Review:OSPREY Atmos AG 65 ようやく出会った”着る”バックパック
25年目にして初めて出会う、想像を超えた快適さ
背負うのではなく、着るもの――。バックパックの本質を表現したあまりにも有名な一言ですが、実際のところ、この言葉に対してある種の迷いはありました。確かにバックパックのフィット感は目覚ましい進化を続け、このことは概念としては理解できるものの、感覚的な部分では「装着する」から「纏う」へのシフトにまだ越えられない壁があると感じざるを得なかったのです。
しかし、それはコイツに出会うまでの話。大げさでも何でもなく、アトモス AG は紛れもなく”着る”感覚を体現してくれるバックパックです。
今期大幅にリニューアルしたアトモスシリーズは、革新的な背面システム「Anti-Gravity サスペンション」を採用し、50L以上の中型バックパックのなかでも類をみない快適さを手に入れました。その衝撃もさることながら、相変わらずオスプレーらしい、実用的で抜け目ないディテールの数々。実際に使ってみて分かったトンガリゆえの気になる部分など・・・。それでは早速レビューしていきます。
詳細レビュー
アイテム名(参考価格)
OSPREY(オスプレー)Atmos(アトモス) AG 65(参考価格:31,320円)
主なスペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
素材 | メイン=100D×630Dナイロンドビー アクセント=210Dハイテナシティナイロン ボトム=420HDナイロンパッククロス |
カラー | シナバーレッド(RD) アブサングリーン(GN) グラファイトグレー(GY) |
サイズ/背面長 | S=40.5~48cm、M=46~53cm、L=51~58.5cm |
容量 | S=62リットル、M=65リットル、L=68リットル |
重量 | S=1.92kg、M=1.98kg、L=2.04kg |
バリエーション | 50Lモデル |
女性向けモデル | オーラAGシリーズ |
アクセス | トップ・ボトム |
ハイドレーション | ◯ |
レインカバー | × |
ポケット | ストレッチメッシュサイドポケット(デュアルアクセス) ジッパー付ヒップベルトポケット フロントストレッチメッシュポケット リムーバルスリーピングパッドストラップ |
その他 | フラップジャケット ストウオンザゴートレッキングポールアタッチメント |
快適性 | ★★★★★ |
安定性 | ★★★☆☆ |
収納性 | ★★★★☆ |
使い易さ | ★★★★★ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★☆ |
価格 | ★★★☆☆ |
総合点 | ★★★★☆ |
ここがスゴイ!
唯一無二の背負い心地
オスプレーの新しい背面システム「Anti-Gravity サスペンション」は、「反重力」というそのネーミングが示すとおり、革新的な技術によって荷重を均等に分散化し、あたかも重さを忘れさせてしまうほどの快適な背負い心地を可能にしています。その衝撃的な快適さのヒミツは、背中・肩・腰と身体との接触面全体を覆う弾力性と柔軟性に富んだメッシュ面(写真)にあります。
試着してみて誰もが驚くのは、まず腰部分をしっかりと挟んでくるヒップベルトの高い反発力。さらに肩から腰にかけてこのメッシュ面が文字通り身体に纏わりつくようにピッタリとフィットしてくる、今まで誰も感じたことのないフィット感。まるで柔らかいメッシュシャツのように隙間なく背中にフィットしてくるこの感覚はまさにバックパックを”着ている”感覚そのもの。
もちろん背面長の調節可能。さらにヒップベルトの長さも広範囲に調節可能で、さまざまな体型に合わせて理想的なフィッティングを可能にしています。
素晴らしく快適な通気性
快適な背負い心地をさらに加速させるのが背面の空間をはじめとした抜群の通気性。
ショルダーベルトは肉抜きされたスポンジ状で通気性を確保。ヒップベルトと腰の間にもフィット感を保ちつつ、適度な空間が生まれるように設計されています。
トレッキングに最適な便利機能
今時のトレッキングスタイルに合った便利な機能がこれでもかと言うほどしっかり備わっています。まずはオスプレーおなじみの、トレッキングポールを簡単に収納可能なアタッチメント。
ストレッチ素材のサイドポケットは横・上の2方向に口が開いており、さまざまなサイズのウォーターボトルをすぐ出せる位置・向きで収納可能。
スリーピングパッドやテントなどを装着可能なストラップ(取り外し可能)で収納力も抜群。
トップリッド(天蓋)は取り外し可能で、荷物の少ない時には天蓋を外した状態でも蓋が閉まるフラップジャケットが標準装備されています。
ムダを省いた軽量性
これだけの完成度高く多機能でありながら 2kg を切る重量は、さすがスルーハイクの国、アメリカで生まれたバックパックです。
ここがイマイチ
重荷での安定感
異次元の背負い心地で驚くほど快適に荷物を運ぶことができるアトモス AG ですが、唯一の弱点と感じられたのは限界近くまで重荷を背負った時の安定感。パッキング重量が 20kg 位になってくると、他のバックパックに比べて背中の空間分だけ重心が後ろ側にあるためか、身体を常に後方に引っ張られている感覚があります。またちょっとしたよろめきで横ブレの力が他よりも強く感じられ、その点で重荷になればなるほど安定感が低下するのは否めません。ただし 15kg 程度までならば最強であることは間違いありません。
山岳向けのアタッチメント
基本的なコンセプトは北米で主流のスルーハイク(長距離・長期間のハイキング・トレッキング)であることから、アルパインクライミングに必要なギアを想定したアタッチメント類(登攀具やロープ、雪関係のギアを収納するのに便利なストラップやループなど)は期待できません。
レインカバーは別売り
標準装備されていればお得なレインカバーは別売りです。
まとめ:どんな活動におすすめ?
おさらいになりますが、アトモス65 は抜群のフィット感と通気性で、この容量のバックパックの中ではこれまで経験したなかでもトップクラスの背負いやすさ・快適性を実現。その他の機能・重量・コスト面とどれをとっても高いクオリティでほとんどのハイカーたちにとって素晴らしい選択になるでしょう。これらの機能が最も活きるシチュエーションといえば、春~秋シーズン、テント泊でのハイキング・トレッキングが考えられます。特に通気性の高さを実感する真夏の長期トレッキングには大活躍すること間違いなし。そしてシンプルかつ多機能、バランスのとれた使い勝手は長期旅行やバックパッキングにもピッタリ。
ただし、この快適さはすべての登山のスタイルに対応してくれるものではありません。20kg を超える重荷でアクティブに動くスタイルや、本格的な登攀に使いたいという場合には、アルパイン向けバックパック(ミレーやドイターやマムートなど)の方が良い選択になる可能性が高いです。
穏やかな気候と傾斜で長距離を長期間、なるべく軽量で、そしてできる限り快適さも譲りたくないという欲張りスタイルを志向するハイカーには是非ともおすすめです。