当サイトのレビュー記事はアフィリエイトリンクを通して製品を購入いただくことで少額の収益を得ています。

比較インプレ:さよなら夏の不快感。買ってよかったベースレイヤー・Tシャツ 2018

真夏のアウトドアに高機能ベースレイヤーが必要な理由

健脚やベテランは汗をかかない、なぜなら自分にとって無理のないペースを守っているから——。誰からともなく、何度か聞いたことがあります。そこから上着(ベースレイヤー)は綿素材以外であれば特に気にしなくてもいいよ、なんていうのです。

それについて、まぁ嘘とは言うつもりもないけれど、「そんな仙人みたいなハイカーなれるワケがないよ!」というのが20年歩いてきて今のところの結論。まだ修行が足りないのか、生まれつきのせっかちな性格も手伝って自分は年中、汗をかきまくっています。

かいた汗は素早く蒸発させないと、濡れた衣服によって低体温症のリスクが高まり、命を危険にさらすこととなります。日本(特に高山)の夏の寒暖差を甘くみてはいけません。

だから真夏のハイキングでは、抑えきれない汗を速やかに処理し、暑さ(寒さ)をできるだけ感じないよう常に体温を調節してくれるいかしたベースレイヤーが、ぼくたちには必要です。

今回は新モデルを中心に気になるベースレイヤー(Tシャツ)を購入し、その中でも実際に使ってみて良かった7着をそれぞれの特徴・機能比較とともに紹介します。

一応順位はついていますが、あくまでも機能で見た際の総合的な使いやすさという点くらいに考えてください。どんなアクティビティに使うのか、どのくらいの気温や湿度の場所に行くのか、どんな装備の下で着るのかといった条件によって、最適なモデルは変わってきます。それぞれのコメントを参考に、この夏の最適ベースレイヤーを見つけてみてください。

目次

今回の候補となったベースレイヤーについて

選考の基準

ベースレイヤーと一口に言っても、素材から生地の厚さ、袖の長さなど、組み合わせによってそれこそ選択肢は山ほどあります。ただそのなかでも自分が特に夏に山で着るシャツとして、結局のところ重宝しているのは「化繊・薄手・ロングスリーブ」のスタイルであり、今回のレビュー候補もそれを中心に選びました。

なぜこの組み合わせがいいのか。それぞれに理由があります。

まず素材について、着心地と保温性を中心に選ぶなら当然メリノウールがいの一番に頭に浮かびます。ただウールは耐久性ギリギリの薄さにしたとしても、真夏の低山には暑い。もちろん個人差があるので一年中ウールの肌触りを楽しめる人もいるとは思いますが、自分には許容量を超えてしまうため、夏用として選ぶならウールは50%以下が基本。

次に薄さ。これは軽さと言い換えてもよいと思いますが、とにかく薄いのがいい。一般的に薄い生地は通気性もよく風が吹けば快適だし、速乾性も高いため常にドライの状況を生みやすい。ただ、薄すぎる生地の場合はレース用のように耐久性を度外視しているものもなかにはあるので、そこは気をつけなくちゃいけない。

最後に、好みはあると思いますが、ロングスリーブ。半袖であればより涼しいのは確かですが、肌を露出するというのはその分リスクも少しだけ上がります。その意味で大きな理由のひとつはケガ防止。次に紫外線防止。あとは汗拭き。外見を気にしなければ、どうしても暑い場合には必要に応じて袖をまくればいいわけなので、体温調節という面でも使い勝手は確実にロングの方が上です。そんなこまごました理由から、山を歩くなら個人的にはロングスリーブを選びます。前面にジッパーが付いているタイプは換気性が高まりさらに温度調節幅が広がるのでおすすめ。

以上の理由で選んでみたモデルがこちら。

  • finetrack ドラウトゼファー
  • karrimor delta L/S crew
  • MAMMUT PERFORMANCE Dry Zip LS
  • MONTANE プリミノ140 L/S Tシャツ
  • Mountain Hardwear エステロロングスリーブジップTV.4
  • MILLET LTK インテンス ロングスリーブ
  • NORRONA bitihorn wool Shirt

テスト環境

基本的には6~7月に関東や信州、越後などの山域で、全モデル同じ状況下で実際に着て歩いて評価しました。その他、速乾性の比較では各モデル水を含んだ状態から一定時間後、どのくらい蒸発したかを計測しています。また保温性・汗冷えについては実際の状況での実感の他、脱水直後の濡れたウェアを着て風を浴びて比べたりなどもしています。

テスト結果&スペック比較表

総合評価AAAAAAAAAAAAAA
アイテムfinetrack(ファイントラック) Men's ドラウトゼファージップネック M LGfinetrack ドラウトゼファーカリマー(カリマー) delta L/S 21406M182-Navykarrimor delta L/S crew(マムート)MAMMUT アウトドア ロングスリーブ パフォーマンス ドライ ジップ ロングスリーブ 1016-00220 [メンズ]MAMMUT PERFORMANCE Dry Zip LSMONTANE/モンテイン PRIMINO 140 L/S T-Shirt/プリミノ140 L/S Tシャツ メンズ アンタクティクブルー(736)【日本正規品】MONTANE プリミノ140 L/S Tシャツ(マウンテンハードウェア) MOUNTAIN HARDWEAR エステロロングスリーブジップTV.4Mountain Hardwear エステロロングスリーブジップTV.4MILLET LTK インテンス ロングスリーブMILLET LTK インテンス ロングスリーブNORRONA(ノローナ) Bitihorn Wool Shirt Men's 2605-18NORRONA bitihorn wool Shirt
参考価格(税込)9,072円8,208円9,720円12,960円8,532円7,884円9,720円
フィット・快適性★★★★☆★★★★★★★★★☆★★★★★★★★★☆★★★☆☆★★★★☆
通気性★★★★★★★★★☆★★★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★☆★★★★☆
汗冷えしにくさ★★★★☆★★★★☆★★★☆☆★★★★★★★★☆☆★★★☆☆★★★☆☆
速乾性★★★★★★★★★★★★★★☆★★☆☆☆★★★★☆★★★★☆★★★★★
耐久性★★★☆☆★★★☆☆★★★★☆★★★★☆★★★★☆★★★★★★★★☆☆
スペック
アイテムfinetrack ドラウトゼファーkarrimor delta L/S crewMAMMUT PERFORMANCE Dry Zip LSMONTANE プリミノ140 L/S TシャツMountain Hardwear エステロロングスリーブジップTV.4MILLET LTK インテンス ロングスリーブNORRONA bitihorn wool Shirt
実測重量(g)110(M)115(S)127(AsiaM)160(S)110(S)149(JPM)124(S)
生地
  • ナイロン100%
  • POLARTEC®Delta (Polyester 51%, Tencel Lyocell 45%, Spandex 4%)
  • Primaloft_ Performance Fabric Dry(100% Polyester)
  • メリノ50%、PrimaLoft®25%、ポリエステル25%
  • デルタクラッシュワッフル(ポリエステル100%)
  • 本体: ポリエステル100% クイック ドライ
  • 背面:  ポリエステル91% ポリウレタン9% クイック ドライ
  • 本体:メリノウール 60%、ポリプロピレン40%
  • 背面:メリノウール 60%、ポリエステル40%
UVプロテクション
抗菌・防臭

買って良かったおすすめベースレイヤー

finetrack ドラウトゼファー

フィット・快適性 4 通気性 5 汗冷えしにくさ 4 速乾性 5 耐久性 3

テントなど軽量・高強度が求められる素材として重宝されるナイロンに、これまでポリエステルでしか難しかったレベルの吸水速乾性能を実現したという注目のベースレイヤー。まず手に取って感じたのは軽さと、薄さ。でも透けることはないのでそこはご安心を。そして他に比べてとにかく吸水性が半端ない。肌表面の水分に触れただけでウェアの方から文字通り吸い上げ素早く繊維に拡散させていき、すぐに汗が蒸発していってくれる。結果肌面はドライに保たれるというわけです。UVプロテクションも抗菌・防臭処理も優秀。裁断もよく動きやすいですが、欲を言えば日本人体型向けのフィットよりもスリムな方が好み。

karrimor delta L/S crew

フィット・快適性 5 通気性 4 汗冷えしにくさ 4 速乾性 5 耐久性 3

昨シーズンあたりから注目の、POLARTEC社が開発した吸湿速乾素材「POLARTEC®Delta」を採用した数少ないモデルのひとつ。特徴は何といってもメッシュと凸凹を組み合わせた生地の構造で、メッシュは通気性とストレッチ性(4%のスパンデックスも含め)を、凸凹は肌面と点接触にすることでベタつきと汗冷え感を軽減し、濡れても快適さを維持するという効果があります。要は端的に言うと、とにかく着ていて気持ちがいい、不快感が少ない。決してキツすぎないストレッチが身体に優しくフィットしてくれます。スタイルもちょうどいい。重ね着の際のベースレイヤーとしても優秀。弱点としては、面ファスナーや枝などのひっかけに若干弱いような気がするので、そこは少し気を遣わなければなりません。

MAMMUT PERFORMANCE Dry Zip LS

フィット・快適性 4 通気性 5 汗冷えしにくさ 3 速乾性 4 耐久性 4

冬の中綿素材で有名なPRIMALOFTが夏に向けて開発した「PRIMALOFT Performance Fabric Gold DRY」を採用した長袖ジップシャツ。着てみての第一印象は、なんて涼しいシャツなんだということ。その理由のひとつはこの生地の構造で、この薄さ・軽さにもかかわらず立体的に構成されており、肌面を格子状の凹凸にすることで点接触となりベタつきを軽減。また毛細管現象により生地が素早く汗を吸収・拡散し、汗戻りが起こらないような撥水糸を肌面に使用するように作られていることから速乾性もばっちり。フィットもマムートらしくタイトですが、窮屈な感じはありません。

MONTANE プリミノ140 L/S Tシャツ

フィット・快適性 5 通気性 3 汗冷えしにくさ 5 速乾性 3 耐久性 4

夏にウールは暑すぎる、それはごもっともで、実際のところこのモデルが最高のパフォーマンスを発揮してくれるのは夏よりも春・秋といった涼しい時期だとは思う。ただウールの着心地の良さはどうしても捨てがたいという人は多いはずだし、実際のところ寒暖差の激しい乾燥したアルプスのような高山での使用なら夏でも全然いけました。このモデルはウールといっても140gというかなり細い繊維が50%、残りは濡れても保温性を保つPrimaLoft®と吸水速乾性に優れたポリエステルという混紡のため、汗処理能力に関しても高いものをもっています。特に汗をかいて濡れた時でもウールとPrimaLoft®の特性から体熱を失うことが少ないため、汗冷えとは無縁の心地よさがあります(ゆえに速乾性の低さもあまり気にならない)。このあたり獣毛というのは本当に優秀で、天然の調温・調湿機能はまだまだ捨てたものではありません。ウェアとしての裁断の良さも相まって、一度着たら手放したくなくなる一着です。

Mountain Hardwear エステロロングスリーブジップT V.4

フィット・快適性 4 通気性 5 汗冷えしにくさ 3 速乾性 4 耐久性 4

今回の比較では全モデル中で最軽量の、速乾性に優れたハーフジップTシャツ。個人的には3年前から夏のベースレイヤーのスタメンを張っていました。こちらもいわゆる「ワッフル(格子)状の肌面」をもった、汗によるベタつきの少ない独自生地ですが、自分の知る限りではこのブランドがかなり前からこの手の作りを手掛けていたようです。さらさらとした清涼感のある肌触りは相変わらずで、かいた汗は不快感を感じる暇もなく蒸発していってくれます。暑い一日にはとてつもなく便利な一枚ですが、逆に保温性については期待できないため、泊まりの旅行を計画するなら寒さへの備えを忘れないようにしましょう。

MILLET LTK インテンス ロングスリーブ

フィット・快適性 3 通気性 4 汗冷えしにくさ 3 速乾性 4 耐久性 5

ミレーのラインナップのなかでもよりハイテンポな活動にフォーカスした軽量ギアシリーズ「LTK」のひとつであるこのモデルは、一見するとオーソドックスな見た目で、重量もさして軽くない。はて?と思ったところで背中を見てびっくり。バックパックが当たる背面が大胆なメッシュになっており、ウェア全体として激しいアクティビティにおいても効率的に通気性・速乾性を高める仕組みになっています。ハイクアップして大汗をかいているのは大体背中部分だったりするので、これは非常に合理的でありがたい。その他の部分も吸湿・速乾性の高い繊維を3Dニット(これもまたいわゆる肌面を凸凹構造)なので発汗時でも快適です。欲を言えばやや厚手、ややゆったりめのフォルムが気になるところ。また背面に熱がこもらないようにしている空間が開いたメッシュパネルのバックパックと合わせると、逆に「寒すぎる」という恐れもあるのでそこは気をつけたいところです。

NORRONA bitihorn wool Shirt

フィット・快適性 4 通気性 4 汗冷えしにくさ 3 速乾性 5 耐久性 3

メリノウールの快適性を活かしながら、同時に登山の激しい発汗にも耐えられるように考えられた軽量の長袖ウールシャツ。フィットは(窮屈なことはないけれど)かなりタイト。袖・丈も長い。そこには多少好き嫌いがあるかもしれませんが、重要なのはそこではありません。このモデルがヤバいのは本体部分に快適性を重視したウールと化繊の混紡生地を、発汗の激しい背中と脇周り部分にはウールと化繊の混紡メッシュ生地をマッピングしたことにあります。これによって基本的にはウールの着心地のよさを感じながら、汗をかいている部分はメッシュによって素早く汗を拡散してくれることになり、まさにいいトコ取り。実際にウール混紡にもかかわらず速乾性も抜群でした。ただし伸縮が少なく、腕まくりできないくらいにタイトな袖周りがやや難点。また上のミレーと同様、バックパックの背面に通気の仕組みがついているモデルと組み合わせると”冷えすぎる”場合もあるので気をつけましょう。

まとめ

夏向けのベースレイヤー・Tシャツは、どれも通気性と吸水速乾性に優れるという基本機能は同じです。その意味ではどれを選んでもそこまで大きな違いはないでしょう。ただどれだけ速乾性が高いといっても濡れている時間はあるわけで、その濡れた状態の時にヒートロスを防ぐ工夫が施されているか、その仕組みに着目すると、夏のベースレイヤー選びで間違いはないと思います。また裁断やフィット感はアンダーウェア気味のタイトなモデルから、1枚で着るのを意識したやや緩めのシルエットまで微妙に異なっているので、実際に試着して体型と目的に適したモデルを選ぶことも忘れずに。