登山ガイド直伝!アウトドア好きなら知っておくべきガスストーブのはなし ~仕組みから選び方・使い方・メンテナンスまで~

“アウトドア”という言葉から誰もが思い浮かべるイメージに、バーベキューや焚き火といった野外での調理風景があります。青空や深緑の下で食事するあの幸福感は一度知ってしまうとやめられないという人は少なくないはず。

そこで当然必要になってくる「バーナー」や「ストーブ」と呼ばれる加熱・調理用器具は、一口にいっても「ガス」「ガソリン」「アルコール」「固形燃料」などの燃料による違いをはじめ、その構造によってさまざまな種類が存在しています。それぞれのモデルは一長一短あるため、季節や目的、人数によって何がベストなのか、自分にピッタリのモデルを選ぶためにはある程度の知識が必要になってきます。さらに誤った使い方は命の危険に関わってくる器具でもあるため、必ず自己流ではなく正しい取扱い方法を修得しておく必要があります。

そこで今回から2回にわたり、山での自炊で欠かせないアイテムのひとつである「ストーブ」について、専門家の監修の下あらためてその基本的な仕組みから選び方、使い方のコツ、手入れの仕方までをゼロから入門し直してみたいと思います。ここで取り上げるのは、登山やハイキングでは最もポピュラーで種類も豊富なガスストーブ(シングルバーナー)について。教えるのはプロの登山ガイドであり、そして当サイトレビュアーでもある入澤 隆史さん。さらに日本ガス石油機器工業会にも監修していただきました。

誰でも簡単に最適モデルを選ぶためのコツや安全な使い方など、これから泊まりがけのハイキングにチャレンジしようという人から、今まで他人に勧められるがままに何となく使ってきた人まで、きっと役に立つ知識が満載です。それでは早速いってみましょう。

目次

アウトドアでの調理用ストーブ、燃料が違うと何が変わる?

アウトドアで調理するための道具には、燃料の種類を含めてさまざまな道具を選ぶことができます。どれが常にベストであるというわけではなく、用途や目的によってそれぞれの長所を活かしながら選択することが大切です。まずは以下に燃料の違いによる長所と短所をまとめてみます。

燃料の違いによる一般的な特徴

タイプ ガス 液体燃料 アルコール・固形燃料 薪・炭
イメージ  
強み
  • 着火が早く簡単
  • 火力の調節も楽
  • 大きさ、機能な どさまざまな種類があり自身のスタイルに合わせやすい
  • 燃料自体は自動で栓が閉まるため、こぼれるといった心配がない
  • メンテナンスが楽
  • 場所を問わず燃料を調達しやすい(海外含む)
  • 季節(気温)や標高に左右されずに火力が安定する
  • 燃料容器を廃棄する必要が少ない
  • コンパクト
  • メンテナンスもほとんど不要
  • 調達もしやすい
  • 使う分だけ小分けにして持ち出せる。
  • 固形燃料は使った後荷物が減る
  • 自然の中なら大抵の場所で入手可能。
  • 大人数対応可能。
  • 趣きがある
  • 物理的に高火力が可能
弱み
  • 使い終わっても空き缶がそのまま残るためスペースをとってしまう
  • 標高や季節(気温)によって適切な種類(カートリッジ)を選ぶ必要がある
  • 燃料の調達が専門店でないとできない(カセットガスは別)
  • 着火までの下準備に時間がかかる
  • うまく着火させるためにはコツがいる。(失敗すると火が燃え上がり危険)
  • ガスに比べて器具が大きく重い
  • 燃料の漏れやこぼれに注意
  • メンテナンスの手間はガスより多い
  • ヘッドのバリエーションが少ない
  • 火力が弱く、ひとり向けまたはお湯を沸かす程度の用途がメインになる。
  • 火力の調節が難しい
  • 風にも強くない。
  • 炎が見えにくい
  • 燃料の漏れやこぼれに注意
  • 着火の手間や許可された場所など通常は限られた場所でしか楽しめない
  • 濡れたり湿ったりしていると燃えにくい
  • 着火には手間と時間もかかり技術や経験も必要
  • 火力調整・維持が難しい
適したアクティビティ キャンプ・バーベキュー・登山など、少人数から大人数までほぼオールラウンド 寒冷・標高の高い場所での登山全般 1人分のお湯を沸かす程度しか調理をしないハイキング・旅行 水辺や指定地でのキャンプ・野営

ガスストーブの基本的な仕組み

ここからは最も汎用性の高い燃焼器具であるガスストーブに絞って、その仕組みから選び方・使い方について説明していきます。

各部の名称と役割

①風防

炎が出る部屋を複数に分けたり、噴出孔の周りに小さい壁を造るなどの構造で風による炎の消失を防ぎます。風防がないモデルもあります。

②ゴトク

クッカーや鍋をのせる部分。

③バーナーヘッド

この部分から炎が出ます。

④点火装置

ボタンを押し込こむと微弱な電気が発生し火花がおきます。その火花の熱をきっかけにヘッドから出てきた空気と混ざったガスに点火します(環境によってはうまく機能しない場合もあります)。

⑤火力調整ツマミ

火力の強弱をおこなう部分。ツマミを回すことでガスの放出量を調整できます。

⑥ガスカートリッジ(燃料缶)

燃料が入った容器で、中には液体状の液化石油ガスが入っています。

⑦Oリング

連結したガスカートリッジとストーブとの気密性を保つ(ガス漏れを防ぐ)ゴム製のパーツ。

ガスストーブが燃焼する仕組み

ガスカートリッジの中には圧力を加えて液化した液化ガス(液体状のガス)と、外部の熱によって気化した気化ガス(気体状のガス)が詰め込まれています。ストーブのバルブを開けると、まずそこから気化ガスが大気中に噴出します。

次に吹き出したガスが、イラスト上の「一次空気」部分から取り込まれる空気(酸素)と混ざり合いながらバーナーヘッドに向かって上昇していきます。ガスを完全燃焼させるためにはただ燃焼性のガスだけがあればいいというわけではなく、酸素と混合させる必要があるからです。

上昇していった気体はヘッドに無数に空いた孔から吹き出し、そこに点火装置やライターの熱を加えることで点火。はじめてガスが燃焼します。

ガスストーブは燃焼している間も炎の周りから常に大量の酸素を取り込み続けます(「二次空気」部分)。炎が周りの酸素を正常に取り込み続けられるとその色は綺麗な青色になり燃え続けますが、それができないと色が赤に変色しながら燃えていき、同時に体に有害な一酸化炭素を発生させます。このためガスストーブは必ず屋外などの広い場所で行う必要があるのです。

点火して一度炎がつけばガスカートリッジから送り出される気化ガスは常に引火され続けるため、ストーブはガスが供給される限り燃焼を続けます。火力調整つまみでガスの供給量をコントロールしながら安全に使用していきます。

登山向けガスストーブ(シングルバーナー)の選び方

初めて山登り用にガスストーブを購入しようと考えたときになってはじめて、形も大きさも多種多様なモデルがあることに気がつく人が多いと思います。ここからはそんなさまざまな種類にどのような違いがあるのかを説明しながら、どういう順番で選択肢を絞り込んでいけばよいのかを実践的に解説していきます。

ポイント1:「何人くらいで使いたいか、どれくらい調理をしたいか」をイメージする

ただ漠然とストーブが欲しいと思いながらお店に買い求めにいって、何もわからないまま自分の使い方に合わないスペックのものを買ってしまって使いずらく、失敗してしまった。人に勧められるがまま同じモデルを買ったけど扱いきれない、といった失敗談はそう珍しくありません。そうしたミスマッチを防ぐためにまず「人数」と「使い方」を頭の中で整理しておきましょう。

まずは大まかでいいので、どれくらいの人数で使いたいのかをイメージします。厳密な人数までは必要ありません。完全にソロハイキングで使うのか、あるいは1~2人か、3人以上か、6人以上か、これくらいのアバウトな幅でストーブの主な利用人数を思い浮かべます。

続いてその人数でどの程度複雑な調理をするかという点を考えます。シンプルにお湯だけ沸かせばいいのか、それとも沸かすだけでなく、微妙な火加減を調整しながら焼く・炊く・煮る・蒸すとしっかり調理して山グルメを楽しみたいかをイメージします。

その2点をイメージすることで、まず大まかではありますが、ストーブに求める火力やゴトクや火口の大きさといった基本的なスペックの基準がはっきりしていきます。例えば1人でコーヒーを飲みたい位の使い方ならコンパクトで軽く、火力もそれほどなくてもいいでしょうし、グループで料理もしたいならゴトクが大きく安定性があり、火力が強いものの方が便利です。また火口の大きさ(炎の形状)が大きいと弱火でもクッカー全体に火が回るため弱火での調理がしやすくなります。このように人数と使用用途から連想されるストーブに求めるものをつなげていくと自分がどんな性能のモノを求めているかが整理できます。

人数・使用目的と火力の強さ・ストーブ自体の大きさ早見表

タイプ お湯を沸かすだけ 料理にこだわりたい
人数が少ない
  • 火力は弱めでもOK。
  • ゴトクは小さくコンパクトなものの方が無駄がない。
  • 火力は必ずしも強い必要はないが、火口は大きめの方が調理しやすい。
  • 調理で鍋を載せたりはずしたりするためゴトクは大きめで、安定感のあるものがいい。
人数が多い
  • 火力は強いに越したことはないが、必須ではない。
  • クッカーは必然的に大きめになるので、ゴトクは大きい方がいい。
  • 火力は強く、火口もできるだけ大きめの方がいい。
  • クッカーは必然的に大きめになるので、ゴトクは大きく安定感のあるものがいい。

選び方のポイント(具体的なイメージ例)

  • ソロ登山が多く、コーヒーやインスタント食品しか調理しない(お湯を沸かすのみ)という場合 = 小さくて軽量、火力も強くなくていい
  • 夫婦二人、日帰りでしか山にいかない。休憩で一緒にコーヒーを飲んだり軽く調理できればいい程度の場合 = 小さくて軽量、火力も強くなくていい
  • 1~2人程度の登山が多いが時間をかけて凝った料理をふるまいたい場合 = 調理がしやすく(ゴトクや火口が大きく)、火力も強め
  • 4~5人で山に行くことが多く、料理をしたり普通にお湯を沸かすだけでも大きなクッカーを使うという場合 = 調理がしやすく(ゴトクや火口が大きく)、火力も強め
  • 学生で部活や野外活動で使いたい、人数は多いが手間のかかる料理をしたりはしないという場合 = 大きいクッカーに対応(ゴトクが大きめ)、火力も強め

ゴトクの大きさとクッカーのサイズが合っていないと不安定になりやすいので注意しよう。

 

ポイント2:イメージに合ったストーブの種類(タイプ)を選ぶ

大まかな大きさと特徴がイメージができたら、次は具体的にどんな種類(タイプ)があるのかを見ていきます。それぞれのタイプには強みと弱みがあり、それらを理解して選ぶことで後々「こんなはずじゃなかった!」なんてことはなくなります。

直結型 ~はじめての1個にふさわしい汎用性の高さ~

価格や種類の多さから、選びはじめはこのタイプのモデルがまず目にとまると思います。火力はもちろん、サイズもコンパクトで軽いものからサイズの大きいモデルまでバラエティに富んだ選択肢のなかから選ぶことができます。またどのモデルを選んだとしても汎用性が非常に高いため失敗も少なく、それゆえに人気も高いスタンダードなタイプといえます。

直結型のメリット

  • 火力や大きさ・特徴など種類が豊富
  • 汎用性が高い
  • コンパクトで設置に場所を取らず、持ち運びにも便利

直結型のデメリット

  • どちらかというと安定性が低く、大型クッカーとの相性は良くない
  • 風防で囲むとガスカートリッジを熱してしまう危険があるため、風よけが施しにくい

分離型 ~大人数やこだわりの調理をストレスなく楽しみたいなら~

このタイプは直結型と違い、ストーブとガスカートリッジが離れているのが特徴。重量や携帯性は劣るものの、火力は一般的に高め。ゴトクも大きめでより低い位置にあるため調理もしやすく、大きなクッカーを置いてもぐらつかず安定性も高いです。火の周りに風よけを施しやすいのも魅力の1つ。

もしあなたが重さやコンパクトさは二の次、とにかくストレスの少ない調理が一番というならば、分離型は最適な選択肢となるでしょう。

分離型のメリット

  • 火元が低い位置にあるため安全性や作業性が高く、調理がしやすい
  • 火力も高くゴトクが大きいため大型クッカーとの相性がいい
  • 火元と燃料が離れているため安全に風よけが施しやすい

分離型のデメリット

  • 軽さと携帯性は直結型に劣る
  • 設置にある程度の広さが必要
  • 選択肢は少ない

高熱効率型(直結・分離タイプ) ~装備のムダを省き効率性を追求するなら~

近年ではクッカー底部に吸熱フィンを取り付け、風防を一体化し、ヒートロスを少なくして極限まで熱効率を高めた「高熱効率型」ストーブが(決められたクッカ―とセットで使うモデルが一般的です)

直結型、分離型両方のモデルがありそれぞれの特性にくわえて、少ない火力で効率的に熱が伝わり非常に早く調理ができ、燃料の消費を抑えることができます。ただ、選択肢も少なく合わせるクッカーとの制限があるなど汎用性は低く、自分の装備と用途をしっかりと見定める必要があります。

高熱効率型のメリット

  • 熱が無駄なくクッカーに伝わるため熱効率が高く、沸騰スピードが速い
  • 少ない火力で早く調理ができるため燃費が良く、トータルで装備の軽減につながる
  • 専用クッカーとセットで無駄のないコンパクトな収納ができる

高熱効率型のデメリット

  • 通常タイプよりパーツが多いため、同容量で考えると相対的には重い
  • 専用クッカー以外では最大限の効果が発揮できないため、クッカーの選択肢が事実上制限される
  • 一般的に価格が高い
  • 選択肢が少ない

選び方のポイント

これまでの話をまとめて、各タイプの特徴と向いているアクティビティを以下にまとめます。これらを参考にしながら自分のイメージと照らし合わせていくことで、どんな大きさのどんなタイプが適しているのか、選択肢がより絞られてきます。それらの候補のなかからより軽いモデルやコンパクトなモデル、使いやすいモデル、風に強いモデル、その他何らかの特別な機能をもっているモデルなど、細かい違いを自分の優先順位に従って選ぶとよいでしょう。

なお以下の表はあくまでも一般的な特徴ですので、実際にはモデルによって多少のバラつきがあることはご理解ください。

種類 直結型 分離型 高熱効率型・直結タイプ 高熱効率型・分離タイプ 【参考】ツーバーナー
イメージ

メリット
  • 軽量でコンパクトになる
  • 設置場所を取らない
  • 大きさ、軽さ、火力などバリエーションが豊富
  • 汎用性が高い
  • 作業性と安全性が高い
  • 大型クッカ―との相性がいい
  • 防風対策を施しやすい
  • 熱効率が高く、沸騰スピードが速い
  • 燃費が良く、トータルで装備の軽減につながる
  • 風防一体型で防風性が高いモデルもある
  • コンパクトな収納ができる
  • 熱効率が高く、沸騰スピードが速い
  • 燃費が良く、装備の軽減につながる
  • 防風性が高い
  • 地面から近い位置でクッカ―を置けるので作業性と安全性が高い
  • 燃料と調理スペースが区分けられており安全性が高い
  • コンロが2口あり調理スペースが広く、大人数向き
  • モデルによってアウトドア用(OD缶)やカセットコンロ用(CB缶)など、カートリッジのタイプが選べる
デメリット
  • 大型クッカ―は向いていない
  • 防風対策に注意が必要
  • 軽さと携帯性は直結型より劣る
  • 設置にある程度場所をとる
  • 選択肢が少ない
  • 軽量ではない
  • 選択肢が少ない
  • クッカーの選択肢が制限される
  • 一般的に高価格
  • 多人数には向いてない
  • 軽量ではない
  • 選択肢が少ない
  • クッカーの選択肢が制限される
  • 一般的に高価格
  • 設置にある程度場所をとる
  • 設置は安定した広い場所をとる
  • 重くかさばる(持ち歩くのは現実的ではない)
  • カセットガスタイプは寒い季節は苦手
得意な用途

湯沸かし・煮る・炊くなどの簡単な調理

湯沸かしから手の込んだ調理まで

湯沸かし程度

湯沸かしから手の込んだ調理まで 本格的な調理も可能
適したアクティビティ 少人数での登山全般 少人数でも調理前提の登山や、グループでの登山全般 燃料効率を考えた少人数での効率重視の登山全般

グループでの調理を前提としながらも燃料効率も考慮した効率重視の登山全般

キャンプ・バーベキューなどベース定住型アクティビティ
人数目安 1人~2人程度 2人~ 1~2人程度 2人~ 大人数対応
携帯性・重量
(個々はかさばるがトータルでは有利)

(個々はかさばるがトータルでは有利)
×
火力 △~◎ ◯~◎
(効率の良さでカバー)
◯(効率の良さでカバー) ◎×2
防風性 △~◯ ◯~◎

ガスストーブの基本的な使い方

自分の目的に合ったガスストーブを手に入れたところで、ここからは早速使い方を学んでいきましょう。基本的には火を出すだけの道具ですから使い方も一見シンプルですが、油断は禁物。意外な注意点があるのを見逃しているかもしれません。

なお、今回は基本的な使い方を紹介するに留めておきますが、第2回ではより安全に、便利に使うためのコツをたくさんご紹介する予定ですのでお楽しみに。

1. ガスストーブとガスカートリッジの連結

安定した場所を決め、接続部にゴミなどが付着していないかどうか確認してから、ヘッドのゴトクを広げてガスカートリッジと連結させます。このとき火力調節ツマミが閉まっていることも忘れずに確かめておきましょう。

注意:作業は縦向きにして行います。横向きにしながら連結すると、バルブから液体のガスが漏れて大事故に繋がる可能性もあります。またズレが無いようにしっかりとバルブに回しいれましょう。

2. ガスの噴射

火力調節レバーをゆっくりと回し、シューッとガスの音がでるまで緩めます。

注意:回し過ぎに注意。いきなり全開にしないこと。

3. 点火(着火)

点火装置のスイッチを入れて点火します。点火装置が元々付いていないモデルの場合はライターなどを使います。なお放電によって点火する「電子式」ライターは高所では着火しないことが多いため、いざというときのライターは火打ち石で点火する「フリント式」を携行しておくようにするとよいでしょう。

注意:点火装置が無い場合、点火装置で火がつかない場合にはライターを使います。

4. ストーブの取り外し

基本的にストーブは使い終わったらガスカートリッジから取り外します。数時間ならまだしも、帰宅後も付けっぱなしなんてことがあると、連結部分にあるOリングの劣化を早める原因となってしまうため気をつけましょう。

山から下りた時のメンテナンス、登る前のチェックも忘れずに

旅から無事帰ってきたら、時間が経たないうちに故障がないかどうかのチェックと過度な汚れが付いていないかどうかをチェックします。故障していた場合は修理に時間がかかりますので早めに気づいておくに越したことはありません。また汚れも付いたままで放置しておくとそこから劣化や故障の原因となってしまいます。もちろん登る前に使えるかどうか確認しておくことも重要です。

シングルガスストーブの基本的なチェック項目としては、以下の3点を覚えておきましょう。

Oリングのチェックと交換

Oリングの劣化に注意

カートリッジの接合箇所にあたる部分にはゴム製の小さなパッキンが取り付けられています。この小さなパーツはOリングといい、連結したカートリッジとストーブとの気密性を保つ(ガス漏れを防ぐ)重要なパーツです。もしOリングが劣化した状態で使用すると、容器と器具の接合部からガスが漏れ出し、最悪の場合引火して爆発や火災などの大事故につながる恐れがあります。

Oリングが劣化するとどうなる?

Oリングは5~7年程度での交換が推奨されています。つまり正しく使用していたとしても、あるいは使っていなかったとしても、購入後一定期間以上経てば経年劣化するということです。劣化するとゴムに切れ目・ささくれ・ひび割れなどのキズが見られるだけでなく、ゴム自体が全体的に硬化したり縮んだりします。

下の写真左側は個人的に10年以上前から交換しないでいたOリング。当時は無知だったこともありストーブを長時間カートリッジに接続したままで放置していたらしく、大きさは縮み、くっきりと型がついた状態で凹んだまま戻らなくなってしまっています。表面もボソボソ、触ってみると弾力もなくなっていました。同サイズの新品Oリング(写真右側)は表面もツルツルで弾力性もあり、違いは一目瞭然です。

経年劣化したOリングの例(写真左)。表面に傷がつき、弾力性が失われ、圧力によって型が付いたまま戻らなくなってしまっている。正常なOリング(写真右)との違いは一目瞭然。

Oリングの交換はどうすればいい?

Oリングの交換方法については自分で交換できるものからメーカー対応となるものまで、メーカーによって対応が異なるのが実際のところ。決して自己流で作業せず、各販売店かもしくはメーカーに問い合わせるようにしましょう。

ヘッドのクリーニング

スス汚れや細かいごみが燃焼に影響してしまうのを防止するため、ヘッドの汚れやホコリを落とし目詰まりを取ります。極細の真鍮ブラシ、眼鏡ふきのようなタオルを使います。繊細な部分ですので、無理に擦らず、傷つけないように丁寧に作業しましょう。メンテナンス方法はメーカーにより異なることもありますので、詳しくは各販売店、もしくはメーカーに問い合わせるようにしましょう。

ヘッドの形状やノズルの大きさなどはモデルによって千差万別。

ヘッドクリーニングの際の注意点

  • 基本的に水洗いは禁止。水を含ませたタオルで拭き取る程度にする。
  • 水分が残っていると錆びの原因になるため、濡れた場合は迅速にふき取り乾燥させること。
  • 強い力でブラシをかけない。特にノズルやヘッドのワイヤー部分など細かい部品が見える場所は優しく慎重に作業する。

点火装置のチェックと交換

点火装置にも寿命があり点火しない場合があります。火に近い箇所にあるため何かの拍子で溶けて故障したり、水に濡れたことで内部が錆びたり、何かしらの衝撃によって内部が破損してしまったりします。スイッチを押しても動かない、火花が起きない場合は各販売店やメーカーに問い合わせ、修理などの対処を行いましょう。なお点火装置は高所などの環境によって使用できないケースもあるため、山で着火しなかったからといってすぐに故障と断定せず、下りてからあらためてチェックしてみましょう。

点火装置はメーカーやモデルによって形状は多少異なる。

まとめ ~講師より~

ここまで読みながら実際には「そうは言ってもまだ何人で行くかどうなるかわからない」、「イメージが固まりにくくて・・」なんて方もきっと多いのだろうと思います。

そんな時は直結型の少し火力が強めのモデルを選んでおくと、少数でもグループでもどちらでも対応できて便利です。例えばその後に大幅に使い方が変わるような場合になって別モデルを購入した後も、汎用性の高いそうしたモデル自体は使い分けの中でも活躍するので非常に長く使い続けられます。このためもし最初のチョイスに困ったら、そんな選び方も参考にしてみてください。

それよりも大事なのは、今回の記事にもありましたガスの扱い方や注意点、モデルの特徴をしっかりと理解していただきたいというところです。

アウトドアで使うガスストーブは正しい使い方さえ学んでおけば魔法のようにアウトドアライフを豊かにしてくれるものです。一方で正しい使い方や適切な使用方法を理解しないまま扱ってしまい事故や怪我につながってしまうケースも後を絶ちません。

私個人も、目の前でガスカートリッジが破裂して大怪我をした人の手当てをした経験が何度かありましたが、立ち会った状況のすべてがガスストーブのタイプや特性を知らないまま危険な使用をしてしまい事故が発生してしまったという状況でした。具体的には、直結型に風よけをした破裂だったり、カートリッジバルブが破損していたうえに、違うメーカーのストーブを連結させた事故、横にしてつけようとして液漏れしたまま火をつけた火傷事故などです。正しい使い方やストーブタイプの特性をまず理解したうえで選ぶという流れが意外と軽視されがちで、アウトドアでのガス事故のほとんどがそうした点に起因しているといってもいいでしょう。

みなさん道具を選ぶまでは色々調べて考えるのですが、手に入れた後のことについては驚くほど多くの方の関心が薄れてしまっていていて結果事故に結びついてしまうきっかけを起こしてしまいます。その後、安全に使い続けるという点がとても重要であるということを、まずは忘れてはいけません。楽しく安全なアウトドアのためにも、食材、ガスストーブとクッカー以外にも、ちょっと面倒でもガスストーブの正しい使い方と知識も一緒に持って楽しく出かけましょう。

次回予告:【保存版】ガス機器を安全便利に使うために知っておくべき20のコツ(仮)

次回(11月初旬予定)は知っていると役に立つ、ガス機器をもっと安全に使うためのコツや効果的に使うためのヒントを紹介しますのでお楽しみに!

監修:日本ガス石油機器工業会 → http://www.jgka.or.jp/gasusekiyu_riyou/index.html 

Illustration by MASUDA KOHBOH Inc.

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