今すぐ着たい最高のレインウェアと、新しくて賢いアウトドア向けレインウェアの選び方
必要なのは着心地?軽さ?防水性? 多彩なモデルからシーンに合わせて自分にピッタリのレインウェアを選ぼう
アウトドアにおいて必携装備のひとつといわれているレインウェア(雨具)は、一昔前まで価格帯による分類はあるにせよ、そこまで大きな作りの違いはなかったように感じています。それがここ最近では、同じ登山でも「日帰りハイキング」「ファストパッキング」「トレイルランニング」「本格トレッキング」「アルパインクライミング」といったより細かな分野に分かれて多種多様なモデルがひしめき合うようになってきました。まさに世界中で拡大し続けるアウトドア産業と成熟するカルチャー、それによって加速するテクノロジーの進化と競争もここに極まれり、といった感じです。
まぁ選ぶ側としては選択肢が増えること自体嬉しい限りなのですが、そう手放しで喜んでばかりはいられません。買って後悔したくないという気持ちは誰でも同じ。とはいえ常に最先端のテクノロジーをキャッチアップし、綺羅星の如く並ぶ最新モデルの中から、微妙な差異を判別して自分の満足のいく一着を選ぶのは簡単なことではありません。
ということで今回は、そんな複雑化した昨今のレインウェア市場を踏まえて、7年間このサイトと共にレインウェアの最前線にピッタリと張り付いてきた登山ライターである自分が、いちユーザーの視点から今年買って大満足間違いなしの素敵なレインウェアを選定します。さらに後半では昨今の技術の進化を踏まえた、ビギナーでも間違いなく最適なモデルに出会える、最先端の賢いレインウェアの選び方についてもまとめています。
ただ、レインウェアという分野はアウトドア・ギアの中でも特に非常に複雑な知識を必要とするカテゴリ。すべてを一から十まで説明しようとすると途端に眠くなるほど長い話が必要になってしまいます。このガイドの目的はアウトドア愛好家にレインジャケット選びについての有意義な情報を知ってもらうことであり、レインウェアのどこよりも詳しい知識を提供しようとするものではありません。その意味でこのガイドでは、初めてレインウェアを選ぶ必要がある人と、こだわって選びたいという人との橋渡し的なポジションを意識して、どうしても避けられないテクニカルな話題にだけは触れつつもできる限りシンプルに書いていこうと思います。とか言ってても長くなってしまうのが、レインウェアの厄介なところ。レインウェアを選んだことがない人からレインウェアの最新事情を押さえたい方まで、少し長いですが気楽にお付き合いください。
目次
- 今シーズンの素敵すぎるアウトドア向けレインウェア
- ベスト・オールラウンド部門:Arc’teryx ベータ LT ハドロン ジャケット/THE NORTH FACE パンマージャケット
- ベスト・ハイキング部門:patagonia ストーム10・ジャケット/Patagonia カルサイト・ジャケット(他PaclitePlus製品)
- ベスト・ファストパッキング部門:MONTANE MINIMUS STRETCH ULTRA JACKET
- ベスト・ランニング部門:THE NORTH FACE ストライクトレイルフーディ/patagonia ストーム・レーサー・ジャケット
- ベスト・コストパフォーマンス部門:MIZUNO ベルグテックEXストームセイバーVI レインスーツ
- ベスト・トレッキング部門:mont-bell ストームクルーザージャケット
- ベスト・高負荷アクティビティ部門:Goldwin ファスト シェル ライト ジャケット/Teton Bros. Yari Jacket
- ベスト・ウルトラライト部門:Rab Phantom Pull-On
- 特別賞(個人的お気に入り):Arc’teryx アルファ SL アノラック
- 選び方:最適なレインウェアを選ぶときにチェックしておきたい7つのポイント
- まとめ
今シーズンの素敵すぎるアウトドア向けレインウェア
ベスト・オールラウンド部門:Arc’teryx ベータ LT ハドロン ジャケット/THE NORTH FACE パンマージャケット
Arc’teryx ベータ LT ハドロン ジャケット
- 重量:255g
- 防水透湿素材:Hadron™ 3L ゴアテックス生地
表地に独自開発生地であるHadron™ LCP(液晶ポリマー)を採用することによって、これまで考えられなかった軽量&高耐久を実現。洗練されたシルエットと動きやすさを両立した安定の着心地の良さや極力無駄を省きつつも高品質な細部のパーツ、そして左右ハンドウォーマーポケットで万人に使いやすい汎用性の高さ。登山・クライミング・トレイルラン・サイクリング・日常とオールラウンドに対応。
アークの中でも山全般向け「ベータ」シリーズの最新モデルは恐ろしいくらいに隙がありません。その意味では今年のオールラウンド部門No.1は文句なしといっていいでしょう。それだけに価格はややびっくりしますが、一生モノの一着と考えれば許容範囲ではないでしょうか。
THE NORTH FACE パンマージャケット
- 重量:約250g(Lサイズ)
- 防水透湿素材:GORE-TEX Active C-Knit Backer (3層)
軽さ、快適さ、プロテクションを兼ね備えながら、細部にまで行き届いた使いやすさが実感できるオールラウンドな軽量・快適レインウェア。防水透湿素材に使われているGORE-TEX Active™ C-Knit Backerは重量を極力抑えながら、高い防水性と同時に抜群の透湿性を備えたハイエンド素材。この極上の素材を薄くてしなやか、肌触り良く動きやすい快適な着心地に仕立てました。表地の素材もハイスペックで、強いシャワーを長時間浴びせ続けても低下しない撥水性の高さは驚きです。
フロントジッパーはスムーズで防水性もバッチリ、上下ダブルジッパー仕様でベンチレーションとしても機能します。フードはヘルメットも被れるように大きめ、ツバも硬質素材で雨をしっかり防いでくれます。ハードなアクティビティから通常のハイキングまで幅広く使いやすい、無駄を省きながらも安全・快適・便利に使うための細かな配慮も忘れないノースフェイスの本気が詰まった一着です。
ベスト・ハイキング部門:patagonia ストーム10・ジャケット/Patagonia カルサイト・ジャケット(他PaclitePlus製品)
patagonia ストーム10・ジャケット
- 重量:235g
- 防水透湿素材:3L H2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル
3レイヤーの生地とは思えないほど薄くて柔らかくしなやかな生地感に、垢ぬけたシルエットと快適さを兼ね備えたパターンの良さが相まって、袖通しの心地よさは見事といえます。細かな立体裁断と若干のストレッチ性のおかげで行動中でも快適さは持続し、防水性・汗抜けに関しても独自素材である「H2Noパフォーマンス・スタンダード」が十分なパフォーマンスを提供してくれます。
ポケットは胸・左右とこの軽さにも関わらず潤沢に整っており、さらに胸ポケットに丸めて収納できるというパッカブル仕様など、かゆい所に手が届きまくっています。ルックスと着心地、使いやすさを兼ね備え、さらにパタゴニアならではのこのまとまりの良さはアウトドアウェアを初めて着る人にこそおすすめ。
Patagonia カルサイト・ジャケット
- 重量:411g
- 防水透湿素材:GORE-TEX PACLITE Plus
次点として、GORE-TEX PACLITE Plus素材を使用したレインジャケットを挙げたいと思います。この新しい2.5層(G社の見解では2層)の防水透湿生地は、軽さと防水性の高さ、確かな透湿性という点で軽快なハイキングに携行するのにもってこい。裏地の肌離れが進化し、驚くほどサラっと快適な肌触りを提供してくれます。
多くのアウトドアメーカーがこの素材でレインウェアを制作しており、その意味で具体的なモデルは自分の好みに合わせて選んでよいと思いますが、個人的にはこのカルサイト・ジャケットが総じてお気に入りです。着心地、スタイルの良さもありますが、最も大きな理由はポケット類の豊富さと脇下のピットジップ(ベンチレーション)。日本のようなジメジメ環境では、生地の透湿性だけでは追いつかないことが多いので、ベンチレーション機能は非常にありがたい。ただその分重量は若干重いため、そこが好みではない人には別のもっと軽いPACLITE Plusモデルがおすすめです。
ベスト・ファストパッキング部門:MONTANE MINIMUS STRETCH ULTRA JACKET
- 重量:192g
- 防水透湿素材:PERTEX® SHIELD + ストレッチ
イギリス発、新進気鋭のアウトドアブランドMONTANEは、ファストパッキングやトレイルランなどのハイテンポなマウンテン・アクティビティを志向した製品が得意。このモデルも身体にフィットするタイトめシルエットに、さらにストレッチの効いた生地を採用することで、優れた透湿性と動きやすさを高いレベルで両立しています。
ポケットも2つ付いており(しかもイヤホンコードの穴あり)ガチのランニング用途だけでなく荷物の多めなハイキングにも対応してくれます。まさにファストパッキングにはうってつけというわけです。フロントジッパー締めなくてもフロントを留められるスナップボタンや、前後に配置された夜間用の反射板など、ちょっとした部分にも抜け目ない気遣いは相変わらず見事。
ベスト・ランニング部門:THE NORTH FACE ストライクトレイルフーディ/patagonia ストーム・レーサー・ジャケット
THE NORTH FACE ストライクトレイルフーディ
- 重量:約115g(Lサイズ)
- 防水透湿素材:HYVENT Flyweight (3層)
レースでの使用も考慮された超軽量レインジャケット。10デニールという極薄の独自素材「HYVENT Flyweight(3レイヤー)」は20,000mmの耐水性、40,000gの透湿性という驚きのスペック。ポケットは無し、袖口や裾、フードなども伸縮ゴムのみという限界までそぎ落とされた115gという重量とレースゼッケンが透けて見えるクリアカラーは、トレイルランニング、それも1秒を縮めるために走るレースでこそ活きてきます。とはいっても3レイヤーのサラサラ裏地は快適で着心地もかなりいい。とにかく山で走るためのレインウェアを求める人なら、必ずや満足できる一着です。
patagonia ストーム・レーサー・ジャケット
- 重量:198g
- 防水透湿素材:3L H2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル
まるで前掛けをしているような奇抜なデザインは、トレイルランニングをする人ならばそれがどれだけありがたいものかすぐに分かるはずです。薄めのトレランパックならばパックを背負ったまま、窮屈さはなく羽織ることができる独自のカッティング。さらに左右斜めに配置されたジッパーを開くと、パック前面にあるボトルや小物類のポケットにスムーズにアクセスできます。バックパックを背負いながらスピーディーに脱ぎ着ができ、行動中もパックを濡らさない、その上着たまま水・食料の補給ができるという、まさにトレイルランナーにとって至れり尽くせりの仕様なのです。
このジッパー構造は利便性だけでなく、大きく開くことでよりダイナミックな換気も可能。左右のジッパーを胸の下まで開ければかなり外気を取り入れることが可能です。細身ながらよくできた着心地はさすがパタゴニア。首裏のメッシュポケットに収納可能なパッカブル仕様などの使い勝手も気に入っていて、ランニングカテゴリでは上のストライクトレイルフーディが王道1位とすれば、こちらは万人におすすめできないとしても、ユニークさで決して外せない良モデルです。
ベスト・コストパフォーマンス部門:MIZUNO ベルグテックEXストームセイバーVI レインスーツ
- 重量:上下計約550g(Mサイズ)
- 防水透湿素材:ベルグテックEX
お手頃価格のレインウェアは、日常用も含めればホームセンターなどでゴマンと手に入るようになった世の中。ただその中でも登山向けのトップブランドと決して引けをとらない素材性能を備えながら、トップスポーツブランドが作る確かな機動性、そして何よりも上下セットで異次元の価格という意味ではこのモデルが外せません。もちろん重量や生地の耐久性等、欲張りしてはいけない要素はありますが、初めての人にとってはこれで十分。豊富なカラーバリエーションもうれしい。
ベスト・トレッキング部門:mont-bell ストームクルーザージャケット
- 重量:254g
- 防水透湿素材:ゴアテックス ファブリクス3レイヤー・GORE C-ニットバッカーテクノロジー
数えきれないほど多くの製品を手掛けるモンベルの代表作にして、日本のアウトドア向けレインウェアのベンチマーク、押しも押されぬロングセラー、mont-bell ストームクルーザージャケット。長年愛され続ける理由はなんといっても日本の登山を知り尽くしたメーカーがとことん追求した機能美にあります。山の奥深くに分け入り、何日もかけて長い距離をゆくトレッキングや長期縦走ではこれ以上安心なことはありません。
きわめて高い耐水圧を備えた20デニールのGORE-TEX 3層生地は、裏地部分にしなやかで高透湿なGOREⓇ C-ニット™バッカーテクノロジーを採用し、軽量・耐久性・防水透湿性・快適性を実現。さらに独自の裁断パターン「K-Mono カット™」がさまざまな面で機能を底上げしています。調節可能な袖・裾・フードのつくりなども素晴らしく、豪雨や長雨でも安心のプロテクションと快適性は、「登山」全般に関して最も信頼性の高いレインウェアの一つです。唯一の気がかりはややゆとりのあるシルエット。ルックス面での好みは分かれるところで、そこだけは永遠の悩みどころです。
ベスト・高負荷アクティビティ部門:Goldwin ファスト シェル ライト ジャケット/Teton Bros. Yari Jacket
Goldwin ファスト シェル ライト ジャケット
- 重量:163g(Lサイズ実測)
- 防水透湿素材:PERTEX® SHIELD AIR
数年前から続々登場している「防水・通気」機能を備えた新しい素材のひとつ「PERTEX SHIELD AIR」を採用した初めてのレインウェアが、日本でノースフェイスを展開するGoldwinから登場。Lサイズ実測163gという超軽量のジャケットは、薄くてしなやかで音も静か、さらに裏地はサラサラ快適なトリコット生地と、着心地に関しては申し分ありません。通気機能によって抜けの良さも抜群。ランニングやスピードハイキングなどの発汗量の多いアクティビティにこれまで以上にマッチします(抜けが良すぎて寒くなりすぎないか心配なほど)。
レインウェアとしても、ウィンドシェルとしても使いやすいため、雨の有無に限らずずっと着ていられる新しい感覚のレインウェアかもしれません。耐久性や耐水性、使い勝手に関しては妥協せざるを得ない部分も出てきますが、このジャケットにはそれを補って余りある魅力が備わっていることは間違いなく、それを最大限に活用できる短期間のランやファストパッキングなどの高負荷なアクティビティには何とも楽しみな一着です。
Teton Bros. Yari Jacket
- 重量:335g(Size M)
- 防水透湿素材:Täsmä
21-22年の秋冬シリーズから初めて登場した東レとTeton Bros.の共同開発による最新の防水・通気メンブレン「Täsmä(タズマ)」を採用したレインウェアの一つがこのYari Jacketです。自分は冬に発売されたハードシェル(TB JACKET)から一足先にこのTäsmäを体験していますが、使い始めてすぐ、その快適さとしなやかな着心地、そして撥水性の高さにすっかり惚れ込んでしまいました。
春夏レインウェア向けにアジャストされた本作はより薄手・軽量になり、着心地はさらに向上。そして大きく開いてベンチレーションにもなる左右のジップポケットがさらに換気性能をアップさせてくれます。こなれたデザイン性の高さとカラーバリエーションも素敵。素材から作りまで、徹底して蒸れ知らずの一着はこの夏の一軍になる可能性大です。
ベスト・ウルトラライト部門:Rab Phantom Pull-On
- 重量:90g
- 防水透湿素材:Pertex® Shield 2.5レイヤー
機能性とデザイン性に優れたブランドの多い英国発アウトドアブランドの中でも、その一貫してストイックな哲学で熱心なファンを生み続けているRab。その高い開発力とエンジニアリング技術を惜しみなく注ぎ込んだ一着がこのPhantom Pull-Onです。重さ何と90g。7デニールの極薄ナイロンながら、2.5レイヤーのPertex® Shieldによって耐水性/透湿性は20,000mm/20,000gと十分なスペックです。
軽量化を実現するためにポケットを排し、フロントもハーフジップのプルオーバータイプ。身体のラインにピッタリ沿うようなスリムなフィットながら優れた立体裁断によって機動性は抜群です。ただもちろん摩擦や引っかけには強いとは言えず、十分な耐久性は保障できません。その意味で万人には決しておすすめできませんが、軽量コンパクトな本格防水シェルという1点突破の機能を望む人にとってはこれ以上ないチョイスといえるでしょう。
特別賞(個人的お気に入り):Arc’teryx アルファ SL アノラック
- 重量:209g
- 防水透湿素材:Hadron™ 3L ゴアテックス
自分にとっては切り詰めてもいいと思える部分、ジッパーやポケット類は極限までそぎ落とし、なおかつハードなアクティビティにも使える耐久性を備えたモデル、そんな個人的ニーズに応えるレインウェア、Arc’teryx アルファ SL アノラックを特別賞としてピックアップさせていただきました。脱ぎ着の手間は経験でカバーということでのアノラックスタイル。ポケット類は他にバッグを携行しているので不要。薄手軽量で高透湿ながら藪漕ぎにも耐えられる高耐久なハドロンリップストップ生地。そして何よりもアークテリクスが誇るの立体裁断による動きやすさ。お値段もアレですが、実力は計り知れません。
選び方:最適なレインウェアを選ぶときにチェックしておきたい7つのポイント
ポイント1:アウトドアで使えるレインウェア、2つのキホン
キホン1「撥水ではなく、防水ジャケット」
サバイバルの世界でいわれいてる「3の法則」によると、人は適切な体温を保持できなければ3時間で命の危険に迫られるとあります。いわゆる「低体温症」状態を意味していますが、低体温症が起こるのに何も凍えるような寒さは必要ありません。真夏であっても雨や汗によって濡れた肌のまま長時間いれば誰でも低体温症は起こり得ます。天気の不安定なアウトドアアクティビティ(特に日本)で、雨を防ぐアウターが必携であるといわれる所以です。
ただ雨風を防ぐといっても、その程度や機能によっていくつかの種類があり、一見するとレインウェアと似たような外観であっても、雨を満足に防げないジャケットもあったりします。それは防水ジャケット(レインウェア)ではない、「撥水」機能の備わったジャケット。代表例がウィンドブレーカーやソフトシェルと呼ばれるアウターです。
この撥水機能とは、繊維一本一本にフッ素樹脂などの撥水剤を塗布することによって表地を水となじみにくい性質(疎水性)に加工し、表面に付着した水滴をワックスのように玉状にして弾かせる機能のことです(下写真右)。水が生地の上を滑り落ちてくれるため、一見しっかりと防水してくれそうですが、実際には生地の織目自体に水滴の通る隙間が存在しています。このため短時間の小雨程度であれば弾いてくれるものの、長時間もしくは少しでも強く水が当たればいずれ生地の内部に水が染み込んできてしまい、雨具としては機能しません。
ちなみにこの撥水加工のことをDWR(耐久撥水加工)といって、レインウェアの性能を長い期間100%発揮させるために重要な働きを担っています。とはいえ繰り返し使ったり洗ったりすればどうしても徐々に劣化してきてしまいます(下写真左)。そうなってしまったら、そのジャケットは雨に対してまったくの役立たず。撥水力がなくなると、表生地が水で濡れてしまい透湿性能が発揮できません。本来のパフォーマンスを回復させるために、定期的に撥水スプレーや撥水材などでメンテナンスしましょう。
一方、防水機能が備わったジャケット(=レインウェア)は、表面の撥水加工はもちろん、生地自体も強い雨を通さないようなものを使うことで常に外からの浸水をしっかりと防いでくれます。
またフロントやポケットなどのジッパーも水が入りにくい仕様になっており、さらにジャケットの縫い目にも内側から「シームテープ」と呼ばれる防水テーピングが施されているのが特徴です(下写真)。
レインウェア選び1つめの大前提は、こうした「撥水ジャケットではない」正真正銘のレインウェアを選ぶということです。ちなみに、レインジャケットを雪山用に調整したのがハードシェル(境界線はややあいまい)。どちらも同じように雨を防ぐことができますが、必要とされる機能や特徴が異なるため、ここでは取り上げません。
関連記事
代表的な防水(撥水)アウター・シェルレイヤーの比較
キホン2「防水生地ではなく、防水透湿生地」
その昔、レインウェア(雨合羽)は単に水をはじくだけでした。コンビニで売られている500円のカッパのように、身体を覆う羽織りもので服の内側に水が入らないようにすること自体はそれほど難しくありません。ただ、昔ながらのゴム引き布やPVC(塩化ビニール)による雨合羽には通気性がほとんどないため、降り注ぐ雨を防いだとしても身体から発せられる汗で身体は瞬く間にぐしょぐしょに濡れてしまっていました。雨は防ぎたいけれども蒸れは外に出したい、登山家達のジレンマが続きました。
この問題を魔法のように解決したのがGORE-TEX(ゴアテックス)です。1970年代ロバート・ゴア氏によって発明されたこの素材は、フッ素樹脂の一種を延伸加工したePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)という膜(メンブレン)であり、ここには1平方センチメートルあたり14億個以上の微細な孔(あな)が空いています。この孔のサイズは水滴の大きさの2万分の1である一方、水蒸気分子の約700倍の大きさでもあるため、外からの水や風は通さず、内側からの水蒸気は通すという「防水・透湿」機能を実現することができました。このゴアテックスの登場によって防水透湿素材は瞬く間にアウトドア向けレインウェアの主流となりました。そして主要な特許が終了した90年代後半からは多くのメーカーによって独自の防水透湿素材の開発競争がさらに加速し、現在に至ります。
GORE-TEXについては、このサイトが中の人に洗いざらい聞いた以下の記事もよろしければ参考に。
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その後登場した他メーカーの素材もだいたい同じようにメンブレンをラミネートしたり、同様の機能を実現するコーティングを施すなどして作られており、細かな違いはあれど、機能としては外からの雨をブロックしつつ蒸れ(水蒸気)の効率的な排出を助けるように設計されています(各ブランドの正確な材料や加工方法はトップシークレットとなっているため、我々が知ることはできません)。アウトドア雨具の2つめの大前提は、こうした防水+透湿生地のアウターを選ぶということです。
ちなみに、以下に主な防水透湿生地のブランドと簡単な特徴を一覧にしてみました。ただ注意していただきたいのは、レインウェアの構造は単純ではないため、この素材を使用したレインウェアがすべてその特徴になるということでは無いということです。またすべての製品を一律に比較していないため客観的な性能比較はできません。あくまでも各素材の大まかな特徴を把握する目的で、購入検討する際の参考として活用してください。
種類 | 特徴 |
---|---|
GORE-TEX |
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Pertex Shield |
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eVent |
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Polartec NeoShell |
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ポイント2:生地の構造(レイヤー)を選ぶ ~得意・不得意を知って使い分ける~
レインウェア選びで大切なのは、防水透湿メンブレンの種類選びもさることながら、生地の構造によるタイプを選ぶことも同じように重要です。
防水透湿素材はそれ自体では単なるメンブレンなので、衣服として成立しません。メンブレンの表、裏、またはその両方に生地を貼り合わせたり(ラミネート)、コーティングすることによって、耐久性や着心地の良さ、動きやすさなどが加わり、ジャケットとして完成します。その層の組み合わせ方は現在のところ大まかに2L(レイヤー)・2.5L・3Lの3種類あると考えていいでしょう。レインウェアは生地の種類や厚みの違いだけでなく、このレイヤーの違いによっても、さまざまなアクティビティや目的により最適化されたバリエーションが可能となっています。
以下に、それぞれの長所と短所を説明します。
3レイヤー
3レイヤーは、防水透湿膜の両側を2枚の別々の生地で挟み込んだ構造です。見た目通り最も耐久性が期待できます。そして裏地の生地によって吸湿発散性と肌触りが良いというメリットがあります。その昔はゴワゴワ硬かったといわれていた生地感も大分しなやかになり、着心地としては3層が最も優れているでしょう。ただその分、他の構造と比べるとかさばりがちです。価格も相対的に高め。逆にいうと、この3層構造で薄手・軽量であったり、価格が抑えめであったりすると、それはかなり質が高いということでもあります。その証拠にここで紹介しているトップクラスのモデルのほとんどが3レイヤー構造であることは注目に値します。
2.5レイヤー
2.5レイヤーのジャケットは、防水透湿素材の外側(表地)に1枚の生地を、そして内側(裏地)に非常に薄い保護コーティングを施して汚れや汗がインナー素材にダメージを与えるのを防いでいます。1というにはあまりにも薄いという意味で「0.5層※」という訳です。
※なおメーカーの見解によって同じような構造でも「2層」と表現するブランドもあるのでこの辺は実にややこしい。
2.5レイヤーのメリットは、3層構造よりも軽くコンパクトに作れるということです。より軽量なレインウェアを求めるハイカーやクライマーに人気のあるオプションといえます。ただし、この裏地の保護フィルムは往々にして3レイヤーほどのしなやかさに欠け、肌触りもペタペタとあまり心地よくないため、快適さに劣る点は明らかなデメリットといえます(最近改善されてきているモデルもいくつかあります)。
2レイヤー(メンブレン+表地)
メンブレンの上に保護用の表地を貼り合わせただけの2レイヤーは、この中では最もベーシックな作りのレインウェアといえます。ただ2レイヤーといいつつ、実際にはジャケットの内側のメンブレン層を保護するためにたいていの場合メッシュのライナーを必要としています。このため2レイヤーといえどもあまり軽い作りにはできず、一般的にはエントリーモデルのレインウェア、あるいは中綿入りの冬用防水防寒ジャケットでよく見られます。
2レイヤー(メンブレン+裏地)
ただ唯一、GORE-TEXの「SHAKEDRY」という新しい生地だけは特殊な構造をした2層構造の生地といえます。2レイヤーは2レイヤーなのですが、こちらは表地がない、つまりメンブレンがほぼむき出しになっており、その代わり裏地に快適さと耐久性・吸湿発散性を向上させるトリコット生地を貼りつけたという2層構造です。メリットは何よりも表地がないことによる軽さと透湿性の高さ、そしてメンブレンの疎水性をフルに活かした表地の持続的な撥水性の高さが挙げられます。一方でメンブレンがむき出しという意味で耐久性は明らかに低くなります。このタイプは短期間でも最も高いパフォーマンスが求められるマウンテンスポーツや、アスリートに適した構造といえます。
生地の構造(レイヤー)による特徴比較
種類 | 3レイヤー | 2.5レイヤー | 2レイヤー(メンブレン+表地) | 2レイヤー(メンブレン+裏地) |
---|---|---|---|---|
防水性 | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ |
透湿性 | ◎ | ◎ | ◯ | ◎ |
快適性 | ◎ | ◯ | ◯ | ◎ |
重量 | ◯ | ◎ | △ | ◎ |
耐久性 | ◎ | ◯ | ◯ | △ |
価格帯 | △ | ◯ | ◎ | △ |
ポイント3:防水性能 ~数字よりもジャケットの作り全体をチェック~
先ほど撥水だけではない防水ジャケットは雨をしっかりと防ぐと説明しましたが、実際には防水ジャケットの中でも、モデルによって防水性能に差があります。
その性能を示す基準の一つが、一部のモデルで公表されている「10,000mm」や「20,000mm以上」といた数値で表される生地の「耐水圧」という値です。これは、染み込もうとする水に対して、生地がどれくらいの水圧にまで耐えられるかというテストによって計測され、値は直径1cm四方の柱に水を入れていって、どれくらいの高さまで(水が染み込まず)耐えられたかかということを表しています。
ただこの数値は、あくまでもウェアの耐水性を示したにすぎず、これだけでそのウェアの防水性能全体が決まるわけではないということは覚えておく必要があります。耐水圧が高いことはもちろん有利ですが、表・裏生地の厚みや撥水性、ジッパーや袖口・フードの作り、シームテープの品質など、レインウェアの防水性にはさまざまな要因が影響を及ぼします。
そこでこのサイトでは耐水圧はあくまでも防水性能を評価する際の一つの目安として「最低限の水準をクリアしているかどうかが分かる」くらいに留めておくことをおすすめします。
例えば耐水圧の数値が10,000mm以上あれば、とりあえずアウトドア向けとしては合格です。それ以下であれば自然の中での豪雨に耐え続けるのは厳しい。ただ10,000mmという値はアウトドア向けの中では最低限。そこまで安心できるとは言えない可能性が高い。これが20,000mm以上あったならば厳しい長期の登山にも安心して使ると考えてよさそう(ただし他の作りがしっかりしていることが前提)。こんな感じで構えておけばよいと思います。
防水性については、耐水圧だけでなく撥水性の高さやフードが顔全体にフィットするかどうか、衿の高さ、ツバの長さ、袖や裾の密閉性など、生地の性能だけではなくウェア全体で雨に対するプロテクションの高さを考えることが重要です。
ポイント4:蒸れにくさ(透湿性) ~新しい流行「通気」するジャケットに要注意~
衣服内のムレを解消する機能である透湿性は、アウトドア向けレインウェアにとってなくてはならない重要な機能であることは先ほど説明した通りです。
うれしいことに、透湿性が高いからといってその分(価格以外で)何か妥協しなければならないことが出てくるということは特にありません。このため費用さえ許せば、より透湿性の高いレインウェアを選ぶのがおすすめ。安全性と快適性は間違いなく向上するでしょう。
ただ、マイペースのゆっくり山歩きが好きな人にまで必ずしもトップレベルの透湿性が必要かというとそこには疑問符が付きます。さすがに費用対効果の面からどんな場合でも高透湿モデルがいいとはいえません。
さらなる快適さを求めて、「透湿」の一歩先「通気」へ
トレイルランニングをはじめとしたより短時間での活動量の大きな新しいアクティビティの普及によって、優れた透湿性を備えたさまざまなタイプの新素材が続々と登場していきました。この「もっと透湿性を」という大きな潮流で、ここ数年とりわけ注目されているのが「通気性」を備えた防水ジャケットの進化です。
ここで分かりやすくするために、従来の防水透湿ウェアが蒸れを解消する仕組みについて触れておきます。衣服内の蒸れが外へ放出されるのは、水蒸気が温度の高いところ(=衣服内)から低いところ(=外側)へ移動する性質を利用しています。これは裏を返せば温度差がない状態(自分がクールダウンしている状態)では、水蒸気の移動が起きない = 衣服内の蒸れはほとんど解消されません。
対して、通気性を備えたレインウェアでは、温度差に関係なく常に空気が衣服の壁を通過できます(下写真)。
ここでは水蒸気の粒(水分子)だけでなく空気の粒(気体分子)まで自由に移動できるという意味で、当然これまで以上に汗抜けが良い(蒸れを解消しやすい)ことにはなります。Polartec NeoshellやTHE NORTH FACE FUTURELIGHT、東レ&Teton Bros. Täsmä、PERTEX SHIELD AIRといった、通気性を備えた新しい防水メンブレンはそれぞれ独自の方法でメンブレンの孔の大きさをコントロールすることで、衣服内の蒸れをこれまで以上に素早く解消することができます。
ちなみに、ここで「通気するということは、風が吹いたらフリースみたいにスース―しちゃうの?」という疑問が湧いてくるかもしれませんが、ひとまずそこは大丈夫。通気性があるといっても、服に当たった風が勢いそのままにスカスカと通過することはありません。その意味で防風性は依然としてあると考えてよいでしょう。
通気レインウェアの注意点
ではレインウェア界のゲームチェンジャーと期待されるこの「通気レインウェア」はこれからの”主役”となり得るのかというと、話はそう単純にはいきません。最新技術を搭載した通気レインウェアとて、それなりに見逃し難い特性を持っています。
防水通気メンブレンが従来の防水透湿メンブレンよりも多くの空気を通し、理論上蒸れにくいということは確かです。ただこのとき注意しなければならないのは、通気ということは、衣服内の温度差に関係なく常に空気が移動しするということです(基本的に温度の高い方から低い方にのみ気体が移動する防水透湿メンブレンとはここが違う)。したがって暑いときに外の冷たい空気が入ってきてくれるだけならまだいいんですが、暑くないときにまで外の冷たい空気が入ってきてしまいます。つまり防水通気ウェアは良くも悪くも「冷えやすい」ということ。
もちろん外気と衣服内の温度差、生地の厚み、また個々の素材の特性によって実感的な暑さ寒さは異なりますので、一概には言えません。ただ「通気レインウェアはより新しいからより良いものだ」と妄信するのは明らかに違います。通気タイプのレインウェアは素晴らしい可能性を秘めていますが、ぜひ同時にそのような性質があることを記憶にとどめておき、通気レインウェアを着るときには従来の防水透湿性シェルのときよりも暖かめの保温レイヤーを用意するなどの対応を考えておきましょう。
蒸れにくさも、数字より全体の作りが大切
透湿性の評価するための客観的な指標(テスト)も耐水圧のように存在してはいます(A-1法、B-1法、RET値など)。ただ外部の温度や湿度、気圧、そして着用者の体温などによって微妙に変わってくる「フィールドで着た時のジャケット自体の実際の蒸れにくさ」を正確に測ることは現実的には不可能。このため互いに「我こそは最も正確なり」と主張する複数のテストが存在し、各素材メーカーがそれぞれの見解で採用しているのが現状です。
スペックだけでウェア同士の蒸れにくさを客観的に比較することが難しいとすれば、我々はやはり数値は数値としてありがたく参考にさせてもらいつつも、あくまで蒸れにくさを判断する多くの要素のなかの一つとして考えるべきです。
そのウェアが蒸れにくいかどうかは、大々的に空気を入れ替えることができるベンチレーション(換気口)の有無、またウェアのなかでポケットの占める面積の広さなどによっても変わってきます。こうした生地自体の透湿性以外に、ぼくたちが確認できる要素も含めてチェックすると、より自分の求めるパフォーマンスの1着に出会うことができるはずです。
ポイント5:フィット感・動きやすさ ~試着して身体を実際に動かしてみる~
着たときのフィット感・肌触り・動きやすさは?
トレイルランで腕を大きく振る人はもちろん、本降りの雨で長時間着なければならない可能性は誰にでもあるわけですから、やはり服として着心地が良いかどうかはしっかりとチェックすることが大事です。トップブランドならばたいていの場合、立体裁断によって動きやすく、動かしたときも服が突っ張ったりしにくい仕立てになっているはずです。袖を通したときの全体的なフィット感、肩回りの窮屈感、そして必ず腕を大きくバンザイして裾がずり上がりすぎたりしないかなど確認するクセをつけましょう。ここ数年では生地自体が伸縮性を備えたストレッチ性のあるレインウェアが多くなってきました。ストレッチ機能を持ったモデルはスピードハイキングやトレイルラン、クライミングなど、動きの大きなアクティビティにはマッチする可能性が高いです。
ちなみに登山ではレインウェアは中に防寒着を着たりする場合が多いため、トレイルランなど防寒着を着るよりも体へのフィットを優先する場合を除き、すこし余裕があるくらいのサイズを選ぶのがセオリーです。
フードは調整し易いか、フィットするか
フードは雨のなかでしっかりと防水性を発揮するかどうかがまず第一。前述したように顎周りを十分にカバーし、ツバ部分も暴風雨に負けないよう十分な大きさと硬さとなっているものを選びましょう。
それに関連して重要なのがフィットのしやすさです。アウトドア向けレインウェアのフードは、ヘルメットの上から被れるように頭の大きさよりもかなり大きめに作られている登山向けタイプと、軽さ優先で頭の大きさに合わせたランニング向けの小さめタイプの2つがあります。小さいタイプでもフードの上からヘルメットは被れますがフィットし難い可能性があるので、ヘルメットをかぶる可能性があるならば必ずヘルメット対応の大きめフードタイプを選びます。
どちらであったとしても、フードは頭(ヘルメット)の形に合わせてサイズ調節ができることがベストです。さらにその調節のしやすさ、細かく調節できるかどうか、その結果自分の頭にフィットするかどうかを、必ず試着で調節し実際に首を振ってみてチェックします。
意外と盲点なのですが、ヘルメットの上からフードをかぶったときにサイズ感が合わず、頭の動きを妨げてしまうことが経験上よくあります。なるべくならばヘルメットとの相性も同時に試してから選ぶようにしましょう。
また、フードがジッパーで取り外せるものや、巻き込んで襟に収納できるものもあります。
ポイント6:重量 ~耐久性とのバランスを検討~
結局着ないで持ち運ぶだけ、ということもザラにあるレインウェアですので、もちろん軽いに越したことはありません。軽いは正義です。より薄くて軽く、丈夫な素材作りに始まり、ジッパーやシームテープなどのパーツなど、あらゆる部分で各社グラム単位での血のにじむような軽量化の努力がなされています。
ただ一般的には、軽量コンパクトにしていくことによって、防水・防寒性や耐久性・利便性は犠牲にならざるを得ません。どちらがより優れているというわけではなく、最終的にはシーンや目的、自分の実力に応じてどこまでプロテクションや利便性を犠牲にしてよいかどうかを見極めることが大切です。
ポイント7:ポケットその他の使い勝手
ポケットはその位置と数に注意
ポケットがあって不便という人はいないでしょう。アウターにポケットが付いていれば、頻繁に出し入れするものや貴重品などの収納場所として使えるので、あればあっただけ便利に決まっています。
ただレインウェアでのポケットは、その位置と数に関して注意が必要です。
位置に関して、左右のハンドポケットが普段使いのジャケットのように自然な(低い)位置に配置されている場合、普段は非常に使いやすい反面バックパックのヒップベルトやクライミングハーネス装着時に重なってしまいます。それを避けるためにあらかじめより高い位置に配置されているモデルがありますので、登山での着用を考えれば高めの位置にあるポケットを選ぶべきです(ただトレイルラン等、そもそもヒップベルトもハーネスも使わないという人はその限りではありません)。
次にその数。レインジャケットの中には、軽量化と透湿性向上のためにポケットを完全に省略してしまったモデル、胸ポケット1つのモデル、さらに左右のポケットのみ、胸&左右ポケットといったバリエーションがあります。激しいアクティビティでは胸ポケットのみか、またはまったくなしでも十分ですが、日常生活も含めた汎用性の高い場面で着用するのであれば、左右のハンドポケットが付いている方が便利です。
ただポケットが増えれば増えるだけ重量がかさみ、汗の抜けも阻害されます(通気性のあるメッシュの裏地がついたポケットの場合はそれも軽減されますが)。あればあるだけ便利なものの、不必要なポケットはないに越したことはありません。ウェアでなくてもバックパックやサコッシュなど、別の手段で代替すればよい分けなので、できる限りポケットは最小限で抑えられるとよいです。
もちろん、日常でも着るのに胸ポケットしかなかったら不便でしかありません。自分が利用するシーンに合わせて必要最低限の数・位置を選んでください。
収納袋要らずのパッカブル仕様のジャケット
しなやかでコンパクトな軽量レインジャケットのなかには、スタッフサック(収納袋)を使わないでパッキングすることができるモデルもあり、こうしたタイプのウェアを「パッカブル」仕様と呼んでいます(スタッフサックをよく無くす自分にとってはありがたい)。パッキング方法はいくつかありますが、ポケットを裏返して押し込んでいくタイプ(下写真左)と、畳んだボディをフードの中に包み込んでドローコードを絞ってまとめるタイプ(下写真右)の2つがよく見るパターン。どちらにせよ、少しでも無駄を省いて荷物の軽量化につながるこれらの特徴があればそれは大いに歓迎すべきです。
まとめ
レインウェア選びでチェックすべきポイントについてなるべく簡潔に語ろうと努力しましたが、(やはり)無理でした。これだけ長く語っても、まだすべてを語りつくしたとはとても言えないのがアウトドア雨具の世界。それだけ、レインウェアはアウトドアウェアのなかでも特に多様な機能を備え、最先端の素材と仕組みが詰め込まれた複雑でデリケートな分野です。テクノロジーは今でも進化し続け、各メーカーによる激しい開発競争が繰り広げられるアツいカテゴリでもあります。そんなハイテクと職人技が詰まったレインウェアを通じて、自分は山道具の奥深い世界を知りました。とっつきにくい世界ですが、これが皆さんの最適な雨具選びの助けになり、またアウトドアをより深く楽しむきっかけになってくれれば幸いです。それではぜひ、雨の山も楽しんで。