比較レビュー:万能ジャケット ソフトシェル 一番「ちょうどいい」のは?春〜秋モデルを着比べてみた
防風、撥水、丈夫な上、透湿性もありストレッチもきき、保温もできる。そんな万能のような謳い文句のソフトシェルジャケット。とはいえ、各機能はどちらかというと”完全”ではありません。雨が降っても撥水程度なので激しい雨なら濡れてしまうし、フィルムが入っているわけではないので、強い風は防ぎきれません。しかし専門的な衣類とは違い様々な性能を持ち合わせ、アウターとしてだけでなく、インナーとしてでも幅広い使い方がでる良いとこどりジャケットとして認識されています。
そんなソフトシェルジャケットですが、携行性を重視するため、薄手で軽量そしてパッカブルで保温性は低めだったり、冬の登山で使うためには生地を厚めにし防風性を高め、フリースを裏打ちしてあるモデルなどと、各性能のバランスはメーカーや用途によって様々。ソフトシェルって良いって聞くから欲しい!なんて思って買いに行くと、よくわからなくなってしまいます。
そんな幅広い定義のソフトシェルジャケットですが、今回は比較的軽量で、春から秋まで幅広く使えるものを各メーカーから選んで比較してみました。できるだけ自分に必要な用途に合ったジャケットを見つけてもらうために、様々な側面から評価してみました。この記事を読んで、長く幅広く活躍するものを見つけてください!
目次
目次
今回比較したソフトシェルジャケットについて
以下は今回比較した6モデル。。
- Millet:ビオナセ ストレッチ ジャケット
- Norrona:bitihorn Windstoper Zip-Hood
- Mammut:Grinite so hooded jacket
- Mountain Hardwear:チョックストンフーディー
- Black Diamond:アルパインスタートフーディー
- Haglofs:Draken Hood
テスト環境
評価項目については、以下の5点を指標を設定し、同じベースレイヤーを1日中着続け、アップダウンのある山道や舗装路で歩く・走るなど、様々な強度の運動をして評価しました。
- 快適性・・・肌通り・肌触りの良さ、総合的な着心地の良さ。
- 機動性・・・アクティビティに対して、どれだけストレスなく動けるか。
- 機能性・・・ジャケットそのものの性能のみならず、実用的な機能が備わっているか。
- 耐候性・・・耐風・撥水・保温性能、など気候環境の変化に対してどこまで対応できるか。
- 重量 ・・・実際に計測した重量が軽いのか重いのか。
- 汎用性・・・特定のアクティビティのみならず、幅広く使えるかどうか。
テスト結果&スペック比較表
スマホ向けの軽量表示で表が見づらいという方はこちら
各モデルのインプレッション
抜群の機動力を誇る 低ストレス高負荷アクティビティ仕様シェル
Millet:ビオナセ ストレッチ ジャケット
ここが◎
- 通気性
- 機動性
ここが△
- 保温性が不安
登山をする人でMillet知らない人はいないでしょう。そのMilletのビオナセストレッチジャケットは、高いストレッチ性と、300gを下回る軽量性を誇るソフトシェルジャケット。生地には東レが開発したPrimeflexを採用。Primeflexは全方向へのストレッチ性と、それに対するキックバック性をもつ生地で、それに加え吸水性・速乾性も持ち合わせる、他のソフトシェルジャケットとは趣向の違ったモデルです。
フィットは体のラインに沿うようなタイトフィットで、見た目は非常にスマート。しかし体の動きに則した立体裁断と、非常に高いストレッチ性のおかげで、柔軟でストレスのない動きが可能です。防風に関しては他のソフトシェル並で、撥水も少雨であれば問題なし。通常のソフトシェルと同じような使い方ができる一方、汗をかいた時透湿性に頼るのではなく、生地で吸汗し速乾させるので、運動量の高いアクティビティでも使いやすい。実際汗をかくと吸い上げて拡散してくれますが、吸い切ってくれるので比較的肌面はドライな状態を維持してくれます。
機能性は高く、フード周りは細かく調整できるようになっており、首元のドローコードによる顔周辺の絞り、後頭部ドローコードによるこめかみ周りの締め付けで、強風が吹く稜線でもフードのバタつきはありません。本体もスリムフィットでウェストもドローコードで絞れることからも、そのような環境下での使用を想定していそうです。ポケットは左胸・両腰周りの3つで、全て粗めのメッシュ仕様なので、ベンチレーションがわりにも使用可能です。シンプルでスタイリッシュな作りで、タウンユースでも映えますが、やはり強風が吹くようなハードな環境でポテンシャルを発揮してくれます。
Norrona:bitihorn Windstoper Zip-Hood
適材適所なハイブリッド素材で いつでもどこでも着られる有能ジャケット
ここが◎
- 防風・透湿性
ここが△
- 低コストパフォーマンス
Norronaは海賊がトレードマークのノルウェー生まれのアウトドアメーカー。創設は1929年と老舗で、独特なカラーリングやデザイン性の高さもさることながら、非常に高いクオリティーも人気の秘密です。そんなNorronaのbitihorn Windstopper Zip-hoodは、非常に快適性の高いソフトシェルジャケットです。風や雨が当たりやすい、体の正面・腕前面・肩周り・フードには防風性・撥水性・透湿性の高いGORE-TEX INFINIUMを使用し、その他の部分にはストレッチ性の高いフリース素材が使われています。そのため防風性は非常に高く、多少の風雨ではビクともしません。
フィット感はややタイト気味ではありますが、下に厚めのベースレイヤーなら難なく着ることができます。GORE-TEX部分は伸縮性はありませんが、他の部分はよく伸びるストレッチ生地で着心地抜群です。ストレッチ生地は薄手ですがフリースになっていて、襟首も高く、防風生地はしっかりとシームテープで処理してあるので、強風や肌寒い日でも使いやすく、1年を通して長く使えます。防風性に対し、透湿性も高いのでランニングやファストパッキングなどの運動量の多いアクティビティでも出番は多そうです。
ジッパー仕様のポケットは両腰に1つづつあり、内部はストレッチメッシュ仕様。ベンチレーションの役割も果たしてくれます。袖の先端は全てストレッチ素材になっていて、サムホールもあるのでソフトで快適。問題があるとすれば、これはNorrona全般に言えることですが、値段が高め。ノルウェーの物価が日本より高いので、どうしても高価になってしまうのはしょうがないですが、値段に値する性能なのかといわれると、素直に首を縦に振れず、コストパフォーマンスは低め。しかし北欧生まれのNorronaにしかないデザイン性・カラーリングなどを考えれば価値のあるブランドです。
Mammut:GRINITE SO Hooded Jacket
走っても◎登っても◎どんな時でも機動性・通気性が気持ち良い
ここが◎
- 通気性が高い
ここが△
- タイト
MammutのGRINITE SO Hooded Jacketは、ミレーのビオナセストレッチジャケットと同じ生地、東レのPrimeflexを採用した軽量ソフトシェルジャケットです。メーカー公表値はないものの、実測ではasiaLサイズで244gと250gを切りとても軽量な仕上がりになっています。その分生地は非常に薄く、頼りないように感じますが、引っ掻きなど対してはある程度の強度は保っているようで、枝などが引っかかっても大丈夫でした。フィット感は、今回比較した中ではもっともタイト。僕はやや腕が太めなのですが、今回試したasiaLサイズでは、薄めのロングスリーブシャツを着ると前腕がやや張っていました。しかしストレッチ性はあるので、様々な動作に対しても突っ張りやストレスを感じることはありませんでした。
襟は防風性を高めるためか生地は 2重に補強してあり、肌当たりを悪くしないためか、縫うのではなく圧着処理となっています。このような細かい部分に気を遣っているととても感心します。ポケットは両腰に1つずつの合計2つ。ファスナーが見えないようにフラップで隠してあり、見た目は非常にスタイリッシかつシンプルです。ポケット内部はメッシュになっているので、ベンチレーションにもなります。フードとウェストはドローコードで調整でき、バタつきを抑えてくれます。
フィットもタイトで、防風性もありながら通気性は高いので、運動量が高いアクティビティには非常にマッチします。特にファスナーを下からも開けられるので、よりバタつきを抑えながらも通気性の確保ができます。風の強い稜線や、スクランブリング、トレイルランニングと、幅広い出番が期待できそうです。
Mountain Hardwear:チョックストンフーディー
登山からクライミングまでどんなアクティビティにも対応
ここが◎
- 汎用性が高い
ここが△
- 比較すると重い
Mountain Hardwear独自のChockstone™ 76D x 70D Double Weaveは、二重織り生地で裏地は凹凸があり汗でべとつきにくく、表地は撥水加工で多少の雨であれば気にせずそのまま使い続けられます。世の中にあるソフトシェルでは400gを下回り軽量ではあるんですが、今回比較したソフトシェル内では重量級。しかしその分生地の耐久性は高め。トレッキングでは枝や茨に引っ掛けても早々に破れることはないでしょう。袖の手のひら側は生地が2重になっていて、クライミングを意識した作りで、さすがMountain Hardwear抜かりはありません。
フィットはタイトでもルーズでもなく適度なフィット感。ベースレイヤーやミッドレイヤの上から着てもストレッチ性のおかげでフィット感は上々で、窮屈さは感じません。フードやウェスト部分はドローコードで調整するのではなく、ゴムシャーリング仕様で自然なフィット感を得られ、風が強い状況でも捲くられたりすることはありません。ポケットは両腰にハンドポケットが1つづつ、左胸に1つの合計3つ。全てのポケットがメッシュ+ジッパー仕様で、ファスナーを開けておけばベンチレーションの役割も果たしてくれます。腰の2つのポケットは、ハーネスなどが干渉しないように少し高めの位置です。右の腰のポケットはパッカブル仕様になっていて、コンパクトになり気軽に持ち運べて、色々使い道が思い浮かびます。
Black Diamond:アルパインスタートフーディー
言葉通りいつでも使える携行性の高い超軽量ソフトシェル
ここが◎
- ストレスのない機動性
ここが△
- 保温性・耐久性
アルパインスタートフーディーは、アップデートを重ね続けているBlack Diamond社のロングセラーソフトシェルジャケットです。生地にはスイスのショーラー社のストレッチウーブンを採用した、防風・撥水・透湿性のバランスが取れた実用性の高い薄手のソフトシェルです。実測重量は198gと非常に軽量で、軽い着心地でストレスの非常に少ない快適性は高いです。
フィット感はややタイトですが、腕はやや余裕のある作りで、袖も長めです。ここはクライマーを意識しているのでしょう。そのおかげで機動性は非常に高く、どんな動きをしてもストレッチ性の高さにより、全くつっぱることなくストレスフリーです。フードはヘルメットの上からも被れるように余裕のあるサイズです。もちろんドローコードでフィット調整できるので、ヘルメットを被らなくてもバタつくことはありません。ウェスト部分もドローコードで調整する仕様です。
ポケットは左胸1つのみ。ジッパーはリバーシブルになっていて、ポケットにしまい込めば、手のひらに乗るサイズになるパッカブル仕様です。撥水性は、少雨・霧雨くらいであれば問題はありませんが、比較的早めに沁みてくるので、そこは割り切ってレインジャケットを着るのが良いでしょう。軽量で、撥水・防風性もあり透湿性も高いことから、都合の良いウィンドシェルのような使い方が良さそう。生地はとても薄く耐久性の点では期待できないのでハードには使えませんが、気軽に使える出番の多いジャケットになるでしょう。
Haglofs:Draken Hood
山から街まで、北欧の機能美を堪能できるシンプルなジャケット
ここが◎
- デザイン性
ここが△
- 透湿性
HaglofsのDraken Hoodは、4wayストレッチ素材のFlexAbleを採用したシンプルな作りのソフトシェルジャケット。メンブレインは入っていないので完全防風ではありませんが、高密度に編み込まれた生地のおかげで風は防げ、通気もあるので衣服内に湿気がこもってもある程度は外へ逃がしてくれます。しかし高くはないので、運動量の多いアクティビティではフロントジッパーを上げ下げするなど積極的な換気が必要です。両腰にある大きめのポケットは、内側はメッシュになっていて、ベンチレーションの代わりにもなります。
生地のストレッチは非常によく、縦横全方向によく伸縮してくれ、着ている時のストレスはありません。撥水加工のおかげで撥水はしますが、長続きはしませんでした。初めはバンバン弾いてくれるのですが、少し時間が経つと逆にバンバン沁みてきました。フィット感はルーズ気味で、強風を受けるとかなりバタつきます。スリムフィットが求められるランニングやクライミングには不向きですが、トレッキングなどでは活躍します。フードは調整できませんが、ファスナーと上まで上げると口元を隠せ、バラクバのようになります。
Haglofsの商品全体を通しての特徴でもあるスタイリッシュさもあり、普段でも気軽に羽織れるアウターとして、年間を通して山から街まで着られる愛着の湧く一枚になるでしょう。
まとめ
今回は、比較的軽量な春ー秋、使い方によっては冬も使用できるソフトシェルジャケットを評価してきました。どのモデルも、軽量なモデルなので、生地は薄めでストレッチ性は高く、汎用性に富むものばかりでした。
Milletのビオナセストレッチジャケット、MammutのGRINITE SO Hooded Jacketは、東レのPrimeflexという生地を採用し、高い通気性と適度な防風性もあり、吸汗・速乾性のある新しいタイプのソフトシェルジャケットでした。春から秋にかけては撥水性もあることからアウターとして十分使えますし、トレイルラン、ファストパッキングのような運動量の多いアクティビティーでは、冬でも天気の良いときは活躍してくれそうです。しかし、保温性は期待できないので、ある程度の注意は必要です。冬でも使えるといえば、Norronaのbitihorn Windstopper Zip-hoodは、前面にGORE-TEXのWindstopperを採用し、背面にはストレッチ性のある生地と使い分けているので、下に暖かいベースレイヤーやミッドレイヤーを着れば、風の強い状況でも天気さえ良ければ冬でも十分使用できるでしょう。しかし気温が高いと、暑くなりすぎて換気が間に合わなくなるので、暖かい時期は、トレッキングなどのアクティビティが良さそうです。
Mountain Hardwearのチョックストンジャケット、Black Diamondのアルパインスタートフーディーは、重量にこそ隔てがあり違う用途のように見えますが、ドローコード類はなく作りはシンプル、パッカブルになり持ち運びも楽で、クライミングでも使用できるような機能性も持ち合わせているので、幅広い用途で使うことができます。一枚持っていると、何かと幅広く使える一枚になりそうです。
Mountain Hardweraのチョックストンジャケットは、やや厚手でややルーズフィットなので、普段着にはちょっと向かないような印象でが、他のジャケットはタイトフィットなので、普段使いでも違和感なさそう。特にHaglofsのDraken Hoodは、街で使うことも考慮してかスタイリッシュなシルエットで、どちらかというと、アウトドアでも使えるタウンジャケットといった印象でした。
ソフトシェルジャケットは定義や用途がやや曖昧で選びにくいかもしれません。しかし、ソフトシェルジャケットを買おう!という入りでなく、どのような用途で自分が使いたいかを明確にして、今回のレビューを参考にすれば、自ずと必要なものが見えてくるかもしれません。これからの時期は非常に重宝するジャケットなので、この機会にぜひ検討してみてください!