比較レビュー:雪山アウトドアの心強い味方、ハードシェルジャケットを着比べてみた

耐候性と軽量性を重視した、オールラウンドに使えるハードシェル

ここからは雪山縦走や登攀系のアクティビティを中心として想定されたモデルの紹介です。このタイプは摩耗や引き裂きに対する強さなど、生地の耐久性が大前提、さらにスピーディな行動のため軽さも重視する傾向があります。ハーネスの装着や手を振り上げる動作などを想定するため丈は短め、フォルムは細身が多く、スキーウェアのようなダボッとした感じがありません。ウェアの性能と重量が損なわれるためポケット類は極力少なめ。とはいえ、性能的にはバックカントリーに使用してもまったく問題ありませんので、より汎用性は高いといえます。細身のスタイル、シンプルなポケット類の方が好みである場合にはこちらを選んだ方が幸せになれるでしょう。

1位:HAGLOFS SPITZ JACKET

ココが◎

  • 耐候性と軽さを両立した絶妙な素材遣い
  • 細身・丈短めと、軽快で動き易い立体裁断
  • アルパイン、バックカントリーどちらも対応できる汎用性

ココが△

  • フード調節で、首元左右のコードロックが押しにくい
  • やや硬めのジッパー

形・大きさ・硬さともにしっくりくるフード周り。ROC HIGH Ⅱ JACKETには前面に通気孔があって大好きだったのだが、残念ながらSPITZでは省略されている。

バックカントリーだけでなく、時には冬山縦走やアイスクライミングだってやるよという人に1着選ぶとしたらおすすめしたいのがこちら、高いセンスと技術力で日本でも人気の北欧ブランド、HAGLOFSの定番シェルです。なお今回テストで着用したのは昨年まであったハイエンドモデルのROC HIGH Ⅱ JACKETですが、細かい点での違いはあるものの、基本部分で引き継がれているSPITZ JACKETとして読んでください。

一言でいうと、素晴らしくバランスの良いモデル。軽量・高耐久のGORE-TEX®Proを、肩や背中、腰などの摩耗が激しい部分は70Dの厚さにすることで高強度を保ちつつ、身頃や脇など動きすさと透湿性が必要な部分は40Dの厚さを配置するというハイブリッドな素材マッピングによって、丈夫なのに着心地がよく快適、なおかつ軽いという、いいとこ取りを実現しています。

良バランスは基本性能だけではありません。ハーネスとの干渉を避ける短めの丈、細身のシルエットにもかかわらず絶妙な立体裁断で動きやすさは申し分なし。内ポケットやスノースカートなどBC寄りの機能は少ないものの、左肩の小さなポケットはリフト券入れに便利など、スキーヤーのことも最低限考えられています。大きすぎず、きつすぎない口元のゆとりも気に入っている部分のひとつです。個人的にはROC HIGH Ⅱ JACKETにあった呼気を通す孔がついた襟元が大好きだったのですが、SPITZ JACKETでは省略されてしまった模様。

とはいえ耐久性・快適性・軽さ・機能と高いレベルでバランスのとれたモデルで、どんな用途・季節を想定しても間違いのない、完成度の高い一着といえます。

2位:Arc’teryx Beta LT Jacket

ココが◎

  • レインウェアと変わらないほどの軽さ
  • スタイリッシュかつ動きやすい立体裁断

ココが△

  • ベンチレーション、ダブルジッパーがない
  • シンプルさ、軽さと引き替えに、ポケット類も少ない

新開発ジッパーによって、閉めた先にあるジッパーガレージが不要に(右下)。この軽さはグラム単位での努力の結晶。

ムダを削ぎ落とし、研ぎ澄まされた機能とデザインをどこまでも追い求める孤高のブランド、Arc’teryxのオールシーズン、オールラウンド向けハードシェルが2017年にリニューアル。相変わらず誰も予想していないほどの切り詰めぶりには驚かされます。

何よりも特筆すべきはその軽さ。実測332g(Sサイズ)という信じられない軽さは、レインウェアとしても軽い部類に入ります。実際でも冬に感じるストレスは信じられないくらい軽減され、他のモデルがどれも鈍くさく感じられてしまいます。この軽さを実現するためにちりばめられた細部の創意工夫がまたエグい。軽量・高耐久・高透湿で冬のアウター素材としての実力は折り紙つきのGORE-TEX®Proは40Dと最薄レベル。さらに裏地には所々に8mmという極細シームテープを使用。YKKと共同開発のRS™ジッパースライダーによってジッパーガレージという極小パーツまでも切り詰めました。ポケット類も最低限に抑えることでウェアとしての高い透湿性を確保でき、結果ベンチレーションすら削ってしまい、それがまた軽量化に繋がる。一見めちゃくちゃに思える徹底した軽量化にも、実に計算された戦略が隠れており、その辺はホントにさすがです。

とはいえ、このモデルはあくまでもオールラウンドモデルなので、具体的なアクティビティに特化した使い勝手を求めようとすると、機能面で多少の物足りなさは感じるのは確か。なかでもベンチレーションやフロントのダブルジッパーは、どうしたって汗だくになる高負荷・高温時の換気性を高めてくれる手段としてやはり欲しい機能です。使い方としては、そこまで厳しくない冬山向け、あるいはハイクアップや暑い日中にはバックパックに仕舞っておいても邪魔にならないので、初冬や残雪期のアウターとして大活躍してくれそうです。

3位:Rab Latok Alpine Jacket

ココが◎

  • 高透湿のeVent素材と思い切ったベンチレーションによる高い換気性
  • スリムかつムダのないフォルムと立体裁断による動きやすさ

ココが△

  • ベンチレーションのジッパーが硬く、腕を振るたびに違和感
  • 価格

手首付近まで開くベンチレーション。そこから手を出し、フロントジッパーも開ければ、ほぼ着ていないと同等の通気性が確保される。

透湿性にかけては群を抜いた性能を誇るといわれているeVentを採用したハードシェル。透湿性が高いということでは、ある意味GORE-TEX®などと比べて空気をより通す構造のため冬には向いていないのかもと思われますが、十分な厚みと強度をもった生地は風雪もしっかりと防いでくれました。脇下から手首まで開閉できる、特徴的なベンチレーションによってあり得ないくらいの換気性能を発揮し、結果として、このモデルほど天候・状態を選ばず着続けられるアウターはありませんでした。動き易い立体裁断、ワイヤーの入ったフードのひさし部分は使い心地もよく、ミニマルな機能ながら満足度は十分でした。

ただし、慣れの問題かもしれませんが、自慢のベンチレーションは少し硬く、脇下や肘を動かすたびに少し違和感を感じてしまいます。またフロント部分の丈夫なビスロンジッパーもかなり硬くて開閉が億劫。その辺の着心地が気になるので、購入の際には試着して確かめてみてください。

まとめと補足

今回はGORE-TEX®からeVent、Neoshellなどさまざまな防水透湿素材を試してみることができました。昔は酷い性能も多々ありましたが、このレベルであれば性能差はかなり小さく、どれを選んでも致命的な失敗はないといえました。

それにしてもここ数年、耐久性や透湿性といった素材の性能自体では、どのブランド・素材メーカーもそこまで急激な進化はみられず、正直、素材名やブランド同士ではそこまで大きな差はみられなくなってきました(もちろん厳密にいえば違うのですが)。その意味では現在のハードシェル・マーケットはある程度成熟したと言えなくもありません。今回の比較をした実感としては、個々のモデルのスペックを比較するのはもちろんですが、「どんな意図でどんな素材や機能を選択したのか」というアイデア、センスの良さでみてみることで、ハードシェル選びでは重要になってくるのかなと。

とはいえハードシェルはどのブランドも最大級の研究開発コストを注ぎ込む分野でもあり、今後状況を一変させるような新たな素材・技術が出てくることだってまだ十分考えられます。果たして来シーズンはどんな驚きがあるのか、楽しみは尽きません!

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