比較レビュー:MSR ウィンドバーナーパーソナルストーブシステム 圧倒的な熱効率とタフさがウリのストーブシステムはどこまですごいのか比べてみた

MSR ウインドバーナーは、画期的な仕組みを取り入れた、オールインワンの1人用高熱効率ストーブシステム。北米地域ではすでに数年前から販売されていたものの、日本国内では規制の影響などで長きに渡り正規販売されず、コアな山ファンをやきもきさせていましたが、2020シーズン、ついに正式に販売されることとなり、界隈ではちょっとした話題になっていました。

こうしたポットとストーブが一体となったストーブシステムの先駆けといえば皆さんもご存知、ジェットボイルがあります。自分もそちらを長らく愛用しており、今回のモデルがそれと比較してどれくらいの実力があるのか?「買い」なのか?やはり気になるところで、自分で確かめてみたいとずっと思っていただけに、ようやくその時が来ました。

そこで今回、このモデルを実際のフィールドで使用するとともに、ジェットボイル MiniMoと同条件で湯沸かし比べもしてみました。実際のところ本国アメリカではすでに発売から6年もの歳月が経過した製品ですが、まさに今話題になる理由とはなんなのか、いろいろな環境で試してみた様子をレポートします。

※今回のテスト結果や評価は製品についての公式な性能評価ではなく、あくまでもレビュワーが想定したある一条件と操作に基づく結果・評価です。他条件での結果について保証するものではなく、すべての結果・評価については自己責任において各自ご判断ください。

目次

MSR ウィンドバーナーパーソナルシステムの主な特徴

MSRのウインドバーナーパーソナルシステムは、強風、低温下でも安定して使える高性能・高効率なオールインワンバーナーシステムです。アウトドアバーナーでは珍しいラジエントバーナー機構を採用したことで高い熱効率と同時に、高い防風性をも実現しました。専用のポット(鍋)にはバーナー本体やガス缶など、必要なモノすべてしまうことができ、とてもコンパクトに持ち運ぶことができます。ポットの容量は1Lで、1名ではもちろん、2名での山行でも十分対応できます。

ウィンドバーナーのスペックと評価

項目スペック・評価
ここが◎
  • 風に強い
  • コンパクト
  • 高い燃料効率
ここが△
  • 高価格
  • 重い
  • 着火装置がない
燃焼力★★★★★
耐風性★★★★★
燃焼効率★★★★★
収納性★★★★★
使い勝手★★★☆☆
汎用性★★★☆☆
重量★★★★☆
実測重量468g(ガスカートリッジを除く)
最大出力1765kacl/h
容量1.0L
内容品
(個別実測重量)
本体(198g)
ポット(207g)
キャップ(14g)
スタビライザ―(17g)
カップ(32g)
収納サイズ11.5×10.7×18.1cm

詳細レビュー

ウィンドバーナーは、バーナー本体、ポット(1L)、カップ(360ml)、キャップ、スタビライザー、タオルで構成されています。これに専用ガス缶(別売り)が加わり、すべてで7点になります。

内容物+ガス缶(110)

内容物は、すべて1Lのポットの中に収納することができます。

ガス缶を含め内容物はすべてポットに収納可能

すべてまとめて収納できるので、コンパクトになるのと調理時にストレスなく準備できるので、パッキングがとても楽です。

コンパクトに収納可能

収納時、ポット内にはこんな感じで収納されています。

このような感じでポット内に収納されています

組み立てると、地面からはおおよそ32.5cmと予想以上に縦長で安定感がやや悪いため、ガス缶には付属のスタビライザーを使った方がよさそうです。

組み立てた状態。背が高く30cm以上になる

ここからはバーナー本体を見ていきます。本体はかなり独特な形状をしています。

独特な形状の本体

上から見ると火口はかなり大きく、金属性メッシュの下にさらに細かいメッシュの網がついています。火をつけると、通常のバーナーのように火が煌々と燃えるのではなく、このメッシュが熱され、そこから出る赤外線でポットを温める構造です。

上から見ても独特な形状。一見バーナーとは思えません

実際火をつけると、メッシュが真っ赤に燃え見るからに熱そう。この状態での火力は最大で暗がりなので火がついているのが一目でわかりますが、周りが明るかったり弱火にすると火がついているのかわかりずらいので、一直線に通したインジケーターが赤いかどうかで火がついているか確認できます。

火をつけるとすぐにメッシュが真っ赤になります

周囲が明るくても、インジケーターが赤くなっているのが、なんとなく確認できます。

周りが明るくてもなんとなく赤くなっているのがわかります

このバーナーにはイグナイター(着火装置)がついていないので、使うときはライターやマッチ、ファイヤースターターなどを忘れずに持っていく必要があります。MSRのバーナーはイグナイターをつけないことが多いですね。

火をつけたら、ポットを載せます。ポットを載せた状態だと完全に密閉されていて着火できないので、ポットを載せる前に着火することになります。

着火してからポットを装着します。

ポットを装着すると、火口は完全に密閉されているのがわかります。これによって火力を無駄なくポットに伝え、高効率・ハイスピードでお湯を沸かすことができます。

ポットを装着すると、火口は密閉されていることが見てわかります。

それに加え、ポットの裏側には羽のような構造が付いています。これはヒートエクスチェンジャーと呼ばれる機構で、主に2つの機能を果たしています。1つは効率よく熱をポットに熱を伝えています。もう1つは、火口が密閉されているため、燃焼時に発生する二酸化炭素を勢いよく排出し不完全燃焼を防ぎ、その空気の流れに熱気を乗せポットをより効率よく熱する役目も果たしています。

ポットの底には熱を効率よく伝えるヒートエクスチェンジャーが付く

ポットの裏から水を流すとしっかりと抜けていくことがわかります。ここから二酸化炭素を逃がしているのでしょう。

換気口あり、ここから水が出ていくように二酸化炭素が抜けていきます。

以上の構造は、ラジエントバーナー機構と呼ばれ、高い熱効率と防風性を果たすための必須な構造となっています。以下の図のように、通常のバーナーは燃えている炎自体に常に酸素が必要となるため、防風性を高めてしまうと十分な酸素が供給されず燃焼力が低下してしまいます。そのため、酸素を供給できる構造にせざるを得ず、どうしても風に弱くなってしまってました。しかしウィンドバーナーはすべての酸素を一次空気のみで供給できるため、風を完全に防ぐ構造でも不完全燃焼も起きません(MSR本国公式HPより)。

引用:MSR公式HPより

さて、製品の話に戻ります。ポット内部にはメモリが付いています。最大容量は1000mlですが、吹きこぼれ防止の為か、お湯を沸かすときは600mlが最大容量となっています。実際ポットの目盛りには600mlの場所にMaxと刻印されています。

容量がわかるように目盛りが刻印されています

ポットの赤い部分は樹脂製の骨組みにナイロン生地を張り付けたもので、保温性はそこまで高くはありませんが簡易コジーのような役目を果たしています。これのお陰で沸騰直後でなければ手で持つこともできます。そもそも取っ手もついているので、沸騰後でも問題なく手で持つことができます。

持ち手があるので、沸騰直後でも持ち上げれます

この部分は外すこともでき、乾かしたり掃除がしやすくなるので、衛生的です。

濡れても問題ない素材ですが、外して洗うこともできます。

基本水を沸かすのが主な目的ですが、麺を茹でたり煮たりするような簡単な調理をすることもできます。キャップには湯切りができる穴があるので、そのような調理は簡単です。

キャップは水きりに便利な穴が開いているので、調理にも便利

収納時にポット底部につけるカップは105℃まで耐熱性があるので、食器になります。ついでにポットのキャップはカップにも合うようになっているので、一通りの使い方ができ、1人だと食器を減らすこともできそうです。

キャップは、カップにも使用できるようになっています

最後に重量の詳細を見ていきます。公式重量は465gとなっており、実際に計測した実測重量は468gと誤差はナシの範囲でした。個別に見ていくと、本体(バーナー)198g、ポット207g、カップ32g、キャップ14g、スタビライザー17g、タオル1g(1.5g)でした。

いろんな条件で沸かして比べてみた(ウィンドバナー & ジェットボイル)

実際に使用する環境を考慮して水の量・風・気温などを変えて、沸騰までの時間を計測してみました。

なお、各テストでの条件は厳密に揃えられているわけではありませんし、沸騰したタイミングの判断は温度ではなく目視で行ったので、数秒の誤差はあると思いますのであくまでも参考程度に。

まずは両者の基本スペックの比較です。重量はジェットボイルの方が若干軽く作られています。

アイテムMSR ウィンドバーナージェットボイル MiniMo
最大出力1765kacl/h1404kcal/h
容量1.0L1.0L
実測重量468g433g(ゴトクナシ)
内容品
(個別実測重量)
本体(198g)
ポット(207g)
キャップ(14g)
スタビライザ―(17g)
カップ(32g)
タオル(1g)
本体(130g)
ポット(199g)
キャップ(30g)
スタビライザ―(26g)
カップ(48g)
収納サイズ11.5×10.7×18.1cm12.7cm×15.2cm

実際に水を入れて沸騰するまでの時間を計測してみました。先述のように、沸騰したかの判断は目視で行っているので、数秒の誤差は生じていると思ってご覧ください。テストは、常温下での500ml・1000ml、耐冷性を測るため冷凍庫に入れて500ml、耐風性を見るため扇風機を当てての500ml、高標高での500mlの沸騰間での時間を計測しました。それぞれの条件はできる限り同じになるようにしています。常温下ではそれぞれ5回沸騰させ、その平均値を示しました(時間の単位は分:秒)。

アイテムMSR
ウィンドバーナー
ジェットボイル
MiniMo
常温(ほぼ無風、蓋アリ/ナシ)
500ml
(5回平均)
2:01 / 2:161:44 / 1:52
常温(ほぼ無風、蓋ナシ)
1,000ml
(5回平均)
3:493:39
冷凍庫
500ml
3:093:07
扇風機(強)
500ml
2:252:39
高所(標高約2000m)
500ml
1:451:27
燃焼効率(500ml水1沸騰あたりのガス消費量)5.8g4.4g

常温(ほぼ無風)

ほぼ無風の常温水(だいたい17℃程度)では、本国の公式スペックである程度予想はしていましたが、ジェットボイルの方が沸騰までの時間は若干早い結果となりました。特に蓋をしたジェットボイルは、なんと1分44秒とかなりの早さ。

同条件で沸騰までの時間を計測

低温

次は寒さにも強いといわれるウィンドバーナーの性能を発揮できるであろうフィールド、氷点下での沸騰テストです。とはいえ、ジェットボイルのミニモにも低温下でも使用できるようにサーモレギュレーターがついているので、勝負はどうなるか分かりません。

各システム(ポット、バーナー、ガス缶)を前もって1時間冷凍庫に入れて冷やしたのち、500mlの常温の水を入れ沸騰させてみました。ちなみにテスト開始直前の冷凍庫内の気温は、ウィンドバーナー(開始時-15℃、終了時-8℃)、ジェットボイル(開始時-16℃、終了時-10℃)で、冷凍庫内は氷点下を維持していました。

結果は、ウィンドバーナー3分9秒、ジェットボイル3分7秒と数値上ではジェットボイルの方が2秒早かったのですが、目視での誤差を考慮するとほぼ同じ性能といえるでしょう。ジェットボイルは常温テストでの沸騰時間を基準に考えると、低温下での性能はガクンと落ちるようです。

強風

さて、ウィンドバーナーとあるように、風に強いのが特徴のはずのこのバーナー。実測はどうなのでしょうか。扇風機の風を直接当てて計測してみました。風速を測ったわけではないのでこれくらいの風ではこれくらいの性能。とは言い切れませんが、扇風機の強モードでテストしてみました。

扇風機を設置して耐風性テスト。火口の高さを合わせるために、ジェットボイルは嵩上げしています。

強モードの風をある程度ストーブから離して当てたところ、ウィンドバーナーが2分25秒、ジェットボイルが2分39秒となり、想像通りウィンドバーナーの方が早く沸騰させることができました。やはり風に強いとうたっているだけあって、ウィンドバーナーは常温テストの結果からおよそ10秒遅れのタイムで沸騰させましたが、ジェットボイルは常温テストの結果よりも約45秒遅くなり、風の影響があからさまに結果にでました。

【追記】強風追加テスト:より厳しい条件下では耐風性能の差がはっきりと

山岳での状況を再現するのに、扇風機の風ではやや弱いと思われたため、ここでもう少し厳しい環境で追加テストすることにしました。ある程度条件をそろえ(気温26℃、湿度44%、スタート水温26℃、水量500ml)、風速計にて「3.5m/s」「4.5m/s」の2つの状況で今一度沸騰テストを行いました。

サーキュレーターの風をストーブに直接当て、その部分の風速を計測して条件をそろえた。1台では3.5mが限界であったため、もう1つのサーキュレーターを追加したところ、4.5~5.0m程度まで風速が得られた。

ただし、上の写真のように風は扇風機よりも強力な家庭用のサーキュレーターを使用し(このため風速も4.5mが限界でした)、風速計も一般に売られている数千円の機器であるため、管理されたラボでの試験のような精密さはありません。このため実際のフィールドでもテストと同じ結果となるとは限りません。ただそれでも使用するうえで明確な差が見られたため生まれたため、参考までにテストデータを共有します。

アイテムMSR ウィンドバーナー
風速約3.5m
ジェットボイル MiniMo
風速約3.5m
MSR ウィンドバーナー
風速約4.5m
ジェットボイル MiniMo
風速約4.5m
沸騰時間 (m : s)2:104:102:12完全に沸騰せず
ガス 消費量 (g)7117計測できず

上の結果を見ていただくと分かるように、風速3.5m/s、4.5m/sとどれだけ強風状況になろうとも、ウィンドバーナーは通常時とほぼ変わらないパフォーマンスを見せているのに対し、ジェットボイルの方は風速3.5m/sでは何とか沸騰したものの、風速4.5m/sになると完全に沸騰することはできませんでした。

より正確に言うと、風速4.5m/sでのジェットボイルは、5分ほどで風が当たる側の反対側では沸騰らしき様子が見られるものの、風が当たっている側は沸騰による気泡がまったく現れず、そのまま容器全体が沸騰する状態にまではいつまでたってもたどり着きませんでした。実際のフィールドでは、こうした風の強い状況も十分に考えられることから、ここには明らかなアドバンテージがウィンドバーナーにはありそうです。

もちろん、ある程度粗い条件でのテストのため、結果については若干のブレが生じる可能性は十分ありますが、それでもここまで大きく差が開くとは。条件によって沸騰時間が変わりやすいジェットボイルは、平穏時こそ沸騰時間も短くガス消費量も少ないのですが、より過酷な状況での使用を考慮して装備計画を立てるとすると、果たしてアドバンテージがあるといえるかどうか正直怪しくなってきます。むしろウィンドバーナーのこの安定性の高さの方が、燃料計画が立てやすく、安全であるといえるのではないでしょうか。

高所(標高約2000m)

標高約2000mの山でも沸騰テストをしてみました。この日はほぼ無風で風の影響は皆無でした。

標高2000mでのテスト

ウィンドバーナーが1分45秒、ジェットボイルが1分27秒と、2000mほどの標高では常温と変わらずジェットボイルの方が早く沸騰しました。なお、外界でのテスト時より早く沸騰したのは、水温がやや高かったこと、この日の里の気温が30℃と高かったこと、標高2000mでは気圧の影響で約94℃で沸騰するなどの理由が考えられます。

燃焼効率

公式スペックではややジェットボイルの方が優位ということは判明していますが、こちらもこの目で確かめるべく、それぞれのメーカーの一番小さなガス缶で、常温時の水500mlを沸騰させ、その都度ガス缶の重量を測り、ガスの減少具合から一缶で500mlの水を何度沸騰できるか推定してみました。

ウィンドバーナーの専用の110サイズ缶のガス充填量は110gで、5回沸騰させてみての1沸騰あたりの平均使用ガス量は5.8g。バーナーとガス缶を外す時に多少ともガスが抜けることを考慮すると、一缶で18回前後は沸騰させられそうです。一方ジェットボイルの専用「ジェットパワー100G」ガス缶の充填量は100gで、5回の平均使用ガス量は4.4g。こちらも外す時のガス漏れを考慮して一缶での推定可能沸騰回数は22回といったところでしょうか。両方とも基本的には極めて高い燃焼効率であることは間違いないものの、その中でも効率の良いのはジェットボイルということのようです。

まとめ

長い間待っていた人には、念願!ともいえる道具でしょう。そんな人は、レビューを見るまでもなくすでに購入しているはず。それ程待ち望んでいた人が多いバーナーです。確かに沸騰テストの結果を見る限り、平穏な場所・状況での性能ではジェットボイルMiniMoの方が高く優れていました。ただ、低温・強風・高所といった厳しい環境下でパフォーマンスが落ちるジェットボイルに比べ、見事に同じパフォーマンスを出してくれているのがウィンドバーナーということがテストから見て取れます。

上にも書きましたが、実際のフィールドでは想像以上に風の強い状況が珍しくなく、しかも温かいものを摂取したい状況は意外と環境・身体的にもシビアな状況であることが往々にしてあります。そんななか、お湯がいつまでたっても沸かずに焦るというシーンを経験したことのある人は少なくないのではないでしょうか。冬山のような高所・強風・低温三拍子揃ったハードなアクティビティはもちろん、悪天候に見舞われやすい長期に渡る縦走、タフな場所でテント泊しなければならないようなアクティビティで、いつでもどこでも安心して使えるタフな道具を求めている人には、ジェットボイルよりも信頼のおける相棒になりそうです。

どのような環境で使用するのか考えたとき、おのずとどちらを買うべきか見えてくるでしょう。そこまでハードな登山をやらないような人には、ジェットボイルでもよいのかもしれませんが、そこそこハードな登山も視野に入れているような人であれば、平常時の数秒の差よりも、タフさ・安定感を(個人的に見た目のカッコよさも)選びたくなるのではないでしょうか。何れにせよ、ウィンドバーナーは長らく選択肢が少なかったシステムバーナーの分野で、山好きにとって待望の有力な選択肢となってくれることは間違いありません。

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