【忖度なしの自腹レビュー】オスプレーの渾身作、アンリミテッドエアスケープ68 はなぜ「世界で最も先進的なバックパック」なのか
もしも世界最高峰のデザイナーが、時間とコストの制約から解き放たれ、無限のアイデアと最高品質の素材、そして最先端のテクノロジーを惜しみなく投入した「ぼくの考えたさいきょうのバックパック」を作ったとしたら?
そんな夢みたいな話を一度でも思い浮かべたことがあるのは、きっとぼくだけではないはず。
今回紹介するOSPREY アンリミテッドエアスケープ68 は、コスト度外視で一切の妥協を許さず、最も新しい技術と最も新しい素材、そして最も新しいデザインを詰め込んだ(とメーカー自らが語る)、目下世界で最も先進的で最も実験的と世界中で評されている登山用バックパック。
2022年にリリースされてから1年経ちましたが、数え切れないほど多くのユニークで革新的な機能の数々を備えたそれは(飛び抜けた価格も含めて)2023年の今でも唯一無二の存在感を放ち続けています。
果たしてこれはバックパックにおける真の「ゲームチェンジャー」なのか?それとも少々前のめりになりすぎたメーカーによる、ごく限られた人のための「嗜好品(広い意味でのコンセプトモデル)」なのか?もちろん答えはどちらか一方に決めきれるものではありません。どんなに優れた道具も、用途や目的にかなった使い方をしなければ、それは単なる役立たずでしかないものです。
ではこのバックパック、実際のところ、いったい何がどう「新しくて」どう「スゴイ(あるいは残念な)」のか。素晴らしいとしたらどんな用途やスタイルにフィットするのか。この1年間さまざまなトレイルで背負ってきましたので、早速レビューしていきます。
目次
OSPREY アンリミテッドエアスケープ68の主な特徴
OSPREY アンリミテッドエアスケープ68 は、春夏秋冬オールシーズン対応、週末のテント泊から1週間以上の長期遠征まで対応可能な約70リットルのハイキング・登山用(および旅行用)バックパック。最先端の軽量高耐久素材や荷重伝達に優れた安定感抜群のハイカーボンステンレス製フレーム、業界初の3Dプリント技術を利用したメッシュランバーパッド、快適で空気の流れを妨げない背面パネルなどによって、過酷な環境で大量の荷物を長時間快適に運ぶことに関しては無類の強さを発揮。またオスプレー独自のカスタマイズ可能なフィッティングシステムは、背負った状態から背面長やヒップベルト長を含めたバックパック全体を体型に合わせて素早く調節しフィットさせることができます。収納面でも、多くの荷物をスマートにパッキングし簡単にアクセスすることができる多数のポケットやアタッチメント類が旅のストレスを軽減。さらに取り外して18リットルのデイパックに素早くチェンジするトップリッド(雨蓋)は、長いアドベンチャーでのさまざまなシーンに対応します。レインカバーとカスタムエアポータートラベルカバーが付属。
お気に入りポイント
- 重ければ重いほど実感する、どんなバックパックよりも堅牢・快適・安定性抜群な背面フレームと各種パッド
- 背負いながら最適な背面長に調節できるカムロック背面調節機構をはじめとした正確で簡単なフィッティングシステム
- たくさん収納できてアクセスもしやすい両サイドの大型ヒップベルトポケット(ストレッチオープンポケット)
- 大きく開いてアクセスしやすいフロントのU字アクセスジッパー
- 出来が良すぎる18リットルのトップリッドデイパック
気になるポイント
- バックパック自体が重い(荷物も重い前提なのでそこまで気にはならないが…)
- これまで出会った登山用バックパックの中で最も高い価格(今年になってさらに値上げ…涙)
- 堅牢でごつい構造のため長期の一般的なハイキングやトレッキングには向いているが、アルパイン(登攀系)やファスト&ライト、日帰り登山といったアクティビティにはまったく向いていない
主なスペックと評価
アイテム名 | OSPREY アンリミテッドエアスケープ68 |
---|---|
容量 | 68リットル(S/M)、72リットル(L/XL) |
重量 | 実測:約2.9kg(メンズL/XLサイズ、トップリッド・レインカバー含む) |
素材 |
|
女性向けモデル | あり |
サイズ/背面長 | 調整可能 |
ハイドレーションスリーブ | ◯ |
メインアクセス | トップ・フロント大型U字アクセス |
レインカバー | ◯ |
ポケット・アタッチメント |
|
評価 | |
快適性 | ★★★★★ |
安定性 | ★★★★★ |
収納性 | ★★★★☆ |
機能性(使いやすさ) | ★★★★★ |
耐久性 | ★★★★★ |
重量 | ★☆☆☆☆ |
詳細レビュー ~なぜアンリミテッドエアスケープ68 は「世界で最も先進的なバックパック」なのか~
1:デザインとフィッティング ~どんな体型でも完璧にフィット。つけ入る隙のない画期的な調整システム~
バックパック界のレジェンドによる渾身の一作
このバックパックの何が驚きかって、その度肝を抜かれる価格ももちろんですが、よくもここまで新しい要素を詰め込んだなと、よくもここまで新しいアイデアが生まれるなと。とにかく作り手である、オスプレーの創設者にして50年近くバックパックデザインに携わり現在でも現役のレジェンド、マイク・プフォーテンハウアー氏の本気と情熱がビシビシと伝わってきます。
それもそのはず。マイク氏はこれまで50年余りにわたって登山やハイキング、スキー、マウンテンバイクからスルーハイキング、そして世界旅行までありとあらゆる用途に対応するバックパックをデザインしてきましたが、そんな彼の最新作である「アンリミテッド」バックパック」シリーズは、なんと「コスト度外視(=Unlimited)で設計思想や技術を追求する」という一般的な企業としてはおよそ考えられないぶっ飛んだコンセプトで、彼の長年にわたる構想を世界中の精鋭スタッフたちとともに2年間の開発期間で結実させた入魂の一作。常識で考えていち製品に対してここまで自分からハードルを上げる発言をするなんて、普通はリスク以外の何物でもなく、よほどの覚悟か、よほどの自信がなければできることではありません。そこから推測するまでもなく、とにかく気合いと本気しか感じられない、そんなバックパックです。
前置きはこのくらいにして具体的なレビューに移りたいと思いますが、まず外観(フォルム)に関しては、伝統的な登山用バックパックのデザインを基本的に踏襲しています(長い歴史によって完成されたこの安定した形状に不満がある人はまずいないでしょう)。安心感のあるシンプルで無駄のないシルエットに、落ち着いたモダンなカラーリングは、個人的には好印象です。
一方パックをひっくり返して背面を見てみると、ウェストハーネスの腰椎部分には(後述する)3Dプリント技術を利用したメッシュランバーパッドが、背中部分には異素材の組み合わさった立体的な背面パネルが、そしてショルダーには異様に太いロードリフター(バックパック本体とショルダーストラップとの間を引きつけるストラップ)など、見慣れないパーツをいくつか垣間見ることができます。これらは市場にある他のどの製品とも明らかに異なり、少し登山用バックパックを見たことがある人ならばすぐにこのただならぬ雰囲気に気がつくと思います。
最適なフィッティングが誰でも立ったまま簡単に完了する革新的調整システム
ともあれ外観はそこまで意外なものでもないのかもしれませんが、驚くのはここから。自分がこのバックパックで何より惚れ込んだのは、そのとてつもなくエキサイティングなフィッティング・システムでした。
バックパックのフィッティングが大切なことはここであらためて説明するまでもなく、メーカーをはじめ山のお店などで耳にタコができる程言われていること。
ただこのフィッティング作業、これまでならすべての部位で調整を完了しようと思うと、多かれ少なかれザックをおろしてから背面のパーツを(だいたいこのくらいのサイズかなと見当つけながら)調整しなければならないものでした。
しかし、アンリミテッドエアスケープ68ならば、それが本当に驚くほど簡単に、そして正確に行うことができます。「フィットオンザフライ(あるいはオートリフト機構)」と銘打たれたそのシステムのコンセプトはつまり「行動中に(その場で)フィッティング」という意味であり、文字通り背負って立った状態から、背面長を含めたすべてのサイズを調節することができてしまう画期的な調整システムです。すでにオスプレーではイーサープラスといったハイエンドモデルで一部そのルーツとなる技術が見られていましたが、このモデルでそれが飛躍的に進化したといえます。
百聞は一見に如かずで、下の動画では実際に自分がまっさらな状態からウェストハーネス・ショルダーハーネス・背面長・ロードリフター・スターナムストラップすべてを立ったままフィットさせている様子を撮影しています(特に動画の「ステップ3」がまさに肩とショルダーハーネスの隙間が埋まって背面長がフィットした瞬間)。
さらに下の写真で解説すると、「1:ヒップベルトを締めて」から、「2:ショルダーベルトを締める」ところまでは通常のバックパックと同じ手順ですが、アンリミテッドエアスケープ68では次のステップで「3:脇下の後ろ部分にあるカムロック式背面長アジャスターを引く」ことで、バックパックの背面長を自分のサイズに合わせることができます。この方法が優れているのは、通常であればザックをおろして長さを調節してからあらためて背負うという順序になるため、その長さが自分に本当にあっているのかどうかを実感しづらいところを、背負った状態のまま長さ調整できるため、より正確に自分に適したフィット感にピタリと合わせることができるという点。また歩いている最中に少しでも違和感を感じたらその場ですぐにフィット感を何度でも調整し直すことができます。今までよりも格段に「簡単・正確・納得感高し」と、文句なしに素晴らしい。
※ちなみに動画を撮った後に気がついたので補足しておくと、ウェストハーネス長の調節も立ったまま可能なのですが、この動画ではすでに済ませてしまっていました。下の写真のように、ベルクロで留まった部分をずらせば、ウェストハーネスのサイズもサクッと調整が可能です。
この独自の調節機構によって、背負った状態で背面長をフィットさせることができるとともに、荷重を背中にぐっと引き寄せてくれます(参考までに背面長調節機構の仕組みを下写真に貼っておきます)。おまけに肩と本体を結ぶロードリフターはこの時点で最適な長さと角度に自動でセットされるため、あらためて調整する必要もありません。
長さ調節可能なヒップベルトと合わせて、総じてどんなに慣れていない人であろうとも、瞬時にこれ以上なくぴったりとしたフィットが可能です。しかもこれによって重量が無駄に増えるということもなく、今のところこの機構にしたことによるデメリットはほぼ見当たらないというところも見事。これを知ってしまうと通常のバックパックのフィッティングがすべて前時代のモノに見えてしまい、もう元の感覚に戻るのは難しいでしょう。
2:背負い心地と安定性 ~かつてないほど安定感抜群の耐荷重性能と快適な背負い心地~
フィッティングだけでなく、実際に歩き出してもまだまだ驚きは終わりません。正直なところ、重い荷物になればなるほど、このバックパックはこれまで背負ってきたどんな大型バックパックよりも快適に歩くことができると、今なら自信をもって言えるほどの優れた背負い心地を実感しました。この快適で安定感のある唯一無二の背負い心地を生み出しているのはこれまた業界初の背面構造にあると考えられます。
例えば腰椎部分には、バックパックで初めて、Carbon(カーボン)社の高度なDLS 3Dプリント技術が採用されたランバーパッドが採用されています(数年前にアディダスがこの技術を採用して世界初のランニングシューズを製品化したことでも有名)。このパッド、一見全体が同じような模様に見えますが、よく見てみると微妙に格子の形や密度が変わっており、それによって弾力性が微妙に異なっています(下写真。つまり部位によってクッションの強さを微妙に調節している!)。また見ての通りこのパッドは空気を通しまくるし水を吸収しない構造なので、ドライ感は抜群です。
つまり、難しいことはすっ飛ばして言うとこのさまざまな密度の格子状クッションのおかげで、荷重が最もかかるこの重要な部位でのインパクトを均等に分散し、腰への圧迫感を軽減し、絶妙な柔らかさと、抜群の通気速乾性と、安定したサポート、そしてズレにくさを提供してくれているのです。
さらに個人的に最もお気に入りなのが、荷重を腰に集中させ重さによる無理な負荷を極力感じさせないようにする、ずば抜けた荷重耐性と安定感を生み出しているフレーム構造です。
全体の構造としては、まず背面全体をカバーする堅牢かつ柔軟で軽量な熱成形ポリカーボネート製フレームシートがあり、その周りに軽量性と剛性を備えたハイカーボンステンレス製のフレームが周囲を巡り一体化しているという構造ですが、驚くのはこのフレームの下端がヒップベルトの途中にまで伸びている(連結されている)点です(下写真の点線に沿った部分)。これによってどれだけ重い荷物でも荷重をヒップベルトに伝達し、腰回りもヘタらずしっかりと腰に乗せることが可能となります。ちなみに本国の公式サイトにはその最大耐荷重が「30kg」と記載されており、これは数週間の本格縦走でも優に耐えるほどの容量を備えていることを示しています。
昨年北アルプスで20キロ程度の荷物を背負って歩いた際も、このおかげで肩回りは数キロの荷物を背負っていたのと変わらない感覚で歩くことができました。
さらにその荷重を受け止めるヒップベルトは適度なコシの強さを備え、硬すぎず柔らかすぎず、しかも内側にシリコングリップが圧着されており「強くて・優しくて・ズレない」絶妙な具合を実現してくれています。
その他、背面の快適さを担う熱成形ポリカーボネート製フレームシート(+溝に沿って配置されたEVAパッド)は計算された溝によって適度な剛性と通気性を両立させ、重心を身体に密着させつつも大量にかく汗による蒸れを最小限に抑えてくれます。通気がいいからといって冬寒いという分けではないので、年間通して快適な背面といえるでしょう。
3:重量と耐久性 ~軽量で抜群の耐久性をハイブリッド素材を採用~
革新的な構造面だけでなく、バックパックに使われている生地・素材についても当然、攻めた試みがなされています。
メインファブリックに採用されているのは、一般的なナイロンより耐摩耗性と引裂強度を大幅に向上させたハイテナシティナイロン繊維に、UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)のダブルリップストップグリッド(二重の格子)を織り込んだ210 デニールのハイブリッド生地です。このUHMWPEとはいわゆる「ダイニーマ」の商品名で知られる、ウルトラライト系を中心に今ではおなじみの軽量・高耐久繊維。つまりこの生地の優れている点は、ナイロンの扱いやすさ(といっても十分ハイスペックな種類のナイロンだが)とダイニーマの突出した重量対耐久性をバランスよくブレンドされている点にあるといえるでしょう。
少なくとも1年間使った限りの印象では、実際に非常に密に織られた生地の表面は滑らかで引っ掛かりにくく摩耗にもかなり強く(もちろんリップストップ生地だから引き裂きにも強いわけですが)破損や綻びの心配は全くといっていい程ありません。
また耐久性撥水加工もしっかりと効いていて水もよく弾いてくれますので、これだけでもかなり雨にも強いです。もちろん、もし強い雨にさらされそうな場合でも、バックパックの底にはレインカバーが用意されていますのでそこは心配いりません。
4:収納性と使いやすさ ~オスプレーが長年培ってきたノウハウのオールスター +α ~
大型バックパックでは重荷に対する強さと同じくらい大切なのが、かさばる荷物を効率的にパッキングできる収納性や、出し入れのストレスを軽減するアクセスのしやすさです。
その点、このバックパックはオスプレーのさまざまなバックパックで便利だった収納や使い勝手がオールスターで取り入れられつつ、その上にこのモデルならではの新たな要素が追加されているといった趣で、彼らが長年培ってきたパッキングノウハウの集大成といった感じです。
まずメイン収納は1気室ですが、底部に寝袋を固定するためのストラップ(スリーピングバッグ用コンプレッションディバイダー)が備えつけられているため、実質1.5気室といったところです。荷物は雨蓋を開けて上から出し入れする他、(最近では一般的になった)U字型に大きく開くフロントアクセスジッパーを設けています(下写真)。ただこのU字ジッパーはサイドパネル上部まで大きく食い込んでいるため、フロントでの出し入れ以外にサイドからも出し入れしやすいという他にない工夫がなされていました。
雨蓋にはラミネート補強された滑らかなジッパーがついた2つのポケットを配置。上部には地図や携帯などの小さな薄いアイテムや、備え付けの赤いキークリップに車のキーなどを収納でき、下部にはややかさばる小物も入る余裕があります。
またオスプレーの大型バックパックではすでにお馴染みですが、この雨蓋を取り外すと、かなり本格的な18Lのデイパックに変換できます(下写真)。ショルダーベルトにはクッション性もあり、調節可能なスターナムストラップまで付いてかなり快適です。例えば縦走中の短いピークアタックや水場への水汲みといったサイドトリップに適しているだけでなく、飛行機での移動時には機内持ち込み用のキャリーオンバッグとしても機能します。
外部のポケット類に関しても、心躍るニクい機能が盛りだくさん。まず何よりも便利だったのは収納はサイドにあるどデカいメッシュストレッチオープンポケット(下写真左)。
左右どちらにもあり、右が大きめ、左はそれよりは小さいけどそれでもやや大き目サイズなのですが、ポケットの位置がやや腰の近くにあり口も大きいため、とにかくアクセスがしやすい。だからといって入り口が緩々でものが落ちやすいということもなく、非常に使い勝手の良いポケットです。
なおヒップベルト左にはジッパーの付いた適度な大きさのポケットもあるので(下写真右)、そこにはスマホやハンカチ、リップクリームなどはここに収納するのが便利です。
次に、フロントには左右からそれぞれアクセスできるジッパーポケットを備えています(下写真)。ジャケットやハット、グローブ、行動食や地図などやや大き目のアイテム収納に使えそうです。ただ、実際に使ってみると微妙に小さくて、どっちに入れたかも混乱しがちで使い勝手はイマイチ。個人的には2つに分けないで合体した1つの大き目ポケットにして欲しかったかなと、ここは若干残念に思いました。
このポケットのジッパーを覆うフラップにサイドコンプレッションストラップが接続されており、下部のストラップと合わせてサイドに長物を固定したりパック容量を圧縮したりすることができます(下写真)。スノーシューもサイドストラップに固定可能。また補強されたスキーループを使えばスキーもサイドにAフレーム方式で固定でき、スノーシーズンでの利用も十分に考慮されています。
ボトム部分にはマットレスを固定するストラップとレインカバーの収納ポケット(下写真)。マットもレインカバーも常に使うとは限らないけど、何だかんだあると安心。
さらにフロントにはアックスやポールを固定するループも2つしっかりと付いています(下写真)。しかも不要な時はこのループを内側に収納できるという気遣いまであって、細かい部分ですがこうした部分が何とも言えない品の良さを醸し出しているといえます。
オスプレーバックパックには欠かせない、歩きながら一時的にトレッキングポールを仕舞いたいときに、すぐ身体の脇にポールを固定できる便利な「ストウオンザゴートレッキングポールアタッチメント」もしっかり(下写真)。
ハイドレーション用のスリーブはバックパックの背面外側から出し入れできる場所に(下写真)。入り口のジッパースライダーが2個あるため、ホースの位置を左右どちらにも出すことができ、ショルダーハーネスのホースアタッチメントも左右にあるという細やかな配慮が行き届いた仕様。
細やかついでに、バックパックで採用されているバックルは堅牢なデルリン製のYKKバックル、そしてすべてのジッパー(もちろんこちらもYKK製)は、引手がグローブをしていても扱いやすい(下写真)大きなタブが付いています。コスト度外視の恩恵がここにも。
そして最後に(実際に使ったことはないですが)アンリミテッドエアスケープ68にはこのバックパックがすっぽりと収納できてしまう大きなトラベルカバーが付属しています(下写真 引用:ロストアロー公式HP)。確かに空港に預ける際などにトラベルカバーに収納すればヒップベルトやバックル、ストラップ類を保護できるので、遠方へのトレッキングや長期遠征ではありがたいオプションといえます。
5:気になる点 ~規格外の重さと高価格は果たして見合うのか?~
とにかく重い。自分の持っているメンズのL/XLサイズは実測2.9 kg。実際これまで背負ってきた60リットル以上のバックパックのなかで最も重いです。直接の競合といえそうな、例えばGREGORYのバルトロ65でもおよそ2.2kg。ちなみにグラナイトギアのBLAZE 60などUL系はおよそ1.4kgと、倍以上の重量差になります。
ただ、この重さにもかかわらず、十数キロの重荷を背負ったときの快適さでは、個人的にはっきり言って最新バージョンのバルトロ以上のものがありました(現場で実際に比較して、自分を含めたテスター2名の実感です)。このためある程度以上の重い荷物でのトレッキングでならば、この重さは快適さや便利さと相殺されて余りあるということで、特に気にする必要はないと思っています。
逆にそこまでの重い荷物を必要としないシーンであれば、この重さは文字通りの重荷となってきてしまうので、いくら先進的な機能を満載しているバックパックだからといって、その機能を十分に活かすことはできないでしょう。
まとめ:間違いなくこれまで出会った中で最も快適な大型バックパック
バックパックは志向するスタイルや目的によって求めるものは人それぞれであり、また体型によっても微妙にフィット感が異なるためすべての人が満足する最高のバックパックというものはあり得ません。その意味ではこの最も先進的なバックパックが必要ないという人がいても当然おかしくはないでしょう。例えば日帰り低山ハイキングを好む人や、軽量の荷物でファストパッキングしたい人、あるいはテクニカルなバリエーション登山を好む人などなど、重荷・長距離・トレッキングという枠を超えたアクティビティには適さないケースが出てくると思います。
ただ、そうした場合を除けば、アンリミテッドエアスケープ68は汎用性の高い機能を幅広く備え、そしてどれだけ荷物が重くなろうとも安心な快適性と安定性を備えた、現時点で”最強の”大型トレッキングバックパックといえます。コスト度外視の最先端の素材や技術は決して見せかけではなく、新しい技術をしっかりと使える機能として具現化できる開発力とアイデア力は、相変わらずさすがとしか言いようがありません。常に実用性とカスタムフィットこだわってきたオスプレーの信念と長年培ってきたノウハウがあればこそでしょう。
ハイキングやトレッキング用のリュックが欲しい、夏には長いテント泊縦走がしたい、そして冬の使用も見据えたい、このようなイメージで大きめのバックパックが必要だという一般的な登山愛好家なら、このバックパックは間違いなく現在の市場で最も頼もしい存在です。
ただ個人的には心底満足しているとはいえ、だからといってこの普通ではない高価格について「誰にとっても価格に見合うものだ」と心から言える自信は、正直自分にはありません(もちろん普通に満足はできると思いますが)。だからこそ、アウトドアを安全にとことん楽しむためなら相応の対価を惜しまないという人、世界で最も素晴らしい品質のバックパックを味わってみたいという道具好きといった何らかの前のめりさがある必要がある人にこそこのアイテムを手にとってもらいたいものです。
ちなみに、オスプレーではアンリミテッドシリーズの兄弟分として「アンリミテッドアンチグラビティ64」をラインナップしています。こちらは基本的に同じコンセプトを共有しながらも、クラムシェル型で3シーズン対応とややライトめのターゲットを想定している模様。個人的にはライトなハイキングから雪山やよりハードなシーンまで幅広くカバーできるエアスケープをおすすめしたい。
いずれにせよ、この夏大きな冒険を準備しているならきっと期待に応えてくれるはず。新しい相棒と共に、良い旅を。