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比較レビュー:身軽な山歩きやファストパッキングにピッタリな軽量バックパックを比べてみた

各項目詳細レビュー

単位重量

今回ピックアップした候補は必ずしもただ軽いだけのモデルを選んだわけではありませんが、軽量バックパックというからにはできる限り重量の軽いモデルの方がありがたいことは当然でしょう。そうはいっても単純に重量を比較するのでは、モデルごとに異なる大きさ(容量)を反映していないことになるので、きちんと公平に評価してあげる必要があります。そこでこの比較ではより正確さを期すため、まず各モデルの実容量と実重量を測定し直しました。

通常容量の量り方はメーカーがそれぞれ独自の方法に従っているため、それぞれの公式情報からでは厳密に相対比較できたことにはなりません。そこで今回はすべてのモデルを「ピンポン球が何個入るか」という指標によって量り直します。ピンポン球の直径は約40mm(0.4cm)なので、1個あたり0.064リットルを占有しているという想定でリットルに換算しています。なお、パックの形は当然柔軟でしかもピンポン球は個々の大きさも若干ぶれているため、この値は厳密な容積を示すものではありません。あくまでも今回の相対比較のための目安容量となりますのでご注意ください。

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すべてのパックの容積を同じピンポン球で量り直すことで、容量・重量を相対的に比較できるようにする。

こうしてメイン収納部とそれ以外(天蓋やその他外部ポケット)でそれぞれ合算した総容量と、さらに付属品をすべて取り付けた状態で測り直した実重量から、そのバックパックの単位容量(1L)あたりの重量を算出します。その結果まとめたのが以下の表です。

アイテム山と道 U.L.FramePack ONEGossamer Gear Gorilla 40 Ultralight BackpackMILLET ベノム30THE NORTH FACE カイルス35THULE Stir 35Lmont-bell バーサライト パック 30Montane ultra tour 40OMM Classic 32LULTIMATE DIRECTION ファストパック30HMG 2400 Windrider
公式容量
(L)
35~47403035353040323040
参考実測容量※1(L)47433136343548323541
メイン収納:外部収納(L)36 : 1132 : 1124 : 730 : 632 : 230 : 539 : 926 : 627 : 834 : 7
公式重量(g)57379395011051000605730540700799
実測重量※2(g)600※3810(M)9001055(M)1015610755(M/L)750695(S/M)825(M)
1Lあたり重量(g)12.818.928.729.429.617.315.623.219.720.1

※1 ピンポン球(直径40mm)をパック全体に詰めた個数をリットルに換算した独自の計測結果によるものですので、あくまでも本比較での目安です。
※2 取り外し可能なパーツや付属品(レインカバー等)をすべて含めた実測数値です。
※3 本体生地:70D Silicone Coated Ripstop Nylon、外部ポケット生地:X-Pac VX07、背面長51cmの場合

ここから言えるのはまず山と道 U.L.FramePack ONEの圧倒的な軽さです。最軽量であるだけでなく、ギリギリまで詰められるメイン収納と大きな外部ポケットによって大容量の収納が可能。おまけに少ない容量はサイドのコンプレッションを締めてバランスを保てるし、大容量でもフレームがしっかり入っているためパックが型崩れすることもなしと、決してスペックだけのパフォーマンスではないことが素晴らしい。同じようにGossamer Gear Gorilla 40も(前モデルよりは重くなったとはいえ)軽さと容量のバランスが非常に優秀でした。

一方mont-bell バーサライト パック 30Montane ultra tour 40も単位重量のスコアはトップクラス。ただし使用した限りこの2つで注意したいのは、背面パッドが貧弱なため詰められるだけ詰めるとパッドが歪んだり、重すぎて肩を痛めたりしてしまうこと。実質的に”使える”容量としてはあまり詰められないと考えた方が良いかもしれません。

なおMILLET ベノム30THE NORTH FACE カイルス35THULE Stir 35Lについては単位重量という意味では残念な成績でしたが、これらは後に説明する背負い心地の快適性とある程度トレードオフであったということは付け加えておきたいと思います。

快適性

軽量バックパックは15kgを超えるような大きな荷物の場合、強靱な支柱と分厚いクッションの入った縦走用バックパックの快適・安定性には当然適いません。ただ、だからといって背負い心地や長時間行動しての疲れにくさを諦めてよいわけはなく、この項目では、このカテゴリで想定される約3~10kg程度までの荷重でいかに快適な背負い心地を提供してくれるかを比較しています。その際比較のポイントとして評価したのは、背面・ショルダー・ヒップベルトなど身体に当たる部分の背負い心地と、フレーム・ヒップベルトの連携によるサスペンションの安定性の2点。

まず各モデルの背負い心地を比較してみると、Gossamer Gear Gorilla 40が他のモデルに比べて特に優秀でした。アルミフレームとパッドが背中にほどよくフィットし、ショルダー・ヒップベルトには厚みのしっかりした3D Air Meshが加重を和らげてくれます。その他、トランポリン構造の背面を実装したTHE NORTH FACE カイルス35も背中へのあたりが抜群に快適。

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快適性はまず背面構造(フレームか、パネルか、パッドか)が大きく影響するが、それ以外にもヒップベルトが重心を引き寄せてパックを腰に乗せてくれるか、パッドの大きさや太さ、柔らかさ等が影響してくる。

次に各モデルのサスペンション安定性ですが、荷重がしっかりと背中から腰に乗るかどうかで身体(特に肩)への負担感がまったく違い、ある程度重い荷物を背負ってみることでその差が如実に表われてきます。ここでは主にパックの限界荷重に近い容量で同じコースを一定時間行動し、それぞれの快適さ、疲れやすさなどを比べています。仮に9月の奥秩父1泊2日ソロテント泊という想定で下の写真のような荷物を詰め(約8kg)テストしました。本格ウルトラライト装備でテント泊でも5kg以下は当たり前という人ももちろんいると思いますが、今回はあくまでも「無理しない程度に軽量な装備」って感じを想定していますのでご理解ください。

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ここで優れていたはTHE NORTH FACE カイルス35山と道 U.L.FramePack ONE。TNFの方は(ある程度予想できましたが)軽量バックパックにあるまじきしっかりとしたアルミフレームとフレームにほぼ直結したヒップベルトによって、どんな重量であっても構造的に加重が腰に乗る仕組み。一方山と道の方は剛性と柔軟性をもったX型のカーボンフレームを肩と腰にあるスタビライザーによって身体に密着させ、重心を腰の上に乗せる仕組み。この構造の便利な点は軽い荷物のときに腰のスタビライザーを緩めればあえて肩で背負って走りやすくしてくれる点で、こうした汎用性の高さも考えられた作りは他のモデルには見られない高評価ポイントでした。

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背面が柔らかく、ベルトで重心を引き付けるのが難しいパック(右)の場合、重荷ではどうしても加重が肩から後ろに引かれやすい。一方山と道(左)の「カーボンフレーム+スタビライザー(肩・腰)」は想像以上に荷重を腰に乗せやすかった。

ちなみに、快適性の採点で16を下回るモデルになると、重荷の場合に肩への負担は無視できないものになってきます。このため8kgを超えるような荷物での行動が多い人は、この項目で低評価のモデルを選ぶのは気をつけた方がよいでしょう。

機動性

時には早足や走るときも多いファストパッキングやスピードハイキングでは、のんびりと歩いているときの背負い心地だけでなく、激しい運動時でもいかにバックパックが動きを邪魔せず快適に行動できるかという意味での機動性が求められると考えています。この機動性では主に3kg前後の重量を背負ってトレイルランニングしてみて、その際の動きやすさ(=フィット感、手足の振りやすさ、パックのブレなさ)と、パックの通気性の2点を評価しました。

最も評価が高かったのは想像通りULTIMATE DIRECTION ファストパック30。もともとアドベンチャーレース向けの本格ベストで知られるブランドのノウハウが存分に盛り込まれたハーネスは、2本のスターナムストラップと脇腹のストラップによって胸より上を挟み込むように装着するため、ヒップベルトがなくても十分に固定力がありました(軽い荷物に限る)。なによりこの仕組みがもたらす下半身の自由はどのモデルも適わない動きやすさを与えてくれます。パッドの通気性も当たり前のようにしっかりとあり、まさに走るためのパックです。

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ランニングに特化したベスト型パックでは当たり前のストラップだが、これだけの容量のパックにベスト構造であるところがなんともユニーク。

その他ではMILLET ベノム30THULE Stir 35Lが通常のバックパックと同じ構造ながら非常に機動力が高いです。どちらにも共通しているのは、パックの形状がスリムかつ肩まわりのホールド感が高いため、動きに対してブレにくいこと(ベノムは広いショルダーベルトが、Stirはショルダーストラップがよく機能しているため)。そして背面・肩・ヒップの高い通気性が保たれていることも高評価の要因のひとつです。

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収納性

いかにコンパクトなボディに高い収納力を得るかということに工夫を凝らした軽量バックパックでは、通常のバックパックに比べて外側のポケット類が非常に融通のきくつくりになっていることが特徴ともいえます。この項目ではそうしたポケット類の「有無」や「使いやすさ」を収納性として比較・評価しています。

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軽量バックパックの外側ポケットは見た目以上に大きなギアが入るような仕組みになっていることが多い。

10モデルを比較してみて、具体的にポケットやアタッチメント類について評価したポイントは主に以下の点です。

  • 天蓋
  • フロントポケット
  • サイドポケット(サイドストラップ)
  • ヒップベルトポケット
  • ショルダーベルトポケット
  • ハイドレーションポケット
  • ポール(アックス)ホルダー
  • その他アタッチメント類

Montane ultra tour 40は天蓋以外、上記の収納をほとんどすべて網羅し、しかもそれらがなるべく軽く、でも耐久性と使いやすさを損なわず高いレベルで実装されており、収納性では文句なく優れたモデルです(このモデルの非常に残念な所はそれら収納を駆使して大荷物になったときの快適性・・・)。その他MILLET ベノム30THE NORTH FACE カイルス35も全体としてきめ細かく配慮の行き届いた作り。軽量系の使いやすいポケット類とスタンダードなバックパックと同等レベルの収納を合せもった安心感のある収納といえます。

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機能性

軽量バックパック最後の評価項目は機能性。ただ、機能といっても定義は難しく、要するにここまでの要素以外でパックの使い勝手を左右する要素をひとまとめにした項目とお考えください。具体的には以下のポイントをそれぞれのモデルで評価しています。

  • メインコンパートメントの開け閉めしやすさ
  • メインコンパートメントへのダイレクトアクセス機能
  • 背面調整機能
  • 背面マット付属
  • 軽量化のためにパーツを分離できるか
  • レインカバーや防水生地など防水に対するケア
  • 耐久性が極端に不安な箇所はないか

これらを総合して高い評価を獲得したのはTHULE Stir 35Lで、開け閉めの簡単なドローコードや、メインコンパートメントに直接アクセスできるジッパー、背面調整機能、パーツ分離、レインカバーなど便利な機能を万遍なく備えているところが他より一歩抜きん出ていました。

もうひとつ、耐久性に関してひとついっておくと、元々軽量バックパックには従来のバックパックと同様の堅牢性を求めるのは無理があり、またこちらの環境的な限界もあるため今回のテストでは特に集中して耐久テストということはしていません。実際テスト中もバックパックの中心的な部分で耐久性に難があると思われるモデルはありませんでした。ただ、普通に使っていてどうしても最低限の使用にも耐えられないと思われる箇所がいくつかあり、その点についてはこの項目で減点評価しています。具体的にはULTIMATE DIRECTION ファストパック30Gossamer Gear Gorilla 40のストラップに使用されている生地。ペラペラで使い難い(すぐ裏返る)し、すぐブチ切れすぎ。これだけはさすがに改善してほしいところです。

なお、これらの項目はすべてあれば良いというわけでもないため点数はあくまでも目安として、自分にとって必要な機能がついているかどうかを一覧表で確認するなどして判断してもらうのがよいと思います。

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左上からメインコンパートメントの直接出し入れが可能なジッパー、背面調整機能、左下から分離可能なパーツ類、取り外してマットとして使用可能な背面パッド。

まとめ

今回普段はなかなか入手しにくいガレージメーカーのモデルと全国で手に入りやすいマスプロメーカーのモデルを横並びで比較してみて、ハイキングというマイルドなアクティビティであればガレージメーカーのウルトラライトバックパックも十分に使いやすいばかりか、マスプロメーカーのモデルを上回る性能や機能も確認することができました。

もちろんこれをもって端的にガレージメーカーの方がモノとして優れているといいたいわけではなく、今回試せていないシチュエーションや、価格・購入しやすさ(何よりも試着できるかどうか)等も重要な比較要素であり、製品の優劣はそれら多角的な視点からユーザーそれぞれの判断が必要なことはいうまでもありません。

軽量バックパックは目的と使い方さえマッチすれば非常に使いやすいバックパックです。ただ今回の比較で明らかになったとおり、ウルトラライトやトレイルランから一般縦走まで幅広く活用できる可能性をもった汎用性の高いモデルがある一方、特定のアクティビティにかなりの重心を置いているモデルもあります。「やっぱり軽いバックパックがいいな」と思ってこれらのモデルを検討する場合、そうした特徴の違いを知ったうえで、自分の志向に適したモデルを選ぶのが軽量バックパック選びにとっては重要となってきます。

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