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Black Diamond ディスタンスLT1100 & ディスタンス1500レビュー:ナイトランにピッタリの明るさと抜群のフィット感を備えた最新鋭ヘッドランプ

ヘッドランプは足元を照らしてくれる程度の明かりで十分?——夜道をゆっくり歩くだけのハイカーならば、そんな風に思っている人も少なくないかも知れません。

ただし、あえて夜のトレイルを走るナイトランや、夜通し走り続けなければならないロングディスタンスレースであれば、話は大きく違ってきます。

夜通し走ることの何が危険かって、まず狭まった視界の中で自分が進む方向を瞬時に把握することの難しさ。そして多くの場合、夜は体内リズムと疲労の関係で認知能力は低下し、判断も鈍りがち。そんな夜道のランニングはいつもより数倍余計に神経をすり減らす活動だったりします。

その意味で、真っ暗で不安定な山道を限界スピードで駆け抜けるトレイルランナーや、夕闇のコースを滑り下りるスキーヤーなどにとっては、真昼とまではいかなくても、自分が進む先を奥まで照らす広くて強い明るさと、なるべく長く続く豊富なバッテリーが必要不可欠です。

アウトドア向けヘッドランプの世界的なトップブランドの Black Diamond による最新ヘッドランプ「ディスタンス LT1100」は、ハイパワーかつ激しい動きに対しても安定したフィット感を提供するハイエンドヘッドランプの最新作です。今回はこの最新ヘッドランプを、昨年リリースされたシリーズのフラッグシップモデル「ディスタンス 1500」とともにフィールドで試してみることができましたので、これらをまとめてレビューしていきます。

BlackDiamond ディスタンス1500 & ディスタンスLT1100の主な特徴

最大出力で夜でもまぶしいほどの高出力を発するディスタンス 1500 とディスタンスLT100は、Black Diamondが主にトレイルランニング向けに設計した高出力ヘッドランプで、瞬間最大1500ルーメン(LT1100は1100ルーメン)という高出力と大容量の充電式リチウムイオンバッテリーを備え、市場にあるアウトドア向けヘッドランプの中でも最も明るく、最も装備が充実したヘッドランプの部類に入ります。

スポットと広範囲を組み合わせた多面体光学レンズは、広さと奥深さを両立した見やすい配光を実現。また軽量ボディに加えてライトユニットとバッテリーユニットの分離設計によって、ライトの角度を調整しても安定したフィット感を保ち、行動中のブレが最小限に抑えられます。赤緑青の3色LED、IP67の防水性、リアフラッシャーライト(ディスタンス 1500のみ)などあると嬉しい実用性もしっかりと備えています。

スピードハイキングやトレイルランニング、ウルトラマラソン、マウンテン バイク、スキーモ、バックカントリースキーなど、過酷なフィールドでのハイスピードかつ長時間のアクティビティで、これ以上ない快適な視界を提供します。

お気に入りポイント

  • 夜間でも安心、パワフルで明るく見やすい光
  • 長時間寿命でスペア取り替え可能なバッテリー
  • Type-C充電ポートでのスピード充電
  • 十分な防水性能
  • パワーの割に軽い(LT1100)
  • フィット感が高くブレにくい(1500)

気になるポイント

  • 充電式バッテリーが独自仕様
  • 固定力が普通なヘッドバンド(LT1100)
  • USB-C 充電ポートがカバーで保護されていない(LT1100)
  • 持ち運ぶにはやや重すぎる(1500)
  • 価格

主なスペックと評価

項目BlackDiamond ディスタンスLT1100BlackDiamond ディスタンス1500
光量(lm)
  • ブースト1100ルーメン
  • 高照度600ルーメン
  • 中照度300ルーメン
  • 低照度7ルーメン
  • ブースト1500ルーメン
  • 高照度800ルーメン
  • 中照度300ルーメン
  • 低照度15ルーメン
公式照射距離(m)
  • 最大照度125m
  • 高照度110m
  • 中照度58m
  • 低照度8m
  • ブースト117m
  • 高照度95m
  • 中照度45m
  • 低照度5m
公式照射時間(h)(最小/最大)
  • 高照度4.25時間
  • 中照度14時間
  • 低照度120時間
  • 高照度1.7時間
  • 中照度6時間
  • 低照度40時間
実測重量(g)

108g(バッテリー含む実測値)

206g(バッテリー含む実測値)

専用バッテリーBD LTバッテリー(3.7V / 2200mAh)ディスタンス1500バッテリー(7.4V / 1500mAh)
充電しながら使用××
防水防塵性能IP67(粉塵が中に入らない/深さ1mの真水に30分没しても影響を受けない)IP67(粉塵が中に入らない/深さ1mの真水に30分没しても影響を受けない)
ライト種類
  • メイン:白色
  • サブ:赤緑青色
  • メイン:柔らかい白色
  • サブ:赤緑青色
付属品USB-Type C ケーブル、スタッフバッグハードケース、スタッフバッグ、追加ヘッドバンド、USB-Type C ケーブル
遠距離照射★★★★★★★★★★
近距離照射★★★★☆★★★★☆
バッテリー寿命★★★★★★★★★☆
着用感★★★☆☆★★★★★
使いやすさ★★★★☆★★★★☆
重量★★★☆☆★★☆☆☆
防水性★★★★★★★★★★
耐久性★★★★☆★★★★☆

詳細レビュー

外観と重量、着け心地:重さを感じさせないスマートな構造と心地よいフィット感

はじめに押さえておくと、「ディスタンスシリーズ」という名前はバックパックやトレッキングポールなど、ブラックダイヤモンドの他の製品でも使われているシリーズ名であり、これが冠されているアイテムはおおむねスピードハイキングやファストパッキング、トレイルランニングなどの素早い移動を伴うアクティビティ向けに作られているのが特徴です。

このヘッドランプもその意味では「走りながら着ける」ことが少なからず意識して作られているところが随所に見られます。

ディスタンスLT1100

ディスタンスLT1100 は重量約108グラム。を手に持ってみると、外から見た感じよりは大分軽く感じられる気がしました。

上部にモード変更・ON/OFFおよび出力調節ボタン、下部にUSB端子が配置されています。端子が剥き出しでカバーが付いていないのは汚れや水が入りやすそうで少し気になります。

背面には柔らかくて快適なヘッドバンドが付いており、本体の背面には布地が当たるように作られているため、装着時にプラスチック部品が額に触れることはありません。これにより、何時間も装着してもベタベタしたり汗をかいたりすることもなく、フィット感も良好です。普通のストラップ形状にもかかわらず、頭に直接かぶっても、帽子の上からかぶっても、まずまずの安定感です(下写真)。

ただ個人的には、だからこそもう一歩踏み込んでバンドの質をより固定力の高いものにしたり、頭頂部のバンドを増やすなりしてよりフィット感を高めてもよかったのかなとも思ったり。走ってもブレないようにしっかりと固定するためには少なからずバンドを気持ちきつめに締める必要があります。現状でも不満というほどではないだけに惜しい。

ディスタンス1500

ディスタンス1500 の方は大光量のヘッドランプでよく見られる、バッテリーパックとライトユニットが前後に分離した構造です(下写真)。

専用のハードケースに収納袋や頭頂部用の追加バンドなどの付属品も入っている豪華なパッケージ(下写真)。

操作系のボタンは上部にモード変更ボタンとON/OFFおよび出力調整ボタンとサイドにブーストボタン。慣れればそこまでややこしくはない。全体の重量は213グラムとLT1100 の約2倍と非常に重いのですが、前方のライトユニットが非常に薄く、そして額と後頭部には成形された樹脂のプロテクター(額にはバンドの布地が当たる)が配置され、バンドも柔らかく伸縮もしっかりているため、非常に高いフィット感が得られると同時に重さも不快さはほとんど感じられません。

さらには頭頂部に縦方向のバンドを追加できるようになっており、それを追加することでさらにフィット感は高まります。ここまでやればトレランなどで激しく行動していても(この重さにも関わらず)ブレが気になることはありません(下写真)。

USB端子はカバー付きでバッテリーパックと同じ後頭部に。バッテリー残量はバッテリーパックそのものに配置されています。

ライトの角度を変えてもブレにくいままの薄型ライトユニット

このライトの重さやブレを感じさせにくくしている大きな理由のひとつは、LT11001500に共通する「新しくなった薄型のライトユニット構造」です。

ディスタンスシリーズのヘッドランプはどちらお取り外し可能なバッテリーユニットと、薄く軽くなったライトユニットが分離した構造になっています(下写真はLT1100)。

LT1100はライトユニット・バッテリーユニット・バンドの3つに簡単に分離可能。

これまでのヘッドランプはライトの角度を下に向けると、バッテリーを含めたボディ全体が額から離れて下にお辞儀する形になります(ヘッドランプを使用するときにはたいていの場合ライトをやや下向きにします)。

それが上のような分離構造になることで、ライトを下に傾けても重さのほとんどは額にくっついたまま(1500の場合は頭部に固定されたまま)で、重心が額から離れることがありません。このためヘッドランプは常に定位置に固定され、ブレにくい構造になっているという分けです(下写真)。

テストで荷物を背負ってトレイルを走ってみたときも、ほんの少し揺れた以外ではおおむね快適で安定しており、あるべき位置にフィットしランプがずれるようなことはありませんでした。

明るさとバッテリー寿命:シビアな夜ランでも問題のない高出力&長時間

スピーディなアクティビティに対応するためにデザインされたディスタンスシリーズのもう一つの魅力はやはり遠く広く照らすことができる高出力のライトです。

ディスタンスシリーズのライトは大きく「スポット・ワイド」「無段階のパワー調節」「10秒間のブースト」「赤青緑のカラー」「ストロボ」のモードが用意されています。ちなみにライトのロック機構はどちらもしっかり付いています。

夜の山道を安心して走るには、遠くまではっきりと明るく照らされていることが必要。一方でテントやゆっくり道を探しながら歩くなら、明かりの届く距離よりも、視界の広さの方が重要。シーンに合わせてそれぞれの用途にマッチした「スポット・ワイド」の配光パターンを選べるようになっています。

ライトにはスポット用のLEDとワイド用のLED、それに合わせた多面体光学レンズがセットされている。

スポットモードは中心を置く深くまで明るく照らし、ワイドモードは視界の周辺まで全体的にまんべんなく照らす。もちろんどちらも光量調節可能だ。

さらにそれぞれのモードで、ボタンを長押しすることで無段階に明るさが調節でき、MAXの明るさにするとスポット・ワイド両方のライトがミックスされたビームを照射することができます。

各モードで無段階での明るさ調節が可能で、MAX出力にすると前方は奥から視界全体まで全体がまるで日中のような明るさになり、木々の間の小道でも自信を持って歩くことができました(下写真は1500)。新開発の多面体光学レンズは、遠方と近距離をバランスよく照らしつつ、照射範囲の縁も滑らか。アウトドアでの行動中に照らすライトとして非常に適した配光になっています。

約10秒間連続照射できるMAX出力では奥も周辺も強力な光でばっちり照らすことができる。

例えば岩場のルートでもし瞬間的にルートを見失ったりした時は、ケースの側面を指でダブルタップして「ブーストモード」に切り替えると、一時的に出力を最大値(1500 は1500ルーメン、LT1100 は1100ルーメン)にまで上げることができ、赤テープや赤ペンキ、鎖、手がかりなどの目印を探しやすくすることができます。これが通常は中程度の明るさにしながら必要に応じてブーストするといった使い方に慣れると、適度にバッテリーの節約もできるため意外と便利であることが分かりました(下写真は1500)。

LT1100 と1500、明るさはどれだけ違う?

通常モードでのMAX出力は、LT1100 で600ルーメン、1500 で800ルーメンと200ルーメンの差があります。この差がどの程度なのかというと個人的には違いははっきりと分かるものの、600ルーメンのLT1100 が物足りないと思うことは、かなりシビアなアスリートでもなければほとんど問題なる程ではなく、どちらも見やすさでいえば満足できることは間違いありません。

そもそもここまでの高出力モデルであれば、(スキーやバイク、レースなどを除いて)電池の持ちなども考えると少し出力を落として使うので十分であることがほとんどでしょう。

LT1100 のライトはクールなホワイト、一方で1500 の方は明かりのカラーがやや柔らかく、靄がかかった早朝などでも光が届きやすく感じられた。

通常とは異なる用途に使える様々なモード

この他、赤・青・緑の光を発するマルチカラーモード(赤色は天体観測、青や緑はハンティングなど、さまざまなシーンやアクティビティで便利)も用意されています。また緊急時などに有効なストロボ(点滅)モードもしっかり付いています。

また1500のみには、後部のバッテリーユニットに付いた赤色ライトが付いており、後続者の目印として機能してくれます(下写真)。

バッテリー寿命と明るさの推移

ヘッドランプをテストする際にいつもこのサイトでやっているように、1メートル程度離れた場所にMAX出力のライトを照度計に当て、時間と共にその明るさの推移を5時間計測してみました。その結果、LT11001500のバッテリー寿命と明るさの減り方には意外と無視できない違いがあることが分かりました。その様子が下のグラフです。

なお今回のテストで使用したバッテリーは1100が購入後すぐ、1500が購入してから数回は使用して時間も経っているモデルであることは補足しておきます。

このグラフから分かるのは、(MAXの明るさで照らし続けた場合)ディスタンス1500 の方は1300ルクスという極めて明るいビームを1.5~2時間までずっと照射し続けることができ、これは短期勝負ならLT1100 よりもパフォーマンス的に2倍程度優れていること、一方で4時間近くまで使用時間が延びれば(中照射ならば当然それ以上の時間)、1500 よりもLT1100 の方が実用的な見やすい明るさを保ち続けてくれることです(ちなみにこれはメーカーのマニュアルに記載された数値でおおむね間違っていないことも分かりました)。

また、中照度での照射時間をメーカー数値で比べると、LT1100 は14時間、1500 は6時間ということで、LT1100 は設計コンセプトとして長距離・長時間での実用性を重視していると考えられます。端的にいえば、長持ちする方を選ぶならばLT1100 の方が得意であるといえそうです。

大容量の専用バッテリーは一長一短

取り外し可能な専用バッテリーユニットは、機器に合わせた電力の効率的な活用を可能にするとともに、スペアバッテリーとすぐに交換できる利便性も提供してくれます。ただしスペアバッテリーは別売りで、他の製品との互換性はありません。当然アルカリ単三・単四電池などでも流用はできませんので、そこは悩ましいところです。

まとめ:レースでの最高のパフォーマンスなら1500、ラン以外での総合的な実用性の高さならLT1100

軽さを感じさせないスマートなボディに高出力で快適な見やすさの明かりと十分な機能性を詰め込んだディスタンス1500ディスタンスLT1100 は、テント場での明かりや夜明け前数十分の行動にしか使わないのであれば、ともするとオーバースペックかもしれません。ただ日没から夜明けまでしっかりと行動する登山者や、道なき道を進むオフトレイルでのナビゲーション、夜間のトレランレースやウルトラトレイルスキー、サイクリングなどの高速アクティビティにとっては、必要な要素がすべて揃うこれ以上なく頼もしいランプです。両者の違いを一言でいうならば、レース専用モデルが1500、登山もランもスキーもレースも幅広くハイエンドなランプを使いたい場合にはLT1100 がおすすめです。

競合と言えるヘッドランプというと、ディスタンス1500 PETZL ナオRLディスタンスLT1100 PETZL スイフトRL という、いずれもトップブランドのフラッグシップモデルが考えられますが、重量ではPETZLが、パワーやフィット感ではほぼ同じ、機能では自動調光かワンタップでのブーストか、そして価格はBDが勝っているという感じで、微妙な差こそあれ正直甲乙つけがたいものがあります。このため自分が重視する要素で優っている方を選べば、どちらを選んだとしても後悔することはないでしょう。