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今年イチオシの神アイテム。「MSR ローダウンリモートストーブアダプター」で軽量小型ガスストーブが一瞬でグループクッキングスタイルに。

ストイックな「ソロ向け」ウィンドバーナーやポケットロケット2が、一瞬にして「グループクッキング」スタイルに

「お湯がすぐ沸く・高効率・低燃費・コンパクト」に加えて「強風・低温にも強い」という特性までも併せ持ったアウトドア・クッキングシステム「MSR ウィンドバーナーパーソナルストーブシステム」過酷なフィールドでアウトドアを楽しむ人に適したミニマルスタイルのストーブシステム。ただ、そもそもソロ~2人での利用を想定し、用途も湯沸かし程度までしか想定されていないため、本格的に煮たり・焼いたりといった複雑な調理や、大人数での利用をするグループ山行はウィンドバーナーでは不得手と言わざるを得ませんでした。

そんな「できなくて当たり前」を可能にしてくれるのがこのパーツ「MSR ローダウンリモートストーブアダプター」です。

より機能的で安全な信頼性の高い道具によって、世界中の冒険家たちを支えてきたMSRがこの2022シーズンにリリースしたこのパーツは、ストーブとカートリッジとの間に連結して、ウィンドバーナーやポケットロケット2をカートリッジ直結型(ストーブとカートリッジが垂直に直接接続されているタイプ)から分離型(ストーブとカートリッジが分離してホースで連結されているタイプ)にトランスフォームすることができるアクセサリー。今回はこの「ありそうでなかった」画期的なパーツと、合わせて発売された便利な中・大型ポットたちを実際に山で使ってみて、良いところ・気になるところなどを深堀りレビューしていきます。

MSR ローダウンリモートストーブアダプターの主な特徴

MSR ローダウンリモートストーブアダプター」は、ストーブとカートリッジとの間に連結することで、ストーブをカートリッジ直結型から分離型に変換することができるアダプター。強度と耐食性に優れたステンレスながら手のひらサイズで180gの軽量コンパクト。幅広の安定した土台と低いゴトク位置によって安定感が増し、また火力調節もより手元で行うことができるため安全性も向上。これによって例えばポケットロケット2のような超軽量のコンパクトストーブでも、あるいはウィンドバーナーのような(背の高い)湯沸かし専門のストーブでも、しっかり調理する贅沢な料理やグループ山行での大鍋料理、フライパン料理などができるようになります(ウィンドバーナーストーブシステム専用のポットやスキレットはオプション)。

ここがすごい

  • 新規に大型ストーブを買い足すことなく、既存のストーブにより高い安定性と利便性を付加することができる
  • 簡単なセッティングで抜群の安定感と火力調節の簡単さが可能に
  • (ウィンドバーナーとの組み合わせで)高熱効率を損なうことなく安定感と利便性がプラス
  • (ポケットロケット2との組み合わせで)既存の分離型ガスストーブと比較して軽量コンパクトを実現
  • 折り畳んだ時のコンパクトさ

ここが気になる

  • 点火時のストーブ側・カートリッジ側アジャスターの調節手順がややこしく最初に間違えやすい
  • 底の広すぎる鍋やスキレットを使うと、ポケットロケット2の火力範囲では狭すぎて火が回りにくい

MSR ローダウンリモートストーブアダプターを実際に使ってみた

ローダウンリモートストーブアダプターの基本的な使い方

今回メーカーよりお借りしたのは、リモートアダプターのほかにウィンドバーナー、ポケットロケット2、それから対応する各種ポットやスキレット。それを家の前の庭や北アルプス(奥穂高岳)でのテント泊登山で使ってみて、いろいろな調理を試してみました。

まずは基本的な使い方の手順を簡単に見てみます。

【1】脚を広げ、カートリッジ側のアジャスターがしっかりとオフの位置にあることを確認し、カートリッジとストーブにセットします。

【2】ストーブ側のアジャスターがオフの位置にあることを確認し、ベースにセットします。

【3】ストーブ側のアジャスターが閉じた状態で、カートリッジ側のアジャスターを全開にする。 ※匂いをかいでガス漏れがないことを確認。

はじめての操作で何気なく「ストーブ側のアジャスターを全開にした状態で、カートリッジ側のアジャスターで点火」操作してしまいがちだがこれは間違い。正しい点火方法は逆で、必ず点火時は「カートリッジ側のアジャスターを全開にした状態で、ストーブ側のアジャスターで点火」操作すること。実際にうっかり正しい手順でやらなかったために上手くガスが出ないことがありました。

ややこしいのはこの1点だけですが、意外とやってしまいそうな盲点だったので、ここはもう少し分かりやすさ(間違えにくさ?)が欲しかったところです。

【4】ストーブ側のアジャスターを開いて点火する。

【5】火がついたら一旦ストーブ側のアジャスターを全開にして、そこからカートリッジ側のアジャスターを絞りながら火力を調節して使用します。ここも一旦ストーブ側を一度全開まで開かなければならないのが少し煩わしいなという気がします。

【6】使用後は、カートリッジ側のアジャスターを閉じ、火が消えたらストーブ側のアジャスターを閉じ、冷めたところでストーブ・カートリッジを取り外して片付ける。

手持ちのストーブを無駄にすることなく「ミニマリストスタイルとグループ山行スタイルが1台で対応できる」という新しさ

このアダプターの何が新しいって、やはりシンプルに「既存の小型ガスストーブを無駄にすることなく、より低重心で安定した分離型ストーブに変換できるようにした」という、既存の道具に実用的な価値を付加することができたという点です。これまでどのメーカーも考えつかなかったユニークなアイデアですが、こうして実現してみると、なぜ今までなかったのだろうというほどシンプルで効果的なソリューション。どんな世界でも革新的な進化とは得てしてそんなものなのかもしれません。

ウィンドバーナーと組み合わせればまさにスキなし

この革新的機能の恩恵を最も感じられるのは、やはりウィンドバーナーと組み合わせたときでしょう。

この一体型ストーブシステムには、標準でカートリッジの安定性を高める折り畳み式のプラスチックスタンドが付属していますが、ポットまで含めた全体の高さがやや高いため、スタンドがあったとしても突風や目いっぱいの水を沸かしている場合などで転倒しやすいということがちらほらといわれてきました。これではせっかくの「高効率で風に強い」という魅力が台無し。

そこでこのアダプターの出番です。幅22cmの広さを誇る堅牢な土台に加えて、ストーブの高さと重心を下げることによって安定性を大幅に高めてくれます。これまで湯沸かし中、何となく不安で取っ手を持つ手を離せなかったのが、これによって安心して手を離すことができます。

スタンドは貧弱なプラスチックから剛性十分なステンレスへ。さらに全幅も約5cmほど広くなっています(下写真)。

アダプターを付けたときの高さを比較すると、5cmほど全体が低くなり、堅牢な土台と合わせて安定感は抜群に向上しました(下写真)。

なお写真のケースはイソプロ110サイズのカートリッジの場合であり、227サイズカートリッジの場合、アダプター有り無しで高低差は7cmほどと、さらに顕著になります。

さらにこの改善された安定感によって、高効率システムでの大鍋やフライパン調理の道が開かれます(ウィンドバーナーシステム専用のスキレット・大型ポットが必要となります)。

どれも裏側にはウィンドバーナーにセットするためのリング(ヒートエクスチェンジャー)が装備されています。基本的にはウィンドバーナーの固定と熱効率の最大化(調節)の役割を担っていますが、使う側からみると、これによってポットが常にズレずに中心に置かれるため一層安定した調理ができるのが素敵すぎる。鍋をゴトクの中心に置けているかどうか不安になることは実際のところ多々あるし、どうしても水平にできない地面で調理する場合などでは常にポットが滑り落ちないように注意していなければならないのですが、これならばかなり安心です。

今回の調理では、3つのサイズの鍋・スキレットを使用しました。いずれも鍋の下に手を伸ばしたり、鍋を外したりせずとも火加減が調整できるのは快適そのもの。ストレスなくじっくりと火加減を細かく調整しながら、調理に集中できた気がしました。

2.5Lポットとスキレットの内側にはノンスティック加工が施され、焦げつくこともなく、また汚れてもキッチンペーパーでサッと拭き取れるので片付けも簡単です。

ハンドルは折り畳んで収納することも、着脱も可能なため、収納・お手入れ時どちらにも都合よく取り扱うことができます。

ちなみに2.5Lポットとスキレットのヒートエクスチェンジャーは中心部分だけが過熱しないように簡易的な仕様に調整されています。4.5Lは基本的にはスープやシチューなど煮ることが多い想定のためかしっかりとヒートエクスチェンジャーになっており、熱効率が最大化されています。

ちなみに4.5Lの大鍋に水を4Lほど満たしてセットしたところ、さすがにやや怪しいぐらつき方をしていました。いくら安定性が高いとはいえ、安全な負荷を超えないようにMAXギリギリの容量の時には注意しましょう。

ファスト&ライトのミニマルスタイルから、豪華料理のグループハイクまで、毎回旅に合わせてポットをカスタマイズすれば、常にぴったりのクッキングシステムを準備することができます(しかもすべて適切な防風性能と効率性を備えてる!)。

ソロでの最小セット(ポットを別売り1.8リットルに変更すれば2人での最小セットに)

ウィンドバーナーのみ。

ソロで調理もするセット

ウィンドバーナー + ローダウンリモートストーブアダプター

2人で調理もするセット

ウィンドバーナー + ローダウンリモートストーブアダプター + ウィンドバーナーソースポット 2.5L

3人以上で贅沢調理セット

ウィンドバーナー + ローダウンリモートストーブアダプター + ウィンドバーナーソースポット 2.5L + ウィンドバーナーセラミックスキレット

4人以上で贅沢調理セット

ウィンドバーナー + ローダウンリモートストーブアダプター + ウィンドバーナーソースポット 2.5L + ウィンドバーナーストックポット 4.5L + ウィンドバーナーセラミックスキレット

「ポケットロケット2」と組み合わせて軽量かつ柔軟なクッキングセットへ

このアダプターのもうひとつ素敵なところは、ウィンドバーナー専用というわけでなく、同じMSRの「ポケットロケット2」にも接続が可能という点です。これで超軽量コンパクトがウリの同モデルがグループ登山用のより安定感のある分離型ストーブに変身させることができます。

この場合鍋は専用のものである必要はなく、MSR純正ポットをはじめさまざまな鍋を使用することができ、ウィンドバーナーとの組み合わせに比べてより汎用性の高い利用が可能です。ただもちろんスタンドの強度には限界があるので、鍋の大きさはほどほどに。

試しに900ml&400mlの小さなクッカーセットにポケットロケット2とローダウンアダプター、110カートリッジ、カトラリーを収納してみましたが、まだスペースに余裕があります。

もうひとつの隠れたメリット。カートリッジが離されると、冬場での火力低下対策も簡単に

直結型から分離型になったことで忘れてはならないのが、冬場などの低温下でカートリッジ内の圧力が不足することによる火力低下をカバーする対応がとりやすいことが挙げられます。

低温下ではストーブを燃焼させているとカートリッジの温度がどんどん下がっていってしまい、それに従って火力がどんどん低下していってしまいます。それを防ぐためには市販のブースターを使用するか、あるいはカートリッジを低めに水を張ったボウルに沈めておくなどが一般的ですが、ブースターは効果が薄く、ボウルは鍋・ストーブ・カートリッジ全部を入れなければならないため安定しにくく、あまり現実的とは言えませんでした。

それが、アダプターによってカートリッジがストーブから離れるので一気にやりやすくなります。コンロ/鍋システム全体をウォーターバスに入れる代わりに、カートリッジだけを浅いボウル(例えばウィンドバーナーの付属ボウル)に張った水に少し浸るようにしておけば、寒冷地でカートリッジの温度低下を防ぎ、一定の火力を維持することができます。

こうすることで寒い季節でも常に十分な火力を得ることができ、さらに燃料が内部に残ることもなく、きっちりと使い切って無駄を少なくすることができます。

※ストーブ燃焼中にカートリッジを傾けたり逆さまにしたりすることは絶対にないよう注意しましょう。このストーブは逆さまにして大丈夫なタイプ(液出し式)ではないため、最悪の場合ガスが液体のまま噴出し、大きな炎が立ち上がり危険です。

まとめ:これさえあれば超軽量なファスト&ライトスタイルも、大人数でのワイワイ山行も自由自在

傾いた地面や凸凹した地面など、登山ではテントサイトの地面はきちんと整地されていない方が当たり前。そんな場所で調理して、取り返しのつかないやらかしを経験したことがある人は少なくないのでは。ストーブのバルブが火に近すぎて操作が煩わしいと感じていた人、あるいは手持ちの高効率ストーブシステムの出番が少なくて持て余していた人などは、間違いなくこのローダウンリモートストーブアダプターの恩恵を受けられるでしょう。自分も使っているうちにこの携帯性と手軽さが大好きになりました。一度手にとって使ってみれば、ちょっとの重さを我慢するだけでストレスのない快適・安全な調理が実現できるこの神パーツのスゴさが分かるはず。きっとこれからの旅の必需品として手放せなくなりますよ。