単でスピーディな設営

何よりも Thru Hiker の最も優れている点といっていいのがこの設営の簡単さです。通常、壁が1層のシングルウォールテントやシェルターであればまだしも、このテントのように壁が2層の本格的なダブルウォールテント(しかもフットプリント付き)となると、まずフットプリントを敷いて、インナーテントを建てて、その上からフライを被せて……と、設営の手間は多くなってしまうものです。

そこでこのモデルではフライとインナーテント、そしてフットプリントまでもあらかじめ一体化させ、さらにポールも外側のフックを引っかけるだけという構造にすることで、ひと手間であっという間に設営できてしまいます。下の動画では(その前に)ほとんど数回しか建てていない自分が試しにゆっくりペースで建ててみた動画です。それでも正味3分未満で難なくセッティングできてしまいました。もっと慣れれば2分程度で建てられる気がします。

しかも一体型ということは、雨での設営でフライをかける前にインナーテントが濡れてしまうといった不幸も起きませんので、簡単なだけでなく安全でもあるという素晴らしい構造。この手のスマートな構造に慣れてしまうともうインナー・フライ分離型のテントはなんだかまどろっこしく感じてしまいますね。

2:結露しにくいモノフィラメントのインナーテント

以前からZEROGRAMのテントではおなじみですが、一見普通のメッシュのようで、あるいは極薄のファブリックのような「モノフィラメント」生地のインナーテントが、絶妙にいい。

基本的には半透明で風通しの良いメッシュですが、一般的なメッシュと異なって生地に恒久的な撥水性が備わっているため、水分を蓄えません。

下記の霧吹き実験動画のように、付着した水分はポロポロと重力に任せて落ちていきます。かろうじて残っている水滴もちょっと揺らせばだいたい落ちます。※実験したテントはEL CHALTEN ZEROBONE 1.5P。

水を吸わなければ雨が降っても濡れて重くならないのはもちろん、結露した場合でも水滴として残りにくいため、いわゆる内壁にべっとりという状況は起きにくい。元々ダブルウォールということもありますが、普通に晴れの日寝たくらいではインナーに結露が起こることはありませんでした(もちろん下写真のようにフライの裏側にはうっすらと結露はしています)。

3:1人用テントとしては広々としたヘッドスペースのクリアランス

Thru Hikerはここ最近の「とにかく軽い!」より「軽さと快適さのバランス」といったトレンドをしっかりと踏まえ、軽量ながら住み心地も妥協しない姿勢が見て取れます。そのひとつとして、ヘッドスペースのクリアランスが一人用テントとしては十分に確保されている点が挙げられます。

これは縦の長いポールに2本の短いポールを交差させる構造によって、ヘッドスペースにより大きな空間を作ることができているため(下写真)。縦ポールの上側を通るリッジポール(横ポール)によって、前モデルに比べても張りが増して上部の空間は広がってより快適になっています。

微妙にカーブしたリッジポールは張りの強さと耐風性のバランスをとったもの。

天井にランタンループが2か所設置されたことも前モデルからの進化点。下の写真では2カ所のループに細引きを通していろいろなものを掛けられるようにしています。

ちなみに176cmの自分でも不自由のない高さ。

4:便利な前頭部の前室

普通ならばデッドスペースとなってしまうテント内部のちょうど頭の位置に、第二の前室を設けたのがユニーク(下写真)。靴や食材、調理セット、さほど大きくないバックパック(40L程度まで)などを置いておくことができます。

5:フライが地面までしっかりと張れて対候性も高い

ヘッドスペースを広げた分、側壁がやや急こう配になっています(風の影響を受けやすい)が、一方全体としては安定感のあるかまぼこ型で風の抵抗を受けにくく、ガイラインでしっかり補強できる、またフライも地面スレスレまで閉じることができるため対候性での不安は感じませんでした。

6:細かな部分まで配慮された快適さや使い勝手の良さ

前作から改善された部分も含め、シンプルな軽さらから、さらに快適さ、使いやすさをアップさせる工夫が積み上げられています。例えばベンチレーションは前作に比べサイズが大きく、位置もよりサイド(入口の対面)に配置され、空気の流れがスムーズに(下写真)。

風通しと採光のために出入り口のフライはクリップに留めて大きく開放できます。

出入口脇には小物を整理して収納できる十分な大きさのポーチがあります。

コーナー付近の縫い目が集中する部分のシームテーピングは前作に比べてしっかりと処理が施されており、基本的に自分で後からシームシーリングする必要はありません。

新しい付属のペグは軽さと剛性、刺さりやすさを備えたY字型。張り綱が抜けないように一辺に切れ込みが入っています。

本モデルから採用された新タイプのポール「ZEROBONE」は、表面のコーティング工程を省くなどして前作以上に環境に配慮している点が新しい。

ややポールの径は太くなったものの、一方で一節あたりの長さが短くなったことでパッキングはコンパクトになったり(節が多くなることで)強度もアップしています。

7:前室はもう少し広く、取り回しももっと簡単であってほしい

多くの工夫によって標準以上の快適さを備えていることは確かなのですが、それだけにどうしても側面の前室の狭さ(使い勝手の悪さ?)が気になってしまいました。広さ的には靴が置けないほどではないので我慢できないという分けではないのですが(下写真)、決して広いとは言えません。

また前室の狭さを解消するためにフライを開放しようとすると、ペグを抜いてほぼ入口を全開する必要がある作りなのが個人的には不満が残ります。できればフライの開放具合を、左右対称のテントでいうところの「片側を開けた」くらいの塩梅にも調整できればより快適なはずです。

その辺り、現状でもできないかいろいろと工夫をしてみたものの、短時間でそこまでばちっとくるポイントにはなかなかたどり着けませんでした(例えば下写真のようにジッパーの先端にナス環をつけ、フックにひっかけてみたり)。

ZEROGRAM EL CHALTEN ZEROBONE 1.5P

ここがお気に入り

  • ヘッドクリアランスと前室を含めた広々とした居住空間
  • 大きく開く2か所の前室付き出入口や通気性抜群のベンチレーション
  • フットプリントも含めて簡単・スピーディな設営
  • 結露しにくいモノフィラメントのインナーテント
  • 対候性も高い

ここが気になる

  • 1人用テントとしてみると決して軽くてコンパクトなわけではない

主なスペックと評価

項目スペック・評価
就寝人数1~2名(1名ならゆったり、2名ならかなり窮屈)
重量
  • 最小:1,583g (フライ、インナー、ポール×3、ペグ×4)
  • パッキング:1,916g (フットプリント含む)
フライ素材15D N/R silicone/PU coated
インナー(フロア)素材
  • インナー:20D monofila
  • フロア:20D N/R silicone/PU coated
ポールZERO-BONE UL (ジェラルミン)
寸法・面積
  • インナー 210(L)x105(W)x100(H)cm
  • アウター 225(L)x120(W)x107(H)cm
ドアの数2
収納サイズ42 x 16 x 16cm
フロア面積約2.2 m2
付属品
  • フライ
  • インナーテント
  • ポール
  • ペグ×10
  • ガイライン×4
  • フットプリント
  • スタッフサック
居住快適性★★★★★
設営・撤収の容易さ★★★★★
耐候性★★★★☆
耐久性★★★★☆
重量★★☆☆☆
携帯性★★★☆☆
汎用性★★★☆☆

詳細レビュー

1:ヘッドクリアランスと前室を含めた広々とした居住空間

このテント最大の推しポイントはやはり広さ。まず1.5人用サイズで底面積が広く、さらにポールの構造的にも天井付近を横切るリッジポールによって上部空間の幅を大きく広げている(上部空間の幅105cm)ため、見た目以上に室内は広々。前室も両側面に十分な広さがあり、正直1人ではもてあますほどの広さです。

とはいえ、マットレスを2つ並べてみると分かる通り、2人用として使うにはやはり若干窮屈(下写真)。我慢すれば不可能ではありませんが。

2:大きく開く2か所の前室付き出入口

そのうえ左右両側に大きく開くC字型の2つの出入口を設けており、その解放感たるや最高。1人で使うにはもったいないとさえ思えてしまいます。

前室も十分な広さで両側に設けられています。

天井には入り口から入ってきた空気を逃す2か所の(室内から操作できる)ベンチレーションが設けてあり、通気・換気性についても問題ありません(下写真)。

室内には入り口脇・そして天井に小物等を入れるためのポケット(下写真)、ランタンフック等が豊富に配置され、収納・整理についてもまったく不満はありませんでした。

3:フットプリントも含めて簡単・スピーディな設営

こちらのモデルもThru hikerと同じようにフライ・インナー・フットプリントが一体となった設営が可能です。こちらはペグダウンの必要がない自立型のテントなので、下の動画のようにさらに簡単・スピーディにきれいにセッティングできました。

4:結露しにくいモノフィラメントのインナーテント

こちらもモノフィラメントのインナーテントを採用。高い通気性と結露による不快感を遠ざけることで、より快適な夜を過ごすことができます。

5:対候性が高い(雨風に強い)

実際にひどい天気の中で耐えたわけではありませんが、実績のある自立ドーム型、側壁のこう配がそこまで急でないことや、ガイラインの補強ポイントもあり、フライがしっかりと地面まで閉じられるため風や雨にも強く、対候性は高いといえます。降雪が天井に溜まりやすいという点を除けば積雪期の使用も問題ないと思います。

7:重量は決して軽いとは言えない

すべてにおいて完璧な道具があり得ないように、優れた住み心地・使い心地・安全性と欠点が見当たらないこのテントにも、どこかしらに曇りがあるものです。このテントの場合は重量と収納サイズがそれにあたります。ミニマムで1,583gという重さは、1人用としてみると残念ながらここ最近では重い方の部類に入るといえます(2人で使うならば現実的な値)。ベースキャンプ用としてでなくソロハイク用として考えるならば、できれば最小重量で1,200g以下に抑えられているとありがたいところです。

まとめ:それぞれ異なる長所・個性を備えつつ、どちらも全体的なバランスの良さも備えた良テント

軽快だけど快適さも譲れないスルーハイクやファストパッキングに最適なThru Hiker 1p ZEROBONE、天候による不安に悩まされることなく安全で余裕をもった登山に最適なEL CHALTEN ZEROBONE 1.5P。それぞれターゲットとするシーンやユーザーは異なれど、細部まで行き届いた全体的なクオリティはどちらも高いものがあり、その完成度の高さにはまたも驚かされました。新しい技術を積極的に取り入れトレンドの波に乗り遅れまいと常に進化を重ねるブランドのどん欲な姿勢も清々しいものがあります。

細かな点での要望はありましたが致命的な欠点ということではなく、適切な用途で使用すれば必ずや満足できるテントであることは間違いないでしょう。これまでにない新しい個性を備えたテントと共に、新しい思い出が生まれることを願っています。