NEWS:『TRAIL OPEN AIR DEMO 9』で目撃した2023春夏シーズン期待のアウトドア・ギアまとめ
メジャーなアウトドアメーカーから小さなガレージブランドまで、話題の山道具や最新のトレイルランニング・ギアを一度にまとめて試すことができるイベント「TRAIL OPEN AIR DEMO(TOAD)」が3月31日に開催されました。いつしか春の風物詩としてすっかり定着したこの催しも今年でついに9回目。コロナの関係もあってここ数年は欠席してしまいましたが、今年は久々に参加することができました。
数年ぶりに訪れた青梅の永山公園グラウンドは、幅広い年齢層のランナーやたくさんの家族連れなど、1回目からは考えられないくらいの賑わいを見せていました。なお出展ブランドやイベント全体の傾向としては年々トレイルランニングの色が濃くなっている模様で、登山系があったとしてもそれは往々にしてスピードハイキング関連の道具がほとんど。第1回からの変遷と現在の活況とを考えると、アウトドア・アクティビティの人気勢力図がそのまま表われているのかもしれません。
感慨にふけるのはこれくらいにして、さっそく今年もイベントで出会った新しいブランドや期待のアイテムなどの胸熱ギアをまとめてみます。
目次
- TRAIL OPEN AIR DEMO 9 で見つけた2023シーズン注目ブランド・アイテム
- Paagoworks:RUSH 30
- Rab:Veil 6/Phantom Pull-On/Ionosphere 5
- ESS:JAPAN LIMITED Cerakote Series CROSSBLADE NARO
- UltrAspire:エピックXT 2.0/エピックXT 3.0
- Black Diamond:DISTANCE 1500/DISTANCE 22
- RIG:nohy/tetiva
- Topo Athletic:ULTRAVENTURE 3
- La Sportiva:JACKAL II BOA®
- BAUERFEIND:ゲニュTrain(膝サポーター)、その他スポーツサポーター
- OLENO:アルティメットシリーズ
TRAIL OPEN AIR DEMO 9 で見つけた2023シーズン注目ブランド・アイテム
Paagoworks:RUSH 30
今や日本を代表するアウトドアメーカーのひとつといっても過言ではないPaagoworksの代表作、ランニングパックのRUSHシリーズが今シーズン待望のフルリニューアル。人気のラインはトレイルランニング向けの10~20リットルモデルのようですが、ファストパッキング派の自分にとっては大容量30リットルモデルから目が離せない。初代のRUSH 28からかれこれ3世代見守り続けていますが、ランニングパックとしては大きめの容量にもかかわらず快適で走りやすい「高重心設計」や、無駄を省いて軽量ながら豊富で機能的な収納類など、当時にして非常にユニークなデザインから受けた衝撃は今でも忘れられません。ここ数年大流行の兆しをみせている「背負えて走れる」ベスト型バックパックの最前線はどんな景色を見せてくれるのだろう。今年必ずレビューするし、今から楽しみです。
Rab:Veil 6/Phantom Pull-On/Ionosphere 5
本物の人が使う本物の製品づくりのために、あらゆる面で妥協という言葉を知らない英国が誇るアウトドアブランド、Rabの勢いが止まりません。昨シーズンはスリーピングバッグやマットレス、アルパインパック等が日本初上陸を果たしましたが、ついに今シーズンはトレイルランニング・ファストパッキング分野にも本格参入を果たしました。超軽量で通気性とフィット感に優れたモノメッシュシャーシを採用したランニングベスト「Veil」や、90グラムという驚異的な軽さとRabお得意のスタイリッシュながら身体の動きを妨げずに機動力抜群な仕立ての良さを両立した(こちらは昨年からもありましたが)防水透湿プルオーバーシェル「Phantom Pull-On」など、研ぎ澄まされたデザインに最先端の技術が詰めこまれた上質な作りはさすがRab、初参入とは思えない完成度の高さを感じさせます。
昨秋から発売されているエアマットレス「Ionosphere 5」も興味深いモデル。内部にStratus™インサレーションと独自の反射フィルム「TILT」を搭載して軽量かつ高断熱性を実現するなど新しいギミックが満載。ちなみにこれは個人的な感触ですが、昨今の値上げ基調のなかで、ハイエンド・アウトドアブランドのRabがそれほど値上がりしていないのも嬉しい。今シーズンはRabのアイテムレビューしまくり確定です。
ESS:JAPAN LIMITED Cerakote Series CROSSBLADE NARO
ロッキー山脈を仰ぎ見る緑豊かなアイダホ州にあるESSは今回のTOADで初めて知ったアイウェアブランド。しかしよくよく聞いてみるとこれがとんでもないブランドでした。
ESS (Eye Safety Systems, Inc.)は、戦争から帰還した退役軍人の多くに発生する視力障害の問題を解決すべく1998 年に設立されたブランド。そのミッションは「世界で最もタフなアイウェアを作る」。主に米軍や特殊部隊をはじめ、警察、消防、レスキューといった分野で採用されるなど着実に実績を積み重ねていき、現在では米国防総省から戦闘用アイプロテクション(バリスティック アイウェア)として認定されるほど。そしてここ最近ではオークリー傘下となり、いよいよスポーツ部門でも積極的な製品開発が始められています。
過酷な環境で最高のパフォーマンスを必要とするモノづくりに長けたこのブランドが作るサングラスが半端なもののわけがありません。例えばアメリカ工業規格をはるかに上回る高解像度レンズには、内側に曇りにくいESS独自の特殊防曇コーティング、外側には傷の付きづらいスクラッチ加工と、両面で異なる加工が施されています。さらにフレームには防錆・防食・耐摩耗・柔軟性・耐衝撃・耐溶剤・耐薬品など、米国MILスペック基準をクリアした高耐久塗料/コーティング「Cerakote(セラコート)」を施すなど、笑っちゃうくらいにハイスペック。あの鏑木毅選手や上田瑠偉選手などがサポートを受ける理由もうなずけます。
UltrAspire:エピックXT 2.0/エピックXT 3.0
トレイルランニングでのレース用ベストパックで有名なUltrAspireは、先ほどのPaagoworksと同じように日本のブランドながら早くからベスト型のファストパッキング向けバックパックを作ってくれていたメーカーでした。その「エピックXTシリーズ」は順調にアップデートを続け、今シーズン「3.0」が登場。初代は25リットルで個人的にはやや容量が足りませんでしたが、2.0は30リットル、そして3.0に至っては35リットルと、長期のファストパッキングにも耐えられる軽量バックパックへと進化しました。大容量化にともなってロールトップクロージャーや背面フレームを採用、両脇にたっぷりと収納できるメッシュポケット「Fluidic Holster System」など、快適性や使い勝手を向上するチューニングがしっかりと入っています。元々アスリートの声をもとにした製品づくりを信条とするブランド、さすがの安心感です。
Black Diamond:DISTANCE 1500/DISTANCE 22
テクノロジー進化のスピードに合わせて常に熾烈な開発競争を続けるヘッドランプ市場は今年も熱い。登山をはじめスピードハイクやスクランブリングなど幅広いアクティビティを想定してデザインされたディスタンスシリーズの新作ヘッドランプ「DISTANCE 1500」は、瞬間最大1500ルーメンという大光量、省略されたリフレクター(反射板)によって可能となった薄型ボディ、頭部への自然なフィット感などいろいろな意味で画期的。発売は秋以降のようですが、今から待ちきれません。
そして軽量ながらフィット感と耐久性、機能性の高さなどその異次元の完成度で発売から多くのユーザーからの高評価を獲得したベスト型バックパック「ディスタンス」に22リットルモデルが登場(上写真最右)。ほんとにこの20リットル以上の大容量ベスト型バックパック市場は今まさに百花繚乱です。
RIG:nohy/tetiva
小さな新興アウトドアブランドは手放しで応援したくなりますが、やはり日本発ならばその思いはなおさら。この日本生まれの新しいフットウェアメーカーが作る垢ぬけたアウトドアサンダル「nohy」あるいは「tetiva」のコンセプトはずばり「登山に携行してテン場で履ける薄型リカバリーサンダル」。いいよこれ。確かにテントサイトでリラックスするためにリカバリーサンダルを履きたい気持ちはすごく分かるし、そして普通のリカバリーサンダルはかさ張るから、血行促進機能は最低限保ちつつできる限り薄くコンパクトにするという方向性もばっちり。さらには脱ぎ履きもしやすい作りにしてあったり。とにかく登山をやる人が作っている、ということがよく分かる細かな気遣いにあふれています。
Topo Athletic:ULTRAVENTURE 3
この日本人には聞き慣れない名前のブランドは、元Vibram USAのCEOであの「FiveFingers」の誕生にも関わり、自身も熱心なランナー・アスリートであったTony Post氏によって2013年に立ち上げられた新しいシューズメーカー。足の形状を尊重して自然な動きを最大限に高めてくれるようなシューズづくりを目指してこの10年で急成長を遂げました。
そのベストセラーUltraventureシリーズの3代目はより軽量になり、潤沢なクッション、ゆとりのある前足部のフットボックス、それでいてしっかりとホールドしてくれるフィット感等によって誰もが負担の少ない快適な走り心地を実現する、幅広いランナーに対応するモデル。見晴らしのいいマイルドな稜線をこのシューズで走ったら気持ちいいだろうなと思わせてくれるラグジュアリーな一足です。
La Sportiva:JACKAL II BOA®
相変わらず常に攻めの姿勢を緩めず、それでいて非常にスキのない作りが見事なアウトドアシューズメーカーのスポルティバが今シーズンリリースした「ジャッカル」シリーズ最新作は、見た目のインパクトも性能も飛びぬけています。スピードとロングディスタンス、双方に求められるエッセンスを高いレベルで兼ね備えたハイエンドシューズは、反発力と衝撃吸収力を両立したミッドソールを備え、多様な地形とタフなシーンに対応。なにより心地よいフィット感のアシンメトリーなアッパーには2つのBOAレーシングシステムを配置。これによって締め具合を状況に合わせて細かくアジャストすることができ、機械的なシューレースの弱点を克服しているという意欲作です。
BAUERFEIND:ゲニュTrain(膝サポーター)、その他スポーツサポーター
ドイツで医療用コンプレッションストッキング作りからスタートし、現在まで100年近く続く運動器系医療機器メーカー、BAUERFEINDも今回初めて出会ったブランド。医療用からスポーツ用までさまざまな部位に対応した多様なサポーターを提供していますが、特に膝サポーター「ゲニュTrain」に感動しました。膝をきめ細かく適切に固定してくれる独自技術のシリコンパッドと関節を支えるポリウレタン製ステー、通気性と快適性を備えたニットなど、価格は高めながら非常に細部にわたって突き詰められた合理的な構造がただならぬものを感じさせてくれます。夏には膝が、冬には腰がやばい自分は試さずにはいられませんので、これも近いうちにレビュー予定。
OLENO:アルティメットシリーズ
OLENOは、古くから靴下製造の街として知られる奈良県・広陵町で2017年に生まれたソックスブランド。この「アルティメット」シリーズに代表されるスポーツソックスは、コーデュラファブリックなどの最先端の繊維を採用し、熟練の職人たちが最新のイタリア・ロナティー社製靴下丸編機を駆使して、一つ一つ丁寧に作られています。新たな編機を導入するなんて、いち工場にとってはまさに命運にかかわる問題であるわけで、これだけでも「ちょっとアウトドアが流行っているからやってみた」といった軽いノリではないことが十分に伝わってきます。そんな彼らの本気ソックスを履いてみたくないわけがありません。