Review:ヘリテイジ クロスオーバードーム f ミニマリストへの新たな最適解
山での経験を積めば積むほど、自分にとって本当に必要な道具が分かってくるものです。
アレもコレもと道具を詰め込んでいた駆け出しのころから、少しづつギアの要・不要が選別できるようになり、いつの間にかムダのないスマートなパッキングを達成し、少しでも身軽に旅することへと意識が向くようになってくることは決して怠慢ではありません。ビギナーを脱却したあなたは懇切丁寧な機能が満載の道具から、必要最低限のシンプルで軽いギアにより心が向いてくることでしょう。そんな道具の軽量化やコンパクトさを追求するなかで非常に効果的なのは数グラムの小道具よりもテントのような大きく、重量のあるギアを見直すことです。
昔からテントの軽量化でよく用いられていた手段はテントの代わりにツェルトで寝泊まりする方法。ただ居住性と設営の技術的ハードルから誰にでも気軽におすすめできるものではありませんでした。
ツェルトのように軽量・コンパクトでありながら、従来テント程度に場所を選ばず設営しやすく居住性も確保できる天幕となると、世界中探してもそう簡単には見当たらなかったりします。そんななか、その条件をクリアしている日本製シェルターが登場しました。発売前から問い合わせが殺到したというU.L.初心者から玄人までも納得できる超軽量自立式ツェルト、ヘリテイジ クロスオーバードーム fを今回ご紹介します
目次
大まかな特徴
ドーム型テントや防水透湿性素材を採用したテントを世界に先駆けていち早く開発生産し、日本山岳テントのパイオニアであり今もなお良質な山岳テント、エスパースシリーズを世に送り出している国産メーカー「ヘリテイジ」が製作した非常に完成度の高い軽量自立型シェルター。元々は自立できる軽量ツェルト、エマージェンシードームを改造したモデルを多くの日本人クライマーや登山家が海外遠征の際に採用、高い評価をうけていた背景があり、その経験と実績から素材や構造を丁寧に見直し、一般向けに開発されたのがこのクロスオーバーシリーズです。フルシームシーリングによる高い防水性と軽量ポールを採用し軽さと素早い設営を可能にしています。今回紹介する短手方向入口のFと長手方向に入口がある通常タイプの2種種類あります。
おすすめポイント
- 素早い自立を助けるシンプルな設営方法
- 軽くコンパクト
- 必要最低限のスペース確保でOK
- フルシームシーリングで防水性も安心
気になったポイント
- テントに比べ空気がこもりやすいので注意
アイテム外観
スペックと評価
項目 | スペック・評価 |
---|---|
就寝人数 | 最大2名 |
最小重量(実測) | 600g(本体、ポール、スタッフバック込み、乾燥時) |
本体素材 | 15Dナイロンリップストップ・透湿ポリウレタンコーティング(耐水圧1,000mm/平方センチ、透湿量8,000g/平方メートル/24hr |
高さ・横幅・縦幅 | 105㎝・210・100 収納時(縦9㎝・横20㎝・ポール38㎝) |
付属・オプション | 収納ケース、ポールアルミ合金中空ポール(7.5mm径ショックコード内蔵)・別売り ベンチレーター用モスキートネット、ガイライン |
居住快適性 | ★★★☆☆ |
設営・撤収の容易さ | ★★★★★ |
耐候性 | ★★☆☆☆ |
耐久性 | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★★★ |
携帯性 | ★★★★★ |
総合点 | ★★★★☆ |
※★での採点は比較テストを行うまでのインプレッション評価ですので、あくまでも参考までに。
詳細レビュー
洗練された構造で素早い設営が可能
ソロ・デュオシリーズに使われているスロープ方式で一人で簡単に早く設営することが可能です。ストラップのかけ具合でテンションを調節できます。この辺りは最新のテントモデルと同等のシステムが採用されています。風が強い雨や雪の天候でも素早く設営ができ駆け込むように中へ非難することができたので、設営スピードの点に関してはかなり優秀です。
フルシームシーリングによる高い防水性
エスパースのテントはどれもデフォルトで縫い目に全てに丁寧にシームシーリングが施されています。こちらのモデルもテントと同じように丁寧なシームシーリングが施されています。ある程度強い雨にも問題なく対応してくれます。この手のタイプは冬季の使用においても結露凍結の問題は通常のテントにおいても同じこと、そうした点を踏まえていれば冬も問題なく使えます、ただ耐寒性は低いのでその時期での使用は上級者向けの話になります。
気になる部分
空気がこもりやすい
ツェルトとテントの中間に位置するようなこれまでにないシェルターのため、テントと同じような快適性は求められない傾向にあります。潰れにくい特殊芯内蔵のベンチレーターが左右に2カ所設置されており通常のツェルトに比べれば換気性は高いものの、やはりテントに比べれば息苦しさはやや感じやすい印象を受けます。ビバーク慣れしている方には問題ありませんがそうでない方にとっては慣れるまで時間が必要でしょう。前提としてテントと同一のものとして捉えるのではない尖ったシェルター(ツェルト)なので、初めてテントを買うような層の方がチョイスするべきではないことは念を押しておきます。
まとめ:どんな活動におすすめ?
すでにテントは持っていて第2の選択肢として使い分けるのがおすすめ
テントと同じような感覚で使えるツェルトであり、軽量化を強く求めながら経験を積んだ方には非常にマッチしてくるアイテムです。長距離のトレラン、長期間のクライミングは勿論のこと、軽量化を意識しながら長く山に入るすべての活動にとって最適な選択肢の一つであり、また季節や環境もこれを使いこなせる方の判断次第ではかなり汎用性は高いといえるでしょう。
一方ではじめて購入するテントとしては、メッシュの通気などの快適性やフライなどのより安定した天候対策がないためあまりおすすめはできません。確かに軽さは魅力ですが、それと引き換えに快適・安全のための機能をそぎ落としているリスクを補うための経験・技術が求められることは忘れてはなりません。もしご自身のやりたいことと、これまでの経験を照らし合わせ、それでもコレしかない!と迷わず思えるならばあなたはすでに立派な玄人。クロスオーバードーム fはストイックな挑戦へのこれ以上ない最適解となるでしょう。