Review:handson grip Tracker 何この馴染みよさ。手袋職人の技術が集約された Japan made のアウトドアグローブ
フィットするのか否か、こらは非常に重要な要素です。どれだけ性能の高いウェアを着ても、小さすぎたり、大きすぎるとその性能を全く活かすことはできません。特に冬場のフィッティングの良し悪しは寒さに直結し、場合によっては致命的になりかねません。ジャケットなどはドローコードなどである程度調整できるますが、小物になればなるほど調整は難しくなってきます。特に手袋になると、掌の大きさや指の長さは人それぞれ全く違うのに、サイズはワンサイズだったり、S・M・Lの数サイズだけだったりと、妥協してストレスを抱えながら使っている人も多いハズ。
今回紹介するのは、香川県東かがわ市にある手袋工場のファクトリーブランド、handson gripのTrackerです。この工場がある東かがわ市は、日本国内に流通する手袋の90%以上を出荷している手袋の街です。そんな街で60年以上手袋を作り続けてきた職人たちが、新たな素材を駆使して、これまで蓄積した技術を惜しげなく使い作り上げた手袋です。さていったいどんな手袋なのか、アウトドアでの使用に耐えられるのか、レビューしてみました。
目次
かつてここまでしっくりとくるグローブがあっただろうか。Trackerの大まかな特徴
handson gripのTrackerは、香川県東かがわ市で60年以上手袋を作り続けている、手袋の老舗製造メーカーがこれまでの技術ノウハウを尽くして作り上げた、ファクトリーブランドhandson gripの商品群のうちの一つ。メイン生地には、多数のパーツに切り分けて丁寧に縫い合わせた、ポーラテック・パワーストレッチを採用し、極限までフィット感を高めています。掌には薄手のTEIJIN・ナノフロントを採用し、手に吸い付くようなフィット感・高摩擦によるグリップ力・繊細な操作性を実現した、手袋メーカーならではの、こだわりの詰まった手袋です。
おすすめポイント
- 非常に高いフィット感・操作性
- 適度な通気性・保温性
- 思った以上に軽量
気になったポイント
- 手のひら部分の保温性・耐久性がやや難
- 多少防風性・防滴があるとよかった
アイテム外観
主なスペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
実測重量 | 46g(Mサイズ) |
サイズ | XS/S/M/L |
カラー |
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生地 |
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スマホ対応指 |
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フィット感 | ★★★★★ |
防寒性 | ★★★☆☆ |
快適性 | ★★★★★ |
機動性 | ★★★★★ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
総合評価 | ★★★★☆ |
詳細レビュー
特徴・形状など
メインの生地には、ポーラテックのパワーストレッチを採用。パワーストレッチは、ポリエステルで作られた4方向のストレッチフリース素材。裏は起毛しているので、防寒性はある程度確保されています。
フィット感もサイズがある程度合っていればストレッチ性のおかげでピッタリとフィットしてくれます。サイズ自体もXS〜Lまでラインナップされているので、フィット感で困ることはなさそうです。通気性は高い素材なので、運動量が多いアクティビティーでも蒸れにくくドライな状態を保ってくれますが、低温・強風下の環境では寒さを感じてしまうかもしれません。
手のひらには、テイジン(帝人)のナノフロントを採用しています。ナノフロントは、700nmという超極細繊維。700nmといわれてもピンときませんが、おおよそ髪の毛の7500分の1という超・超極細です。この繊維で編み込まれた生地は表面積が非常に大きくなるため、高い摩擦力・吸水性・防湿性を生むことができ、肌触りも非常にソフトです。スポーツ用品には、このTracker以外にもゴルフやモータースポーツ用グローブに使われたり、靴下、インソールなどにも採用されています。その他日傘、障子紙、タオル、ろ過フィルターなど幅広い分野で生かされています。このナノフロントのおかげで、手のひら部分には高いグリップ力と操作性を持たせています。
手袋専業メーカーならではの丁寧で細かい作り込み
手袋を裏返すといかに丁寧にこだわって作られているかがわかります。立体裁断を活かすためにパーツを多用し、すべてのステッチはとても細かく正確です。
指先まで曲がるように裁断パターンが工夫されています。
破れやすい指の股は肌触りも良くなるように補強されています。このような補強は始めてみました。
どうしても耐久性が低くなる手首部分は、二重にして補強しています。手首にボリュームをもたせることで、風の侵入も防いでくれます。
写真(手首2重部分
シンプルな作りに映えるシンプルな機能美
スマホ対応は、この時代これくらいのボリュームの手袋には必須でしょう。このTrackerでは親指とひと差し指がスマホ対応してます。先端の狭い部分のみが反応する様に作られているので、誤動作を減らせ細かい操作もできそうです。
手首には片方だけ紛失しないように、結束用ループが付いています。このループは革製で、シンプルな手袋のワンポイントのアクセントになっていて、細かいこだわりを感じます。
実測重量は46g(Mサイズ)と超軽量です。必要なもののみを搭載し、無駄を省いたシンプルな作りゆえ、この軽量性を実現できたのでしょう。
実際に使ってみたインプレッション
まず着けてみて際立つのは、柔らかさを感じるフィット感。手を包み込むようにピッタリとフィットしてくれます。これは掌以外に使われている素材の高い伸縮性のおかげでしょう。このフィット感に加え、サイズもXS〜Lサイズまでの全4サイズが用意されているので、ある程度自分の手のサイズに合わせて選べば、フィット感はかなり期待できます。
このフィット感を生み出している素材がポーラテック社のパワーストレッチです。この手袋には厚くなく薄くないという絶妙な厚さのパワーストレッチが使われており、サイズさえあっていればどんな動きをしても動きが妨げられることはありません。しかし、寒さを防いでくれる十分な保温力と防風性・防水性はありません。特に手のひら部分のナノフロントはあまりに薄いので、、真冬に自転車のハンドルを握るとそこがひんやりとしてきます。あくまで、寒すぎない季節に旅やランニング・ハイキングなどで快適にしてくれるという程度です。そのシーンさえ間違わなければ本当にちょうどよい防寒性で、走っている時は本当に十分な保温力を発揮してくれ、通気性もしっかりあるので手袋の中が蒸れてしまうという不快感はありません。とはいえ、防滴くらいは欲しかったというのは、欲張りでしょうか?
手のひらのナノフロントはアウトドアに限らず様々な分野で活躍している素材ですが、同じアウトドア分野だと、finetrackのナノタオルに採用されています。このTrackerの掌に使用されているナノフロントは非常に薄手で、なめした薄い皮のように肌触りがよく、ピッタリと肌に引っ付いてくれます。掌だけでなく指先まで伸びているので、物を摘んだり、掴んだりする時は素肌のような感覚です。この部分は伸縮性はほとんどありません。この素材は摩擦力が高いためグリップ力がよく、ストックなどを持つ時は素手よりも楽に掴めます。手先が冷たい時は力が入りにくかったりするので、非常に助かります。もともと強度の高い素材ですが、ものを掴むときのことを考えてか、人差し指と親指の間には補強が入っています。
細かい作業も比較的しやすく、指先の自由度は高めです。そのため行動中にするであろう、リュック内からの物の出し入れ、個別梱包梱包されたお菓子の開封、ファスナーの上げ下げなどの動作は軽くこなせます。ちなみに今この文章は、手袋をしたままタイピングしています。それくらい手先の作業に関してはストレスはほとんどナシです。
親指・人差し指の先端はタッチパネル対応ですが、対応部分が小さめなので狙った箇所をタップできるので誤動作が少なく、細かい操作もある程度であれば可能です。QWERTYキーでの入力は手こずりますが、フリックを駆使したテンキーのタイピングであれば問題なしでした。
よく見ると、掌・指にピッタリハマるように丁寧に縫い合わせられています。この指先動作の繊細さは、やはり細かいパーツを丁寧に縫い合わせているからこそ、生まれているのでしょう。これは文句のつけようがありません。しかし、たくさんのパーツを細い糸で縫い合わせているとなると、耐久性が心配になります。レビュー中に糸のほつれや、縫い目の破れなどはありませんでしたが、そこはやや心配なところです。
重量は両手で46g、これは超軽量です。手袋の重量はあまりピンとこないと思います。比較に、僕がこの季節に普段のランニングで使っているメリノウールのみのシンプルな手袋を計測してみたところ、なんと48gでした!Trackerのほうが、保温性・機能性などあらゆる面で性能は上のはずなのに、自分の手袋の重量を見た時は、かなりの衝撃を受けました。
まとめ:こんな人におすすめ
さすが、60年以上専業メーカーとして手袋を作り続けているだけあり、手袋には何が必要なのか、何が不要なのか、よくわかりきった上で作られている、シンプルで完成度の高い手袋です。まだアウトドアギアとして溜め込んだノウハウはないにせよ、現時点で他のアウトドアメーカーが出している、同系統の手袋の中では、フィット感・機能性・使いやすさなどトップレベルの出来でしょう。個人的には重量に驚きを隠せませんでした…
保温性はあるとは言え、防風性は皆無に等しいので、風を切るようなウィンターアクティビティには向きません。しかし運動強度がある程度あるアクティビティではバランスの良い保温性・通気性で快適に過ごせるでしょう。途中で脱がなくても殆どの作業ができるという点でも、最初から最後まではめ続けられる手袋です。
やはり国内で丁寧に製造しているだけあり、値段はこの手の手袋にしては、やや高めではあります。しかし、その値段に見合った満足度は得られるはず。これから様々なアウトドア・アクティビティで使用されるようになれば、通常の手袋ではあり得なかったフィードバックも多数生まれ、より良くなっていくはずです。現状ですでにこの出来です。そのフィードバックを受け、これからどう進化していくのかも、この手袋を使う楽しみの1つになりそうです。