年間テント泊100日超えの山好きが選ぶ今シーズンのタイプ別おすすめテントと、後悔しない登山向けテントの賢い選び方

テントが変われば旅が変わる。自分のこだわりに合わせて最高のテントをチョイスしよう

登山やハイキング、ファストパッキング、沢登り、アルパインクライミング、バイクパッキングからオートキャンプまで、自然をフィールドとしたアクティビティで夜を明かすときに必要となってくるのがテントです。多くのアウトドア道具と同じように、このテントも近年ではアクティビティの種類はもちろん、スタイルや季節、そして人数など多様なケースと予算に応じて多種多様な選択肢が選べるようになりました。

たくさんの似たようなテントの中から自分が求めている一張を選び出すことは簡単ではありません。確かに初心者に優しく、どんな人にもとりあえず不満のない無難なテントはいくつかありますが、実際にはそれがあなたにとって「最適」であるとは限りません。そうしたオーソドックスなテントは、えてして人気のテントサイトで自分とまったく同じテントを数え切れないほど見てしまうわけで、それは決してテンションを上げてくれるものではありません。

山慣れたアウトドアズマンが季節や状況に合わせて複数のテント・シェルターを使い分けることはまったく珍しいことではなく、自分のスタイルやシーンに合わせた最適なテントがチョイスできることで、旅の安全性や快適さ、そして何より旅への愛着は驚くほど変わってきます。

そこで今回は今シーズンの新作から人気・定番モデルまで幅広い登山向けテントを、家の中でもテントを試し張りして寝ている当サイト運営人ならではの多角的な視点から評価し、用途やタイプ別にベストモデルとして選定しました。また後半では自分にピッタリのテントに出会うために知っておくと役に立つ見方・ポイントについてもまとめていますので、余裕のある方はぜひ参考にしてみてください。

目次

【部門別】今シーズンのベスト・登山用テント

ベスト・ソロハイキング(総合)部門:Sea to Summit アルトTRプラステント/MSR ハバハバシールド

この部門では主に日本で無雪期のハイキング・登山に使うと仮定したときに、テントに求められるあらゆる要素がバランスよく高次元にまとめられた、完成度の高いおすすめ1人用テントを選びました。平たく言えば、冬のアルプスで使わないとした場合にビギナーからベテランにまで誰にでもおすすめできる、マイルドなハイカーにとっての最高峰です。

選出された2モデルは厳冬期アルプスを除く幅広い季節をカバーし、厳しい風雨に耐えうる対候性・耐久性の高さにもかかわらず、十分な軽さを備えているところがまず嬉しい。さらに室内は広い上部空間と高い換気性による快適な居住空間を確保と、いまどきの流行もしっかりと取り入れられています。どちらも細部のパーツにいたるまで使いやすさ、壊れにくさなどの気配りも抜け目なく、まさに万人におすすめできる最新型テントのベンチマークといえ、ビギナーから玄人まで、汎用性の高いバックパッキングテントを探しているなら、これを選んでおけばまず後悔することはないでしょう。

Sea to Summit アルトTR1プラステント

お気に入りポイント
  • 驚きの広い室内空間
  • 素晴らしい換気性能
  • 豊富な室内収納と心地よい明るさを提供するライトバーなどの気の利いた小物類

MSR ハバハバシールド 1

お気に入りポイント
  • 対候性、軽量性、居住性、設営しやすさ、すべてにおいて高次元という完成度の高さ
  • 最小限になったメッシュによって日本の山岳でも幅広い季節でぐっと使いやすく

Sea to Summit アルトTRプラステント

ベスト・2人用ハイキング(総合)部門:Big Agnes コッパースプール HV UL2EX

市販されているテントは2人用サイズに範囲を広げると、選択肢はさらに増えてきます。もちろん上記の2モデルは2人用でも十分受賞に値するのですが、このBig Agnes コッパースプール HV UL2EXも取り上げないわけにはいかない、きらりと光る魅力を備えたテントです。一言でいえば「軽・広・楽」という2020年代のテントの流行をがっちりと押さえたモデルで、アメリカ本国のレビューサイトや口コミでも非常に高い評価を得ています。

しっかりベーシックな作りながら、広い室内に加えて2つの出入口はトレッキングポールで跳ね上げて開放的にすることができたり、レインフライとフットプリントだけでキャノピースタイルの使い方ができたりと遊び心満点。機能満載でしっかり安定した構造ながら最小重量1.2kg前後と重量も抑えられている。機能的なパーツを使った設営のしやすさも隙がありません。おまけに日本別注モデルということでインナーテントのメッシュ無しのフルファブリック仕様だから登山利用にも安心。個人的に日本でもっと人気が出ていいと思っているブランドっていうのもありますが、本当によくできているテントなので、ここぞとばかりに激押しします。

お気に入りポイント
  • 使っていてストレスの少ない快適性と使いやすさ
  • 軽量性
  • クセのない構造とフルファブリックで対候性もしっかり(それでも軽量テントの部類に入るので、他と比べて厳しい天候に強いとは言いませんが)

ベスト・ファストパッキング部門:NEMO ホーネットエリート オズモ/MSR フリーライト

パラメータを「軽さ」に大きく振りつつ、全体的なバランスの良さを失わない、軽くて住みやすくて使いやすいテントのベスト・モデルを選出したのがこの部門です。

超軽量テントというと、実際には500グラム前後のもっとクレイジーなテントがよく話題に上がってくるわけですが、それらは多かれ少なかれ耐久性や居住性、利便性の点で慣れと妥協が求められるのが現実。今回選出の2モデルが素晴らしいのは、そうした覚悟は(まったくではないにせよ)ほぼ必要なく、普通のテントと変わらない建てやすさ・住みやすさ・雨風に対する安心感をきちんと備えていながら、1kgを優に切るほどの突出した軽さを実現している点です。その意味では快適さも軽さもどちらも譲れない、という欲張りなハイカーにピッタリ。

NEMO ホーネットエリート オズモ 1P

お気に入りポイント
  • トップクラスの軽さと快適な居住性を両立
  • 撥水性と張りの良さに優れ、100%リサイクル素材の最新生地

MSR フリーライト1(2022年版)

お気に入りポイント
  • トップクラスの軽さと快適な居住性を両立
  • 誰でもきれいに素早くできるクセのない構造と設営しやすさ

ベスト・ウィンター&オールシーズン部門:Heritage エスパース・マキシム ナノ(フライ別)

冬山では強い風雪や降雪・積雪に耐えられる強固な構造と、雪山特有の状況における使い勝手の良さが求められます。そうした観点から評価した選んだベスト・モデルがこちら。日本の輝かしい登山史をけん引してきた老舗テントブランド「エスパーステント」を前身とする国内テントメーカー、Heritageの最新オールシーズンテントです。

何十年にもわたって積み重ねられてきた実績とノウハウに裏打ちされた強固な作りの良さは、厳しい自然条件においては何よりも安心です(それでいて決して重すぎたり使い難かったりということもありません)。保温性を高めるための内張が別売りで用意されていたり、入り口は雪の侵入を防ぐ吹き流し方式であったり、ベンチレーションは雪が積もってもつぶれにくかったりと細かい点で冬山での使い勝手がよく考えられています。夏でも快適に使えるような別売りオプションもそろっているので、冬だけでなくオールシーズン十分活躍できちゃうのもうれしい。

お気に入りポイント
  • 厳冬期の高所登山でも安心の高い対候性・耐久性を備えながら軽さをキープ
  • 細部まで雪山で利用することを考えた使いやすさ
  • オプションパーツで夏の登山にも対応

ベスト・シングルウォールテント部門:HCS VB-22Z

一般的な2層構造と違って防水透湿生地を使用した1層構造のシングルウォールテントは、設営条件や用途・好み次第ではこれ以上なくハマる、代表的こだわりテントのひとつ。HCS VB-12Zは、ここ最近発売されたシングルウォールテントのなかでは突出した魅力を備えたモデルです。

まずこのHCSはこちらも日本が誇る老舗山岳テントブランドで、自分も学生時代に死ぬほどお世話になった「ダンロップ」を引き継いだメーカー。その意味ではこちらのテントも高所や積雪期といった厳しい環境での信頼性は抜群です。その上で、現代的なニーズを取り入れてめちゃくちゃ軽い。そして入り口が長辺側についているので出入りが楽。さらに極めつけはなんと「前室」がある。これによって雨にも強くなり、荷物の収納も増えた、つまり快適性大幅UPというわけです。もともと軽量コンパクトさと設営・撤収の簡単さで定評のあるシングルウォールテントでしたから、これは鬼に金棒、シングルウォールに前室。ただこれによって厳しい冬山で必要な外張がつけられなくなってしまったのはややマイナス。とはいえ1年を通じてファスト&ライトな登山を好むタイプならきっと満足いく一張といえそうです。

お気に入りポイント
  • 対候性と耐久性に優れたデザイン
  • 軽量
  • 快適・便利な前室

ベスト・ビギナー向け部門:mont-bell ステラリッジテント(+レインフライ)/アライテント トレックライズ

はじめて登山やハイキングをするという人に、最も安心しておすすめできるテント、というのがこの部門の選定基準。ここではやはりというべきか、日本で登山用テントの代名詞ともいえる2つのモデルを選びました。

どちらもシンプルな自立型でダブルウォール構造で、初心者でも簡単に建てられるのがまず安心。また風にも強い伝統的なドーム型形状なので、予期せぬ悪天などにも安心。さらに国内メーカーで故障時の修理対応などもスムーズだから、万が一の時にも安心。というように、とにかく安心感でいえばどのテントにも負けません。

2つモデルの大きな違いは、ステラリッジの方はオプションのスノーフライを合わせれば積雪期でも対応可能なオールシーズンモデルであることちなみにアライテントも代表モデルである「エアライズ」シリーズなら冬にも対応しています)。一方でトレックライズの方は雪山には適しませんが、その分出入り口の位置が長辺側にあることによって出入りしやすく通気性も高く前室も広いという、より軽量で居住性が高いところが魅力です。そういうわけで日本人登山者の多くがこれらのモデルを所有しており、どちらも夏の広いテントサイトでは自分と同じテントを山ほど見かけることでしょう(特にステラリッジ)。初心者向けのエントリーモデルは選択肢も多く、専門アウトドアブランドであればそこまで性能の差は出ないと思われますので、そちらも十分におすすめです。

 mont-bell ステラリッジテント1型(レインフライ込み)

お気に入りポイント
  • 対候性・重量・快適性のバランスの良さ
  • オプションと組み合わせて雪山も含めたオールシーズン利用可能

アライテント トレックライズ0

お気に入りポイント
  • 基本的なバランスの良さに加えてより軽量で快適
  • 日本メーカーで修理対応なども安心

ベスト・コストパフォーマンス部門:MOBI GARDEN LIGHT WINGS 1 JPN

最もコストパフォーマンスの高いテントに贈られるこちらの部門には、自分が中国のアウトドア展示会で出会って衝撃を受けた中国トップのテント専門ブランド、Mobi Gardenによるハイエンド軽量バックパッキングテントの日本別注モデルをぜひ推したいと思います。

軽さとプロテクション、建てやすさ、快適性を兼ね備えたオールシーズン・自立型・ダブルウォール山岳テントは、この価格からは考えられない機能性の高さとしっかりとした作りの良さで、一度使ってみたら誰もがそのクオリティに驚愕するはずです。インナー・フライ一体型の建てやすい構造や高品質なファブリック、ポールなど、細部にわたって本物品質を追求し、快適さ・使いやすさを実現。さらに日本の登山者のためにフルファブリック仕様にするなどコストありきで商売していないところも好感触。高品質なペグ10本とフットプリント、ガイラインなどフルセットを標準で装備しながら素晴らしく良心的な価格設定は、何度見てもびっくりです。

お気に入りポイント
  • ダブルウォールながらわずか2~3分でセットアップ可能な一体型設計
  • 軽量なテントにしては十分な耐久性
  • ペグやフットプリントなど全部入りでも良心的な価格設定

ベスト・タフネス&ラグジュアリー部門:HILLEBERG ソウロ

がっつりハイキングにだけ使うということではなく、車やバイク、カヌーなどを駆使して大自然を自由に旅したい。そんな人には、重量は気にしなくてもいいからとにかく1年中季節や天気を気にする必要がないほどの頑丈さと、長期間の旅でも疲れにくい快適な居住空間を備えた、こちらのテントがおすすめです。

ソウロはアウトドア好きなら誰もが憧れるテント界のスーパーカー、HILLEBERGのラインナップの中でも特にオールラウンドな特徴を備えた自立型ダブルウォールテント。屈強なポールに地面まで伸びたフライシートは豪雨・強風・降雪にも強く、対候性についてはまったく問題なし。高い天井と広い前室によって1人用としては十分すぎるほどの快適な居住空間を確保しています。さらにテントとフライシートが一体化し、ワンアクションで組み上がる独自の設営しやすい構造など、細部までハイクオリティな完成度の高さには脱帽です。「重い・高い」を覚悟することができる人ならば、間違いなく理想の一張候補筆頭といえそうです。

お気に入りポイント
  • 季節と天気を気にせず使える優れた堅牢性・対候性
  • ゆったり住める高い居住性
  • 独自のインナー・フライ一体型構造で設営も簡単

選び方:登山・ハイキング用テントを賢く選ぶ8つのポイント

ポイント1:対応シーズン ~得意にしている季節でテントの特徴が変わる~

テント選びでまず押さえておきたいことは、登山向けテントには大まかにいって春~秋の無雪期に対応した「3シーズンテント」と積雪期の冬山にまで対応した「4シーズン(ウィンター)テント」の2種類、もっと言えば「オプションパーツによって4シーズンに拡張可能な3シーズンテント」の3種類あるということです。テントは「雪山に使えるかどうか」で種類が大きく違うということを覚えておきましょう。

このうち4シーズンテントの方が長いシーズン使えそうだからおすすめなのか?というと、もちろん話はそんなにシンプルではありません。それぞれに得意・不得意があり、雪山をほとんどやるつもりがない人が4シーズンテントを選んでしまうと、きっと穏やかな週末のハイキングでは残念な思いをしてしまうに違いありません。

一般的なハイカー、特に登山を始めたばかりの人であれば3シーズン用のテントか、拡張できる3シーズン+テントを選ぶ方が間違いが少ないのは明らかです(ベストなのは言うまでもなくシーズンに合わせて複数のテントをそろえておくことですが)。

いずれにせよ、3シーズンテントと4シーズンテントの間にはどんな特徴の違いがあるのかを知っておくことはテント泊登山をするうえで無駄ではありませんので、以下、それぞれの特徴をまとめておきます。

3シーズンテントの特徴

春、夏、秋の登山やハイキングをするならば、3シーズン用のテントがおすすめ。このテントでは軽さと通気性の良さ、快適性を第一に考えつつ、全体として無雪期で使用するのにバランスのとれたテントです。虫や雨、小雪、風などを防いでくれ、厳冬期を除いたほとんどの季節と天候に対応できます。一方で冬の嵐に吹きすさぶ強風や、真冬の雪山などを凌げるような対候性・耐久性・断熱性などは天候によっては十分でない可能性もあり、このため冬山にはあまり適していません。

3シーズンテントの多くは悪天への強さよりも風通しの良さや軽さ、広さなどの住みやすさが優先されている。

4シーズンテントの特徴

対して4シーズンテントは、真冬の雪山で快適に過ごせることを第一に考えられたテントです。よりぶ厚くて強い生地が使われ、ポールやパーツ類はより頑丈になり、雪がたまりにくく風を逃しやすいフォルム、雪がテントの中に吹き込むのを防ぐためにスノーフライが地面まで伸びているなど、すべてが強風や大雪に耐えられるようデザインされています。

ただ当然その分重量も容積もかさみます。また風通しよりも暖気が逃げないことを優先するため密閉性が高く、このため通気性は3シーズンに比べて劣る傾向にあります。

4シーズンテントは(理論上は)どの季節でも使えますが、8月の低山にこのテントを使おうものなら、たちまち汗だくで不快な気分にさせられることでしょう。つまり4シーズンテントを使う季節はよほどのことがない限り冬の寒い季節、特に雪山に行くときに使うテントであると考えておいてまず間違いはありません。

悪天への強さと断熱性の高さによって、冬の厳しい天候や雪にはめっぽう強いのが4シーズンテント。

4シーズンに拡張可能な3シーズン+テント

細かい分類になりますが、3シーズンテントとしての基本的な特徴を備えつつ、同時にオプションパーツを組み合わせれば雪の季節にも対応可能という「3シーズン+」とも呼ぶべきテントも存在してます。モンベルアライテントHCS(ダンロップ)Heritage(エスパーステント)など昔から日本のテントメーカーが作るスタンダードモデルの多くはこのタイプです。

これらのテントは純粋な3シーズン・テントよりも強度や対候性に優れ、ポール強度や対候性も冬山でも対応できる剛性を備えています。また側面のメッシュ生地を減らす(あるいは開閉可能な二重構造にする)ことで、低温でも高い断熱性を発揮し、4シーズンほどではないにしても強風や大雪などの厳しい天候にも耐えることができます。そしてインナーテントの外側に被せるフライは、無雪期には雨に強く風通しの良いレインフライに、積雪期には別売りの、雪が入りにくく通気性と断熱性に優れたスノーフライ(or外張)に使い分けることで、年間通してそれぞれの季節にフィットした使い方ができるようになっています。

非常に汎用性の高さが魅力で、ビギナーでまだそこまで細部にこだわりがなく、かつ雪山も視野に入れている人にとってはスマートな選択肢といえるでしょう。

3シーズン+テントならば、あとから雪山にチャレンジしようという時でも別売りパーツを買い足すことで対応できるため、全体としてのコスパは高い。

3シーズン・4シーズンテントの特徴比較(3シーズン+テントはその中間的特徴)

タイプ3シーズンテント4シーズンテント
長所
  • 生地が薄く、軽い
  • 風通しがよく通気性が高い
  • 居住性や利便性が高い
  • 選択肢が多い
  • 生地や素材の剛性・耐久性が高い
  • 強風・大雨・大雪等にも耐えられる構造
  • 断熱性が高い
  • (使おうと思えば)1年中使用することが可能
短所
  • 4シーズンに比べれば暴風雨や寒さ・吹雪に対しての対候性は低い
  • 薄手軽量生地は相対的に耐久性が低い
  • 重い
  • 保温性を優先しているが故に通気性は低い
  • 熱も逃げにくいため夏に使えば暑い
  • 必要最低限のスペースを確保した構造のため居住性は低い
おすすめ用途
  • 真冬を除いた季節の、本格雪山登山を除く幅広いスタイルの登山・ハイキング
  • 冬の積雪期登山や荒れた天候に十分耐えられるテントを考えている場合には最適

ポイント2:サイズ ~そのテントを使う人数、どれだけ快適に泊まりたいかに合わせて選ぶ~

テントの名前には「ホーネットストーム 1P」や「アルトTR2」というように、名前の後ろに数字が書いてあることに気づきます。これらはそのテントの収容可能人数を表しており、テントのサイズは自分想定している使用人数とこの数字を合わせて選ぶのが基本です。

ただ注意したいのは、軽量化のため登山用テントのサイズはたいていの場合「ギリギリ寝られるサイズ」であり、決してその人数が快適に暮らせる広さではない場合が多いということです。超軽量を謳うモデルでは特に窮屈であることを覚悟する必要があります。

一般的に1人用テントであれば居住部分の短辺幅は70~80cmでスリーピングマットが入るぎりぎりの幅、90cm以上あれば余裕あり。テント内に荷物が入れられる余裕があると何かと助かる。

このためもし平均より大柄な人や、快適さのために少し広めのスペースが欲しい人は、想定する人数よりも1人大きいサイズのテントを選ぶのはひとつの方法としてアリです。あるいは一部のメーカーが作っている、幅や長さがより広めの「1.5人用」や「1~2人用」といったサイジングのテントを選ぶという手もあります。

ソロでのハイキングなどはできるだけ軽量でコンパクトなテントを選びたくなるかもしれませんが、寒い季節などではできる限りテントの中に荷物をすべて入れておきたくなったりするものです。そんな時より余裕のあるスペースのありがたみは想像以上。テントサイズに関しては人数だけでなく、実際の広さと自分が求める使い勝手を想像したうえで広さを検討するようにしましょう。

ポイント3:構造・タイプ ~自立か非自立か、シングルウォールかダブルウォールか?~

使用するシーズンと大きさが決まったら、次に検討するのはテントの「構造」と「壁の作り」です。

山岳用テントには先ほどの対応シーズンによる違いの他に、大まかに「自立型・非自立型」といった支柱となるポール構造の違いと、そして「シングルウォール・ダブルウォール」といった外と内とを分ける壁の数の違いが存在し、この2軸を掛け合わせて「自立型・シングルウォール」「自立型・ダブルウォール」「非自立型・シングルウォール」「非自立型・ダブルウォール」の4タイプに分けることができます。それぞれの特徴の違いを知っておくことは、最適なテントを選ぶ上で欠かせません。以下、それぞれの特徴の違いについて説明します。

自立型か、非自立型か?

まずは日本で市販されているテントの多くが採用している「自立型」のテント(下写真)は、複数本のポールをクロスさせグロメット(テント末端の穴)に固定し、そのポールに沿ってテントを釣り上げて張る方式で、いわゆる昔からある山岳テントの典型的なデザインです。

利点としては、何よりも建てるだけならペグなどの杭を一切使う必要がないため、初心者でも容易に建てられることです。またペグが要らないということは、硬い岩場や柔らかい砂地といった杭を打ち込みずらいような場所でもスムーズに設営することができることでもあります。ただしより安定させるためにはペグやガイラインを使ってしっかりと地面に固定する必要がありますので、ペグが一切必要でないということではありません。

もうひとつ「非自立型」はテントの四隅以上の部分をペグで固定し、テント中心部分に通した短めのポールに両端からテンションをかけることではじめて立ち上がるテントです(下写真)。

こちらは何よりもポールが少ないため軽量・コンパクトなテントを作ることができるのが利点。ちなみに極端な超軽量テントではこのポールをトレッキングポールで代用してさらなる軽量化を図ることも珍しくありません。

ただこのタイプはどんな場所でもしっかりと四隅を固定するスキルや、正しい方向にテンションを張るスキルなど、ある程度設営にスキルと慣れが必要なため、旅慣れたベテランやウルトラライト・ハイカーの間で人気があります。

またここ最近のモデルでは、この自立型と非自立型のいい所どりをした「半自立型」といえるようなタイプもよく見られます(下写真)。これらは複数のポールをジョイントによって連結したY字型のポールを使い、テントの片方は2本のポールで支え、もう片方は1本のポールと2つのペグで支えることで、建てやすさと軽さをバランスよく兼ね備えることに成功しています。こうして両タイプの垣根は昔に比べてずっとあいまいになってきているのが現状です。

シングルウォールか、ダブルウォールか?

自立型、非自立型どちらのテントにも、テントと外気を仕切る内壁(インナーテント)と外壁(フライ)が2層構造になっている「ダブルウォール」タイプと、1層のみの構造になっている「シングルウォール」タイプが存在しています。

ダブルウォールテント(下写真)は、通気性に優れたインナーテントと防水性に優れたレインフライに層を分けることにより、高い防水性と通気性を両立することができます。こうすることで、温度・湿度の異なるさまざまな天候でも常により快適な状態を保ちやすくなります(場合によってはレインフライ無しで張るということもできるし)。またテント内側に水滴が付着する「結露」も発生しにくくなります。この使いやすさから一般的な3シーズン用テントのほとんどはダブルウォール型です。デメリットはシングルウォールテントに比べれば重くなりがちということですが、実際は普通のハイカーが気にするほど致命的な差にはなりません。

ダブルウォールテントは山岳用テントのスタンダード。

一方、テント本体とフライが一枚の防水透湿生地で構成されているのがシングルウォールテントです(下写真)。当然軽量でコンパクトにしやすく、設営もよりスピーディに行うことができます。ただ入り口が斜め上に向いているため激しい雨などが吹き込みやすかったり、生地の特性上テント内壁に結露が発生しやすいなどの弱点もあるため、どうしても汎用性はダブルウォールに比べると低くなります。このため比較的乾燥した地域や冬などの乾燥した季節で、ファスト&ライトのハイカーやアルパインクライマーが使うのに適しています。

シングルウォールテントは軽量・コンパクト・スピーディな設営が魅力。特定のスタイルを極めていくときに有力な選択肢となる。

ポール構造とウォールタイプによる、各タイプの特徴比較

種類自立型×ダブルウォール自立型×シングルウォール非自立型×ダブルウォール非自立型×シングルウォール
イメージ
強み
  • 大部分のテントがこのタイプ。それ故選択肢が多い
  • 場所を選ばず設営できる
  • 雨がテント内に吹き込みにくい
  • 通気性が高く、結露が少ない
  • レインフライによる前室があるので、ブーツやパックを置いたりできて便利。総じて居住性が高い
  • レインフライが不要なのでダブルウォールよりも軽いことが多い
  • 場所を選ばず建てられる
  • ダブルウォールに比べて設営が簡単
  • ポールが少ないため非常に軽量
  • しっかりとペグで固定できればかなりの風にも耐えられる
  • 雨がテント内に吹き込みにくい
  • 前室があり、さらにポールが垂直に立ち上がるため内部が広く、居住性が高い
  • 通気性が高く、結露が少ない
  • ポールが少なく、なおかつ1層構造のため非常に軽量のため、超軽量テント(シェルター)に多い
  • しっかりとペグで固定できればかなりの風にも耐えられる
  • 前室的なスペースも作れるため、ある程度居住性も高い
  • テント内に雨雪が吹き込みにくい
弱み
  • シングルウォールに比べて重くなりがち
  • シングルウォールより設営が面倒
  • 主に雪の季節を想定した必要最低限の居住性しかない
  • 前室がないので雨・雪が吹き込みやすい
  • ブーツや荷物などを置いておくちょうどよいスペースがない
  • 通気性が低く、テント内が結露しやすい
  • 稜線上の堅い地面や柔らかい砂、氷上などペグが打ちにくい場所では設営しずらい
  • 設営にある程度慣れとスキルが必要
  • 堅い砂利や氷の上などペグが打てない場所では設営しずらい
  • 通気性が低い
  • テントの内側が結露しやすい
  • 雨の多い時期・エリアでは快適性が低い
おすすめ用途・スタイル
  • 初心者やより汎用的なモデルを探している人
  • ベースキャンプとして数日快適に過ごしたい場合
  • 重量と設営の手間が重視されるバックカントリースキーや冬のアルパインクライミング
  • ファストパッキングや超軽量ハイキング
  • 森林限界以下の森や雪上での幕営
  • 超軽量ハイキング

ポイント4:建てやすさ ~優れたテントは設営・撤収も簡単でスピーディ~

まだ日暮れまでたっぷりと時間がある陽気の下であれば、のんびりとテントを建てるのもよいでしょう。ただ登山では、日没ぎりぎりにようやくたどり着いたテント場で急いで設営しなければならないケースや、強風・豪雨の中で設営しなければならないことも珍しくありません。そんな時に簡単に、素早く設営・撤収ができるテントがあればどれだけ助かることか。このことは厳しいテント泊縦走を経験したことがある人であれば誰もがうなずくはずです。ここでは建てやすいテントにはどんな特徴があるのかについて考えてみたいと思います。

一般的に自立型テントは素早く設営できますが、非自立型テントはペグやガイラインを適切な位置と方向に合わせないと上手く設営できないため、設営には手間とスペースが必要で、どんな状況でも上手く使いこなすには練習が必要です。

非自立型テントを皺ができないようにきれいに張るのは意外と難しい。。

その他、例えばヘリテイジ HI-REVOのように自立型テントでもポールが「スリーブ式」のモデルは、より短時間で建てやすい仕組みになっているといえます(下写真)。

これはポールを通すスリーブ(テントの外側にある細い筒状の部分)の片側末端が閉じているため、空いている方からスリーブに通して押し込んでいくと先端で止まるようになっており、押し切ったら手元のグロメットに留めるだけでポールがセッティングできます。いちいちテントの四隅に移動してそれぞれのグロメットに留めるといった手間がかからない分、素早く設営ができるというわけです。

とはいえ、スリーブ式でないタイプ(吊り下げ式)が特別建てにくいということは決してありません。最近の進化したテントは連結クリップも取り付けやすく、また外れにくくなり、ポールも色分けされていたりあらかじめジョイントされていたりして昔に比べればどんどん建てやすくなっています。ちょっと前までならばスリーブ式の方が吊り下げ式よりも建てやすいとはっきり言えていましたが、今では正直好みの問題といえるかもしません。

建てやすいテントの作りとして現在でもまだはっきりと挙げられるもう一つの例があります。それはヒルバーグ ソウロやアクトのようなインナーとフライがあらかじめ連結されているタイプのテントです(下写真)。

ヒルバーグのインナー・フライ一体型構造はテント設営の革命であり、今では多くのメーカーが参考にしている。

通常のダブルウォールテントは、インナーテントを設営してから、次にフライをかぶせて固定するという2段階の作業が必要ですが、このタイプのテントの場合、インナーとフライが連結されて一体になっているため、外側のフライにポールをセットするだけでインナー・フライごとまるっと、あっという間にテントが設営できてしまいます。またこの方法で設営すれば、雨や雪の中での設営でもインナーテントが濡れる心配もないというおまけもついた素晴らしい仕組みです。

いずれにせよ、どんなテントを選ぶにしてもあらかじめ自宅で設営して建て方に習熟しておくことが必要です。最低でも初めて買ったテントは山に行く前に一度庭で建ててみなければなりません。そうすることで、どんな状況であっても冷静に時間の無駄なく設営することができ、最悪のケースを防ぐことができます。

ポイント5:居住スペースの快適さ ~テントの住み心地は床面積の広さのみにあらず~

内部スペースの広さ

居住スペースとは、寝たり、食べたり、話したり、着替えたりするための空間全体のことであり、いうまでもなくテントでいかに快適に過ごせるかを大きく左右する重要な要素です。

快適な居住スペースを決めるポイントはもちろん第一にはテントの床面積の広さですが、この面積が広いことが即「広い」テントという意味にはなりません。なぜなら山岳向けテントは軽量化と耐風性強化のため地面から立ち上がっている壁が急傾斜になりがちで、たとえ床面積が十分に広かったとしても、頭の高さの空間は狭く、そのおかげで必ずしも体感的に「広さ」を感じられるとは言えないからです。

ただ現在では素材とデザインの進歩によりその問題は大きく改善され、より開放的で心地よさを感じられる「広い」テントが増えてきています。これからテントを選ぶ際には、こうした広々とした居住空間がきちんと確保されたデザインになっているかどうかも、後悔しないテント選びのポイントとなってきます。

テントの居住空間の広さを知る最も手っ取り早い方法は、もちろん実際に店舗で候補となるテントを設営してもらい中に入ってみることです。しかし現実的にはすべてのテントでそれができるわけではありません。そこでテントの内部空間を想像するために、スペックなどから次の3つのデータをチェックするとよいでしょう。

  • テント内部の床面積:室内床面積はそのテントがどれだけの居住スペースを確保できるかの大前提ですが、これだけでテントの全体的な広さを判断することはできません。
  • テント内部の高さ:テント内部で最も高い部分の高さ。天井に頭が当たるような低さは問題外ですが、先述したようにこのスペックだけでは上部空間全体の広さを判断できるわけではありません。
  • 側壁の傾斜:壁が垂直であればあるほど、テント内の上部空間はより開放的に感じられます。商品画像などでチェックする場合は壁の角度がテントの天井に向かって垂直に近くなっているかどうかを見ます。

最新の高機能テントでは上部スペースを大きくとることで、従来に比べて驚くほど快適な居住性を実現している。

前室の広さ

居住空間の広さに影響を与えるもうひとつの要素は、前室の広さです。前室とはテントのフライとインナーテントの間にある空間のことを指し、ここが広いテントは、テントの外側にここにはバックパックやブーツ、炊事用品など多くの道具を収納でき、貴重な室内スペースをより広く確保することができるため、結果として広々とした居住空間が実現できるのです(下写真)。

もちろん前室は単にスペースが増えるだけでなく、雨の日に濡れた道具でテントの中がびしょ濡れになるのも防げます。

前室はフライとインナーの間に作られるため、たいていのシングルウォールテントにはありません(この点でもダブルウォールの方が居住性が高いといえます)。また前室の確保の仕方については各メーカーさまざまな工夫がなされています。出入口に前室を広げるための特別なポールが張り出していたり、トレッキングポールなどをテントの出入り口に張り出すことによって広くしているような仕組みなど、広さも仕組みも多種多様です(下写真)。

出入り口の数

出入口の数も、テントの居住空間の広さに影響します。いやそれどころか特に2人用以外のテントにおいては、出入りの自由さはテントの住みやすさ全般に影響するとも言える重要な要素です。

仲間と一緒にキャンプをする場合などは、明らかに2つ以上のドアを持つモデルの方が便利です(下写真)。トイレに出るときにいつも仲間を乗り越えて通らなければならないとしたら、お互いにとってそのストレスは想像に難くありません。それぞれのためのドアがあり、それぞれのための前室スペースがあれば、より快適なテント生活が送れます。

また2つのドアを全開放すれば、それだけ風通しも良くすることもできます。さらには入り口付近で調理する場合、万が一風向きが変わってしまったとしても風下側に場所を移せるというのも大きな利点です。

ただもちろん、入り口が増えることよってテントの重さも多少増えてしまいます(ジッパーの重さもバカにできない)。テント選びではこのように常に重さと快適さの優先順位を意識しなければなりません。例えばソロハイキングで使うのであればその恩恵は少なくなりますので、出入口の数は1つで軽い方がいいという考え方は十分あり得ます。重量を減らしたいのか、快適に行きたいのか、すべてのハイカーにとってそれぞれの最適な選択があります。

出入口の位置

出入口の作りで個人的にこだわりたいのはその位置です。出入口が「長辺側」にあるテントはそれだけ大きく入口を開くことができるため解放感や通気性、出入りのしやすさはかなり快適になります(下写真)。一方「短辺側」にあるテントの場合、出入り口が相対的に狭くなるので通気性・居住性は下がるのであまり好みではありません。ただ、テント内への空気が入りにくくなるということは耐風性・断熱性が上がるということもあり、より寒い季節や雪に対してはより安心なテントといえます。このため短辺側出入口タイプは厳しい冬まで対応しているテントに多く、より厳しい環境への対応力を重視するならば有意義な選択肢といえます。

内部のポケット、ギアロフト

テントの中ではヘッドランプや手ぬぐい、メガネなどの小物類はすぐに取り出せる分かりやすい場所に置いておけると非常に快適性が上がります。気の利いたテントにはこうしたニーズに対応して側面ポケットや天井部分にネットなどを配置したり(下写真)、細引きを通すためのループが設置されているモデルがあります。余裕があればテントの内部にこうした工夫がないかどうかも見ておくとよいでしょう。

ポイント6:通気性や換気性(ベンチレーション) ~換気の良さは快適さだけでなく安全面でも重要ポイント~

テントの中で快適に過ごすためには、広い居住空間の他に、通気性や換気の良さも重要です。

真夏に通気性の悪いテントを使うと、日中はまるでサウナ、夜は夜で気温が下がったことによる結露で水滴がシュラフやウェアを濡らし、切なくなります。通気性・換気性は、暑さに対してはテント内を冷やしやすくするために、そして寒さに対しては結露を抑えるためにも重要なポイントです。

通気性は3シーズン・ダブルウォール・メッシュ地多めが有利

テントの通気性の良し悪しは、いくつかの要素に左右されますが、通気性だけを考えると、すべてにおいてベストなテントは「3シーズン・ダブルウォール・メッシュ地多め」のテントです。ダブルウォールテントのインナー生地は通気性のある生地を用いているためより多くの空気を通し、薄手であればあるほど通気性はより高まります(つまり3シーズンテント)。さらにメッシュ・パネルを多く使用していれば当然それも通気性を高める要因になります。逆にシングルウォールテントの防水透湿生地はダブルウォールに比べると通気性が低く、さらに内側から結露した水滴、外側から雨の水滴が付着するとさらに通気性は下がってしまいます。

インナーテントのメッシュエリアが多いテントは通気性だけでいえば最高。

ちなみに出入口が2つ以上あったり、入口面や換気口が大きく開いたりする場合にはさらに空気の通りがよくなるのは言うまでもありません。

メッシュパネルがない場合はベンチレーション(換気口)の位置や大きさ、効率のよさをチェック

メッシュ生地は通気性にとっては都合がいいものの、その分、雨風へのプロテクションや断熱性では弱いと言わざるを得ません。このため日本をはじめ天候の変化が激しいエリアでも快適に使えるように意識されたテントではメッシュ地の少ない、もしくはメッシュ無しのテントが主流です。その場合、換気性を保つためにベンチレーション(換気口)がついていることがほとんどです。

ただこのベンチレーションの付け方によっても空気の通りの良し悪しは変わってきます。理想はなるべく上方に配置してあり、なおかつ空気の流れに逆らわない向きに、なるべく大量の空気が出入りできるような形で付いていることですが、昔ながらの小さな丸い筒のような(空気の通りも悪く使い勝手も良くない)ベンチレーションのままであることが多く、理想的なベンチレーションのついたテントに巡り合うことは簡単ではありません。いずれにせよ適切な換気は、暑さを和らげるだけでなく寒い気温の中でも結露を減らして暖かさを保つのにも役立つ、快適さのための重要なポイント。少しでも快適なテントを目指すならばしっかりとチェックしておきましょう。

SEA TO SUMMITのアルト・テロス テントは、個人的にこれまで出会った中で最もスマートなベンチレーションと換気システム。

ポイント7:タフネス(耐風・耐水・耐久性・ポール強度) ~強すぎず、弱すぎず、重量と強度のベスト・バランスを見極める~

日常では決して遭うことのないような激しい強風や大雨、そして吹雪に耐えるためにテントは非常に強靭に、そして雨・雪・風などのさまざまな厳しい天候に対してびくともしないようにできていなければなりません。 

ただ、雑に見栄えだけ整えた極端な格安テントは、実際には対候性・耐久性に関しておろそかにしている可能性があるので要注意です(快適で、軽くて、強いテントは特別な理由がない限りどうしても高価になるものです)。そうした怪しいテントに騙されないように、テントの強度に関する最低限の知識を備えておくことは決して無駄ではありません。

ちなみに悪天に対してテントを守るために、テントの形状や素材について気を配ることも重要ですが、それよりもテントを張る場所や向き、そしてペグやガイラインを適切に固定するといった張り方も同じように大切です。その意味もあって、安全なテントの張り方の基本を理解し、自分のテントは納得いくまで素早くキレイに張れるように下界で練習しておくようにしたいものです。

生地の素材・厚さ

テントの耐久性を考える最も簡単な方法の1つは、生地の素材や厚さを確認することです。スタンダードなテントはナイロンやポリエステル素材を使用しており、フロア、側壁、レインフライの厚さ(デニール)があればあるほどテントの耐久性は高く(重量は重く)なります。一方で高価ですが軽さと耐久性を両立したダイニーマやシルナイロン、タイベックといったより高品質な生地を使用しているモデルもあり(下写真)、軽量なテントはカタログでその点に配慮があるかどうかチェックするようにしましょう。

薄手生地を用いた軽量なテントは、常に穴が開いたり破れたりしやすい傾向があります。特にフロア部分は地面に尖った岩や木によって破れやすい部分でもありますので、目安としてはここが25デニールを下回るような極端に薄手のテントにはフットプリントを使用するなどを検討することをおすすめします。

ポール

テント専用のポールは一般的にアルミ合金かカーボンファイバーでできています。軽さでいえばカーボンファイバーなのですが、1点への強い力が加わったときにあっけなく折れることがあるため、個人的には正直あまりおすすめではありません。一方アルミ合金製のポールは軽量で強度がありながら柔軟で、手頃な価格など多くの利点も備えています。中でもEASTON社やDAC社などのトップブランドからは、細く軽量でなおかつ強度と耐久性を保った独自のアルミ合金技術による高品質ポールが多く作られており、総合的な実力・使い勝手では明らかにこれらのアルミ合金製ポールが優れているといえます。もし可能であれば、検討している製品がどのブランドのポールを使用しているか、それが信頼のおけるブランドうかどうかをチェックしておくのをおすすめします。

ちなみに、ポールの内部を通っているゴム紐は年々劣化していき、3~4年で伸縮性がなくなるくらいダラダラに伸びてきてしまうことが多いので、定期的に交換することも心掛けておきましょう。

ペグ(ステイク)

地面に打ち込む杭であるペグ(下写真)は丈夫で軽量なほどより早く、より強固なテント設営を可能にします。ほとんどのモデルに付属している純正ペグはメーカーによって作りが大きく違い、一部のメーカーのモデルには、地面に食い込みにくく、強く打ち込むとすぐに曲がってしまうようなユルいアルミ製の残念なペグが付属していたりします。

また悪天候でガイラインを使用する場合は、標準で付属している分だけでは足りないことも多いのが実情。このため、ペグに関しては純正品とは別物を交換するという選択肢も十分あり得ます。また地面が土か雪かによっても使えるペグは異なります。ではどんなペグが良いか?それについて話しだすと、このスペースでは到底足りません(実際にペグは考え出すととっても奥が深い道具なのです)。とにかく「軽く」て「地面に刺さりやすく」て「打ち込んでも曲がりにくい」ものを選ぶとだけ言っておきましょう。

フットプリント

フットプリントとは、テントの下に敷くフロアと同じくらいの広さをもったシートで、鋭利な小石等からフロアを保護したり、床からの浸水を防いだりしてテントの寿命を延ばすのに役立ちます(下写真)。市販されているテントには、フットプリントが標準で付属しているものもあれば、別売りで付属していないものもあります。

その昔フットプリントなんてものは一般的なアイテムではなく、というよりもテントのフロア生地自体が分厚くて丈夫な生地であったためフットプリントは不要であったというのが実際だったかと思います。つまり基本的には、フットプリントは必須の道具ではありません。昔からある定番テントにフットプリントが付属していないのは、そういった老舗テントメーカーとしてのプライドもあるのでしょう。

ただ、近年のどんどん薄手・軽量化を追求したテントに関しては、フットプリントの使用をある程度前提としているモデルが多くあり、そのような場合、フットプリントなしではちょっとした凸凹の地面でテントフロアに穴を開けてしまうケースが十分にあり得ます。先ほど話したように、フロアの生地が25デニールを下回るようならば要注意です。もしそのような薄手テントにもかかわらずフットプリントが標準で付属していないとしたら、破れてもいいと割り切って修理の備えをしておくか、余計な出費を覚悟しなければなりません。

ポイント8:重量 ~カタログにある重量表示は比べ方に注意~

どんな荷物でも重量は気になるもの。なかでも1個あたりの重量でいえば最も大きな部類に入るテントならば、選び方次第で重量が大きく改善できるとあって非常に気になるところです。

すべてのテントを実際に持ってみて重さを比べられるのがベストですが、現実にはそうもいきません。そこで必然的にカタログスペックをチェックすることになります。ここで注意したいのがそこに書いてある重量が「総重量」なのか「最小重量(本体重量)」なのかという点です。前者はテント本体、レインフライ、ポール、ペグ、ガイライン、スタッフサック、フットプリント(付属している場合)を含んだ、テント購入時に付属しているほぼすべてを合わせた重量のことを指します。一方後者の場合、含まれているのはテント本体とレインフライ、ポールだけです。重さを比べるときにはこの内容物を揃えないと正確に比較することはできません。経験上どのメーカーも最低限「最小重量(本体重量)」は記載されていることが多いので、テントの比較の際には最小重量同士で比較することをおすすめします。

そのうえで、目安としては1人用の山岳テントの場合、最小重量が1,000グラム(2人用であれば1,300グラム以下)程度であればそのテントは軽量の部類に入ると考えてよいです。また1,500グラム前後であれば軽さと耐久性のバランステント、そして2,000グラム前後あればそれは冬でも安心のタフネステントと考えて間違いないでしょう。

いずれにせよテントは重量と耐久性の間にはトレードオフの関係があることが多いので、その辺りのバランスを自分のニーズと照らし合わせて検討することは忘れないようにしましょう。

まとめ

厳しい環境で命を守ると同時に、どこまでも軽量で快適な使用感が求められるテントは、さまざまな場面を想定した数多くの高度で複雑な技術を積み重ねたアイテムです。自分にぴったりのテントを見つけるためには、ここで示したような複雑に絡み合うさまざまな要素の中から、自分のなかでの優先度を決め、絞り込んでいくのが賢いやり方です。

ただ、もちろん最初からできなくても心配する必要はありません。ぼく自身、山に登り始めたばかりの頃は極めてオーソドックスなアライテントで十分快適さを感じていました。ただそこからさまざまな季節・アクティビティを経験していくうちに、シーンに合わせてより適したテントを使うことのおもしろさに気づいていき、今では複数のテントを場面に応じて使い分けるようになりました。その意味ではテントも他の山道具同様、初めはオーソドックスなものから、徐々に長く続けていきながら必要に応じて新たなモデルを足していくということがよく、その際にはまたこの記事を参考にしてもらえればと思います。

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