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マットと組み合わせて0℃まで対応可能でわずか330グラム。超快適ダウン寝袋 Rab Mythic Ultra 120 Modular レビュー

1981年に登山家である自身の経験を活かした寝袋製作から始まったRabは、今でも「マスターオブインサレーション(中綿の達人)」として、フィールドで真に実用的な寝袋づくりにかけて誰にも負けないというプライドを誇っています。その証拠に2020年に発売された「Mythic Ultra」シリーズは、現在でも重量対断熱性において最軽量クラスの完全マミー型ダウンシュラフであり、その飛び抜けた技術力の高さと独創性は疑いようがありません。

そんなRabの最軽量シュラフシリーズ「Mythic Ultra」に、今シーズンまた一段と軽くなったにもかかわらず従来同様の低温下に耐えられる驚きのダウンシュラフ「Rab Mythic Ultra 120 Modular」がリリースされました。当サイトでは4月の低山ハイクでこの寝袋と、前回レビューしたRabの新作マットレス「Rab Ultrasphere 4.5」とを組み合わせてテント泊してみることができましたので、早速そこでのインプレッションをお伝えしていきます。

Rab Mythic Ultra 120 Modular の主な特徴

Rab Mythic Ultra 120 Modular はスリーピングパッドと組み合わせて使用することで、最小限の重量で低温環境でも快適な睡眠を可能にしたダウンスリーピングバッグ。背面のスリーブで寝袋をマットレスに固定することができるため、背中部分の中綿と頭部を省略し、コールドスポットを防ぎつつ大幅な軽量化が実現。さらに中綿には非常に高品質な900FPヨーロピアングースダウン(撥水加工済)を採用し、バッグの上部と脚の下側には独自の熱反射性TILT(サーモアイオニックライニングテクノロジー)を配置することでトップクラスの重量当たり断熱性を可能にしています。その結果、同社のUltrasphere 4.5 と組み合わせると合計 700g という軽さでありながら0°C※ までの下限温度対応を達成(※測定はRab独自基準による)。最小限のサイズに妥協のない機能性と快適さを詰め込んだMythic Ultra 120 Modular は、数日にわたるハイキングやファストパッキング、アルパイン、沢登り、バイクパッキングなど、幅広くライト & ファストなアドベンチャー全般に最適です。

お気に入りポイント

  • 驚くほど軽量コンパクト
  • R値4以上のマットと組み合わせて0℃まで対応する高断熱性
  • 窮屈感皆無な十分に広い横幅
  • 寝返りをうってもズレにくい背面のマットスリーブ
  • 折りたたんだ衣類等を入れられる枕スリーブ

気になるポイント

  • 短く小さなジッパーは噛み込みやすく、(斜めになっていて多少入りやすいものの)出入りが億劫
  • 暑くて蒸れる時の換気が難しい
  • 対応温度にしては高めの価格

主なスペックと評価

アイテム名Rab Mythic Ultra 120 Modular
適応身長185cm
収納サイズ16 × 32cm
生地素材
  • 表地:Atmos™(27gsm)10Dリサイクルナイロン フルオロカーボンフリーDWR耐久撥水
  • 裏地:TILT(サーモ・イオン・ライニング・テクノロジー)Atmos™10Dリサイクルナイロン(28gsm)
断熱素材900FPヨーロピアングースダウン ニクワックス・フロロカーボンフリー撥水ダウン(120g)
公式重量330g
公式下限温度0℃ ※Rab独自のスリープ制限温度基準による
付属品
  • 圧縮ロールトップ収納袋
  • 保存用収納袋
評価
快適性★★★★★
断熱性★★★★☆
重量★★★★★
収納性★★★★☆
使い勝手★★★☆☆
耐久性★★★☆☆

詳細レビュー

デザインと重量:快適さを失わないギリギリまで無駄を極限までそぎ落とした快適かつ軽量コンパクト設計

Mythic Ultra 120 は一見すると普通のマミー型シュラフと変わらないようだが、細部で思い切った削減がなされている。

まず特徴的なこの寝袋のデザインから見ていきます。一見すると一般的な登山用寝袋のようないわゆる「マミー型」に見えますが、実際には細かいところでマミー型とは異なる構造になっています。

ちなみにマミー型はかつて、普通の布団(四角い形、封筒型とも呼ばれる)に比べれば形状的に無駄を省いたフォルムとして認識されていましたが、ここ数年、敷布団の役割をする「マットレス」の方がメキメキと軽量かつ高い断熱性へと進化したため、このマミー型ですらある意味でまだまだ省略の余地がありとして、一部の超軽量ハイカーたちによってスリーピングバッグはさまざまな改善(軽量化)が図られてきました。その過程で生まれたのがシーツのような「キルト型」寝袋であったり、足からお腹までの長さしかない「ハーフサイズ」寝袋だったりします。

このMythic Ultra 120 Modular の構造もおおむねその流れを汲んだものであり、マットレスに任せられる部分はできる限り省略してしまうことで、その分スリーピングシステム全体として軽量コンパクトにする、というのがこの寝袋のコンセプトです。基本的にはマミー型のシェイプを保ちながら、身体の重みでロフトが潰れてしまう箇所、つまり背中部分の中綿を省略し、さらに肩より上の頭部はフードごと省略されるという、「疑似マミー型」とでもいうべき構造になっています。

スリーピングパッドとの併用を前提としているため、寝袋の背中部分には中綿が入っていない。

寝袋をマットに固定してコールドスポットを防ぐスリーブが秀逸

このとき、寝袋自体はマットスリーブと枕スリーブによって固定されているため、上下・左右どちらにもズレたりすることはありません。つまりこの背中の薄い部分は、たとえ寝返りを打ったとしても横(上)を向いてしまうといったことは起こりませんので、冷気が当たる心配なし。

背中部分に必ずマットレスがくるよう、寝袋とマットレスを連結・固定するスリーブがついている。

また実際に寝てみると分かるのですが、寝ている間身体をいくら動かしてもシュラフがきちんとマットの上に固定されて動かないことで、マットから身体がはみ出てしまうといったこともなくなり、寝心地がめちゃくちゃ良くなります。

実はこれと似たような仕組みは日本のULメーカー、FREELIGHT が作った寝袋「FREELIGHT Wrapta3.5」ですでに体験したことがあり、そのころから密かな個人的お気に入りポイントでした。この「スリーブでマットと寝袋を固定する」という仕組みは本当に快適なので、ここはぜひ声を大にして評価しておきたい。

背中部分の中綿が省略されているといっても、「キルト型」のようの背面全体が省略されているのと違って、Mythic Ultra 120 Modular は下半身部分の裏側にも中綿が詰められているため、足を曲げたりして空間ができたとしてもここがスース―することはなく、また下半身がある程度自由に動かせるのが気持ちよくもありました。

中綿が省略されているのは背中部分のみで、下半身には360度中綿が入っており、サイドスリーパーにも優しい。

幅広で寝袋の中でも動きやすい快適シェイプ

自分は過去に、ギリギリまで重量を切り詰めたいがために横幅までもかなり狭くして非常に窮屈になってしまっている残念なシュラフを買ってしまった経験があります。このことから軽さをアピールする寝袋に関してはいつも実際に寝てみるまではその価値を信用しないようにしていますが、この寝袋に身体を入れてすぐ、その絶妙に洗練された快適さにひと安心しました。重さを感じない上質で暖かい羽毛が、身体を締め付けることなく動きを妨げず、かといって空間を開けすぎることもなく優しく包み込んでくれます。

服を詰めて枕になる枕スリーブが便利

頭部は丸ごと省略されているが、スリーブが袋状になっており、ここに余った衣類等を入れて枕にすることができる。

頭部にある固定スリーブは、袋状になっており(上写真)、ここに余っている着替えやタオル等を詰め込んで枕にすることができます。枕はあればあったで快適なのは確かですが、荷物を増やしてまで持っていくことを躊躇しがちなのでかなりありがたい仕様です。

頭部のスリーブに防寒着を入れたら、ちょうどよい枕になった。

そぎ落とされたジッパーに関しては、軽さはいいけど使い勝手はやや残念

徹底的に無駄を省いた構造は、ジッパーなどの細かいパーツ部分でも徹底されており、胸元までしか開かない非常に短いデザインを採用。

軽量化のため可能な限り短くなった出入口のジッパー。少しでも出入りしやすいように斜めについている。

メーカーによると「出入りが簡単で、夏の夜でも十分な通気性が確保できるよう斜めのジッパーを選択しました」とありますが、確かに斜めのジッパーは縦向きよりも出入口は広がるものの、やはりそれでも限界があり、出入りの際の多少の窮屈感は否めません。またジッパーのパーツサイズも小さいため操作しやすいわけでもなく、生地の噛み込みもしばしば起こってしまいました。

胸元で換気しやすいよう、両端から開閉可能なダブルジッパー仕様。

またジッパーが短いということは空気の出入りもしにくくなり、これでは夏場など暑い時期に中が蒸れたときが気になります。ボックス構造よりも暖気が抜けやすいステッチスルーのバッフル構造、ダブルジッパー仕様で暑さに合わせて通気性の確保ができるあたりの微調整はさすがですが、それでもあと一歩足元の底部に少しでも換気できるジッパーがあればと若干悔やまれる部分です。

断熱性:最高品質のグースダウンと熱損失を最小化するTILTによって、軽量ながらも保温性は高い

本体の生地は10デニールという極細糸のリサイクルナイロンAtmos™。しっかりと密に織られて耐久撥水加工済み、耐久性を失なわずに極めて薄手軽量な作りになっています。封入されている中綿には、環境に配慮された最高品質の900FP RDS認証のヨーロピアン・グースダウンを、独自開発の「TILT(サーモ・イオン・ライニング・テクノロジー)」裏地で挟み込んだことよって、最小限の重量で最大限の保温性を提供。おまけにNIKWAX加工済みだから、湿気や濡れにも強いと至れり尽くせり。

この「TILT」裏地は、ここ最近のRab の超軽量ダウンシュラフやダウンジャケットにはおなじみなりつつある、優れた重量当たりの断熱性を備えた生地で、メタリックな風合いが目印。

繊維1本1本をチタンでコーティングし、通気性を損なわずに熱損失を抑えた独自のTILT裏地。

TILTは特殊な技術によって繊維1本1本をチタンでコーティング。これによって生地自体の通気性は損なうことなく、放射熱を衣服内に反射させ、熱損失を最小限に抑えることができるという仕組み(Rabによると、平常時と比べて放射熱損失を最大30%低減)。つまり同じ量のダウンでも、この生地であるかないかによって理論上暖かさが3割も違ってくるということ。

試しに4月のテント泊(約5℃前後)で、R値4.3のマットレス「Ultrasphere 4.5」と組み合わせて寝てみたところ、寝袋に入るとすぐに内側から発熱してるのではないかと疑ってしまうほどすぐに内部に温もりを感じることができ、高断熱マットレスのおかげで床からの冷気もまったくなし。お世辞にも潤沢とはいえないダウン量にも関わらずその夜はずっと十分に快適な暖かさが得られていました。単体でわずか330グラムにもかかわらず、マットレスと組み合わせて「0℃」という下限温度を達成しているというスペックは伊達じゃないと実感しました。

足元は足の形に合わせて立体的なバッフル構造となっており、コールドスポットが極力少なくなるように配慮

ただ注意したいのは、この寝袋は必ずしも「単体でEN13537 やISO23537 規格での下限0℃」のマミー型寝袋と比べて同等の暖かさを有しているわけではないということです。Mythic Ultra 120 Modular はあくまでも「R値4以上のエアマットを使用した場合」に「Rab独自のスリープ制限温度」で0℃のレベルを達成しているということであり、当然ですがこのモデルよりも「単体として下限0℃を達成しているマミー型シュラフ(例えば同社のMythic Ultra 180 など)」の方がより暖かく感じられるはずです。

組み合わせて使用するマットレスや、使用する人の体質や経験値によって、どのくらいの寒さに耐えらえるかどうかの限界は違ってくるということは前提ですが、個人的に自分の感じた限りでは、例えばあまり寒い場所で寝たことのないテント泊ビギナーの自分がいきなりこの寝袋とマットのセットで夜間0℃になる場所で寝たとして、その寒さに耐えられている姿はちょっと想像できません。自分にとって野宿には慣れと心構えの有る無しが結構重要だったりします。

背面に中綿がないことでマットレスの性能が背中の寒さにダイレクトに影響するため、そこも十分に用心する必要があります。

いずれにせよ、どんなタイプの寝袋であっても大切なこととして、念のため下限(この場合0℃)ギリギリで使えると考えるのではなく、想定下限温度から5℃以上は幅をもって考えるように、そして十分に余裕のある断熱性のマットレスと、万が一のための防寒着や防寒用具を準備しておくことをおすすめします。

同時リリースの「Ultrasphere 4.5 スリーピングパッド」と組み合わせて700g アンダーの軽量・コンパクトなスリーピングシステムが完成

Mythic Ultra 120 Modular は、付属の圧縮できるロールトップ式収納袋に入れることでかなりコンパクトに圧縮することができます。ここも重要なお気に入りポイントなので細かく説明すると、無理やり小さなスタッフサックに押し込む形ではなく、圧縮もできる大き目の収納袋であるということが重要。圧縮し切ったカチカチの袋はパッキングの際に空間が生まれやすいため、少し余裕があるフワフワした状態で押し込められる大き目のスタッフサックがありがたいのです。ちなみに、保存用の大き目収納袋も用意されているのもありがたい。

大きめの圧縮スタッフサック(左)は寝袋を仕舞ってから圧縮具合を調節できるロールトップタイプ。実際には写真よりももっと圧縮可能だ。保存用の大きな収納袋も付属(右)

構造的に汎用的な作りであることから、このスリーピングバッグは多くの他社製スリーピングパッドに固定することができます。RabによるとR値4以上のマットレスと合わせれば大体0℃あたりまで耐えられるということ。したがってそれ以上の断熱性を備えたマットレスであればさらに低い温度も可能と推測されます。

ちなみにRab から時を同じくして発売された軽量高断熱エアマットレス「Ultrasphere 4.5」と組み合わせると、0℃レベルの低温環境をたった700 g のスリーピング・システムで対応することが可能。もちろん現在所有しているスリーピングパッドと組み合わせることでも十分有効ですが、幅広い3シーズン対応のスリーピング・システムとしてより無駄のない組み合わせを目指すならこちらがベストな組み合わせといえそうです。

まとめ:極限まで重量を切り詰めながら最低限の快適さを損なわない丁寧さは、現代ミニマリストの最適解かも

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使ってみて特に驚いたのは、やはりこれほど軽くてコンパクトな寝袋にも関わらずインパクトのある暖かさを発揮していたことでした。薄手のパッドならば暖かい春夏に対応し、Ultrasphere 4.5 スリーピング パッドなどの高めのR値を持ったパッドと組み合わせれば、秋~初冬の低山などに対応する安心の寝床がこれまでと比較して考えられないくらい軽くてコンパクトな荷物で効率よく構築することができます。

荷物の軽さとスピードを優先するハイキングやアルパインクライミング、バイクパッキング、ファストパッキングなどにフィットすることはもちろんですが、だからと言って軽さを優先していたとしても快適さが損なわれていることはまったくなく、むしろマットと一体化し、枕も簡単に作れる寝心地の良さは、適切な温度域内であれば普通のシュラフ以上の快適さかも。もちろんマットレスが薄かったり、マット自体を忘れてしまったなんて時には悲しい夜を迎えてしまうというリスクはありますが。

少々値は張りますが、軽さとコンパクトさ、快適さ、マスブランドの手厚い保障と、登山のベテランから超軽量ハイカー、テント泊ビギナーまで、すべての人におすすめできるマットレスです。ぜひお店で手に取ってチェックしてみてください。