【忖度なしの自腹比較レビュー】通勤ラン・日帰りランから本格レースまで。一番快適で使いやすいトレイルランニング バックパックはどれだ?
なかなか出場したいレースが開催されず、やきもきしているトレイルランナーも多いでしょう。僕もその一人です。レースを決めて照準を合わせても、中止になれば一気にモチベーションも低下して、そのまま走りに行かなくなってしまった人も少なくないのではないでしょうか。しかし、今年は元通りとは言いませんが、徐々に開催されるレースも増えてきている模様。走りに行ってない間にも、トレラングッズたちはどんどん進化しています。新し道具を揃え、そろそろ重い腰を上げて走りに出かけませんか。
今回は、トレラン用パックの中でも、容量多めの10L前後のパックにフォーカスを当て、比較レビューしてみました。このサイズは、駅のロッカーに頼らずとも着替えなど多めの荷物を背負って走れたり、レースでは荷物が多くなるミドル~ロングディスタンスでのレースで重宝する、使い勝手の良いサイズです。そんなパックたちを、実際に使って各々の特徴を検証してみました。
目次
ランニング バックパック比較レビューについて
比較候補を選ぶ
今回はトレイルランニング用ベスト型パックを比較。比較するモデルは、普段の練習からレースまで幅広く使用できるモデルを選定。その中でも特に、普段の練習では着替えをいれて遠出できるように、レースではウルトラディスタンスまで対応できるよう、各メーカーのラインナップの中でも比較的容量の多い、以下の6モデルを選定しました。
- montrail:マウンテンマゾヒストレースパック
- Nathan:ベイパーカー 2.0 12L
- patagonia:スロープ・ランナー・パック 8L
- Salomon:ADV SKIN 12
- The North Face:ティーアール10
- ULTIMATE DIRECTION:ウルトラ ベスト 5.0
評価ポイント
上記比較レビュー候補のアイテムを実際に使用してみて、以下の6つの評価基準から評価しました。
- 快適性・・・一日中、長い時には何十時間も背負い続けるバックパック。その間いかにストレスなく快適に背負えるか。
- 収納性・・・行動中荷物の出し入れを減らしたい中、いかにストレスなく必要なものを収納できるか。
- 安定性・・・状況によって荷物の量が増減するトレランパック。どんな状況でも動きを妨げることなく安定して荷物を持ち運べるか。
- 機能性・・・トレラン中に役立つ機能などが備わっているか。
- 耐久性・・・重量が軽くなると犠牲になるのが耐久性。軽量でもどれだけ耐久性を確保しているのか。
- 重量・・・どうしても持ち物が多くなるトレラン。パック自体の重量も重要な判断基準になります。。
テスト環境
街ランや通勤ランではもちろん、日帰りのトレイルランニングコースや、レースにも使えるかどうかを評価するため、UTMF(ウルトラ・トレイル・マウントフジ)の必携品として指定されている道具をパッキングしてテストしました。ただパッキングするだけでなく、実際のレースを想定してそれらの道具も使用しながら判断しています。
テスト結果&スペック比較表
スマホ向けの軽量表示で表が見づらいという方はこちら
各モデルのインプレッション
Salomon ADV SKIN 12
#総合評価No.1 #日常からレースまで利用シーンを選ばず高いレベルで使える
ここが◎
- 高いフィット感と安定感
- パックを降ろさずにほとんどのことができる前面収納の充実
- 軽量性
ここが△
- 小型パーツの耐久性
トレイルランニンググッズといえば、確実に名前が挙がるほど有名なSalomon。ただその名前が独り歩きしているのではなく、実際の高いスペックが相まってのことです。このADV SKIN12も、まさにその名の通りのザックでした。
際立つのはその快適性と機能性。フィット感は非常に高く、肩から背中・胸まで非常に快適に包み込んでくれ、背負うといういうより着るという言葉が、今回比較したパック中では抜群に当てはまります。そのまま着ても、フィット感は高いのですが、Salomon独自のSensiFitで体形に合わせれば、他の追随を許さない快適性です。
その快適性は、フィット感だけでなく荷物をいれても変わりません。今回テストしたようにロングレースにに必要な荷物を全ていれても、ほとんど荷物が少ない状態でも、よっぽど重いものを入れない限り揺れることはありません。
快適性と耐久性をを高めているため、今回比較したパック内では特に軽い分類には含まれないですが、Salomonは他にも完全レース向けモデルをラインナップしているので、軽量性はそちらに譲っているのでしょう。
もう一つの特徴は高い機能性です。ポケットは体正面・側面の手の届く範囲に9つあります。ただ数が多いだけではなく、場所・大きさ・伸縮性など、もう不満はない!と言ってもいいほどです。水・補給食・手袋・ウィンドシェル・スマホ・ヘッドランプなど、レース中に必要なものは、すべて手の届く範囲に収納でき、止まることなく取り出すことができます。これはレースに出る人なら重視すべきポイントでしょう。
背面ポケットは大きなものから、ジッパー付きの小物入れまで全6つ。簡易防水になっているポケットもあるので、濡らしたくないものは汗や雨で濡れるのを事前に防ぐことができます。
肌に当たる生地は、ほぼ全面が粗目のハニカム構造のメッシュ生地で、それが2重に重なって配置されています。このハニカム構造というのがネックで、生地自体には伸縮性はないのですが、構造の特性上縦横に適度に伸縮してくれます。そして体側部には伸縮性の高い生地を配置しているため、フィット感・通気性どちらか片方をトレードオフすることなく実現しています。体を捻じっても、腕を回してもしっかりと体の動きに追随してくれるので、安定感も抜群です。メッシュ自体は荒いので、通気性は常に良好です。本当によく考えられています。
フロントポケットには行動中にのみ使うものを収納し、背面ポケットは使用頻度が低い必携品などを入れ、必要最低限の回数のパックの上げ降ろで済ます。という理想的な使い方ができそうです。
他にも考えられたポイントがいくつもちりばめられています。ポールの収納方法は3パターンあり、頻繁に出し入れするタイミングではフロントに、少しの間使わない時は伸ばしたまま斜めに、出番がない時は背面にと、シチュエーションによって収納方法を変えられます。
やや不安なのが、耐久性。軽量化と快適性を高めるためか、各パーツが他のパックに比べとても小型。長期間使ったわけではないので何とも言えませんが、このあたりの小型パーツ類が長く使っていくと劣化が早いのでは?という不安があります。
Nathan ベイパーカー 2.0 12L JP
#今回のダークホース #レースで最高のパフォーマンスを狙うならコレ #大型スマホも収まる前面ポケットが最高
ここが◎
- 動きの中でもブレにくいフィット感
- ハイドレーションの取り回しの良さ
- 大型スマホも入る防水ポケット
- 軽量性
ここが△
- ポールの取り付け不可
Nathanは主にトレラン用パックやウェストポーチなど、ランニング用品の製造販売しているアメリカのメーカーです。まだまだ国内ではあまり見かけないメーカですが、最古の100マイルトレランレースといわれるWestern States 100 Mile Endurance Runでの使用率は、Salomon、Ultimate Directionに続き、第3位のシェアと、海外では有名なメーカーです(詳細はこちら)。このモデルはアメリカで有名な選手Rob Krarのシグネイチャーモデル。インパクトのある見た目なので、写真では見て知っている人も多いかもしれません。そんなトップ選手が求めるエッセンスがふんだんにちりばめられたパックです。
フィット感は高く、着用時の違和感はほとんどありません。Salomonといい、この手の伸縮性のある生地がメインで作られたパックの着心地は抜群ですね。背中のポケットも、全体が伸縮性のある生地でできているため、入れた荷物の多少に関わらず、しっかりと抑え込んでくれるため、走った時の安定感も抜群です。
フロントポケットは全部で8つと、十分な数です。特徴的なのは、ファスナーがついたポケットが多いこと。全8つ中、3つのポケットにファスナーがついています。そのうちの一つは比較的大きめのポケットで、なんと防水のスマホポケットになっています。ゴツめのケースを付けた6.67インチのスマホも入ったので、どんなスマホでも入りそうです。
現在のトレランのハイドレーションの主流は、フロントポケットに入れるボトルです。このパックももちろんフロントポケットにボトルは入れられるのですが、特に背中に入れるチューブ式のハイドレーションが、非常に使いやすくなっています。胸のハーネスにはチューブを固定するマグネットがついているので、取り回しが非常に楽です。最近はこの手のパックは少なくなってきているので、チューブ式のハイドレーションを使っている人にとっては、それだけで選ぶ価値がありそうです。
肌あたりは、今回のパックの中では一番でしょう。この生地はしっとりしていてとても滑らかなので、非常に快適性。見た目の通気性は良くなさそうに見えますが、多少のパンチホールがあるので意外に通気します。想像なのですが、アメリカ人は裸で直接パックを背負ってるイメージがあるので、メッシュ地でなくこの素材を選択したのかもしれません。たしかに裸で着てみるとほかのパックとは比べ物にならないくらいの快適さでした。より伸縮性が必要な胸や、体側部にはより伸びる素材を使用しているので、体やランニング時の動きにはしっかり対応してフィットしてくれます。
一つ残念な点は、ポールが取り付けられないこと。ロングのレースでは、ポールを持っていく人は多いはず。常に使うものではないのですが、ポールの取り付け可否は大切なポイントなので残念です。ただ、ゴムひもを使ってカスタマイズして使っている人を見たことがあるので、そこは工夫次第でしょう。
重量ですが、国内公式ページでは310gとなっていましたが、実測値では239gでした。この差は誤差では収まらない重量なので、なんらかミスがあるのではないかと思います。全体的に地味なパックですが、あらゆる点に工夫が凝らされているので、もっと使用率が高くなってもよいのではないか!?と思わされる逸品です。
ULTIMATE DIRECTION ウルトラ ベスト 5.0
#軽くて収納性抜群 #全体的な完成度高し #メッシュの通気性
ここが◎
- 背面ポケットの収納力
- 200gを切る軽量性
- 全体的な使いやすさのバランス
ここが△
- フィット感がもう一歩
Salomonと並んで知名度が高いトレラン用パックと言えば、このUltimate Directionでしょう。ここも昔からトレラン用パックを販売していて、様々な有名アスリートからのフィードバックを受けながら進化し続けているこのウルトラベストも、バージョン5.0となりました。
SalomonやNathanと違い、包み込むようなホールド感はなく、伸縮性のある生地を多用していないためパリッとした着心地です。しかしフィット感を高めるための工夫は随所にみられ、特に腰の部分の調整コードは、装着してから絞れば、ぴっちりと背中密着してくれます。胸のハーネスも位置を細かく選べるので、より一層高いフィット感を得ることができます。とはいえ、Salomon やNathanと比べると、やはりややフィット感は低いです。
背面ポケットは全部で5つあり、一番大きなポケットは、完全防水ではありませんが、濡れないような生地で挟まれています。着替えを持っていくようなシチュエーションでは気にせず衣服を突っ込めるので、重宝します。ファスナー付きのポケットも2つあるので、小分けにしておきたい荷物を入れておくとわかりやすく便利です。
肌に直接あたる生地は2種類が別々に使用されています。どちらもクッション性のない疎水性メッシュ生地ですが、背中部分はやや硬めです。ここは耐久性優先でこの選択になったのだと思います。逆にショルダーストラップ部分は柔らかなメッシュ生地で、やや伸縮性がありメッシュ地が少し粗目になっています。そのため、ほぼフラットな背中と違い凹凸のある体正面にしっかりフィットしてくれるようになっています。背中のメッシュがしっかりとした生地のため、着るというよりしっかり背負ってる印象が強くなります。これは好き嫌いが分かれそうなところです。メッシュは通気性は非常によく、帰りの電車で臭くなるということも抑えられそうです。個人的にはsalomonやNathanは毎回洗濯したくなるけど、Ultimate Directionは3回に1回くらいで大丈夫なイメージです。
Ultimate Directrionのパックは、他にない色と、主張の激しいロゴのおかげでちょっと使用者が少な目な印象ですが、Nathanのようにアメリカではシェア高めのパックです。SalomonやNathan比べるとレースよりも、普段の練習、特に着替えを入れたりして荷物が多い時に、使いやすく重宝するパックという印象でした。とはいえ、今回比較したパックの中では最軽量なので、レースも普段の練習も無難にいけるかなり守備範囲の広いパックです。
The North Face ティーアール10
#今回一番荷物入ったのに安定感抜群 #全体的にソツがない #白いパックはやっぱりカッコいい
ここが◎
- 高い安定感
- 背面ポケットの収納力
ここが△
- フロントポケットがやや使いにくい
背負ってすぐ感じるのが、安定性の高さ。胸から肋骨にかけてしっかりと包み込んでくれます。これは今回のパックでもNo.1でしょう。その高い安定感は、荷物が少量でも多くても変わりません。荷物が多ければより安定感は増しますが、少量の場合でも背面のコンプレッションコードを引けば圧縮してくれるので、問題はありません。
収納力は高く、ポケット数はSalomonに次ぐ13個。フロントとサイドに大小8つあり、ランニング中に必要なものはすべて収納できると思っても間違いありません。特に一番大きめのポケットは深いので、折りたためばレインジャケットや薄手のベースレイヤーも入ってしまいます。ただ、なんでもかんでも入れてしまうと、いざという時何がどこにあるかわからなくなってしまうかもしれないので、ポケット内のオーガナイズは必要です。
ペットボトルを入れると、下のポケットの入り口に干渉します。ポケットは深いのでモノを入れることはできますが、出し入れがキツ目になるので、注意が必要です。
背中のメインコンパ―メントは非常に使いやすく、上からも下からも開くダブルジッパー仕様。下から開けば、中に何が入っているか把握しやすいので、荷物をたくさん携行する人には非常に使いやすいパックでしょう。
背面の肌に当たる生地には、2種類が使い分けられています。背面・胸に当たる部分のメッシュは吸水しないので、汗をかいてもパック自体は比較的ドライに保たれ、ずっと高い通気性を維持してくれます。そのため、このメッシュに接する部分に荷物を入れる場合、ジップロックに入れるなどの工夫をしないと汗でまみれることになります。もう一方のメッシュ地には適度な伸縮性があり、体の動きに合わせて伸び縮みしてくれるため、ランニングの腕振りなどの動作にもしっかり対応してくれ、高いフィット感、安定感を提供してくれています。
重量は300gを越え、今回のパックでは重めとなっています。しかしその分100デニールのリップストップ生地を使用しているので、ハードにつかったり、小枝に引っ掛かっても他の軽量パックのように破れてしまう心配はなさそうなので、長く使えるパックになりそうです。
Montrail マウンテンマゾヒストレースパック
#ハードに使っても安心の耐久性No.1 #コスパもNo.1
ここが◎
- シンプルな構成
- すべてにおいて高耐久
ここが△
- パーツがいちいちゴツイ
国内トレイルランナーで知らない人はいないといっても過言ではないほど有名な選手、上田瑠偉さん。彼が監修したトレイルランニングパックが、このマウンテンマゾヒストレースパックです。2019年スカイランナーワールドシリーズ年間王者の彼が、montrailと3年もの年月をかけて開発したパックとあっては、彼のファンのみならず非常に気になるパックでしょう。
とても単純な構造で、特殊なギミックもないので、すぐに使いこなせるシンプルなトレラン用パックです。左右のボトルホルダー・必要十分なフロントポケットなど必要なものはすべて揃っているので、普段の練習からレースまで多くを求めない人には良い選択かもしれません。
このパックで最も優れている点は、耐久性が高い構造かつ、丈夫なパーツを使用しているため、かなりハードに使っても早々に使えなくなるということはなさそうということ。トレラン用パックは軽量化のために各パーツを小さくしたり、生地を薄くしたりしていますが、このパックは一切ありません。よくありがちな、小枝にひっかけて破れた!ということもなさそうです。
ボルトポケットには、ペットボトルが難なく入る。というのもよいポイントでしょう。ほかのパックには入らないことはないのですが、かなりキツかったりするので、簡単に手に入るペットボトルがすんなり入るのは好ポイント。逆にサロモンのフラスコを入れると、かなり不安定です…しかし、ペットボトルが入ると、下のポケットにはモノが入りずらくなるので、そこは注意が必要です。
背中のメッシュは、中央とサイドで素材が切り替わっています。サイドのメッシュはクッション性のある粗目のメッシュ、中央は細かいメッシュで伸縮性がありクッション性のない生地となっています。背中に固めのモノが入っていても当たりは軽減されます。背面ポケットはマチがついているので、荷物は入れやすいですが、小さいものだとポケットの中で揺れるので、安定性はいまいち。走っていても中のモノの揺れが気になります。たくさん入れればその点は問題ありませんが、入り口が一つしかないので、出し入れがめんどくさくなることも。レース中に素早く中を確認して欲しいものを取り出す、という動作にはちょっと不向きそうです。
レースというより、普段の練習、特に着替えを持って帰りに温泉に入ってくるような場面には非常におすすめできるパックです。レースで上位を狙うような人には使っているうちに不満が出てきそうですが、そうでないなら、耐久性も高いので、長く愛用できる逸品です。
patagonia スロープ・ランナー・パック 8L
#シンプル・軽量・スタイリッシュ #気軽にランニングを楽しむなら
ここが◎
- シンプルかつ軽量な作り
ここが△
- レース使用にはスペック不足
Patagoniaがトレイルランナー向けにラインナップしている、ハイ・エンデュランス・キット。もちろんトレラン用パックも用意されています。今回はそのトレラン用パックである、スロープ・ランナー・エンデュランス・ベスト3Lのバックパック版、スロープ・ランナー・パック8Lを選びました。が、少々癖のあるパックでした。
フロントのポケットは全部で7つありますが、どれもタイトで小さ目。ボトルホルダーも小さく、ペットボトルを入れるとその下のポケットがほぼ使えないし、500mlのソフトフラスコを入れると、明らかにはみ出ています…
サイドのポケットは大き目ですが、入り口が小さく出し入れが大変。特に疲れているときは、かなりイラつきそう…入り口が小さいので、相応の大きさのものしか入りません。左胸にはスマホ入れもありますが、5インチを超えるスマホは入らないし、汗をかけば濡れる位置にあります。よく考えられている他のパックのフロントポケット達と比べると、見劣りしてしまいます。
背面は、一番外側に伸縮するポケット、ジッパー内に、メインポケット・ハイドレーションポケット・ファスナー付き貴重品ポケットがあります。外側はかなり撥水の利く生地なので多少の降雨では荷物は濡れなさそうですが、背中側から汗が染みてきてしまうので、濡らしたくないものを入れる時は、ビニール袋に入れる必要があります。貴重品ポケットも非防水なので、このパックを使うときはジップロックに貴重品を入れてこのポケットを使っていました。
背中のパネルは、凹凸のあるメッシュ素材でクッションは非搭載。ハイフレックス・ナイロン・モノフィラメント・メッシュと言われるそれは、クッション性はないですが、その分水分を吸収しないのと凹凸のおかげで、常に通気性は維持されて快適です。一日背負っていても汗が染みこんで臭ってくることもありません。
背中のポケットの生地はフィット感に関与する部分とは独立した作りなので、荷物の多少によってフィット感が変わることはありません。しっかりフィットしていれば、背中の多少に関わらずパック自体は体にしっかりフィットしてくれるので、走ってもパック揺れたりすることはありません。ただ、荷物の多少により背中のポケット安定感は変わってしまいます。中身がしっかり押さえられていないので、荷物が少量だと中身が揺れますし、重たいものだと左右に揺れがちです。荷物が少なくても、縦方向にコンプレッションをかけられるため、多少安定感を増すことはできまが、荷物量は入れすぎない、少なさすぎないが安定のコツでしょう。
他の5つのパックと比較してしまうと、もう少しどうにかできなかったのかな…と思わされてしまいます。しかし、今回、すべてのパックを背負った自分を見てみて気づいたことがありました。それは、このパックは街中でも馴染む唯一のパックだ!ということです。ほかのパックは色やロゴの主張が強く、機能性を意識した特殊な作りですが、このスロープ・ランナー・パックに関しては、非常にシンプルな作りかつ、スタイリッシュな外観なので、旅行先で街中を走ったり、ちょっとそのままトレイルに行ってみよう!という使い方をする人にとっては、かなりピッタリくるパックだと思いました。レースでの使用も考慮すると、スペック不足が否めませんが、気軽にトレランを楽しみたいけど、コテコテのパックはちょっと…という人には唯一のパックでしょう。
まとめ
今回は普段の練習から、ロングディスタンスレースにも幅広く使える、容量多めのトレラン用パックを比較レビューしてみました。やはりトップアスリート達のフィードバックを受け進化し続けているパックは、とても洗練されていて痒いところにも手が届くし、これ便利だ!と思わされる機能も盛り込まれていて、走るのがより安心・快適になります。
今回のアイテムの中では、やはりSalomon ADV Skin 12はレースにも普段使いにも文句なしで使用できる出来で、今のところ個人的にはレビューの終わった現在でも使用率No.1です。さすが数多くのトップトレイルランナーを要しているだけあります。Nathan ベイパーカー2.0も負けず劣らずでした。普段背中にハイドレーションパックを入れて走っている人には、ベイパーカーが使いやすいと思うので、この2点に関しては、自分のハイドレーションのスタイルで選ぶといいかもしれません。
上記2点がパック全体が伸縮性のある生地でできているのに対し、Ultimate Direction マウンテンベスト5.0・The North Face ティーアール10はしっかりとした生地主体で作ってあるため、かっちりとした作りで荷物も入れやすく誰でも使用しやすくなっています。レースでも活躍してくれますが、前の2アイテムよりは、普段仕様向けという印象です。
patagonia スロープランナー8Lは、レース向けではありませんが、通勤ランや日帰り温泉ラン、旅行先でちょっと山に行って帰りに飲んで帰りたい!というような人たちにはよりマッチしたパックでしょう。それにPatagoniaというのが好きな人には、それだけで十分選ぶ理由になるかもしれません。
暖かくなってきて、寒さが苦手なランナーもそろそろ動き出すころ。今年は出場可能なレースも徐々に増えてきそうなので、自分に合った新しいパックを新調して山に走りに行きましょう!