比較レビュー:今シーズン注目の登山向け中型バックパックを背負ってみた 2018
山に入るために、欠かせないバックパック。山生活で、欠かせないギアや食料をはじめ、時として、着替えやアメニティ。軽さ、背負い心地、収納性、使い勝手、耐久性などなど、行動範囲にもよるが、その選択ポイントはまちまちだ。とはいえ、体にフィットするものを選ぶのが、何よりも最優先だろう。日帰りから、2~3泊の山行で、何かと重宝する35~40Lのバックパック。このサイトでも少し前に今シーズン注目のバックパックについてお届けしたが、今回はそれらを実際のフィールドで背負い比べてみた。
目次
今回の比較候補となったバックパックについて
- deuter フューチュラプロ 36
- GREGORY パラゴン38
- MILLET サースフェー 40+5
- mont-bell グラナイトパック 40
- Osprey エクソス 38
- Patagonia ナイン・トレイルズ・パック 36L
- Thule オールトレイル 35L
テスト環境
主に丹沢山脈、北鎌倉、箱根外輪山といったフィールドで、試させていただいた。また、パワースポーツの大会設営(奥久慈トレイル、山中温泉トレイル)等でも、一部モデルをテスト(デイリーユースとして、1週間程度の長期出張でも対応できるものもあった!)。
- 軽さ・・・山に行くからには、軽い方がいいに決まっている。単なる重量に加え背負い心地にもよる軽さも考慮して、ジャッジさせていただいた。
- 快適性・・・背負いやすさ。ショルダー、ヒップ、バックなどにおける、クッション位置やパッドの感触などが大きく左右する。
- 安定性・・・重い荷物を背負って、ブレや揺れを感じるか、否か。ショルダーとヒップの構成具合。背面にスペースがあるモデルは不安定な傾向にある。
- 収納性・・・食料・水、衣類など必要用途に合わせたモノを、バックパックには詰め込む。また、休憩時などには、出し入れもする。ストレスレスなアプローチが望ましい。
- 機能性・・・軽くて、収納性が高くても、アウトドアフィールドで、長けた機能性を持ち合わせていないと、バックパックとして、なかなか難しい。通気性、アジャスト、レインカバー、ハイドレーションなどなど、山ならではの機能性を評価した。
テスト結果&スペック比較表
各モデルのインプレッション
GREGORY パラゴン38
デイリーから3DAYS登山まで大本命パック
ココが◎
- オーソドックスかつ出し入れ快適な収納性
- 幅広い体型に合わせることが可能な抜群のフィット感
- 通気性とクッション性に優れた背面・ハーネス
- 軽量性
ココが△
- 細めの締め具類など耐久性はやや犠牲に
- 価格
普段の旅行でも、1、2泊の山行用にでもガンガン使えそうなバックパックだ。ウェア、水・食糧を一気にしまい込むにはもってこいの収納性。その上、トップが大きく開くため、アクセスがとても楽チン。背負い心地は、肩周り、腰、背中とものの見事にフィットする。アジャストもジャストな調整できる。そして軽い(1.36kg)。背面は「マトリックス通気システム吸湿発散性メッシュ」という素材で包まれた「フォーム-マトリックス・バックパネル」を採用。通気と湿気発散を長けているため、山でありがちな背中のムレを、極力抑えている。また、軽量アルミニウム合金シャーシとエアロロンサスペンション、3Dショルダーハーネスやトルソーによる体型に合わせたフィッティングが可能。なので、背負い心地はバツグンにいい。さすが、人間工学に基づいた製品づくりをしているグレゴリーだけある。他にもショルダーハーネスには、サングラスを傷つけずに収納するサングラスクイックストウ、メッシュコンパートメント内にはレインカバーを。トレッキングポール・アタッチメントも完備。スピードハイクにも最適な一品だ。
MILLET サースフェー 40+5
ビギナーからベテランになるまで!使えるバックパック
ココが◎
- 背面クッションの快適さ、適度なサポート力
- 耐久性
- ボトルへのアクセスが容易なサイドポケット
- 大型のヒップベルトポケット
ココが△
- 重量
- メイン収納部のドローコードがやや硬い
まず背負ってみて、感じるのは背面クッションのソフトなあたり心地。これは、最適な当たり心地と、雑菌繁殖を抑止する目的で使われる、水はけに優れたフィルターフォームというクッション材によるもの。 この素材こそが、フラット構造の負荷分散性と、快適なドライ感を両立している。本体部は、420デニールの丈夫なコーデュラナイロンを採用。サイドにも、軽量性に配慮した300デニールのリップストップナイロン生地を採用。耐引き裂き、耐磨耗に優れており、万が一破れたとしても、繊維自体が丈夫なため、切り口が裂けにくい。サイドメッシュポケットにも、開口部が2つ。背負ったままでもドリンクボトルを出し入れ可能だ。また、スマートフォン、小銭入れなどが収納できる大型ポケットをヒップベルトに装備。 ポケットを使用しない時は、折りたたんで面ファスナーで留めておけば、邪魔になりません。チェストハーネスには、ICカードや補助食、小型のスマートフォンなどを収納でる小さなポケット付き。 1930年代に、ショルダーストラップ付きのバッグを、初めてこの世に送り込んだミレー。長年の経験により培われた耐久性と機能性は、ビギナー、ベテラン問わず、頼りになること、間違いない。
Patagonia ナイン・トレイルズ・パック 36L
Pataファンも待望!中型バックパックシリーズ
ココが◎
- 軽量で耐久性の高い生地
- アクセス・収納しやすいメイン収納と外側のメッシュストレッチポケット
ココが△
- サイズ展開が少なく、フィッティングがシビア
- ウェストポケットの大きさ
- 価格
トップロード型バックパックシリーズ「ナイン・トレイルズ・パック 」。その最大容量の36Lを試してみた。重さは1.357kgと軽量で、1~2泊の山行にちょうどいい収納力。リップストップ・コーデュラ・ナイロン(210デニール)による耐久性、ポリウレタンコーティングによる耐久性撥水加工と、山屋にとっては嬉しい素材だ。トップ部を外すと、メインコンパートメントに素早くアクセスできる。開口部はドローコードで調整できるため、ギアの詰め込みかなりスムーズ。外側の大型ストレッチポケットや、サイドのストレッチポケットの使い勝手もかなりいい。適度な伸縮性で、ドリンクやウェアをしっかりとホールドして、収納できる。背面には通気性を考慮したモノメッシュのバックパネルを採用。自身の背中に密着されるタイプだが、まずまずの通気性だ。厚めのパッド入りのショルダーストラップゆえか、肩まわりにほど良くフィット。改善点はと言うと、ドローコードのサイドに設けられたジッパーが少々ゆるい感じが……(一気に大きく開いてしまう)。また、ウェストのポケットにはもう少しマチが欲しいところだし、通気性とフィット感が高められていたら、なお、よかった。
Osprey エクソス 38
軽さはダントツ!スペック平均値も高し!
ココが◎
- 軽量性
- 快適な背面~ショルダー~ヒップのメッシュ構造
- 収納性
- 取り外し可能なトップリッド
ココが△
- ヒップベルトなどハーネス部にポケットがない
- 全体を覆うアルミフレームが若干ゴツい
とにかく軽い1.16kg!。(見た目もびっくりの)スーパーエアスピードサスペンションで、通気性はかなり期待できる。実際に使ってみて、背面の蒸れ感は一番感じなかったと思われる。背負ってみた感じは、ソフトな感触のショルダーベルトが肩まわりをしっかりホールドしてくれ、3Dテンションメッシュバックパネルがしっかりとフィットする。また、パッキング面も優れている。メインコンパートメントの開口部分にあるドローコードは、片手でスムーズに操作できるし、Ospreyお馴染みの大型ストレッチポケット、サイドポケットは横からも上からもアプローチ可能だ。脱着式のトップポケットを外した際、トップを覆うフラップジャケットも備えているのは、嬉しい。改善点は、やはり、ヒップベルトの脇にポケットが欲しいところだ。また、フォルムを保つ、硬いアルミフレームが、主張しすぎている気もしなくはない。とはいえ、通気性も、軽さもダントツ。ウルトラライトハイクを始めたい方に、まず試してもらいたい。
deuter フューチュラプロ 36
スタンダードなバックバックに、ディテールがキラリ!
ココが◎
- クッション性と通気性を両立した背面パッド
- 荷重バランスの安定したヒップベルト
- 耐久性
ココが△
- やや収納の低いメインコンパートメント
- 重量
背負ってみた感じ。エアコンフォートセンシックプロのメッシュパネルのおかげもあり、背中の密閉度はほぼ感じない。適度なフィット感、通気性が得られそうだ。ヒップフィンには、ECL(エルゴノミック・コンフォート・ロック)という仕組みを採用。ヒップベルトのパッドが腰骨にフィットし、パックは体の動きに適した荷重バランスを保つ構造になっている。生地の主な素材は、600デニールのポリエステル。かなり耐久性は強いとみた。使用頻度が高めなものは、外部ポケットとサイドポケット、ヒップベルトポケットに収納するといいだろう。トップ開口部のドローコードはやや細め。そのため、滑らかな動作が可能だ。フレームの影響もあり、メインコンパートメントに少々クセがあるが、下部のポケットがかなり大きめなので、許容範囲か……。SOSラベル、(さりげなく収納されている)レインカバー、ハイキングポールループなど、際立ったディテールは、光るものがある。
Thule オールトレイル 35L
カスタム好きのハイカーには、たまらない!
ココが◎
- 軽量性
- 背面長が調整可能で幅広い体型にフィットするバックパネル
- 出し入れ容易なメインコンパートメント
- カスタマイズ可能なヒップベルトアタッチメント
ココが△
- メインコンパートメントはトップポケットが重いと煩わしい
- 背面の全体的な通気性とクッション性は他と比べると低い
正直、今回、人生初のスーリーだった。独特のメインコンパートメントは、上部ジッパーを引くと、大きめの四角い開口部が現れる。確かに中を確認できるし、取り出しもしやすい。だが、トップ部がのけぞる感じで、ダラんとなってしまい、若干煩わしい気が……。側面部のジッパーからはもう一つのコンパートメントがあるものの、セパレートになっていなくてもいい気がしなくもない。背負い心地は、パッドがあるため、まずまずだ。このモデルクラスでは、珍しく背面長の調整機構を備えている。体型に合わせたアジャストにとても重宝する機能だ。フォルム的に型崩れしにくい作りだが、肩まわりのホールドが、きつめな気がする(好みにもよるが)。通気性については、背面パネル、ヒップベルト部など、改良が望まれる。ヒップベルトに設けられたカスタマイズ可能なポールフォルダーは、独自のアクセサリーをカスタマイズできるようだ。個人的にはポケットのままがベストだと思うが、好みに合わせてマニアックな選択ができるのはありがたい。耐久・耐摩耗性は申し分なさそうだ。
mont-bell グラナイトパック 40
丈夫な生地構成なのに、軽い!トップ開口部は、ガバッと!
ココが◎
- コストパフォーマンス
- ムダの少ないシンプルな構造
- かなりの軽さを実現しながら高い耐久性
- 開口部が大きくパッキングしやすいメイン収納
- 全体をカバーする防水ライナー
- トップリッドなど必要に応じて追加可能な収納システム
ココが△
- 必要な収納は追加すると割り切ったゆえの、気の利いた収納性の少なさ
- 追加パーツの接続の緩さ
- 通気性と快適性の低いバックパネル
持ってみた感じ、40Lのわりにはかなり軽い。本体330デニール、側面210デニール、底部1000デニールと、耐久性と撥水性の富んだ仕上がりだとなっている。背負ってみると、やや内側に寄り気味のショルダーハーネス、背面部の密閉加減が気になった。背中の蒸れを解消するエアースルーバックパネルを採用しているそうだが、効果はあまり期待できそうにない。トップ部はワンタッチ式の留め具で、開口部はかなり大きめだ。フラップジャケットはフック式で固定されていて、脱着がしやすい分、(不意に)外れやすい。サイドポケットには、折りたたみの傘なども収納できるよう、もう少し深さが欲しいところ。ヒップベルトは腰骨を包み込む感じで、安定はしているが、通気性はいかほどだろうか。また、やはり、ヒップベルトにポケットが欲しい(泣)。ハイキングから冬山登山、アルパインクライミングまで幅広めのモデルとされているが、ちょっと厳しい面があるかもしれない。とはいえ、低コストのモンベルと、甘んじれば、使ってみる価値はある。
まとめ
今回試したモデルは7つ。どれもハイドレーションに対応していて、容量は35~40Lと中型モデル。基本的には1泊2日。パッキングちょっと頑張れば、3.4日でもイケるモデルばかりをテストした。まず、総合的に狙い目ど真ん中は、GREGORY パラゴン 38L、Patagonia ナイン・トレイルズ・パック36L。軽さ、収納性、機能性、快適性、安定性の全ての面で高評価だった。この2モデルに共通していえることは使い勝手がいいメインコンパートメント、外部の大型ストレッチポケット、サイドポケットとヒップベルトポケット。ベーシックな点ではあるが、やはり山行でウェアやドリンクを素早くアプローチできるのは重宝する。
また、軽さと使い勝手を求めるなら、Osprey エクソス38だ。1.16kgで、大型ストレッチポケット、サイドポケットを備えており、安定性も長けている。ワイヤーフレームの関係でメインコンパートメントが湾曲している点が気になるが(慣れればOK)。
機能性で長けているのが、ミレー サースフェー40+5。裂けにくく、高耐久の生地、目的別の収納機能、落下防止やアプローチしやすいポケット、レインカバーなど、玄人でも納得の機能が多い。また、deuter フューチュラプロ 36は外部の大型ストレッチポケット、サイドポケットとヒップベルトポケットとスタンダードな作りだが、SOSラベル、ハイキングポールループなど、ディテールが光った。
クセのあるカスタム好きには、THULE オールトレイル 35Lがおすすめ。軽さ、安定性、収納性もそこそこで、背面長の調整機構機能や、カスタム可能なヒップベルトポケットといった、オリジナリティが際立った。
最後にmont-bell グラナイトパック40。言わずもがなのコスパサイコーモデルだが、収納性、耐久性等はまずまずなものの、割り切りすぎてラップジャケットの外れやすさやポケット類、通気性といった使い勝手部分ではイマイチ。次バージョンにはその辺を含めた細部のブラッシュアップに期待。
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