
【忖度なしの自腹レビュー】軽くてコンパクト、しかも暖かい。HYPERLITE MOUNTAIN GEAR「20-DEGREE QUILT」は夏から冬まで使えるキルト型シュラフの最高峰
ひと昔前までは山岳地帯で寝るためのシュラフ(寝袋・スリーピングバッグ)はマミー型が主流でした。現在でもマミー型の人気は高いものの、より軽さを求めて設計されたキルト型シュラフのラインナップも増えてきています。
今回はUL(ウルトラライト)を語る上ではずせないブランドHYPERLITE MOUNTAIN GEAR(ハイパーライトマウンテンギア)のキルトシュラフ「20-DEGREE QUILT」をフィールドでテストしてきましたのでレビューしていきます。20-DEGREE QUILTは「保温力」「軽さ」「コンパクトさ」の三拍子が揃った文句のつけようがないシュラフでした。シュラフから出て行動をはじめる時間になったとしてもいつまでも入っていたい、そんなシュラフです。
目次
HYPERLITE MOUNTAIN GEAR 20-DEGREE QUILTの主な特徴
HYPERLITE MOUNTAIN GEAR(以下HMG)はロングトレイル発祥の地、アメリカで、軽量で耐久性に優れたバックパックやテントなどハイキングギアを扱うブランドです。そのHMGが作る20-DEGREE QUILTはDWR加工(耐久撥水)された7Dマイクロリップストップナイロンに、同じくDWR加工済みの1000FPグースダウンが封入されたキルト型シュラフで、サイズはショート、レギュラー、ロングをラインナップし、ユーザーの体格に合わせてチョイスすることができます。
20-DEGREE QUILTは、使用温度が-7℃と高い保温力を誇り、高品質なグースダウンが使用されていることと、7D(デニール)の極薄生地を採用、フードやジッパーを廃することで重量を570gに抑えられた携帯性に優れたキルト型シュラフです。
背面部にはスリーピングマットを固定できるように2本の専用ストラップが付属し、寝ている時のマットとのズレを予防することができます。さらに機密性を高めたい時には外側に設けられた4つのループにバンジーコードなどを取り付けることで機密性が高くなり背中への冷気の侵入も防ぎます。
20-DEGREE QUILTは最高品質の素材が使われ、保温力と携帯性のバランスのとれており、3シーズン(低山なら通年)のハイキングシーンやファストパッキング、ロングディスタンストレイルでのスルーハイクに活躍してくれるキルト型シュラフです。
おすすめポイント
- ふわふわで気持ちのいい1000FPのグースダウンで抜群の保温力
- 暑い時の換気がしやすいキルト型
- 高い保温力にも関わらず軽量・コンパクト
- スリーピングマットに固定することができるループ付き
気になったポイント
- 価格
- 出入りには慣れが必要
- ダウンの偏りが気になる構造
- 寝返りで冷気が侵入してくる
- 専用の収納袋は付属してない
主なスペックと評価
項目 | HYPERLITE MOUNTAIN GEAR 20-DEGREE QUILT |
---|---|
重量 |
|
素材 |
|
内部の長さ |
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肩幅 |
|
ダウン量 |
|
対応温度 | 20°F/-7℃ |
Outdoor Gearzine評価 | |
快適性 | ★★★★★ |
断熱性 | ★★★★☆ |
重量 | ★★★★★ |
収納性 | ★★★★★ |
使い勝手 | ★★★★☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
多用途性 | ★★★★☆ |
20-DEGREE QUILTの使用インプレッション
ふわふわで気持ちのいい1000FPのグースダウンが抜群の保温力
20-DEGREE QUILTには1000FPのグースダウンが使用されていて、これがとにかく気持ちがいい。入った瞬間にしなやかなダウンに包み込まれ、抜群の保温力を発揮してくれます。1000FPというダウンはこの記事を作成した時点で市場に出回っているダウンの中で最高クラスの数値。(フィルパワーとはダウンの性能を評価する基準の一つで、一定の条件下でダウン30gの復元力を表したものです。FPの数値が大きほど性能が高く、同じ重量で多くの空間を満たすことができます。)

1000FPの極上ダウンに7Dの極薄マイクロリップストップ生地が使用されていることもしなやかさを助長している
20-DEGREE QUILTの使用温度はマイナス7℃です。封入されているダウン量は398gで、ある程度シュラフを使ったことがある人ならばちょっと疑いたくなるような数値です。一般的に機密性の高いマミー型のシュラフで同等のダウン量が封入されたモデルと変わらない使用温度の20-DEGREE QUILT。実はキルト型のシュラフはマミー型と変わらない保温力を備えていることが多く、キルト型のシュラフとマミー型との大きな違いとしてフードや背面部が廃されていることにより、フードや背面で使用していたダウンを胴体部、足部など断熱が必要な場所により多くのダウンが配置することで最大限の保温力を発揮します。そして最高品質のダウンを使用することで保温力が高められています。(キルト型のシュラフはヨーロピアンノームによる検査機構での測定ができないため、使用温度の数値は各社の独自の算出によるものになり、参考値として考えるほうがよい)
ダウンはどんなに高品質なダウンであっても膨らまなければ保温力は発揮できません。スリーピングマットと接地している箇所はダウンが潰れてしまっているため保温効果が発揮できないことから、「だったら取り除いてしまえ」と背面部がないシュラフが20-DEGREE QUILTをはじめとするキルト型シュラフです(キルト型には背面があるタイプもあります)
付属のアタッチメントストラップでスリーピングマットと固定ができる

付属のストラップを取り付けることでマットと固定が可能
背面の開いたキルト型シュラフはスリーピングマットの上にいることが前提。マットからずれ落ちてしまうと保温力は一気に低下します。背面のバックルに取り付け可能なゴムストラップが2本付属してきますのでこれを使うことでスリーピングマットと固定し、ズレを防ぐことができます。
付属のストラップではスリーピングマットとの接続部はどうしても隙間ができてしまいます。低温環境での使用時などさらに機密性を高めたい時には外側に4つのループが付いているため、バンジーコードなどを使いスリーピングマットと固定することでしっかりと体とシュラフとを密着させることも可能です。

より機密性を高めたいときは外側についたループにバンジーコードなどを取り付けることでスリーピングマットと固定できる
実際にフィールドでのテストではマイナス5℃ほどの環境で寒さを感じずに過ごすことができました。フードレス、背面の開いたのキルト型ということもあり、頭部、背面の対策はマスト。地面と設置する背面はエアマットにしっかりと断熱してもらい、ダウンジャケットの着用の上、ニット帽を被るなど対策をすることでおおむね本体に表示されている使用温度で間違いなさそうです。ただし、体感として使用温度に設定されているマイナス7℃は下限温度として考えておいた方がよさそうです。

キルト型ながら使用温度はマイナス7℃とハイスペック
フットボックスも立体製法になっていて、しっかりとダウンが封入されていることで足元もしっかりと保温してくれます。テストではカバーは使用しませんでしたが、環境に合わせてウェアの着用に加え、カバーやインナーを併用することで0〜マイナス5℃ほどの環境であれば積極的に使える手応えを得ました。

しっかりとダウンが封入された立体縫製のフットボックス
昨今では泊まり方も多様化し、自然の中で泊まる手段はテンドだけではありません。筆者は寝る際にハンモックを用いることがありますが、ハンモックとキルト型シュラフは相性が良いです。ハンモックは空中に浮いた状態なので、マミー型のシュラフに入ろうと思うと想像以上に大変(出る時も同様)ですが、キルトであれば横になった後にかけるだけなので楽でした。

ハンモックとキルトは相性がいい
ダウンの偏りが発生しないか気になるところ
抜群の保温力ですが、気になった点としてはシュラフ上部の構造です。縦に長い構造になっており、公式ページによれば所定の場所から動かないようロックダウンされていると言うことですが、使用によってダウンの偏りが発生しないかは気になったポイントでした。

シュラフに光を当てて、裏側から撮影。透けているところはダウンがないコールドスポット
20-DEGREE QUILTに限らず、どんなダウンシュラフでもダウンの偏りは発生するため、使用前にはよく慣らしてダウンの偏りをなくしてから使うことでコールドスポットの発生を防ぐことができます。
暑い時の換気がしやすいキルト型
キルト型は機密性が低く、冷気の侵入をブロックすることが課題になりますが、言い方を変えると換気がしやすく、暑い時のコントロールはしやすいのはメリットといえます。

マミー型と比較し、機密性は低いが暑さや蒸れへの調節はしやすい
そもそもキルト型のシュラフをチョイスするシーンは厳冬期の雪山など過酷な環境での使用ではなく、それよりはもう少し優しい環境ではないでしょうか。例えば初夏〜秋の使用や、冬でも雪の降らない地域などなど。そういった地域では寒さに凍える頻度よりも、暑さや蒸れを感じ、ウェアをコントロールしたりすることのほうが多い筆者。キルト型のシュラフは言ってしまえば布団のように使うこともできますから、蒸れにくく、快適に眠ることができます。
出入りには慣れが必要

背面のバックル。小さいので慣れないうちは接続に少し苦戦しました
ジッパーがなく、背面に3箇所の接続パーツが付いているのみの20-DEGREE QUILT。初めてキルト型を使う人にとって出入りには少し慣れが必要。シュラフに入った状態で、後ろにある小型のバックルをとめるのは手強い作業。使う人を選ばずだれでも使えるマミー型に比べるとややクセの強いキルト型は経験者向けと言えます。
寝返りで冷気が侵入してくる
首元までしっかりと覆うことができる20-DEGREE QUILTですが、睡眠中の「動き」による冷気の侵入はゼロにできません。寝返りを打つ際など動くことで隙間が生まれ、冷気が侵入します。これがそこまで寒くない環境であればよい換気になるのですが、低温環境で冷気をシャットアウトしたい時には厄介な問題になります。
特に寝ていて横向きになった時にシュラフをそのままにしておくと背面部から冷気が侵入し放題。慣れてくると寝返りの際に冷気の侵入を最小限にすることができるようになりますが、低温環境での使用時は確実にスリーピングマットと固定し、できるだけ冷気の侵入をブロックできるよう対策が必要です。
高い保温力にも関わらず軽量・コンパクト

あらかじめ収納袋の重量を抜いて計測
20-DEGREE QUILTは本体重量が570g(レギュラーサイズ)。マイナス7℃まで使うことのできるシュラフとしては間違いなく最軽量クラスといえる軽さと言えるでしょう。マミー型で同等の対応温度のシュラフは800〜900gほど。両者は構造が違いますし、汎用性なども考えると一概に比較することはできませんが、使用温度と重量だけを比べてみると20-DEGREE QUILTの軽さは際立ちます。
シュラフは装備の中では1、2を争う重たく大きいアイテム。薄手のシュラフをチョイスすれば軽量化できますが、寒さへのリスクが高まります。軽量化を図り薄手のシュラフをチョイスした挙句、寒さに耐える夜は過酷すぎますから(体験済みです)
軽くて、小さくて暖かい。そんなシュラフへの悩みを解決してくれているのが20-DEGREE QUILTです。
保管用のストレージバックは付属してるけど、収納袋は付属していない

付属品のストレージバッグ。ダウンを痛めずに保管できる
購入すると保管用のストレージバックが付属してくる20-DEGREE QUILTですが、携帯用の収納袋は付属していないためオプションで購入するか、別で用意する必要があります。
圧縮することでかなり小さい収納袋に入れることもできますが、過剰な圧縮はダウンにストレスを与えてしまいますので、少し大きめの収納袋を用意したほうが収納もしやすくおすすめ。筆者は10Lほどの容量のバックに入れて使っています。

500mlのペットボトルとの比較。かなりコンパクトにできる
まとめ:機能面では尖ったキルト型も使い方次第で便利に使用できる!
フードやジッパーが廃され、背面部が開いた形状のキルト型シュラフは万人にとって使いやすいとは決していえない尖ったアイテムですが、それで得られるのは「身軽さ」です。
シュラフは背負う装備の中でも1、2を争う重たい道具。シュラフを軽量化することによる総重量への影響は大きく、道具の特性を理解し、自身のレベルに合った使い方ができる人にとって、この「身軽さ」はより自由に、より遠くまで歩くための力添えになってくれるでしょう。
シュラフの軽量化で多くの失敗を繰り返した筆者ですが、20-DEGREE QUILTは無雪期の山でのハイキングシーンで自信をもっておすすめできるシュラフでした!
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Yosuke(ヨウスケ)
不便にならない程度に「できるだけ軽く」をモットーにバックパックひとつで行動する人。
春から秋にかけては山奥のイワナを追いかけて渓流へ釣りに。 地上からは見ることのできない絶景を求めて山を歩き。 焚火に癒されたくてキャンプ。 白銀の山で浮遊感を味わいにスノーボード。
20年以上アウトドアを嗜み、一年中アウトドアを自分流に楽しむフリーランスのライター。数十以上のアウトドア系WEB媒体での記事執筆経験をもとに、自身の経験や使ってみて良かった道具を発信していきます。