比較レビュー:春夏の稜線歩きにもってこい。最新軽量フリースジャケットを着比べてみた
前ページでは比較したモデルのランキングと、評価・スペックの一覧、そしてそれに基づくおすすめを紹介しました。ここからはその評価について、どのような基準で評価したのか、なぜそのような評価になったのかについて補足していきます。
各項目詳細レビュー
快適性・機動性
快適性の評価方法は肌触り、袖口のフィット感、口元のあたりといった簡単にいうと着心地といった視点から評価しております。機動性については、主に裁断の確かさや伸縮による動きやすさといった観点から評価しています。
基本的には各モデルとも機動性を向上させようと作られているモデルになっており、伸縮性についてはどれも兼ね揃えていますし、行動中につっぱりがあってストレスに感じたモデルはありませんでした。
その結果、快適性と機動性ともに最も兼ね揃えていたモデルはHOUDINI Outright Houdiでした。前記した通り、魔法のような着心地の良さは一度体験すると忘れらなれない気持ち良さで、加えて伸縮性に富んでいるため、ストレスとは全くといっていいほど無縁でした。
さらにフロントファスナーを締め付けてもファスナーが顎に当たらないどころか首から顎にかけて柔らかい生地で包まれることは非常に快感でした。いつまでも着用したいと思わせてくれるアイテムになります。また肌触りについては、Patagonia R1もパイル状の生地がかなり快適でおすすめです。
保温性
生地を薄くすれば軽くはなりますが、反面、保温性能はどうしても低下していくものです。アウトドアギア全般に言えることですが、このバランスが非常に難しいところです。
今回はどれも500g以下なのに一定以上の保温力があることにはすでに驚きでしたが、なかでも頭一つ飛び抜けていたのがNORRONA falketind warm1 Jacketになります。フリース素材で保温性能の向上を図りながらも随所にはストレッチ素材の生地を使用し、保温性と機動性のバランスが絶妙。薄くて軽めながらも元祖フリースの起毛素材の温かさはまだまだ健在です。また、重量はそれなりにありますが、mont-bell トレールアクションパーカもこの中ではトップクラスの保温性能に長けたモデルです。春先や秋冬には活躍する気がします。
速乾性能
筆者はかなりの汗っかきなのには関わらず、アイテム選定を疎かにし何度か汗冷えから風邪を拗らせた経験があります。行動中の汗冷えは体力を低下させ、時には危険へのリスクを高めます。ベースレイヤーはもちろんのこと、なるべくならミドルレイヤー、アウターとも吸湿・速乾性能に優れたアイテムを選定することは非常に大切なことですし、快適性も向上させます。
今回最も吸湿・速乾性に優れていると感じられたのは、MILLET ロッカ フーディーでした。内側の3Dハニカム構造の生地がどんどん汗を吸収。同時に通気性も確保してくれて、乾くまでのスピードが最も速く、汗っかきな筆者も快適に行動することができました。生地自体が非常に薄いため、乾くまでのスピードが早いのも納得します。ただし、これは保温性能とは反比例しがちなので、どちらを優先するかはユーザー次第だと思います。
一方Patagonia R1はある程度保温性がありながら、吸湿・速乾性能についてもかなり優秀でした。生地に使用されているPolartec® Power Grid™のスペックが非常に高いことが伺えます。
重量
今回のモデルはスペックの高さから見て、どれも500g以下という時点ですでに驚きですが、さらに驚かされたのがMILLET ロッカ フーディーの軽さです。カタログ数値は390gですが実寸値では298gとまさかの300g以下。当然、収納サイズも最も小さくパッキング時のストレスもありません。
NORRONA falketind warm1 Jacketも保温性能の割に319gとかなり軽量化されているのは魅力的です。フードがない分軽量なのは確かにそうですが、それでも保温性能、耐久性、重量のバランスにピックアップするとかなり高スペックであることがわかります。
使い勝手
NORRONA falketind warm1 Jacket以外は4モデルともフードが備わっており、ファスナーを閉めると口元まで締め付けることができるのでバラクラバ代わりにも十分使えます。急な天候変化にも対応できるのでやはりフードはあった方は良いと思います。なかでもドローコードでフードと裾の調節が可能なHOUDINI Outright Houdiは使い勝手としてはかなりの高評価。
ポケットについては「左右ハンドポケットのみ < 左右ハンドポケット+胸ポケット」さらにジッパーがついていた方がいいということでは、MILLET ロッカ フーディーとmont-bell トレールアクションパーカは最も便利。ジッパーのないPatagonia R1の左右ポケットは、モノを入れるというよりも、手を温める用です。
ファスナーの開け閉めではNORRONA falketind warm1 Jacketで若干滑りが固いように感じましたが、あくまでも他モデルと比較した中でのことなので、気にならない人はまったく気にならないと思います。
ということで各モデルとも細かい点で一長一短がありますが、トータル的に見てPatagonia R1が最も使いやすく感じました。収納性を除けばハンドウォーマーポケットとベンチレーションにもなる胸ポケットの組み合わせは個人的には十分。それ以外になめらかな動きのファスナーとバラクラバ代わりになるフード。冒頭にもありましたが、今回筆者を虜にしたのは着心地の面をそうですが、使い勝手が良いことも大きな理由の1つです。
まとめ
ということで、この時期に使える軽量フリースを検証してみました。各モデルとも評価ポイントである快適・機動性、保温性、吸湿・速乾性、重量性、使い勝手は少なからず兼ね揃えています。その中で、特化している項目がそれぞれ違いますので、自分の使用目的に合ったアイテムを選ぶことで、フィールドで大いに力を発揮してくれると思います。この記事が皆さんのアイテム選びに役立ってくれると幸いです。
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TAC
北海道在住。休日となれば、家でじっとしてはいられず、何かしらのアクティビティをしています。夏は登山、釣り、キャンプ、冬はスノーボード、ワカサギ釣りに没頭。このサイトのファンでもあり、ギアの魅力を伝えることが楽しみで参加させていただきました。登山だけではなく、様々なアクティビティの視点からレビューしていきたいと思っています。
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