【忖度なしの自腹比較レビュー】徹底的につけ比べてみて分かった、シーン・目的別アウトドア向けおすすめヘッドランプ
登山やキャンプ、夜間トレイルランでの必携道具のひとつであるヘッドランプを、色々な角度から点け比べてみる恒例の比較レビュー企画。
ヘッドランプは登山だけでなく災害用、スポーツ用と、それぞれのアクティビティに合わせた特徴を備えたさまざまなモデルがある一方で、お店でなかなかその機能を実感することができず、自分に最適なモデルを見極めることが相変わらず難しいギアです。とはいえヘッドランプは万が一の有事に際して使用する可能性があるギアですから、適切なモデルを選ぶことは、快適さだけでなく、アウトドアを安全に楽しむためにも非常に重要なギアといえます。
そこでヘッドランプを実際につけ比べてみて、それぞれの特徴・機能の比較を行ない、自分にとって最高の、ぴったりのモデルを探してみたいと思います。なお各製品は自腹で購入していますので、このレビューにおいてメーカーとの関わりは一切ありません。
今回は現在市場に出回っているヘッドランプの最新モデルのなかから「これは」という注目モデルを合計20モデル選定し、多角的に比較・検証しました。予めお伝えしておきたいのですが、この20モデル選定の時点ですでにかなり絞り込まれているので、この時点でどれも基本的には優秀なモデルばかりです。例えばM-1グランプリの最下位でも相当に選りすぐりの候補であるのと同様、アクティビティでの向き不向きこそあれ、20モデルでの優劣の差は微々たるもの、受賞を逃したモデルも十分に満足できるものです。さらにいうと20モデルは登山とトレイルランなど、それぞれの想定するアクティビティが違うモデルをあえてごちゃまぜにしていることもあります。それはそれぞれのモデルの違いを引き立たせる意図もあるからなのですが、例えるならある意味M-1グランプリとR-1グランプリとキング・オブ・コントとが一緒に行われているということでもあります。どうかその辺は押さえたうえで読み進めていっていただければと思います。
またこれは当サイトが独自で可能な限り条件を揃えて公平に行った比較テストによるものですが、そこは専門の検査機関としてのテスト報告ではありませんので、結果については客観性や再現性を保証するものではありません。ただ、ここまでのモデルを一同に集めて使い比べるテストとしては、ユーザーの皆さんにいくらかの役には立つものだと思っています。みなさんのヘッドランプ選びの一助になってもらえれば幸いです。
目次
- タイプ・目的別おすすめヘッドランプ
- 性能・機能・信頼。総合力で選ぶなら:Black Diamond ストーム400
- 夜間行動の快適さで選ぶなら:Petzl スイフト RL
- バッテリー寿命で選ぶなら:Black Diamond リボルト350
- 手元・足元を照らすライトの見やすさで選ぶなら:milestone MS-G2
- トレイルラン。見やすさで選ぶなら:PETZL NAO+
- トレイルラン。使いやすさで選ぶなら:milestone MS-F1 : Trailmaster
- 使い勝手・機能性で選ぶなら:SILVA Explore 3(2021年モデルはExplore 4)
- コスパで選ぶなら:mont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプ/Black Diamond スポット325
- 登山にも使えて、とにかく軽さで選ぶなら:BioLite ヘッドランプ330
- 毎日の夜間ランニングでの利便性で選ぶなら:PETZL ビンディ
- 評価まとめ&スペック比較表
- 各項目詳細比較レビュー
- まとめ
- 補足:今回比較したヘッドランプについて
タイプ・目的別おすすめヘッドランプ
性能・機能・信頼。総合力で選ぶなら:Black Diamond ストーム400
もしぼくが「登山で使うのに最も安心できるヘッドランプは?」と聞かれたら、あらゆる面で隙がない高レベルの性能と機能を備えた、Black Diamond ストーム400を挙げるでしょう。これが2020年の総合1位です。
暴風雨の中でも煌々と前方を照らし、そして長持ちしてくれる幅が広く、高品質のビームを遠くまで飛ばす一方、キャンプ周辺で間近の物体を照らすのにも適切な滑らかなワイドビームも優秀。
ストームの長距離ビームはトップクラスに遠いとはいえ、最長ではありません。ただ、周囲への広がりが広すぎず狭すぎず適切で、暗がりのトレイルを快適に歩くのには十分で、多くの遠距離照射に優れたモデルよりも優れていました。
バッテリーはほとんどのモデルが単4電池3つであるのに対し、ストームは強力・長寿命を実現するために単4アルカリ電池4つです。どうしても重量は120gと平均よりも少し重くなってしまいます。一方で市販の充電式電池が利用可能なので、資源の無駄使いに関してはそれほど問題にはなりません。バッテリー寿命もトップクラスの結果を叩き出しており、それらについて後悔することはまずありえないでしょう。
さらにメインの白色以外に標準で用意された3色のLEDモード(赤、緑、青)のビームも評価できます。これらは夜間やテント内、霧や靄の中での有効な照明となってくれるはず。
また防水等級はIP67。1メートルの水没に対して30分間の防水性と防塵性の両方を備えています。今シーズンから新しくなったメインボタン・サブボタンによる操作性もより直感的になり、グローブをしていてもスムーズに操作可能。バッテリー残量もわかりやすく、重量さえ除けば、総合的にみてストーム400は現時点で最も間違いのない、アウトドア向けバッテリーとなってくれるはずです。
夜間行動の快適さで選ぶなら:Petzl スイフト RL
ご来光を狙っての早朝出発、あるいはナイトハイク、トレイルランも登山も両方使いたいなど、夜間での歩行を積極的に行うスタイルの登山をする人に最適。そうでなくとも夜間行動での明るさ・見やすさ・使いやすさで選んだベストモデルは?ということでは、今回試用したヘッドランプのなかではPetzlのスイフト RLこそが”ベスト・トレイル・ファインダー”でした。
スイフト RLは100gという軽さにもかかわらず最大900ルーメンと、重量に対しての光量が非常に高く、他のモデルを完全に出し抜いています。しかもその高い光量を、遠方だけでなく足元・周囲に適度に広がりをもって照らしてくれ、夜間でのあるきやすさは抜群です。バッテリー寿命はコンスタントモードではそこまで高くないものの、自動調光モード(リアクティブモード)にすれば、常に場面に合わせて最適な光を提供し、電力消費も最大効率化してくれるため、実際に使用した印象ではすぐに暗くなるという感触はありませんでした。
専用バッテリーによって本体の軽さを実現しつつ、二股のヘッドバンドのおかげで非常に良好なフィット感であるのも素晴らしい。ただし防水性はIPX4と普通。シンプルさとスマートな機能、そしてハイパワーをバランス良く実現した、スポーツカーのような軽快な一品です。
バッテリー寿命で選ぶなら:Black Diamond リボルト350
高い総合力を備えたトップクラスのモデルのなかから、特にバッテリー寿命の優秀さで選ぶなら、Black Diamond リボルト350が最適です。最大350ルーメンの無段階調節が可能な遠距離ビームは、一昔前ならばトップクラスの光量であり、暗闇ではまったく不自由しません。またBlack Diamond製品ではおなじみの見やすい近接ビームや赤色ビームなど、アウトドアでのあらゆるシーンで不自由ない光を備えています。専用充電池と乾電池がどちらも利用できる汎用性の高さはアウトドアに、防災にとさまざまなシーンで重宝します。
専用充電池によって、このライトは5時間経っても満充電の約25%の強さを保っています。ほとんどのライトが1%も保っていられないのに比べるとこれはものすごい数字です。必要十分な光量、強力な充電式バッテリー、そして万が一の際でもアルカリなど自由自在に使用可能と、性能を持て余すことなくさまざまな用途に使用可能で、登山はもちろん、旅行や防災用でも重宝するでしょう。惜しむらくは3年前のモデルでは防水等級がIPX8(完全防水)であったのに、最近ではIPX4と平凡なクラスに戻ってしまったことです。防水までついていればトップでもおかしくなかった。
手元・足元を照らすライトの見やすさで選ぶなら:milestone MS-G2
このモデルはいわゆる登山向けのオールラウンドな光を備えたヘッドランプではありませんので、メインで使用するということはおすすめしていません。ただ、このモデルの大きな魅力であり特徴のひとつ、フラットで超ワイドな配光パターンを経験すると、これをサブにもっていたらどれだけ快適だろうかとつい手元においておきたくなります。
このライトが備えている明かりは、普通のヘッドランプにあるような遠くまで届く光ではなく、全体が超ワイドな拡散光によって自分の前方視界のほぼ全体(160°)をフラットに照らしてくれる高品質な拡散光のみ。ただ、この拡散光が強さといいクオリティといい、恐ろしく高いのです。一般的なアウトドア向けヘッドランプに備わっている近接モードでは、明るさ・広さ・見やすさなど、そこまでこだわった作りになっていないものが多く、あくまでもおまけ的な位置づけであることは否めません。ところがこのMS-G2は違う。明るさのMAXは400ルーメンという、トップクラスのモデル顔負けの光量。しかもそれが前方160°と驚くほどワイドに、しかも見やすいフラットな光で広がります。おまけに白色・電球色・ミックス・赤色という多様な場面で有効なカラーまで備えているのだから、安心感はひときわです。
わずか28gという、持っていることを忘れるほどの軽さと、ヘッドバンドとクリップアタッチメントによって頭だけでなく胸・腰・バックパック・ロープなど自由な位置に取り付けが可能と、使い勝手のよさも抜群です。つまり手元・足元を照らしておくサブライトとしては誰にも負けない一品であることが分かるでしょう。1つのハイエンド万能ライトを使うよりも、メインはコストパフォーマンスのよい人気モデル、足元はこちらのサブライトといった組み合わせの方がよっぽど快適・お得な場合も多いのではないでしょうか。もちろんたとえ前方遠くまで届かないとしても、この光量・特徴ならばキャンプやフェスなどのレジャー的なアウトドアにも重宝することは確実。
トレイルラン。見やすさで選ぶなら:PETZL NAO+
夜間でもスピーディな行動を求められるトレイルランニング用モデルは、一般的に遠くまで明るく照らせるような大光量を備え、大きな振動などでもブレにくいバンドなど、暗闇の中で走ることを前提に性能・機能を特化しているモデルがほとんどです。一方で目的がはっきりしている分飛び抜けた1つを選ぶのはなかなか困難でした。このためこの部門で受賞したベストヘッドランプはは2点。まずはやはりというか、大光量とスマートな機能性とフィッティングのよさを兼ね備えたハイエンドモデル、PETZL NAO+。3年前のレビューに引き続き連覇です。
今では唯一無二ということもなくなってきているものの、相変わらず飛び抜けた超高出力な750 ルーメンのビーム。近距離照射用ワイドビームと遠距離照射用スポットビームを同時に照射するミックスビームと巧みなレンズカットが可能にした優れた配光によって、足元から視界の端まで影にならず、他モデルと比べて圧倒的な明るさと見やすさを提供します。
明るさは専用バッテリーによってコントロールされ、90分過ぎまで照射距離100m以上のスーパーな明るさを持続。その後も普通のライトであれば十分なほどの最低限の明るさを保ってくれ、普通のライトとはレベルの差を感じさせます。もちろん弱で使用すれば夜通し持つほどの大容量です。さらに自動で明るさ・範囲を調節してくれる「リアクティブライティング機能」によって見やすさとバッテリー寿命の節約も両立。スマホアプリと連動してバッテリー残量の時間表示で把握可能であったり、明るさや使用時間をカスタマイズしたプロファイルを作成できたりします。1分1秒が大切なランナーにとってこれは大きい。唯一価格についてはおいそれと手を出せるものではありませんが、このハイパワー&機動力という2つの点で、このライトの右に出るものはまだないというのは断言できます。
トレイルラン。使いやすさで選ぶなら:milestone MS-F1 : Trailmaster
もうひとつ、どうしても甲乙つけがたいおすすめモデルが、UTMF2018で土井選手が使用していたことでも有名になったmilestone MS-F1 : Trailmasterです。シンプルな操作性、Quick Dial Systemを使用した装着性の高さ、白色/暖色光の切り替え、均一な出力など、トレイルランで求められる基本性能と唯一無二の使いやすさを携えています。また、見た目は一見見慣れないですが、シンプルな作りで直感的な操作が可能。前述のNao+のように機能満載でやや複雑な仕組みと違い、何も考えずに操作できるのは逆に強みにもなり得ます。
他社のトレイルラン向けモデルには光量が高めのモノが多い中、Trailmasterは、350ルーメン(ブーストモードは800ルーメン・5秒間)とそこまで高くありませんが、実際トレイルで使ってみると十分な明るさ。何よりも視界全体をまんべんなく照らす見やすさが際立っています。電球色は赤みを帯びた光が目に優しく、霧の中でもしっかり視界を確保。さらにこの最高出力の状態でかなりの3時間以上(中なら7時間)持続しているというのは、他にない誠実さがうかがえる特徴です。
フィッティングも独特。両サイドのダイヤル回すとワイヤーが巻かれて締め付け調整ができます。極細のワイヤーなので頭へのあたりはソフトな印象。ライトやバッテリーなど頭部と接する部分の面積を狭めた設計のおかげでストレスは皆無。調節ツマミは左右にあり、頭の形に合わせて締め具合を微妙に合わせることが可能です。
確実なフィット感、適度で広く均一な見やすい光を備え、長時間のレースにも耐えうる強い味方になってくれるでしょう。
使い勝手・機能性で選ぶなら:SILVA Explore 3(2021年モデルはExplore 4)
Silva Explore3は、IPX7の防水性能を誇る登山向けハイエンドヘッドランプ。IPX7といえば、水に浸しても問題なく動作するレベルの防水性能。さすがにヘッドランプをつけて海や川に潜ることはないにせよ、バッグパックに入れて大雨に打たれてビショビショになって放置していても問題なく使えるという心強さには安心感があります。Silva Explore3にはこの他にも登山や過酷なアウトドアであるとうれしい機能が満載です。このモデル以上に多機能なヘッドランプがあることは確かですが、登山やアウトドアに必要な機能・特徴をもれなく、そして無駄なく備えていたのが受賞の理由です。
防水機能はそのうちの最たるものですが、その他にも、軽量でグローブの上から操作しやすいボタン、間違いにくいシンプルな操作系、通常光の点滅・赤色光の他に、文字を認識しやすい琥珀色の光も照射できる近接照射機能、バックパックのチェストベルトに装着可能なアタッチメント、さらにはランタン代わりにもなる付属収納袋など、実用性のある機能や付属品が地味に多いことに驚かされます。
光量も最大350ルーメンあり、夜間のトレイルでの移動・作業では十分な明るさです。近接・遠距離のミックスビームによって、前方だけでなく特に足元周りまでしっかりと照らしてくれるため、夜間歩行時の快適・安全性は十分に満足のいくものです。色々特殊な機能があるわけではないものの、迷ったときにこれをもっていっておけばなんとかなるのではという安心感が魅力のモデルです。
コスパで選ぶなら:mont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプ/Black Diamond スポット325
コストパフォーマンスの高さは、mont-bellのリチャージャブル パワーヘッドランプがひときわ目立ちます。光量こそ200ルーメンと高くはありませんが、失望するほどの暗さではありません。一方内臓型リチウムイオン電池のパフォーマンスは今回のテストでかなり優秀であることが分かり、他モデルと比べてもピカイチで。優れたバッテリー寿命を見せてくれました。これで4,000円を切る価格であれば買って後悔することはないでしょう。
また、モンベルよりも少しだけ高くなりますが、明るさや光のクオリティの高さでBlack Diamond スポット325も捨てがたい。トップクラスに迫る優れた光量を提供し、トレイル、キャンプ、日常用と幅広いニーズを満たします。入門用のオールラウンドモデルとして満足のいく出来栄えです。スポットライトモードでの強力なビームパフォーマンスを備えた優れた光学システムに加え、近距離モードでは非常に広く見やすいフラットな光を提供。さらに電池込みで86gという軽さも魅力。バッテリーは単4アルカリ電池3本と充電機能は無いものの、充電式電池での使用も可能です。電池寿命は平均クラス。おまけにIPX8の完全防水仕様でこの価格はエグい。
登山にも使えて、とにかく軽さで選ぶなら:BioLite ヘッドランプ330
ヘッドランプブランドの中では新しい部類に入るbioliteの最新モデル、ヘッドランプ330は、今回の候補の中で最軽量ではなかったものの、軽量なだけでなく重さを感じさせない構造や、総合的な性能・機能性の高さも相まって、特に軽くて優秀なヘッドランプを探している人にぜひおすすめしたいモデルです。
専用の充電式バッテリーを採用し、なおかつバッテリー部分を後頭部に配置し、額部分には薄い光源部のみという計算された構造は、他にはない、快適な装着感。しなやかで肌触りのよいバンドはまるでヘッドバンドをしているかのような軽量感・装着感で、着けているのを忘れさせてくれるほどです。
明るさも、一昔前ならばハイエンドモデルと言えるほどの光量で、キャンプや軽い夜間の散策程度はもちろん、登山にも無難に使えるスペックです。ワイド・スポットの切り替えもボタン一つで操作可能。欠点があるとすればオン/オフボタンがとても小さく、慣れるまでは指で押すのに苦労する点で、手袋をしていると操作は余計難しそうです。防水性の無さや、バンドの分離ができないので洗濯などができないなど過酷な環境での使用はあまり考えられていない点でしょうか。夜間のレジャーやキャンプなどでは明るすぎず暗すぎず、適度なバッテリー寿命、使いやすさ、装着感といった、気軽に使える全体的なバランスの良さが何より魅力。シーンによってはゴツくてハイスペックなモデルよりもむしろちょうどよくフィットしてくれるでしょう。
毎日の夜間ランニングでの利便性で選ぶなら:PETZL ビンディ
街中での夜のランニングでは、まったく照明がない場所が続くわけでもなく、かといって何も持たずに走るには危険、というケースが多いのではないでしょうか。そんなとき、極力重さの負担なく必要最低限の明かりを携帯したい場合に最適、なおかつキャンプやその他アウトドアでも利用可能な性能を備えているのが、PETZL ビンディです。
遠くも近くも適度に照らせる汎用性のある光の種類と強さを採用し、今回の比較において最軽量の軽さとコンパクト性を備えた携帯性の高さ(持ち運びやすさ)などがあげられます。丸ゴム製のバンドは頭部にセットするだけでなく、首にかけて前方を照らすことも可能ですので、ランニング時には走りの邪魔にならずに前方を照らすことができます。
電池:680 mAh リチャージャブルバッテリー (内蔵)
MAX照射力:200ルーメン
MAX照射距離:36m
照射時間:2時間(強モード)
評価まとめ&スペック比較表
総合評価 | AAA+ | AAA | AAA | AAA | AAA- | AAA- | AAA- | AA+ | AA+ | AA | AA | AA | AA | AA | AA | A | A | A | A | A |
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アイテム | Black Diamond ストーム400 | Petzl スイフトRL | Black Diamond リボルト350 | Black Diamond アイコン700 | Petzl ナオ+ | SILVA Explore4 | mont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプ | mont-bell EXパワーヘッドランプ | Black Diamond スポット325 | milestone MS-F1: Trail Master | Ledlenser NEO10R Black | milestone MS-G2 | Ledlenser MH5 | Petzl アクティック コア | SILVA Trail Runner 4X | Black Diamond スプリンター275 | milestone MS-B6 | BioLite ヘッドランプ330 | GENTOS CB-532D | Petzl ビンディ |
ここが◎ |
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ここが△ |
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遠距離照射 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★☆☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★☆☆☆☆ |
近距離照射 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
電池寿命 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | ★☆☆☆☆ |
使いやすさ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
重量 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ |
スペック | ||||||||||||||||||||
アイテム | Black Diamond ストーム400 | Petzl スイフトRL | Black Diamond リボルト350 | Black Diamond アイコン700 | Petzl ナオ+ | SILVA Explore4 | mont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプ | mont-bell EXパワーヘッドランプ | Black Diamond スポット325 | milestone MS-F1: Trail Master | Ledlenser NEO10R Black | milestone MS-G2 | Ledlenser MH5 | Petzl アクティック コア | SILVA Trail Runner 4X | Black Diamond スプリンター275 | milestone MS-B6 | BioLite ヘッドランプ330 | GENTOS CB-532D | Petzl ビンディ |
公式最大光量(lm) | 400 | 900 | 350 | 700 | 750 | 400 | 200 | 700 | 325 | 850 | 600 | 400 | 400 | 450 | 350 | 275 | 220 | 330 | 420 | 200 |
公式最大照射距離(m) | 9~100 | 12~150 | 8~80 | 15~140 | 65~140 | 8~85 | 5~90 | 125 | 8~80 | 80 | 20~150 | 33 | 40~180 | 5~90 | 20~75 | 8~50 | 70 | 16~75 | 116 | 6~36 |
公式最大照射時間(h) | 5~150 | 2~100 | 3~120 (専用バッテリー) | 7~190 | 1.5~15 | 40~100 (+20℃) | 5~72 | 3.5~144 | 4~200 | 5.5~19 | 10~120 | 14 | 4~35 | 2~130 | 5~18 | 4~100 (専用バッテリー) | 45 | 3.5~40 | 31 | 2~50 |
照射モード | 近接・遠距離 | ワイド・ミックス | 近接・遠距離 | 近接・遠距離 | ワイド・ミックス・スポット | ミックス | 白色・電球色 | ミックス | 近接・遠距離 | 白色・電球色・ミックス | スポット・ワイド | ワイド | スポット・ワイド | ワイド | ミックス | スポット | 白色・電球色 | ワイド・ミックス・スポット | スポット・ワイド | ワイド |
公式重量 (本体+バッテリー) | 120 | 100 | 90 | 236 | 185 | 88 | 80 | 263 | 86 | 180 | 179 | 28 | 94 | 75 | 133 | 105 | 97 | 69 | 116 | 35 |
専用バッテリー | – | ◯ | ◯ | – | ◯ | – | ◯ | – | – | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | – | ◯ | – | ◯ |
乾電池利用 | 単4アルカリ電池×4 | × | 単4アルカリ電池×3 | 単3アルカリ電池×4 | × | 単4アルカリ電池×3 | × | 単3アルカリ電池×4(さらにモバイルバッテリーも利用可) | 単4アルカリ電池×3 | × | × | × | 単3アルカリ電池×1 | 単4アルカリ電池×3 | × | 単4アルカリ電池×3 | 単4アルカリ電池×3 | × | 単3アルカリ電池×2 | × |
ニッケル水素充電池の使用 | ◯ | × | ◯ | ◯ | × | ◯ | × | ◯ | ◯ | × | × | × | ◯ | ◯ | × | ◯ | ◯ | × | ◯ | × |
自動調光 | × | ◯ | × | × | ◯ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | ◯ | × | × | × |
無段階光量調節 | ◯ | × | ◯ | ◯ | ◯ | × | × | ◯ | ◯ | × | × | ◯ | × | × | × | ◯ | ◯ | ◯ | × | × |
防水性能 | IP67 | IPX4 | IPX4 | IP67 | IPX4 | IPX7 | IPX6 | IPX6 | IPX8 | IPX5 | IP54 | IPX4 | IPX6 | IPX4 | IPX5 | IPX4 | IPX5 | IPX4 | IP64 | IPX4 |
赤色照明 | ◯ | × | ◯ | ◯ | × | ◯ | × | × | ◯ | × | × | ◯ | ◯ | × | × | × | × | × | × | ◯ |
マルチカラー照明 | ◯ | × | × | ◯ | × | ◯ | ◯ | × | × | ◯ | オプション | ◯ | × | ◯ | × | × | ◯ | × | × | × |
リアライト | × | × | × | × | ◯ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | ◯ | × | × | × | × |
ロック機構 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ | × | ◯ | ◯ | ◯ | × | × | × | ◯ |
バッテリー残量表示 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | × | ◯ | ◯ | × | ◯ | × | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ | × | × |
頭部以外への装着 | × | × | × | × | × | ◯ | × | × | × | × | ◯ | ◯ | ◯ | × | × | × | × | × | × | ◯ |
各項目詳細比較レビュー
アウトドア向けのヘッドランプには、夜間行動で奥まで続くトレイルの道筋や目印を照らしたり、テント泊や野営中に作業をするために手元を照らしたりなど、用途の異なる多様な種類の明かりが必要です。このため、このアウトドア向けヘッドランプの評価では、前者の遠くまで照らす光を「遠距離照射」評価、手元や周囲を見やすくしてくれる光を「近距離照射」評価として、2種類のビーム評価を行ないました。当然モデルによっては遠距離照射が存在していないモデルや、逆に近距離照射が存在していないモデルがあり得ます(そうしたモデルにとっては、片方の評価の低さを気にする必要なんてまったくありません)。
遠距離(トレイル)照射性能
ここでは主にトレッキングやトレイルランでの夜間行動中に前方を明るく、そして歩きやすく照らしてくれる性能を比較しています。
単純にいえばライトによって昼の状況に近ければ近いほどいいはず。つまりより遠くに、そしてより全体を明るくしてくれるビームが優秀ということです。
遠くに届かせるためには、ヘッドランプから発せられる限られた量の光を光源の周囲にある反射板によって集約します。ただ光を集めすぎると、遠くまで届いたとしてもその代わり照射範囲が狭く絞られてしまい、足元が見にくかったり、周囲の状況がまったく見えず、帰って歩きにくいといった状況になってしまいます。
遠距離照射では光のパワーやどこまで遠く照らせるかだけでなく、足元や周囲の見やすさとのバランスが非常に大切といえます。このように単なるスペック的な「光量(明るさ)」だけでなく「照射距離」、そして実際での「見やすさ(快適さ)」が遠距離照射での評価ポイントです。
なお、「照射距離」とはそもそも何だ?という人は、以前書いた「ヘッドランプの選び方」に詳しく書いていますので、興味のある方は参考にしてみてください。
そこでテストでは各モデルの最高出力(遠距離照射モード、自動調光機能は使用せず)で、約2.5m離れた先の円形チャートに向かって照射した様子と約5m先の木に向けたフィールド照射とを撮影し、比較してみました。
- 約2.5m離れた先の円形チャートに向かって照射
- 約5m先の木に向けたフィールド照射
まずは各モデルが公表しているスペックを押さえておきます。遠距離モード最大出力での光の強さと照射距離を比べてみます(下表)。
アイテム | Black Diamond ストーム400 | Petzl スイフトRL | Black Diamond リボルト350 | Black Diamond アイコン700 | Petzl ナオ+ | SILVA Explore3 | mont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプ | mont-bell EXパワーヘッドランプ | Black Diamond スポット325 | milestone MS-F1: Trail Master | Ledlenser NEO10R Black | milestone MS-G2 | Ledlenser MH5 | Petzl アクティック コア | SILVA Trail Runner 4X | Black Diamond スプリンター275 | milestone MS-B6 | BioLite ヘッドランプ330 | GENTOS CB-532D | Petzl ビンディ |
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公式最大光量 (lm) | 400 | 900 | 350 | 700 | 750 | 350 | 200 | 700 | 325 | 850 | 600 | 400 | 400 | 450 | 350 | 275 | 220 | 330 | 420 | 200 |
公式最大照射距離 (m) | 100 | 150 | 80 | 140 | 140 | 75 | 90 | 125 | 80 | 80 | 150 | 33 | 180 | 90 | 75 | 50 | 70 | 75 | 116 | 36 |
単純な光の強さ(ルーメンlm値)だけでいえば、最も高いのはPETZL スイフトで900ルーメン。ただ照射距離のトップはLedlenser MH5 で180mとなっているように、単純にパワーだけでなく、反射板の性能や構造によってどれだけ前方に集光するのか(できるのか)ということも遠距離照射性能に関係してきます。それを踏まえて、実際にまずは室内の約2.5m離れた円形チャートへの照射を見比べてみましょう。
一覧比較:円形チャートへの照射
それぞれを見比べてみると各モデルで「光の強さ・色味」と「光の広がり方」の特徴に個性があることが一目瞭然で分かります。中心が明るくなっているモデル、光に偏りがなく全体的に光が散らばっているモデル。これがヘッドランプを選ぶ上でも重要な特徴になります。
最も奥まで届く中心部分の明るさだけを見ると、想像通りLEDLENSERはワイドモードにも関わらず見るからに明るい(補足:PETZL NAO+とスイフトRLに関しては、最高出力が出るリアクティブで試せていないため、その部分は差し引いて考える必要があります)。ただ、中心部分以外での急激な暗さが目立ちます。一方でPETZL NAO+、スイフトRL、Black Diamond アイコン700、ブーストモードのmilestone MS‐F1 Trailmasterについては、明るさも抜群でしかも画面の縁まで広く明るく照らされていることが分かります。それ以外のモデルについては、光量が少なかったり、中心付近の光量はあるものの周辺の明るさが著しく弱かったりして、相対的に何かしら物足りなさが残ります。
これを実際のフィールドで照らしてみるとどのように見えるのか。それを見比べてみたのが下の写真です。
一覧比較:トレイル照射
ここでじっくりと見比べてみると、前方の木がはっきりと見え、なおかつ足元・周囲まで広く見やすいと感じたのはPETZL NAO+、スイフトRL、Black Diamond アイコン700、mont-bell EXパワーヘッドランプでした。milestone MS‐F1 Trailmasterもブーストモードでは負けないくらいに明るく見やすいです。
また円形チャートのとき同様、一見するとLEDLENSERの2モデルは照射範囲が抜群に明るく見やすく思えますが、中心の木はそこまで明るく照らされておらず、さらに照射範囲が他と比べても狭いことが分かると思います。正直好みの部分もあるかもしれません。
次点でBlack Diamondのストーム400、アクティックコア、GENTOS CB-532D、あたりが遠く・広く照らされていることが見てとれます。スペックでは3モデルともほとんど光量は変わりませんが、トレイルでの写真をみると、ワイドに照らすCB-532D、遠くに照らすストーム400・その中間のアクティックコアと言えなくもない。このあたりは用途や予算によって好みが分かれそうです。
補足:各モデルでの拡大写真
※写真ではかなり暗く見えているとしても、人間の視覚は無意識のうちに暗さに対応していくため、暗いと思われるライトも実際には時間が立つと写真よりも多少明るく見えてくるということはご留意ください。
近距離(手元)照射性能
キャンプや登山においては夜中歩くことは緊急時以外そこまで多くはないため、ある意味最も使用頻度が高いかもしれないのがこの近距離への照射です。ここでは近くの対象物を照らしたときの見やすさを評価します。
明るくはっきりと見えることはもちろん重要です。ただ直視できなくなるほどの明かるさは逆に見にくくなりますし、広くなければ全体が見にくくて不快・不便です。大切なのは、身体や視線を動かさないでも視界全体をはっきりと見やすい明るさで照らしてくれるような「より広く、均一に広さと強さがコントロールされた」照明ということになります。
それを踏まえた上で、今回は各モデルの近距離モード(近距離モードがないモデルは通常モード)で約60cm離れた円形チャートを照らして見比べてみます。
一覧比較:円形チャートへの照射
はじめに補足ですが、この比較写真で明らかに明るいモデルのなかには、そもそも近接モードがついていないため、そのまま通常モードの”強”で照らしているものです。きっとこれらのモデルで実際に手元を照らす場合には中や弱などの暗いモードに調整すると思いますが、照射範囲がよりくっきりと分かると考え、強モードで撮影したものを比較しています。
最も均一かつワイドな照射範囲で、目にも優しい明るさをつくっていたのは、milestone MS-G2。比べて分かるように、見事なまでに隅々まで均一にクリアな明るさを形作っています。照射範囲は自分の視界よりも広く、ライトの縁はまったく気になりませんでした。テント内や早朝の準備などの快適さは普段あまり気にしませんが、比較してみるとここまで違うものかとあらためて驚きです。
その他では、Black Diamondの各製品に装備されている近接モードが明るさ・フラットさともに品質が高く快適でした。他には広さこそもう少し欲しいものの、明るさとフラットな見やすさではLedlenserの2モデルも快適といえます。また、明るさを除けば自然な見やすさと均一な広がりでmont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプ、BioLite ヘッドランプ330もなかなか優秀でした。
補足:各モデルでの拡大写真
バッテリー寿命
照射時間(電池寿命)は単純に長ければ長いほどよいのは当たり前なのですが、ヘッドランプという道具の性質上、寿命が尽きるまで100%のパフォーマンスを発揮できるわけではなく、評価にあたってはその減り方に注目して比較してみることが重要です。
例えば「10時間」という表示があったとしても、当然MAXの明るさが10時間続くわけではありません。また、10時間一定の割合で明るさが減っていくというわけでもありません。実態はそんな単純なものでもなく、モデルによってははじめの1時間で最大光量から半分以下の明るさに減ってしまうものもあります。さらに表示された寿命が一体どのような状態でどのような照射モードで測ったものなのか、一見すると分かりにくい表示になっていたりすることもあります。
これは各メーカーが公表している計測値が自社基準によるものであるところが大きく、主要なブランド間ではその基準も揃ってきてはいるものの(最近では「ANSI FL1」といった新しい統一規格もあり)、まだまだ表示された寿命はあくまでも目安として考える程度に留めておく必要があります。
バッテリー寿命の性能比較はかように複雑な特徴同士を比較することもあって、誰からも突っ込まれない完璧な基準というものは難しいと思います。そこでこのサイトでの評価は以下のように2つの視点、4つの指標を総合してバッテリー寿命を評価しスコアリングしました。
- 5時間経過後、照射開始直後に比べて照度の下落割合がより少ないモデル
- 3時間経過後、照射開始直後に比べて照度の下落割合がより少ないモデル
- 1.5時間経過後、照射開始直後に比べて照度の下落割合がより少ないモデル
- 5時間経過後、高い照度を保っているモデル
今回は各モデルが同じ条件ではそれぞれどのような減り方をするのかということを知るため、遠距離モード(ブーストモードやリアクティブモードなどの瞬間的・自動制御的なモードを除いたMAX出力)で5時間照らし続け、その間の照度の変化を測定しました。1.5m離れた場所から壁の照度計に向かって照射した光を測定した結果が下のグラフです。横軸は時間、縦軸は照度です。ちなみにここでの照度は照度計によって得られた照度(lux、ルクス)であり、少しでもずれると数十ルクス変わることもあるので、厳密な比較できる数値としては信頼性をもちません。ただし概算での比較や、同一モデルの5時間での変化量としては概ね信用できる値であると考えています。
技術的な限界から、20モデルすべての時間による照度変化を1つのグラフに収めると見づらすぎるので、便宜的に3つのカテゴリに分けてみました。
バッテリー寿命比較:登山・オールラウンドタイプ
ここでは、基本的に登山利用で最適化された機種、結果としては夜間行動・野営とオールラウンドに利用可能なタイプ12機種を集めて、照射時間と明るさの変化を表したグラフです。明るさそのものを比較するものではなく、時間経過にともなうバッテリーの消耗と、明るさの変化を見ていただければと思います。
まず全体的にわかるのは、明るさの変化には大きく分けて2種類あることです。
- 一定の照度を保ちながら一定の点で一気に落ち込むタイプ(特にリチウムイオン電池モデルに多い)
- 徐々に(数段階の落ち込みを経て)明るさを失っていくタイプ
この違いは単純な良し悪しではなく各モデルの特徴として捉えられ、これらはアクティビティによって、長所となり短所ともなります。例えばトレイルランニングに利用したい場合では、明かりがほとんどない山中を走り続けるため、行動中はずっと足元・そしてやや前方をしっかりと視認できる明るさで照らし続ける必要があります。となると、最大の明るさよりも、一定の光量を長く持続するという性能が求められます。逆にキャンプでは一定の明るさを長時間維持する必要はなく、徐々に暗くなればバッテリーの減少も感覚でわかるので便利です。もちろんずっと高いレベルであるに越したことはありませんが、このような設計の違いによる特徴を踏まえて、自分の求める性能を選ぶことがより賢い選び方といえるでしょう。
この結果をどう見たかですが、5時間を経過して高い照度を保っていた、Black Diamond リボルト350、mont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプ、2モデルは総じて5時間経過した後でも明るい、という意味ではひとまず「寿命が長い」モデルであるといえます。Black Diamond リボルト350は照射開始時点の明るさも高いレベルにもかかわらず、さらに5時間経過してもその約25%以上の明るさを保っていました。一方リチャージャブルヘッドランプは最大光量が200ルーメンと少ないからか、5時間経っても照射開始時点の明るさから50%以下を下回ることはありませんでした。
一方で1.5時間まで限定で考えると少し状況が違ってきます。PETZL スイフトRL、Black Diamond アイコン700、Black Diamond ストーム400、mont-bell EXパワーヘッドランプなどは高いレベルで一定の照度を保ち続けています。ただ、PETZL スイフトRLは135分あたりで一気に明るさが落ち込むため注意が必要です。高い照度で2~3時間程度の利用であれば、これらのヘッドランプの方が高いパフォーマンスで快適に利用できると考えられます。
※PETZL NAO+・スイフトRL・milestone MS-B6は「リアクティブモード」という周りの明るさによって光を調光してくれるシステムを備えています。今回の計測にはリアクティブモードは用いていないため常に強い明かりを出し続けていましたが、実際に山などで使用する際リアクティブモードがうまく作動してくれれば、適度な明るさをより長い時間維持してくれそうです。
なお、mont-bell EXパワーヘッドランプは標準のオプションとしてモバイルバッテリーにUSB接続することができるため、実はバッテリーに関して今回最も潜在能力を秘めているとも言えるのは忘れてはなりません。
バッテリー寿命比較:トレイルランニング向けタイプ
次に、明確にトレイルランナー向けと銘打っている5モデルについてバッテリー消費の様子を見ていきます。
PETZL NAO+はスタート直後の飛び抜けた明るさが、ほとんど落ち込むことなく、90分あたりまで高いレベルを維持し続けます。これに加えてリアクティブモードで消費が抑えられればさらに持続します。そして落ち込んだという90分以降の明るさも、実際には十分使える明るさで5時間経過しても照らし続けてくれますので、明るさだけでいったらやはり文句なしです。
またSilva Trail Runner4xは、スタート直後落ち込みはするものの、それ以降は5位時間経過後まで殆ど変わらぬ明るさを維持し、後半はNAO+より高い値を維持しています。
おもしろいのがmilestone MS-F1 :Trailmasterで、照射開始時点の明るさがまったく落ちないで210分あたりまで使えます。このような特性をもったモデルは他になく、使い勝手としてはなかなか気持ちの良い設計です。
アイテム | PETZL NAO+ | milestone MS-F1 :Trailmaster | LEDLENSER NEO10R Black | SILVA Trail Runner 4X | Black Diamond スプリンター275 |
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グラフ |
バッテリー寿命比較:軽量・軽アウトドア向けタイプ
最後は日常・キャンプなど軽いアウトドア使用に最適化されたモデルを比較します。今回このカテゴリは数が少ないこともあり一部登山向けのエントリーモデルも重複していますがグラフに入れ込んでみました。
このタイプのヘッドランプでは、mont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプとBlack Diamond スポット325は登山でも十分使えるパワーがあるのは当然として、それ以外で目立つのはBioLite ヘッドランプ330の3時間までの高い照度と、milestone MS-G2の3時間以降でも明るい持続時間でしょう。
重さ・機能・使いやすさ
この項目では明るさや見やすさといったビーム性能以外で、機能性、操作性などの道具としての使い勝手についてをまとめて評価しています。
重量に関してはやはりパワーよりも手軽さを優先しているキャンプ向けモデルやサブライトにどうしても軍配が上がります。基本的には軽いものほど点数が高いわけですが、milestone MS-G2は軽量な専用バッテリーを使用して28gという驚きの軽さにも関わらず、高い出力とバッテリー寿命も備えており非凡さが際立っているといえるでしょう。あまりにも軽量コンパクトすぎてうっかり無くしてしまうほど(買い直し済み……)。
機能や使いやすさについて、ここ数年でどのブランドのモデルも基本機能が底上げされており、誤点灯を防ぐロック機構、バッテリー残量表示、点滅・RED照射機能などはほとんどのモデルで実装されるようになりました。その意味では昔に比べて差は拮抗してきており、単純な機能のあるなしだけでは比べにくい状況でした。
そのうえで、基本的には加点方式でより便利な機能がたくさん付いているモデルを選ぶとすれば、SILVA Explore3が挙げられます。IPX7の防水性能、軽量でグローブの上から操作しやすく、誤動作もしにくくなっているボタン、間違いにくいシンプルな操作系、通常光の点滅・赤色光の他に、文字を認識しやすい琥珀色の光も照射できる近接照射機能、バックパックのチェストベルトに装着可能なアタッチメント、さらにはランタン代わりにもなる付属収納袋など、実用性のある機能や付属品がこれでもかというほど揃っていました。
その他目立ったところを挙げると、トレイルラン用途として、PETZL NAO+はスマホ連動を中心としたスマートな機能に加え、背面のRED表示や重量バランスを考えた外れにくいヘッドバンドなどランニング向け機能が充実しているのが特徴。
Black Diamondはどの機種も際立った機能があるわけではないものの、使いやすい必要十分な機能がまんべんなく備わっており、2ボタンになって操作も迷いにくくなっていたりと、かなり整理されて安心感が出てきました。ワンタッチで最大照度に切り替わるパワータップ機能も、ややこしさを廃する気遣いを感じます。
それから今回最も今後の発展が興味深かったのが、mont-bell EXパワーヘッドランプに実装されたモバイルバッテリー接続機能です。これは従来のような電池での給電以外に、専用のUSBケーブルで市販のモバイルバッテリーに接続しても使用することができる機能。スマホやスマートウォッチの利用が当たり前の今では、大容量モバイルバッテリーも装備のひとつとして一般的になってきており、これによって電源の有効活用ができるとなればかなり魅力的です。今後はオプションでもいいので、他のメーカーなどでも取り入れられていくことが期待されます。
まとめ
以上、ヘッドランプ20モデルを実際に点け比べてみて、用途・好み別のベストアイテムを選出してみました。たかがヘッドランプ、されどヘッドランプ。こうしてみると実は奥が深い道具であることが分かっていただけたかと思います。
ヘッドランプは今や用途や価格によって多種多様なモデルがあり、使用目的や価格帯などによって各モデルそれぞれ光の種類/強度、バッテリー持続性、安全性などが細かく違ってきます。このレビューではその点を整理して、自分的に欲しがるシチュエーション・ニーズ別に選んでみました。皆さんにとっても、悩ましいヘッドランプ選びの参考になってもらえたら嬉しいです。
全体的な評価としては、今シーズンのテストではBlack Diamondの全体的な底上げが目立ちました。総合力で考えた場合での品質は高く、どのモデルを選んだとしても基本的に後悔はしない、非常に完成度の高いモデルが多いなと思います。
一方先鋭的な機能・性能という意味ではやはりPETZLも決して負けてはいません。トレイルランや、ファストパッキング、キャンプなど、より具体的なアクティビティに絞った比較であれば威力を発揮するモデルが揃っているのが強みでしょう。
それ以外でも、予算やこだわりなど様な条件が加われば、その他のブランドのモデルも基本的には十分満足のいくものだったと思います。ただ、それぞれの目的や好みに合わせた自分にとっての究極のヘッドランプを選んでみるのも、意外と楽しいということが分かってもらえれば嬉しいかなと。
補足:今回比較したヘッドランプについて
今回の比較にあたり、国内外主要メーカーのなかでも対象アクティビティは限定せず、大雑把にアウトドア向けの、エントリーモデルからハイエンドモデルまでで、個人的に「これはおもしろい」と思ったアイテムをピックアップ(いずれも2020~2021年モデル)。アウトドア向けとしたときに「明るいけどやたら重い」とか、「軽いけど暗すぎ」といった極端なモデルも今回対象から外しています。
結果的に出揃ったのは、国内3メーカー6モデル・海外5メーカー14モデル。前回テストの倍の数、合計20モデルをピックアップしています。
- BioLite ヘッドランプ330
- Black Diamond アイコン700
- Black Diamond ストーム400
- Black Diamond リボルト350
- Black Diamond スポット325
- Black Diamond スプリンター275
- GENTOS CB-532D
- Ledlenser NEO10R Black
- Ledlenser MH5
- milestone MS-F1: Trail Master
- milestone MS-B6
- milestone MS-G2
- mont-bell リチャージャブル パワーヘッドランプ
- mont-bell EXパワーヘッドランプ
- Petzl スイフト RL
- Petzl NAO+
- Petzl アクティック コア
- Petzl ビンディ
- Silva Trail Runner 4X
- Silva Explore 3
テスト環境
スペックだけではうかが知れないヘッドランプの実力を探るには、実際に点けてみるのが一番。ただ、いろいろな場所と使い方によって「良さ」基準は変わってきますし、電池の種類など、なるべく条件を揃えてあげないと公平とは言えません。そこでこのサイトではなるべく「そのヘッドランプを買ったユーザーが通常使用するであろう条件」「周囲の明るさを合わせるため屋外でのテストは同時間帯に」という基本的な指針のもと、2020年5月~9月にかけて、以下のような3種類のタイプのテストを実施しました。
- 外からの光をシャットアウトした真っ暗な室内で定量的な比較(強さ、広さ、バッテリー寿命など)
- 真夜中のトレイルで静止した状態、歩きながらでの比較
- 実際のフィールドで一通りの使い方を試しながら使用感をチェック
専用の充電式バッテリーが付属しているモデルは(アルカリ電池も使用できたとしても)充電式バッテリーを、ついていないモデルはメーカーの推奨する電池(アルカリ電池)を使って比較しました。両電池とも毎回フル充電・新品(同メーカー・同型)を使用しています。
明るさの測定には日本製の測定器を使用しました。照度計自体の品質や光の色の違いによって計測結果にはある程度誤差が生じることや、テストによっては光の当たり所が数ミリずれるだけで数値が大きく変化したりするので、絶対値としての測定値にはあまり意味がありません。評価に際しても、各ギアの時間経過での結果や、相対比較で使用しました。