Review:ハードな悪路も楽しくなる。SALOMON SENSE RIDE GORE-TEX® INVISIBLE FIT
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最新GORE-TEX技術によって生まれたのは「走れる登山靴」か、「タフなランニングシューズ」か?
雨がおおく、ぬかるんだ路面や枝沢を跨ぐ場面が少なくない日本のトレイルでは、シューズが水に濡れそうになる場面は日常茶飯事。沢登りでは水線突破派の自分ですが、さすがにトレランシューズならば確実に「ヤバっ」となるところです。それがこの秋、悪路を走るのがむしろ楽しみなってくるような、革新的なシューズが発売されました。
それは SALOMON SENSE RIDE GORE-TEX® INVISIBLE FIT。昨秋の発売以来、そのクセのない走り心地のよさと疲れにくさ、怪我のしにくさなどから、長距離のトレイルランに、日帰りハイキングにとフル回転してくれる名作、SALOMON SENSE RIDEに新たに仲間入りした防水バージョンです。
しかもこれがただの防水じゃない。GORE-TEXの最新シューズテクノロジーGORE® Invisible Fitを採用し、登山靴の保護性の高さとランニングシューズの走行性を足して二で割ったような特徴を備えているといいます。これは期待せずにいられません。
そこで今回は、この雨天や悪路に強い新しい防水トレイルランニングシューズについて、西丹沢の沢沿いを走るウェットなルートで、防水なしのノーマルSENSE RIDEと同時履きして、その走り心地、乗り心地について試してみました。
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SENSE RIDE GORE-TEX®INVISIBLE FITの特徴
従来までのGORE-TEXランニングシューズの限界
重い、ゴワゴワする、通気性が悪い……従来のGORE-TEXランニングシューズは、そうでないモデルと比較すると、どうしてもそんなイメージが強かったと思います。一般的なランニングシューズと比較するとその通りであったため、走りに集中したいランナーにとっては、防水という特徴のために犠牲にしなければならない要素が多すぎました。
そこには、従来のGORE-TEXシューズが、ブーティ状のメンブレンをアッパー生地と分離した状態でライニングするという構造的な問題がありました。その構造が、特に生地が集められるつま先付近のフィット感を低下させ、メンブレンとアッパー素材の間に残りやすい水分によって重量や透湿性を妨げてしまい、これがランニングシューズとしてのパフォーマンスを追求するために乗り越えなければならない大きな壁だったのです。
防水であることを忘れさせてしまうほどの自然な履き心地の新技術「GORE® Invisible Fit」テクノロジー
進化したGORE® Invisible Fitテクノロジーでは、GORE-TEXのメンブレンがアッパー素材に圧着されて完全に一体化されており、つくりとしては普通の防水でないシューズと変わらない構造となっています。
一見すると外からの見た目的にはまったく違いが分かりませんが、内側では多くの点で改善が加わり、その大きさは計り知れません。
まず足を入れた段階で、GORE-TEXシューズにありがちな前足部の靴下をはいているような窮屈感がまったく感じられないことに驚きます。つま先周りにはゆとりがあり、足指が自由に動かせます。自分の指の動きとアッパーの動きが自然な形で一致するという、微妙だけど気持ちのいい感覚は、防水のないシューズでは当たり前ですが、これまでのGORE-TEXシューズでは考えられなかったこと。圧着で1枚構造になり、内部で生じるシワや折り目、生地の重なりがなくなったことによる最も分かりやすい進化といえます。
1枚構造とはいえ、メンブレン層が加わったことでSENSE RIDEと比較すると多少の厚みは感じられます。ただそれを差し引いてもつま先を屈曲したときに生じるきしみ・ごわつきなどは通常のランニングシューズとほぼ変わらないレベルです。そもそもSENSE RIDE自体が非常に柔軟でフィット感に優れたシューズだからということもあるでしょう。
アッパーに採用されている生地はSENSE RIDE同様、柔らかくて通気性のよいメッシュ素材とTPUの圧着による、軽さと柔軟性・耐久性を兼ね備えた構造です。加えて「SENSIFIT™」による足全体を包み込んでくるような、ストレスフリー心地よいフィット感は、防水バージョンになっても健在です。
ただ細かい違いですが、これまでタンの噛み合わせや土踏まず部分のフィット感・安定感をより高めてくれていた「ENDOFIT™」が今回のバージョンでは搭載されていません。開発時に検討された結果、構造上はずすのがベターだったそうですが、個人的には気に入っていた機能であったため、なくなっているのは残念。このためもしこれまであったようなタイトなサポート感・フィット感を得たいならば、オリジナルのインソールなどを検討してもよい気がしました。
雨天や水際での走りも試してみました。当然ですがシューズ全体が水没しても、足首より下であれば浸水はまったくありません。通常のGORE-TEXシューズであった、アッパー生地とメンブレン間に水分が残ることもなく、濡れによる重みを感じにくくなっています。これによって速乾性も向上しました。
進化したクイックシューレース
SALOMONシューズの定番「クイックシューレース」が、この秋モデルからひそかに、そして劇的に進化していました。すべてがより直感的な操作になり、これまでとは比べものにならないくらいにスピーディに締めやすく、また緩めやすくなっています。この操作性の良さはこれまでのどんなコードロックにもない感動的なもので、まだの人は店頭でぜひ試してみる価値アリです。
ダメージを気にせず楽しく走れる安定感抜群のミッドソール
何をさしおいてもSENSE RIDEの魅力といえば、あらゆるランナーのロングライドを快適にしてくれるプレミアムなソール構造であることは間違いありません。それが防水バージョンになってもそっくりそのまま受け継がれていることは、このシューズの価値と可能性をどこまでも広げてくれています。
まず高クッション性と高反発性を両立したミッドソール「Energycell+」と、微振動吸収機能をもった「OPAL」を組み合わせた「Vibeテクノロジー」は、着地による衝撃を吸収し、さらに疲労や怪我のリスクとなる振動を吸収・軽減してくれ、長距離・長時間のランニングでも最後まで気持ちよく走りきることを可能にしました。
27mmのヒール厚はビギナーにも安心の高いクッション性を提供してくれます。一方で19mmのフロント部分は繊細なタッチを可能にしつつ、内部に配置された「Profeel Film」が地面の突き上げをやわらげ、その薄さをカバーしています。
踵からつま先にかけて緩くカーブした、船底型のロッカー形状は、自然でスムーズな足運びを可能にします。
ウェットな地形にも強い優れたグリップ性能
アウターソールの素材にはSENSE RIDEとまったく同じ「Contagrip® Premium Wet Traction」を採用。踏み込みブレーキ、サイドキックなど、前後左右さまざまな動きに対応するオールラウンドなラグパターンに仕上げています。試走では期待通り、濡れた一枚岩でも、緩い泥土の下り斜面でも高いグリップ性能を発揮してくれました。
まとめ:こんな人におすすめ
水に対する最高のプロテクションを確保しながら、ハイエンドなランニングシューズと同レベルの走行性能を得られるSALOMON SENSE RIDE GORE-TEX® INVISIBLE FITは、悪天候や悪路を考慮したトレイルランニングにはどストライクにはまります。通常のトレイルランニングシューズと大差ない走り心地のよさから、天候に関わらずトレイルで活躍してくれるので、未知のコースを走るときなんかも有力な選択肢のひとつになるはずです。これまでロード主体だったトレイルラン・ビギナーがこれで山慣れしていくのもおすすめ。
一方でここまで防水機能がしっかりとしてくると、あなたが走る人でなかったとしても積極的におすすめできてしまいます。健脚がファストパッキングやロングトレイル、日帰りハイキングに履いていくにはもってこいだと思います。自分もこれまでは日帰りハイキングに軽量ハイキングシューズを履いていましたが、いっそのことこれに乗り換えようかと思っています。
製品の詳細について、また問い合わせ等はSALOMON公式サイトをあわせてご確認ください。
主なスペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
重量 | 302g(27.0cm片足) |
スタックハイト | 27mm/19mm (8mm ドロップ) |
アッパー生地 | 独自の圧着技術を用い、縫い目の無いシームレスなアッパー形成 + GORE® Invisible Fitテクノロジー |
ソール | Vibeテクノロジー/ContagripR Premium Wet Traction/DECOUPLING OUTSOLE |
快適性 | ★★★★☆ |
重量 | ★★★☆☆ |
グリップ | ★★★★☆ |
プロテクション | ★★★☆☆ |
安定性 | ★★★★☆ |
防水性 | ★★★★★ |
総合点 | ★★★★☆ |