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意外と悩ましい、最適スキーパンツ(ハードシェルパンツ・スノーパンツ・スノービブ)を選ぶときに押さえておきたい7つのポイント

素直に上下同モデルでも良いけれど、もう一歩理想のフィットを目指してみては?

スキー、雪山登山、スノーハイクといった冬のアクティビティでは、雪に覆われた極寒のフィールドでも常に温かくドライな状態でいるためにオーバーパンツが欠かせません。比較的気候の落ち着いた初冬・春先のスキーや雪の少ない低山歩き、あるいは特に動きやすさを求めるアイスクライミングなどでは厚手のソフトシェルという選択肢も視野に入ってきますが、雪全般を通して安心なのはやはりハードシェルのパンツです。

パンツだからといって基本的な選び方はジャケットと変わりません。このためハードシェルのジャケットと同モデルのものを選んでおけばまずは間違いはない、のだけれど、そもそもジャケットしか無いモデルがあったり、ジャケットの出来は秀逸だがパンツはそこそこだったりってことが実は意外と多い。しかも機能的に満足いかない程度ならまだしもサイズや体型が合わなくて履き心地がイマイチなんてことがあれば目も当てられません。そんなときは迷わず同モデルで合わせることは諦め、自分にあった最適なパンツを探してみることをおすすめします。

そこで今回は、過去の経験をはじめカタログスペックやお店での実物調査等を通じて分かった、最適なハードシェルパンツを選ぶために着目すべきいくつかのポイントをまとめました。例によって編集部独自の見解が多分に含まれておりますので、あくまでもこの情報をきっかけに、自らの賢い道具選びに役立てていただけたら幸いです。

ポイント1:素材

防水・透湿性

日本のように湿雪が多い地域では何をおいても完全防水、そして高透湿性が必須条件であることはハードシェルパンツも同じ。冬の濡れは即命に関わる重大事ですので、大前提としてGORE-TEXやeVent、Neoshellなど信頼のおける防水透湿メンブレンを使用し、さらにきっちりとシームテープや止水ファスナーなどで水分を完全に遮断できているモデルを選びましょう。スキー用品店などで売られている安価なスキーパンツの中には長時間屋外での激しい運動を想定していないためすぐに水が染みてきたり、透湿性がなかったり、寿命の短いモデルもありますので慎重に。

耐久性

同じ生地・素材でも太い糸で、さらに防水透湿メンブレンを表裏生地でサンドイッチした3レイヤーである方が耐久性は高いといえます。eVent、Neoshellのハードシェルパンツは基本的に3レイヤーなので糸の太さ(生地の厚み)に注意していれば大丈夫でしょう。特にNeoshellは生地のしなやかさ、透湿性の高さから、動きが多く蒸れが気になるパンツにはもってこいの素材だと個人的にはイチオシです。

dsc08005_mini一方GORE-TEXの場合、生地の種類、2レイヤーか3レイヤーか、さらに太さという3点を検討する必要があります。まず安心なのは現在のところ最も高い耐久性と防水透湿性を備えたGORE-TEX Pro(3レイヤー)ですが、当然のことながら相対的に高価。一方標準のGORE-TEX3レイヤーは、Proよりは若干各性能は落ちるものの極端に性能差があるというほどでもなく価格的にもより現実的です。また最近登場したGORE C-KNIT(3レイヤー)は高い透湿性としなやかな生地感で革命的に快適になりました。こちらも冬のハードシェルパンツ用生地としてかなりおすすめです。そしておそらく最も手頃なGORE-TEXが2レイヤーのモデルですが、相対的に耐久性に乏しく、ナイロンやメッシュの裏地と併用される分重量もかさみがち。また主に中綿が入っているモデルに多いようです。

糸の太さに関しては耐久性と重量・動きやすさがトレードオフの関係にあり、太ければより堅牢ですがその分ゴワゴワして動きにくくなってしまうことは頭の片隅に入れておくとよいでしょう。

保温性

寒い冬なんだからパンツもとにかく温かいに越したことはないというのは平地での常識。山では動き始めるとどんなに気温が低くても身体はかっかと発熱し、汗ばんできてしまうもの。さらにパンツはジャケットほど頻繁に脱ぎ着するわけにもいかないので、あまりに保温性が高すぎるモデルは危険です。パンツといえどもレイヤリングの考え方を基本に、アウターはシェルのみ、もしくは薄手のライニング程度のモデルの方が使い勝手がよいでしょう。

残雪期や暑がりであればウールなどのベースレイヤーとアウターで十分ですし、万が一それで寒ければ間にミドルレイヤーとして夏に穿いている山用パンツを穿いてもいい。中綿入りの保温性パンツ、フリース、ソフトシェルパンツなど、汗の発散性を考えてさえいれば多彩な選択肢から選んでかまいません。ただその分、ハードシェルパンツのサイズはそれら中間着の余裕を考慮しておく必要があることには注意。

選ぶときのポイント:

  • 完全防水、透湿性、防風性を備えている生地・素材であることが大前提。
  • より厳しい環境での耐久性・信頼性を優先するのであればGORE-TEXPro、もしくは3レイヤー素材がおすすめ。
  • 動きやすさ、汗抜けの良さ、軽さを重視するならGORE C-KNIT、Neoshellなどの高透湿3レイヤー素材がおすすめ。
  • パンツも基本はレイヤリングで温かさを調節するのがベスト。中綿など余分な保温材がないモデルがおすすめ。

ポイント2:パンツか、ビブか

冬用のハードシェルパンツにはその形状によって「パンツ」と「ビブ」の2タイプがあり、見た目も大事ですが、役割や機能も知ったうえでどちらかを決めるのが賢い選択です。どちらが優れていると一概にいえるものではないので、以下に強みと弱みをまとめてみました。

タイプパンツタイプビブタイプ
イメージファイントラック(finetrack) エバーブレスアクロパンツ BK FAM0702 S(ティートンブロス)Teton Bros TB Pant TB163-020 /2016年秋冬 パンツ ロングパンツ アウトドア 登山 M Brown tb163-020-Brown-M
特徴

ウェストまでで穿く一般的なスノーパンツ。ウェストはベルトで締めるタイプから伸縮性のあるタイプ、ベルクロで調節できるタイプ、そしてサスペンダーが標準装備されているタイプまでさまざま。サイドがフルジップになっているタイプは靴を穿いたまま脱ぐことができる。アルパイン、スキーどちら向けにもバリエーション豊富。

生地が胸と背中まで配置されており、サスペンダーによって穿くタイプ。低温の厳冬期や深雪・パウダーを想定して雪の侵入を防ぎ、保温性を高めている。上半身があることでパンツのずり落ちや腰の締めつけを防ぎ、豊富な収納を提供したりもする。バックカントリー向けモデルに多い。

強み
  • 軽い
  • 着脱が簡単
  • 温度調節が容易
  • 選択肢が多い
  • 保温性・防風性が高い
  • ジャケットとパンツの間から雪が侵入しにくい
  • パンツがずり落ちにくい
  • ウェストの締め付けがない
  • 収納ポケットが豊富
弱み
  • 保温性・防風性が劣る
  • パンツのずり落ち・ウェストの締めつけに気をつける必要がある(サスペンダーを使用しなかった場合)
  • 気をつけていないとジャケットとパンツの間から雪が侵入しやすい
  • 季節によっては暑苦しい
  • 着脱が面倒
  • 重くかさばる

選ぶときのポイント:

  • 深いラッセルやパウダーでの滑降が多い場合には特にビブの方が快適でおすすめ。
  • 個人的には使い勝手と快適性を両立させた「上半身が控えめなビブタイプ」、もしくは「サスペンダーを用いたパンツタイプ」が最強。

ポイント3:シルエット・動きやすさ

ハードシェルパンツを履き比べてみると、3シーズン用のパンツと変わらないくらいの細身からゲレンデのボーダーが穿いているようなズドンと太いシルエットまで、さまざまなフォルムがあることが分かります。これはハードシェルパンツといっても大きくアルパイン(冬山縦走)向けとバックカントリー向けに別れているからなのですが、一般的にアルパイン向けモデルは歩行時に足を引っ掛けたり摩擦が少ないような細身のシルエット、バックカントリー向けモデルは大きなブーツを覆い、リラックスした太めのシルエットが比較的多いようです。ただ実際には綺麗に2パターンに分かれているわけではなく、ブランドによっては中間的なモデルを用意していることあり、最終的に自分に合うかどうかは実際に穿いてみることでしか分かりません。

ARCTERYX(アークテリクス) ベータARパンツ男性用 12702 ブラック Sまた、実際に動きやすいかどうかはシルエットだけでは決まらず、人体の動きを計算に入れた立体裁断の上手さや、伸縮性素材の有無によって大きく違ってきます。これも実際に穿いて動いてみて、窮屈感や膝・腰・股などの突っ張り具合等を見るしかありません。

例えば縦走メインでスキーもやりたいという自分としては、滑降時やじっとしているときの快適性よりも歩きやすさを重視しているので極力スリムで動きやすいモデルが好みです。ただ、だからといってどちらでないとダメというほどの大きな差は個人的にはないと思っています。あまりシビアに考えず、デザイン含めて自分(のスタイル)にとって最も快適なフィット感を見つければ良いんじゃないかと。

選ぶときのポイント:

  • アルパイン向けは細め、バックカントリー向けは太め。実際に穿いてみて、見た目や動きやすさなど自分にとって快適なスタイルを選ぶ。

ポイント4:サイドベンチレーション

保温性のところでも書きましたが、脱ぎ着が少ないパンツは暑くなったときの温度調節のしやすさがジャケット以上に求められるという側面があります。このためより透湿性の高い生地・素材が良いのはもちろん、調節のしにくい厚さでないことも重要ですが、もうひとつの有効な方法がこのサイドベンチレーションによる換気です。

dsc07998_mini腿の脇や裏に配置されたジッパーによる通気口は空気の循環を促進します。一方足首から膝までのサイドジッパーはベンチレーションというよりもブーツの着脱に便利。いくつかのモデルはサイドジッパーが下から上までパンツを真っ二つに開くことができ、これは通気性能を最大限に高めるだけでなく、ブーツを脱ぐことなくパンツを着脱でき、またトイレ(大)も容易にすることができます。

選ぶときのポイント:

  • ベンチレーションの有無・位置を確認して、より換気しやすく着脱しやすいモデルを選ぶ。

ポイント5:インナースパッツ

dsc08002_miniよほどミニマルなモデルでない限り、ハードシェルパンツの袖口のなかにはインナースパッツが装備されています。これは主に深雪に足を踏み入れた際にブーツとパンツの間に雪が侵入しないためのものですが、シューレースのついた登山靴の場合は靴ひもの緩み防止にもなります。学生時代、パンツの上からゲイターを装着するのが当たり前だった頃にはまったく必要性を感じていなかったのですが、インナースパッツとエッジガードの性能が上がり、ゲイターを省略する場合も増えてきた今では重要なパーツです。

できれば靴ひもやバックルに引っ掛けて外れやすくするためのフックや、靴底に通すループなどがあればより確実な装着ができ便利です。また先ほどのようにゲイターをするので不要だという場合に、取り外しができるタイプもあり、それぞれ自分のスタイルに合っているのがベストです。

選ぶときのポイント:

  • 雪の侵入防止のため基本的にはインナースパッツがあるモデルを選ぶ。ただ、万が一なかったとしてもゲイターを装着するなどして補うことはできる。

ポイント6:エッジガード

dsc08004_miniパンツで最も磨耗する部分は、歩行時に擦れたり、スキーのエッジやクランポンを引っ掛けたりする内側の袖口です。まれにスノーボード用のパンツでは無いものがあるらしいのですが、多くのハードシェルパンツではその部分に強度の高い生地を当てて補強が施されています。

ただ、いくら堅牢な生地で補強されているとはいえ、せっかく高いお金を払って購入したパンツをそう易々と傷つけたくないのは誰もが思うところ。だから、(インナースパッツと共に)これがあれば外側にゲイターを装着する必要はないとはいえ、ぼくをはじめ人によってはそれでもパンツ保護のためゲイターを付けるという人がいることも知っておいて損はないでしょう。

選ぶときのポイント:

  • 摩擦やクランポンによる損傷を防ぐため内側の袖口にエッジガードがあるモデルは、ゲイターの代わりになり便利

ポイント7:ポケット

最後に忘れてはいけない重要な機能がポケットの有無・位置について。数は多い方がいいですが、大きさが微妙だったりしないか、厳しい岩場を通る可能性がある場合にはハーネスを装着したときに干渉しない位置にあるかなども重要です。個人的にはお尻にあるポケットは普段使いにはいいですが、山では出し入れが面倒なので腿にある方がより便利。最高なのはビブタイプで、脇腹や胸の位置にジャケットの内ポケットのように使うことができる豊富なポケットがついていることが多く、温めておきたいカメラのバッテリーやアバランチビーコン、無線機などかなりかさばるギアまで収納できるのはかなり嬉しい。

いずれにせよ、冬は上記のような身につけておくべきギアや、行動食、地図・コンパス・GPS、サングラス、メガネ拭き、スマホ・カメラなどちょっとしたことで取り出したくなる細かいギアが多いので、バックパック以外の部分で手軽にアクセスできる収納場所があることは大きなメリットです。

選ぶときのポイント:

  • 夏よりも冬の方がポケットはたくさんあると助かることが多い。ただ、大きさや位置が十分考慮されているかどうかも確かめておくとなお良し。

まとめ

ハードシェルパンツ選びをできる限り体系的にまとめてみましたが、実際のパンツ選びはどうだったかというと、まず試着してサイズ感が合うかどうかが一番シビアな問題だったりします。バッチリとフィットしたそれらの候補の中からはじめて上記のような機能面を比べていくことになったのですが、最終的にはこの選び方が一番幸せになれるんじゃないでしょうか。他人の評価がどれだけ良くても、自分にフィットしなければ意味がありませんから。

さて、次回はこの選び方によって厳選された珠玉のおすすめハードシェルパンツをご紹介したいと思います。一見違いが出しにくいパンツですが、いざ真面目に探してみると各ブランドの技術とアイデアが結集した素晴らしいモデルが目白押しでまたもテンション上がりまくりです。どうぞご期待ください!