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【忖度なしの自腹レビュー】この冬、メリノウールを上回る保温性と汗処理能力の「アルパカウール」がアツかった。「Arms of Andes」ベースレイヤーレビュー

アルパカウールのベースレイヤーが冬の肌着に打ってつけすぎて俺の中で話題に

「メリノウールのベースレイヤーがいい」という話は、もはやアウトドア好きにとっては常識となりつつある今日この頃。

もちろん自分もそれについては異論ありませんが、世界は広く、自然は深い。未だ見ぬより高機能で地球にとっても優しい繊維が地球のどこかに存在しているはず。常に最高のレイヤリングを探求せずにはいられない自分のような山道具好きにとって、理想のレイヤリング探しはまだまだ終わりではなく、未知の素材を求めて探求は続きます。

そんなか2023年、ついにメリノウールにとって代わるかもしれない新しい高機能天然素材が生まれつつあることを某アメリカのアウトドア掲示板で観測しました。それが昨年あたりからアウトドア界隈でやたらよく耳にするようになってきた新しい天然繊維「アルパカウール」です。

実際のところアルパカウールという繊維自体はすでにかなり前から存在していましたし、自分でもアルパカウール製の「ソックス」は数年間から何足か使ってもいました。それはとても快適で、しかも丈夫で長持ちしてくれましたので、この繊維の存在と良さについて知らないわけではありませんでした。

そのアルパカウールで作られた「ベースレイヤー」があると知ったのは昨年夏ごろ。

正直、肌触りや着心地、伸縮性、薄さ・軽さといったより多くの繊細さが求められるベースレイヤーでは、まだまだアルパカウールが使われるとは思っていなかったので驚きでした。もう知ってしまった以上、これは調べてみないわけにはいきません。

アルパカウールでベースレイヤーを手掛けているメーカーはいくつかありますが、高品質のピュア・アルパカウール100%の薄手ベースレイヤーを手掛けているのは、調べた限り「Arms of Andes」という聞いたことのないメーカーだけでした。

Arms of Andesは、ペルーをルーツにもち、ロサンゼルスを拠点とする4人の兄弟姉妹によって5~6年前に立ち上げられた新しいブランド。新興なだけあって、彼らは新しい素材であるアルパカウールの可能性を追求するだけでなく、ペルーの農家を巻き込んだ持続可能なビジネスの実践、そしてペルーの伝統文化の継承をミッションとしているところも非常に共感が持てます(ブランド名の「Arms」は彼ら4人兄弟のファーストネームのイニシャルを組み合わせたものだそう)。

残念ながらまだ日本では流通していないため、こちらのアルパカウールベースレイヤー(長袖・半袖・半袖Vネック三着セット)を個人輸入で購入。ちょうどセール中だったので一着1万円以下。関税が少しかかりましたが、悪くない値段です。

この冬多くのアクティビティで試してみましたので、さっそくレビューしていきたいと思います。

Arms of Andes Alpaca Wool Shirt 160 Ultralight ベースレイヤーの主なスペックと評価

お気に入りポイント

  • 薄手でもかなりの暖かさ
  • 軽い
  • 伸縮性があって動きやすい
  • 調温性
  • 吸汗速乾性
  • 天然の防臭性
  • 耐久性(破れにくく、毛玉もできにくい)
  • 100%の生分解性(天然染料モデル)

気になるポイント

  • 気になるのは着始めだけだがややチクチク感あり(リンスに漬けたり何回か洗濯を重ねることで和らぐ)
  • 行動中裾が上がってきてしまう(後ろの着丈が長めに作られていればよかった)
  • 裏地の縫い目はフラットシームの方がゴロつきが少なくてよかった
  • 今のところ個人輸入しか入手手段がない
アイテムArms of Andes Alpaca Wool Shirt 160 Ultralight
素材100% ロイヤル・アルパカ・ウール(ローインパクトな染色とエコテックス®生産)
生地厚18ミクロン以下 / 160g/m2
実測重量(g)149.1(Sサイズ ロングスリーブクルー)
バリエーション
  • ロングスリーブクルー
  • ショートスリーブクルー
  • ショートスリーブVネック
カラーバリエーション天然染料を含む9種類
サムホール×
Outdoor Gearzine 評価
快適性★★★☆☆
保温性★★★★★
通気性★★★★☆
速乾性★★★★☆
動きやすさ★★★★☆
耐久性★★★★☆
重量★★★★★

はじめに:「アルパカウール」ってどんな繊維?メリノウールと比べて何がすごい?

ここで、すぐに製品をレビューする前に、そもそも「アルパカウール」という繊維自体、自分もしっかりとその特徴を知らなかったので、Arms of Andes WEBサイト 他いくつかの資料等で調べたこの繊維について特徴を、以下にざっくりとまとめてみます。

3,000m以上の高地で生きるアルパカから採取され「神の繊維」として古来から重宝されてきた高機能繊維

そもそもアルパカはペルーやボリビアなどの南米高地で伝統的に家畜として飼育されてきたラクダ科の動物。貨物輸送を主な目的とされた親戚のラマと違って、古来アルパカは柔らかく高級な繊維を目的として飼育され、インカ帝国の時代にはアルパカの毛が「神の繊維」として王族の衣服の製造にも使用されていたといわれています。

その後、侵略してきたスペイン人たちによってアルパカ繊維の文化は一時破壊され、19世紀に復活し……といった細かい話はここでは割愛しますが、個人的にはかなり興味深く読めたので気になる方はぜひメーカー公式にある「アルパカウールの歴史」を読んでみるとよいかと思います。

メリノウールよりも軽くて暖かく、自然な通気性も備え、温度調節性と吸汗速乾性に優れる?

引用:Arms of Andes

3,000mを超える南米アンデス山脈の高地を生き抜いてきたアルパカは、日中は太陽が照りつけ、夜は凍えるような寒さという厳しい環境の中で自らを守るために身体をアルパカウールで包み、数千年にわたって繁殖してきました。

このためアルパカウールの繊維は激しい温度変化に対応できるよう、メリノウールを含めた天然繊維のなかでも飛び抜けて高い保温性を有しているとか。それはアルパカウールの繊維が羊毛と違って、中央に空洞がある「半中空構造」となっていることが大きな理由のひとつ。ここにたまった空気が高い断熱効果を生み出すという仕組みです。

この半中空構造は断熱性だけでなく「自然な通気性と軽さ」にもつながります。繊維が動くと呼吸をするように新鮮な空気を循環させ、余計な熱を発散。熱をため込み過ぎずに自然で快適な暖かさをキープしてくれ、激しいアクティビティ中でも蒸れを逃してくれます。おまけにアルパカウールは他のウールに比べて湿気の吸収が少ない(メリノウールの水分吸収率が重量の約 30% であるのに対し、アルパカウールは約10~11%)ことで、発汗の多いアクティビティでもドライで快適な状態を保ちやすくなります。

メリノウールよりも強い?

アルパカウールはメリノウールに比べて強くて耐久性の高い繊維です(もちろん個々の繊維の強度や耐久性、寿命は、製造方法や厚さによっても異なります)。ある検査ではアルパカの引張強度は 50 であるのに対し、メリノの引張強度が30〜40であるとの結果もあります。また、アルパカウールはその構造上の性質から「毛抜け、毛玉、型崩れ」といった消耗が起きにくい繊維でもあり、その意味ではメリノウールよりも「長持ちする」ということも言えます。

メリノウールよりも柔らかくて滑らかで低刺激(≒着心地がいい)?

ウール繊維の表面には微細なスケール(ウロコ)があり、これによって調湿機能や汚れにくさに役立っている一方、多少のチクチク感を生み出す要因になり得ます。

アルパカ繊維はメリノウールよりもスケールが小さく滑らかで均一な表面を持っており、毛が直毛で油分を含んでいるため、肌当たりがしっとりと滑らかで「チクチク」感が少ないといわれています。また「ラノリン」と呼ばれる、羊毛には自然に含まれている刺激性のアレルギー反応を引き起こす可能性があるワックス物質も含まれていません。さらに、(Arms of Andesのベースレイヤーで使用しているような)ロイヤルアルパカと呼ばれる最高級品質のアルパカ繊維は、高品質なメリノウールと同程度に細く(その直径は21ミクロン以下といわれています)、肌触りが滑らかでチクチクしにくいということが言われています。

ここまでをまとめると、アルパカウールという繊維は大雑把に言って「より軽くて柔らかく、強く、暖かく、保水性が低い(=速乾)ウール」といわれています。これだけ聞けば、暑がりや寒がりな山好きがワクワクしない分けがありません。

この冬いろいろ着倒してみた詳細レビュー

快適性・着心地:着始めややクセあるも、味わったことのない「軽・フワ・なめらか」な肌触りは病みつきに

事前の下調べによって期待度は爆上がりの状態。海外通販の罠にハマりかけて、届くまでに1ヵ月のゴタゴタ(遅延)がありましたが、何とか年明けの正月、やっとのことでアルパカウールのベースレイヤーが手元に届きました。手触りはきめ細かく、微妙なシボ感があり、薄いのにフワフワとしたボリューム感が感じられます。やや不揃いな染まり方も味があり、ファーストインプレッションはかなり好感触。

どうしても気になるわずかな「チクチク感」

ところが、いざ袖を通してみるとやや違和感が。

フィッティングに関しては、体のラインにぴったりとフィットしながらキツくもなく、いたって快適なフィット感で、綺麗なシルエットを実現しています。またアルパカウールは想像以上に伸縮性が高く、動きやすさも抜群。さまざまな体型にも適応しやすいでしょう。

Sサイズ(176cm、63kg)。ほぼジャストサイズだったが、後ろの裾のずり上がりが気になるので今度買うときはMサイズにするかも。

天然の伸縮性に優れた生地は、幅広い体型をカバーする

ただ1点どうしても気になってしまったのが、非常にわずかですが着た時に感じた「チクチク」です。不快で着ていられないほどではない、行動中には忘れてしまうような程度のものですが、これまで登山用のメリノウールベースレイヤーでは感じたことがなかった微妙な肌への刺激がどうしても気になりました。

気になるチクチクはリンスで解消

そこでどうにかしてこのチクチクを抑えられないかと、ウールの場合と同じように洗濯後にリンス(またはコンディショナー)に浸してみたところ、無事ほぼ気にならない程度にチクチク感は解消されました。またこれは慣れただけかもしれませんが、たくさん着てたくさん洗濯することでもチクチクは少なくなっていったように感じます。もうひとつ間接的にチクチク感を遠ざける方法として、ミレー ドライナミックメッシュ等のアンダーウェアを着て、その上からこのベースレイヤーを着るというのも有効でした。

なぜチクチクしてしまったのか。上に書いたようにアルパカウールが構造的に「低刺激でチクチクしにくい」繊維ではあることは事実です。またブランドによると、このベースレイヤーで使用されている繊維はアルパカの背中部分に生えている、アルパカウールの種類の中で最も希少価値が高く、最も細く(直径が18 ミクロン以下)、したがって最も柔らかい繊維「ロイヤル アルパカ ウール」100%のはず。

ただ、アルパカの毛は一種類の毛で覆われているわけではなく、さらに年齢によっても部位によっても一様ではなく、紡績技術によっても品質が異なります。まだまだアルパカウールの生産技術は発展途上であるに違いなく、どんなメーカーでも常に高い品質の糸に仕上げらているとは限りません。このため未だ技術的・品質管理的な問題がまったくないないとは言い切れず、まだ始まったばかりのアルパカウール製品の快適さ問題については、もう少し時間が必要なのかもしれません。

アルパカウール(左)はメリノウール(右)に比べて若干のシボ(しわ)感があり、微妙な凹凸と起毛によってもフワフワしたボリューム感がある。

残念ながら冬の本格アウトドア用の仕様ではない

もうひとつ、このシャツのそもそもの位置づけ的にしょうがない部分があるかもしれないのですが、本格アウトドアにも対応した仕様にはなっていない点も残念な点として挙げなければなりません。

それは例えば肩周りの裏地の縫い目がフラットシームになっていないためわずかな凸凹があったり、後ろの裾が長くなっていないため行動中に上半身を動かしていると背中の裾がずり上がってきてしまったり。アウトドア愛好家をターゲットにしているならば、この辺は是非とも今後のアップデートで取り入れて欲しいところです。

肩周りの縫い目はアウトドア用ベースレイヤーに多く採用されているフラットシームではなく一般的な縫い方で、ゴロつきがないとは言えない。

保温性と汗処理性能:薄くて軽いのにびっくりするほど暖かく、行動中の汗冷えも少ない

アルパカならではの圧倒的な保温性能

いきなり袖通しで出鼻をくじかれた感がありましたが、気を取り直して実際に行動してみたらびっくり、ここまで暖かいベースレイヤーが存在したとは。この驚くほどの保温性の高さは、わずかなチクチクなんて些細な問題なのだと思わされるほどでした。

着ているのは149グラムという夏用のベースレイヤーといってもいいくらいのい薄手です。にもかかわらず、着た瞬間からじんわりとした自然な温もりが肌に広がり、そのうちセーターを着ているかのような暖かさに。事前に暖かいとは学んでいましたが、3000m以上の高地で育まれた半中空繊維は伊達じゃない。そんな期待も超えた、今まで感じたことのない天然の優しさと力強さのある暖かさが感じられました。他の繊維でこれと同じ暖かさを実現するためには、より厚手の、つまり重いタイプが必要なはずです。

この薄さにもかかわらず、冬用ベースレイヤーとして十分な保温性を発揮。

ぼくの場合、このベースレイヤーの上に薄手のミッドレイヤー(いわゆるオクタやポーラテックアルファなどのアクティブインサレーション)、その上にハードシェルというスタイルで、1~3月の長野(北信・白馬・乗鞍)から北海道(ニセコ・旭川)でスキーや登山、バックカントリースキーをしましたが、保温性に不安を感じることはまずありませんでした。

汗による湿気もため込まずに素早く発散

さらに素晴らしいのはこれだけ暖かいにも関わらず、発汗によって蒸れや不快感を感じることが少ないということ。メリノウールも天然の調湿性を備えていますが、アルパカウールの場合は湿気をため込みにくくより通気性を備えています。このため衣服内の湿気をより外に発散しやすく、蒸れが気になることがほとんどないのです。もちろん春夏の暖かい時期では暖かすぎ、汗をかき過ぎるということも考えられるので、この無類の快適さは冬の寒い季節ならではだと推測されますが、とにかく冬のアウトドアにおいてはここまで軽くて暖かく行動中も快適なベースレイヤーは初めてでした。

天気の良い日のハイクアップではアルパカベースレイヤー+ミッドレイヤーだけで、保温性も蒸れにくさもちょうどいい感じだった。

防臭性:ほかのウール同様、数日着てもニオイ・不快感ナシ

Arms of Andesに限らず、すべてのアルパカ ウールにはメリノウールと同じように天然の防臭性を備えています。今回のレビューでも、1週間くらい連続して着ていて臭わないことを確認できました。

お手入れ:手洗い不要で毛玉もできず。「洗濯機で普通に洗える」という安心感

内側のコットン生地のラベルには、このベースレイヤーが家庭用洗濯機のジェントルサイクル(おしゃれ着コースなど?)で洗って自然乾燥できるとあり、手洗い必須でないことが分かります。もちろん他の山着と同じように柔軟剤や漂白剤などの使用は避け、タンブラー乾燥さえしなければ、あまり気にせずにお手入れも簡単。またメリノウールと比べて毛玉にもなりにくいため、洗濯による劣化も少なく、軽量で半中空繊維であるため、乾きも非常に早いです。

まとめ:メリノウールは新時代へ。

複数の首回りと袖の長さ、カラーバリエーションを用意。通常のカラバリの他に複数のナチュラルカラーも用意されている。

新しい素材との出会いに久々に軽く熱狂した自分がいます。この未知の天然素材のベースレイヤーによって自分の冬山ライフは確実により一層快適になりました。

今ではArms of Andesのシャツは山だけでなく、冬の日常生活においてもユニフォームのように毎日欠かせないインナーとなっています。ちょうど3着買ったこともあり、山ではロングスリーブを、日常では半袖のクルーネックやVネックを、やろうと思えば洗濯しながら途切れなくこれらを着回すことができます。細かい部分で改良の余地は残っていますがそれも伸びしろとしての許容範囲であり、冬に着る肌着という意味では、現時点でこのアルパカウールほど軽量で快適、高機能で持続可能なウェアは他に見当たりません。まさに可能性しか感じない新素材は、数年後にはさらに品質が改良され、多くのブランドからアルパカウール製品がリリースされるだろうと確信しました。

冬に最適なベースレイヤーを探しているという人、さらなる冬のアウトドアでの快適さを追求している人、新しい素材に目がない人、今が飛び込む時です。

Arms of Andes ベースレイヤーの詳細と購入について

Arms of Andes アルパカTシャツ&ベースレイヤーは現時点で下記、米国の公式通販サイトから購入できます。