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最も自由な山歩き「ソロ登山」を心おきなく楽しむために。ここ10年ずっとソロ登山の自分が心がけている10のこと

コロナ禍の影響もあって「ソロ登山・ソロハイキング」といった一人での山登りについての話題をよく見かけるようになりました。

かくいう自分も学生時代や趣味として山に登っていた10数年前まではもっぱら仲間との登山ばかりでしたが、このサイトを運営するようになってからは一人で山に入ることが多くなり、ここ10年近くというものソロハイキングは自分にとってノーマルな山行スタイルとして定着しています。

自分と自然と一対一で向き合えるのがソロ登山の魅力

ソロハイクには、何をおいても「自分のペースで行動を決められる」という自由があります。写真を撮ることの多い自分にとって、人を待たせることなく自由にシャッターを切ることができるのは気持ちも楽。もちろんグループでの登山にもそこにしかない魅力はたくさんありますが、誰にも邪魔されず自然と一対一で向き合うからこそ得られる(楽しさも困難も含めた)充足感や達成感は、グループ登山では決して味わえない、唯一無二の魅力です。コロナ禍でなかったとしても、ソロ登山が多くの人々を魅了してきたのも十分に理解できます。

楽しさの裏に危険がたくさん潜んでいるのがソロ登山

ただ、このいわゆる「単独行」は昔から決して他人に勧められるような行為ではなく、初心者はもちろん熟練の健脚にとってもむしろ非常識なスタイルとして、手放しで許される行動とはいい難かったのも事実でした。理由は様々ありますが、最も大きな理由の一つはその危険性の高さにあります。最近の山岳遭難者の統計によると、複数登山での遭難に占める死者・行方不明者の割合に比べて単独登山での遭難に占める死者・行方不明者の割合は倍以上だとか。ソロ登山はひとたびアクシデントに見舞われると、最悪のケースに至る可能性が極めて高い登山スタイルであることが数字からも明らかです。何だかんだ言ってたとえ2時間のハイキングコースであったとしても、山の中での一人ぼっちほど危険なことはありません。

とはいえ自分自身、ソロハイキングは自分に合ったスタイルだと感じていますし、ソロに魅了された人間として、やりたい人はどんどんチャレンジすればいいと思っています。ただ、同時に誰もが気楽に始めていいものでもないという事実には、ソロハイキングするすべての人が向き合わなければなりません。だからこそ、その楽しみの裏にあるリスクを知り、それに対して万全の備えをしておくことが大切。

そこで今回はソロ登山を安全に楽しむために、自分がこれまで最低限心がけてきたことに加えて、テクノロジーの進化によってアップデートした、さまざまな新しい安全対策を交えつつまとめてみます。「これが正解」というつもりは毛頭ありませんが、これから一人で山に登ってみたいという命知らずな冒険家の方々にとって少しでも参考になれば幸いです。

ぼくがソロハイキングを安心して楽しむために心がけている10のこと

1. 人の多い人気ルートや自分にとって簡単なルートを選ぶ

山に登るためには、何はともあれまず「どこに行くか」ということを考えることから始まります。自分の場合、ひとりで登山する場合が往々にしてアイテムのレビューのためといった「仕事」である場合が多いことも関係していると思いますが、たいていの場合、自分がかつて歩いたことのあるルート、もしくは人気があって他のハイカーが多くいる可能性が高いルートや、多くの信頼できる記録や情報が入手できる予測可能なルートを選びます。

なぜ人気ルートを選ぶべきか?

人気のあるトレイルは一般的に道はよく踏まれていて安全であることが多く、道標なども整備され道に迷う確率も少ない、そして万が一の際にも他のハイカーに見つけてもらえる可能性が高いです。逆に人気のないルートの場合、トレイルが荒れていたり分かりにくかったり、人とすれ違わないので助けを求められる可能性も低くなります。人気ルートでなかったとしても、最低限自分が行ったことのあるルートか、自分の実力レベルよりも低いと確信できるルートを選ぶことをおすすめします。

確かに他人の気配がまったくない静かなトレイルを歩くことは、ソロ登山の醍醐味かもしれません。ただソロ登山でまず確保しておかなければならないのは「安全性」であり、楽しむのはその次。多少人とすれ違いったとしてもすぐ気にならなくなるだろうし、たとえこれまで歩いたことのある道だとしても自然は常に異なって見え、感じられることでしょう。

近場の低山は簡単なようでいて、かえって道に迷いやすい場合も。

2. 歩くルートの情報を徹底的に収集する

これから歩く登山ルートの候補を選んだら、次にやることは納得いくまで「徹底的に調べる」ことです。山行が上手くいくかどうかは、この段階にかかっているといっても過言ではなく、ここは絶対に手を抜かないように心がけています。計画を立てるにあたっては、たとえ往復2時間のハイキングコースだったとしても、利用可能なすべてのリソースを使用してルートの隅々まで概要を把握するように徹底的に情報を探してみてください。

ネットでルートガイドと山行記録を探しまくる

「登山 ルート名 ○月」などといった検索語で、過去に同じ道を辿った記録がないかどうか検索してみます。FaceBookグループやYouTubeなど、時代によって情報が集まる場所は違いますので、その時々で多くの情報が集まる手段を利用しています。

その他、紙でもいいですが、手軽なのでネット上の地図サービス(例えばヤマレコの「山と高原地図」など)でルートをチェックします。そのルートのコースタイム、主要なランドマーク、危険箇所、水場、小屋(有人or無人)、テント場、分岐などを把握し、そこにつながっているルートを含めた周辺の概念図を理解します(ちなみに後述しますが、必ず行く前までにそのルートが載った紙の「山と高原地図」を購入して当日は携帯します)。また地形図から稜線や谷のイメージなど歩く地形を立体的に把握できるようになることが理想です。

そして過去の「同じ時期」に「同じくらいのレベルの人」が「同じルート」を歩いた記録を探します。こうすることで、単なるガイド的な事実だけでなく実際に歩く時期でのよりリアルな情報が手に入ります。特に秋から冬、冬から春にかけての雪の情報は貴重です。ちなみにヤマレコ有料会員である自分は沢登りやバックカントリースキーなど、山行によって可能であればGPXデータをダウンロードしてスマホ地図に読み込んでおき、現場のここぞというところでルートを踏み外していないか確認しています。

現地に直接問い合わせることも

またアナログな方法ですが、可能であれば山小屋に直接電話などしてトレイルや天気の状態などを聞いてみるのもいいでしょう。たいていの管理人さんは親切に教えてくれますし、何よりもそこにしかないリアルタイムの貴重な情報が得られます。

登山地図にはルートだけでなく、コースタイムや小屋・水場など、豊富な情報が詰まっている。

3. どんな山行にも無条件で携行する「必携品」をチェック

山行中、何があって安全に山に下りることができるように、いざという時のための必携道具を持ち歩くようにしています。それらはたいていの場合、まったく使わずに山を下りることになるのですが、それらはもちろん無駄だったわけではなく、きっと「ひとたび何かアクシデントがあったとしても自分は死なない」という自信と安心感があったからだと思っています。

ここに挙げるリストの中にはプランによって微妙に異なることがあるものの、どの季節、どのアクティビティでもほぼ同じです。またこのリストに至るまで、技術の進歩などによっカットされたり追加されたものなどは当然あり、今後見直しながらアップデートされていくでしょう。

ソロ登山で必ず持ち歩くアイテムリスト

  • 紙の地形図&コンパス
  • ホイッスル
  • エマージェンシーシート(山行に応じてシュラフカバーやツェルトも)
  • ヘッドランプ
  • 応急処置キット(中身はプランに応じて多少変化)
  • ストーブなどの火器(最低限ライターやマッチなどで緊急時に暖をとったり狼煙をあげられるように)
  • ナイフと修理ツール(十徳ナイフやマルチツール)
  • 予備水(飲み水とは分けたきれいな水を常にいくらか持っておく)
  • 非常食
  • 予備電池・バッテリー(ヘッドランプ・スマホ用)
  • 雨具
  • 細引き(2mm × 10~30m)

必携持ち物セットの一部。これらはめったに使わないとしても、いざというときに頼りになるお守り。

軽視しがちな「紙の地形図&コンパス」

このうち、ついつい怠けがちなのが紙の地形図。ここ数年ですっかり電子地図に慣れきっている人も多いかもしれませんが、スマートフォンに過度に依存しないことが重要です。頼りにしていたスマホは、ほんの一瞬のきっかけであっけなく壊れたり、水没したり、紛失したり、バッテリーを失ったりします。このため山に入るときには常に(特に長期間の山行や山深い場所に行く場合)、必ず紙の地図を携帯することをおすすめします。

もちろんただ持っていくだけでなく、地図とコンパスの読み方・使い方を知っている必要はあります。書籍などをはじめオンライン・オフライン講座など、読図スキルを学ぶためにあるさまざまなリソースにアクセスし、最低限の使い方は必ずマスターしましょう。

たとえスマホGPSが途絶えても、地形図とコンパスがあれば安心。ソロ登山には紙で携行することをおすすめ。

4. 衛星コミュニケーターやビーコンを携帯する

衛星通信を利用して携帯電波の届かない場所でもメッセージや位置情報が送信できたり、SOS信号を発信することができる「衛星コミュニケーター」は北米などで普及しており、日本でに登山する人のあいだでなぜもっと広まらないのか個人的に不思議に思っているガジェットのひとつ。

自分は Garmin inReachMini の最低プランと捜索及びレスキュー保険に加入しています。合わせても月額2,000円未満で世界中どこにいても命が助かるのなら安いもの(さらに予算があればテキストメッセージも、GPS情報のリアルタイム共有機能も無制限です)。ましてやソロ登山をするのであれば、もっと真剣に検討されていいサービスでしょう。

代わりに日本では「ココヘリ」などの発信機サービスが広まっているようで、自分はこちらも話のタネにと使っています。ただ、ココヘリは発信機からの信号を捜索隊のヘリが最長16km先から受信し、絞り込みを行うことで捜索時に発見しやすくしてくれる会員制の捜索ヘリサービスである点で仕組みが根本的に異なります。捜索を開始してもらうにはこちらから携帯などで救助を求めなければならず、万が一電波の届かない場所にいれば、当然家族や他の人から捜索を依頼してもらわなければなりません。その意味ではお金は多少かかりますが、ソロ登山をする覚悟があるのであれば、自分は衛星コミュニケーターの方をおすすめします(あるいは両方持ちが最も安全?)。

5. 道具は事前に使い方をマスターしておき、万が一使えなくなった時のために修理方法と代替方法を知っておく

誰かと一緒に登っていれば、もしその道具を忘れたとしても、使えなかったとしても、壊れたとしても借りられるかもしれません。でもソロ登山は違います。何が起こっても自分で何とか切り抜けなければいけません。

そのためには道具についても「何となく使えているからいいや」で済ませているままは危険です。使い方を知らない道具はいくら最先端のギアであったとしても現場では役立たず。このため最低限、基本的な使い方と万が一壊れた時の修理方法や代替方法については必ず想定しておきます。

特に新しいものを購入した場合は、トレイルに入る前に必ず一度使ってみるなどして、正しく使えることを確認しておきます。新品のテントを広げてみたら部品が足りなかった、なんてこと想像したくもないですよね。

修理用具について

手荒く使う前提の頑丈な山道具も、いつかはガタが来たりして部品が破損したり、劣化したりしてしまうものです。また電池で動くアイテムの電池切れにも要注意です。そうなったときでもある程度使用を続けられるように、ソロ登山では特に注意して予備電池や修理用具などの応急処置用アイテムをいくつか持ち歩きます。

なかでも布製のダクトテープ(粘着テープ)はこれまでで最も活躍した補修アイテムです。生地や部品が破損したり、靴底が抜けたり、スキーシールの粘着力が切れた時などに何かを固定したり、穴をふさいだりと、意外と幅広いアクシデントに対処できるのがポイント。さらにダクトテープは優秀な着火剤としても使えるので、自分はこれを水筒やトレッキングポール、ライターなど巻き付けられる場所があればなるべく巻き付けて携行しています。テーピングで代用する人もみかけますが、今のところは汎用性と粘着力で勝るダクトテープは必ず持っていきます。さらに余裕がある人はこれに糸と針や、結束バンドなどがあると安心です。

また冬にスキー用具やスノーシューなどの硬くて重い道具がある場合、補修には「針金+プライヤー」が必要です。プライヤー単体では持ち歩くのが重く嵩張るため、なかなか携行しろといっても難しいと思います。こうしたこともあって自分の場合、マルチツールは断然、プライヤー・ナイフ・はさみが付いたコンパクトな「SQUIRT PS4」があるレザーマン派です。

予備電池に粘着テープ、結束バンド、ナイフ、針金(+プライヤー)など予備・補修用品は汎用性と携帯性を考えて。

取り扱いを誤れば重大事故に直結するガスストーブの使い方はしっかり押さえておこう

テント泊登山などで多くの人がお世話になるガスストーブは、普段からガスこんろを使用しているためか生活の延長線上にある道具だけに意外とナメてかかりがちです。

ただコンパクトなサイズに強力な火力を閉じ込めた登山用ストーブは非常に便利な一方、万が一誤った使い方をしてしまうと大きな事故に繋がりかねない危険な道具でもあります。いきなり現場で初めて使うのでなく、必ず出発前に正しい取扱い方法を試しておきましょう。

以下は2020年に作成したアウトドア用ガスストーブの正しい使い方と注意点をまとめた動画です。はじめての人はもちろん、そうでない人もあらためて見直してみると、意外と発見もあるかもしれません。

気づかないけどすぐ隣にある死の危険「一酸化炭素中毒」には要注意

テントなどの室内でガス器具を使用するのは控えよう。

そしてガスストーブを扱う際にもう一つ必ず知っておくべきことが「一酸化炭素中毒」の危険です。

テントの中など、換気が悪い場所でガス器具を使用すると燃焼に必要な酸素が不足するため不完全燃焼を起こし、一酸化炭素が発生します。それを吸い込むと血液による酸素の運搬が阻害され、全身の細胞や組織が酸素不足に陥ってさまざまな症状を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。これが一酸化炭素中毒です。

厄介なことに、一酸化炭素は「無色無臭」のため発生しているかどうか判断しづらく、さらに一酸化炭素中毒の自覚症状というのが初期の場合で「頭痛、吐き気、めまい、集中力の低下、嘔吐、眠気」など、一般に風邪(インフルエンザ)の症状によく似ているため、現在自分が危険な状態にあることに気づきにくいという特徴があります。中等度または重度にまで進行すると自力で動くこともできなくなるためもはや手遅れ。一酸化炭素中毒が「いつの間にか死に至る病気」と言われる所以です。

このように厄介で恐ろしい一酸化炭素中毒にかからないようにするためには「一酸化炭素が発生するような状況をつくらない」ことに尽きます。外が寒いからといってテントやクルマ、その他密閉された屋内でガス器具を使わないということを徹底しましょう。万が一上にあるような症状や「おかしいな」と思う状況になったら、すぐに新鮮な空気のある場所に移動することを心掛けてください。

Oリングなどパーツの劣化も忘れずにチェック

Oリングの劣化は気づきにくいが、劣化していないかチェックが必要。

【Oリング写真】左が経年劣化したOリング。表面に傷がつき、弾力性が失われ、圧力によって型が付いたまま戻らなくなってしまっている。正常なOリング(写真右)との違いは一目瞭然。

長年ガスストーブを使っているとついつい忘れがちなのが「Oリング」の劣化です。Oリングとはガス器具とガスカートリッジを接続させる部分についているゴム製リングのことで、たとえ使わなくても時間と共に劣化していく消耗品です。

一部が切れていたり、ささくれていたり、ひび割れていたりしていると、最悪の場合ガス漏れを引き起こすことにもなりかねないので、山行前には必ずここをチェックして、万が一傷がついている場合には交換するようにしましょう。

なお、ガスカートリッジを取り付けた状態で異音や異臭がした場合は絶対に使用せず、異常がある場合は販売店やメーカーに相談しましょう。またメーカー指定の純正Oリング以外は絶対に使用してはいけません。Oリングを交換していても、物には寿命があり見えない劣化があるかもしれません。ストーブも10年を目安に買い替えをおすすめします。

購入する前に!そのバーナーに「PSLPGマーク」はついてる?

PSLPGマークは製品本体に付属・表示されているため、取得の有無は購入前にお店で確認する。

「PSLPGマーク」とは、厳しい検査を合格し国が定めたガスこんろの基準に適合しているマークのこと。いわばこのマークのついた製品は、「法律で定められた検査に合格していますよ」という証です。しかし近年、この「PSLPGマーク」を取得していない輸入品がインターネット上を中心に数多く出回っています。

むろん、このマークがついていても、各々が正しくガスこんろを使わなければ100%安全とはいえませんが、ついていない製品は法律で定められた検査に合格していない製品です。安全な登山のためには、必ず「PSLPGマーク」があることを確認してから購入するようにしましょう(マークがあるかどうか分からない時はお店の人に聞いてみましょう)。

6. 事前に計画書を提出する(どこに行くのか誰かに教えておく)

ソロ登山であれパーティ登山であれ、登山では事前に登山計画書(登山届)を作成してしかるべき場所に提出しておくことは、すべての山行で最低限必要なことです。自分の山行計画を明確化するためであることももちろんですが、何よりも万が一遭難してしまった際に、警察等が捜索活動を行うための重要な情報源となります。

その最低限のマナー以外にも、自分が山に行く前には身近な人にどこの山に行くか、いつ帰ってくるかを必ず伝えるという基本的な一声も忘れずに(より詳細であればある程いいですが)。携帯電話の電波が常に登山道に届いていると思ってはいけません。

行先きと帰る日を誰にも告げずに山に行くことの危険

『127時間』は10年前の映画ですが、ユタの砂漠に一人でハイキングに向かい(なじみのあるトレイルだったにもかかわらず)、誤ってクレバスに滑り込み腕が挟まって身動きがとれなくなってしまった男の物語。誰にも行き先を告げなかったことが招いた悲劇についての強烈な教訓が詰まった映画です。この映画の主人公のようにならないよう、登山前はどんなに急いでいても「●●山に誰々と、●日に下山予定で行ってきます。」の一言は忘れずに。

デジタル登山計画書ならすべてまとめてできるので便利

ちなみに昔はポストに投函して警察に届け出ていた登山計画書なども、最近ではようやく進化してきました。例えば「COMPASS」はデジタルベースで山行計画書を作成・提出できます。さらにその計画書を他人と共有したり、下山通知を指定した人にメールで知らせる機能があり、ここ最近では常にお世話になっています。さらにGarmin inReach などの衛星コミュニケーターやスマホアプリ「YAMAP」の「みまもり機能」等を利用すれば、登山中の位置情報をリアルタイムで家族や知人に知らせることができるなど、ソロ登山するにしても安全性を確保する手段は昔に比べて格段に増えています。

いずれにしても、1人でハイキングするときは、安全に下山したのか、どこにいるのかといった所在・安否を誰かに知らせておくことがとても重要です。どんなに経験豊富なハイカーであっても、予期せぬアクシデントは必ず起きると思って臨みましょう。

登山計画書は自分の身を守る最後の命綱。

7. 現地の天気をチェックする

当たり前といえば当たり前ですが、自分が山に入る前には必ず現地の天気をチェックします。「気象遭難」という言葉があるように、悪天候の中での山行は通常よりもはるかに危険な行為であり、ソロであればなおさら行くべきではありません。運よく行けたとしても、そこには楽しみよりも過酷さが思い出に残ります。

天気予報は山の上の予報をチェック

天気予報はふもとの街のものだけでは不十分なので、可能な限り登る山の天気と気温・風の強さをチェックします。自分の場合は通常の天気予報サイトで街の天気や天気図予測を確認しながら、「山の天気予報(有料会員)」、そして「Mountain Weather Forecast」などで山の天気予報を確認しています。その他、雪の季節には高層天気図やその他積雪情報を適宜探しながら調べています。

天気図に関する知識もぜひとも習得したい

ちなみに、プロによる天気予報をチェックすることがまず大切ですが、できれば同時に天気図に関する知識があれば、同じ天気予報をチェックするのでも、得られる情報の解像度が違います。天気予報の根拠となっている気象状況についての知識があれば、その後の天候の急変の可能性や気温・風など、天気予報マークでは分からない部分も含めて直近の未来の天候予測に繋げることができます。ソロ登山するならば最低限天気についての書籍を一読しておきたいところ。雲の形などから直近の天気を予測する観天望気が分かるようになったらもう一人前です。

特に秋から冬にかけては季節外れの降雪によって山は突如として過酷な冬山に一変します。これまで何度もそれに苦しめられた経験がある人間としては、ちょうど今のような時期の高山ハイキングには神経質にならずにはいられません。

8. 計画を柔軟に変更できるように準備しておく

いくら自分の歩くルートを入念に調べていたとしても、いざ当日現場に行ったらその道が通れなくなっていたりすることがあります。またどうしても時間内に下山できそうにない場合や、天候が急変しそうですぐに山を下りなければならない場合、ケガなどで予定通りのペースで歩けなくなってしまった場合など、登山では机上の想定通りにいかないことは珍しくありません。

サブルートとエスケープルートを想定しておく

そんな万が一のケースに備えて柔軟に行程を変更できるように準備しておくことで、現場で慌てたり行き詰ったりすることがなく安心です。登山の世界ではこのうち、最も短時間で安全な場所(山小屋やビバーク地点、下山地点など)にたどり着けるルートを「エスケープルート」、またスタートからゴールまでの過程のなかで、状況に合わせて使う別ルートのことを「サブルート」なんて呼んだりしています。

ソロ登山では人一倍体力をつけておくことよりも、こうして自分の実力に合わせた計画を何重にも備えておくことの方が大切です。

しっかりと下調べして状況に合わせて複数のルートを柔軟にとれれば、より安全に行動することができる。

9. 保険に加入する

これもソロ・パーティでの登山に限らず、山に登るのであれば必ず入っておきたいもののひとつ。

万が一の遭難に際して、民間ヘリでの捜索をはじめ、救助には多額の費用が発生する可能性があります。保険に入っていなければ、それらは無事生還できたとしても重くのしかかり、また万が一遭難者が死亡した場合にはその莫大な費用は遺族に降りかかってきます(さらに不幸なことに遭難者が見つからなかった場合、7年間は死亡とみなされないため、家族は遺族年金の支給や死亡保険を受け取ることすらできません)。ここであえて言うまでもありませんが、やはり山をやるうえでの大前提として山岳保険は迷わず入っておくべし。

ソロ登山でのアクシデントは致命的な事故につながりやすい。何はともあれ必ず山岳保険に加入を。

10. 基本的な応急処置方法を知っておく(救急ハンドブックを携帯する)

ソロ登山をする上で心がけておく最後のポイントは、前述の必携リストにもあった、万が一のけがや病気などに備えた救急セットの携行と共に、応急処置方法(ファーストエイド)の知識を携えておくことです。できれば初めてのソロハイクに出かけるまでの間に、何らかの応急手当講習会を受講してみることをおすすめします。登山に関連する講習であれば最高ですが、昔から防災的観点での応急手当講習は街中でも頻繁に開催されています。それでも受けて「いる・いない」では、いざという時に慌てなかったりと安心感は各段に違います。

万が一そうした時間が取れず、万が一の時の対処法に自信がないとしたら、登山用のレスキューハンドブックでも最悪構わないので、とにかく現場で何があっても途方にくれないような備えをしておくことで、山で出会うさまざまなハプニングに対してパニクらずに対処することができます。

バンドエイドやテーピングなど、ケガの応急処置のためのファーストエイドキットや捻挫や骨折などの副木として使えるサムスプリントなどは必携装備のひとつ。万が一心配な人は薄いハンドブックを携帯してもいい。

リスクを最小限にして、一人の山を心ゆくまで楽しもう。

自分よりもはるかに経験と実力のある登山家でも、これまで数多く遭難や事故に見舞われてきました。それぞれが自分の限界に挑んでいる以上、それはしょうがないことなのかもしれません。アクシデントはどれだけ避けようと努力して注意を払ってきても、誰もが避けられないものであると考えておくべきです。今回はソロ登山での心構えについてあくまでも自分のケースを書きましたが、これが誰にとっても完璧な対策であるということでもなく、こうしなければ山に入ってはいけないというルールもありません。これを参考に、無理せず、頑張りすぎず、知識も道具も歩ける場所も少しずつ増やしていきながら、自分のペースで少しずつソロハイキングを楽しんでいきましょう。

監修:日本ガス石油機器工業会 → https://www.jgka.or.jp/index.html