禁断のバッテリー型ヒーティングソックスで凍えた足先は救われたのか? Therm-ic パワーソックスヒートユニV2 レビュー

朝。準備万端テントから顔を出し、冷え切ったブーツに足を入れる。どれだけ山の経験があったとしても、体調が万全で気合十分だとしても、この氷のように冷たいブーツに対して血行の悪いぼくの朝イチの足先は、いとも簡単にやられてしまいます。

よしんば自分のように末端の冷えやすい体質でない人であったとしても、靴紐やバックルで強く圧迫され、足元を長時間氷点下にさらされるのが冬山。ちょっと状況が悪くなるとすぐに冷えて感覚がなくなっていき、最悪の場合低体温症などの危険が待っています。実のところ、個人的には手先よりもこの足先の方が頻繁にかじかみやすく、悩みは切実です。

そこで、前回は凍える冬の手をテクノロジーの力で克服した充電発熱式グローブをレビューしたところですが、今回はその勢いにまかせて充電発熱シリーズの第2弾、冷えた足先を電気の力で温めてくれる充電発熱式ソックスを試してみることにしました。

冬山での最後のストレス「足指の冷え」を克服!?

今回、数ある発熱式ソックスの中から選んだのは、Therm-ic パワーソックスヒートユニV2( + Sパック700バッテリー)。Therm-icはスキーブーツの加熱式インソール開発からはじまり、20年以上に渡って電熱テクノロジーを駆使したスキー・アウトドア製品を作り続けてきたパイオニア。まだまだ決して手頃とはいえない価格ではあるものの、ドッグイヤーで進み続けるテクノロジーの最先端を纏ったこの充電発熱式ソックスは冬山の危険性と不快感を克服してくれるのか?実際のところ、実用に足るものなのか?早速レポートしてみたいと思います。

Therm-ic パワーソックスヒートユニV2 + Sパック700バッテリーの主な特徴

おすすめポイント

  • 最高出力での高い保温力
  • 薄手で余計なかさばりの少ないボリューム感
  • 簡単な取り付けで外れにくい
  • クッションの効いた脛
  • 手洗いモードで洗濯可能

気になるポイント

  • 最も使用頻度の高い弱モードでの保温力の不十分さ
  • スイッチOFF状態でのソックスとしての保温性の低さ
  • ボタン部分がパンツで隠れてしまうため操作しにくい
  • ボタン部分が外からの圧迫で誤操作しやすく、現状確認もしにくい
  • ソックスの伸縮性が低いため、足のサイズによってはフィットしにくい
  • 手が届きにくい価格
  • 耐久性は高いとはいえない(電熱ワイヤー部分が故障すると終わり)

主なスペックと評価

スペック
アイテム名Therm-ic パワーソックスヒートユニV2 + Sパック700バッテリー
素材(パワーソックス)

ポリアミド、アクリル、ポリプロピレン、ポリエステル、エラスティン

付属品(Sパック700)専用USB充電ケーブル
適応温度域Low/0~10℃、Mid/-10~8℃、High/氷点下~
バッテリー持続時間Low/6~8時間、Mid/4~5時間、High/1時間45分~2時間15分
評価
保温性★★★★★(スイッチOFF時は★★☆☆☆)
快適性★★☆☆☆
サポート力★★★☆☆
クッション性★★☆☆☆
速乾性★★★★☆
使い勝手★★☆☆☆

ゲレンデ・バックカントリースキーで使ってみた(詳細レビュー)

履き心地 ★★★☆☆

ぱっと見た第一印象では、本当にこの中に電熱ワイヤーが入っているのかと思わせるほどの薄手。普通のソックスと比べても違和感のない作りには好感がもてます。脛までのロングサイズはスキーに最適で、全体的にスリムながら脛とつま先・かかと部分にはある程度クッションが追加されており、擦れやすく荷重のかかる箇所への配慮はしっかりとなされています。

熱を伝えるワイヤーはバッテリーがセットされるふくらはぎ外側からかかと~足裏を通り、最後につま先裏で大きく渦を巻いています。ワイヤーの異物感はまったくないのはありがたいのですが、残念なのはこのワイヤーのせいでソックス自体の伸縮性に乏しく、足のサイズ26.3cm(ちょうどサイズ分類の境目にあたる)の自分は26.5~28.0cmサイズを選び、若干生地が余ってしまいました。

ソックスを履いてつま先を小刻みに動かしてみたりしても、特に硬さなどは感じられず、ソックスとして違和感はありません。構成されている素材もナイロンやアクリル・ポリエステルなど速乾性のある素材を使用しているため、濡れたときの心配も少ないです。ただ冬はフカフカとした厚手のメリノウールを常に好んで履いていた自分にとって、この薄さと伸縮性のなさはかなり物足りなく、実際スイッチをOFFにした状態でのソックスはまったく寒々しい限りで頼りないものです。過酷な冬山で万が一故障や電池切れのことなどを考えるとこの点は相当にマイナスポイントです。

保温性 ★★★★★

履き心地はともかく、このソックスの最大の魅力であるヒーティングシステムによる保温性の検証に進みましょう。

先程書いたように、バッテリーはソックスの外側面にスナップボタンで取り付けるようになっています。これ自体はブーツとも干渉せず、また特に難しさや外れやすさなどもなく、ひとまずは問題ありません。

バッテリーの取り付けが終われば、あとはボタンを長押しするだけ。すると弱モードで発熱がはじまります。熱量は3段階に分かれており、それぞれの持続時間と合わせて、以下のような目安の温度域で使用することを想定しています。

  • Low/0~10℃(6~8時間)
  • Mid/-10~8℃(4~5時間)
  • High/氷点下~(1時間45分~2時間15分)

本格的な寒さを迎える1月のバックカントリーで使用する前に、どれほど暖かくなるのか室内でテストしてみました。スイッチを入れるとすぐにつま先の裏がじんわりと暖かくなっていくのが分かります。しかしそれ以外の部位ではさほど暖かさに変化はなし。その様子をお馴染みのサーモグラフィー画像で撮影してみたのが下の図です。上がそれぞれのモードでスイッチを入れた靴下、下がスイッチOFFに状態の靴下です(表示されている温度の正確性は保証しないのであくまで比較目安)。

次の図は、発熱状態でしばらく経ってからの足を正面から撮影したものです。

これらの図から分かるように、発熱される部分は主につま先裏の渦巻き状のワイヤー部分であり、それ以外のワイヤー部分の発熱量はあってもさほど大きいものではありません。これで本当に真冬のスキーでもしっかりと快適なのかどうか。若干の不安がよぎります。

次は下の写真のように、左右で「発熱ソックス」「メリノウールのスキーソックス」を交互に履いて実際のフィールドで使用してみることにしました。

3段階の熱レベルのうち、持続時間から考えて、通常使用するレベルはLow(6~8時間)であることは間違いありません。スキーブーツに履き替えながら、スイッチをLowにセット。ボタンを押すごとにLow→Mid→Highとレベルが切り替えられます。

ちなみに3段階のレベルはボタンのランプの点滅状態によって判断します(下動画)。

このレビューを書くにあたり、天気の良いバックカントリーや、大寒波真っ最中でのスキー場などある程度幅広い天候で履き比べてみたました。

まずLowモードで使い続けてみた限りでは、今まで履いていたメリノウールのソックス比べて、正直なところそれほど保温力に差があるようには思えませんでした。

懸念したとおり、つま先裏が微かに温められただけの薄いソックスと、発熱はしないけれど中厚手のメリノウールソックスではそれほど変わらない気がします。確かに0℃以上の高めの気温では足が冷えることはなかったかもしれませんが、バックルをしっかり締めて圧迫された足はたまに感覚が無くなることもあり、なかなか十分に恩恵を感じるまでには至りませんでした。

零度を下回るような気温で少し動きが少なくなるとLowでも足の冷えが度々起こるため、たまらずMidやHighモードにしてみます。するとさすがに靴の中はしっかりと温められ、快適さを保ってくれました。このときばかりはいくら厚手のメリノウールでも敵わない程の快適さです。

とはいえ、厳冬期シーズンでガンガン使用したかったぼくのようなユーザーにとって、4~5時間程度しか持たないMidモードを使用し続けるわけにもいかず、悩ましいところです。今回購入したバッテリーパック(Sパック700)よりも容量の大きなSパック1200であれば、Midモードで7時間30分程度まで持つとされています。厳しい寒さでの終日利用を考えた場合、こちらを選んだ方が良かったのかもしれないと、ちょっと後悔(それにしても高すぎる)。

その他使い勝手 ★★☆☆☆

スキーで使用する場合、現在のレベルを確認したり、ボタンを押したりするために毎回わざわざパンツやタイツを捲くり上げなければいけません(下写真)。

この使い勝手の悪さははっきり言ってひど過ぎます。おまけにこのボタン、いつ押したか分からないのですが、いつの間にか誤って押して勝手にモード変更しまっていることが何度かありました。Lowで使用していたと思ったら、いつの間にかMidになっていて、電池が切れてしまったなんていうことが起こるかもしれないと考えると、不安で使いたくなくなります。現在海外ではBluetooth接続でスマホアプリからモード切り替えできるモデルが発売されているようですが、この機能は標準でついているべきでしょう。

まとめ:発熱機能自体には十分満足だが、使い勝手は改善の余地あり

Therm-ic パワーソックスヒートユニV2に備わっている薄手で自然な履き心地ながらも優れた保温力は、自分のような末端冷え性のアウトドア好きにとっては確実に希望を抱かせてくれるものでした。Mid(時としてHigh)モードで長時間利用することができれば、ほとんどの冬山で冷えを感じることはないでしょう。

ただしある程度寒さを感じる状況でのLowモードの使えなさや、ソックスとしての快適さやボタン位置などの使い勝手についてはまだ改善の余地が大いにあると感じました。クセが強く、非常に惜しい。

もし仮にモード切替が簡単にできるような作りであれば、MidモードとLowモードを適宜切り替えながらバッテリーを節約できるため、ストレスはここまでなかったかもしれませんが、残念ながらボタンがパンツやタイツに隠れてしまうため、一度設定するとそう簡単には切り替えられません。

このため自分のように冬山登山での利用を想定するならば、今回のSパック700バッテリーでは容量が足りず、安くない買い物にも関わらず後悔してしまうかもしれません。Midのままで長時間使用できるSパック1200以上のバッテリーをチョイスすることをおすすめします。

また、生地の伸縮が弱くフィット感がイマイチであった自分は、サイズ調節と保温性の追加のために下写真のような極薄のインナーソックスを下に履いたところ、フィット感についてはかなり具合が良くなりました。

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