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比較レビュー:登山にランに大活躍の超軽量レインウェアを着比べてみた【2016春夏】

各項目詳細レビュー

防水性

レインウェアは雨から身を守るギアである以上、防水性は最も基本的な評価ポイント。まず前提として今回ピックアップしたすべてのアイテムは防水性のあるメンブレンを備えた生地を使用し、表面にはDWR(Durable Water Repellent)と呼ばれる耐久撥水加工を施し、さらに止水ファスナーと呼ばれる密閉性の高いジッパーや、縫い目にはシームテープと呼ばれる防水剤を圧着するなどして衣服の内側への浸水を防ぐことができる仕組みになっており、各メーカーによるラボでの製品テストなども通過しています。その点においてはどれも雨(同様に風も)に対しての基本的な耐候性を備えており、試しに一般的な強さの雨の中で数十分程度立っていたとしても、落ちてきた雨自体が生地を通過して内側に浸水してくることはほぼなく、余り有意な差は出てきませんでした。

ただし、豪雨のように大量の水を勢いよく長時間、それもさまざまな角度から浴びるような場合にはそうもいきません。

このときも生地の耐水圧を超えて水分が直接生地を通過して染み込んでくるということはほとんど考えられませんが、それよりもフードや袖口、ジッパーやポケットの縁などさざまな場所から少しずつ浸水してきてしまうケースや、生地表面にあった撥水性が失われ水分が表地に留まり、衣服内の湿気が外に排出されにくくなることによる身体の濡れの方が深刻です。

元々登山用の本格レインウェアに比べればいまいちな耐水性しかない超軽量レインウェアの防水性比較では、各アイテム素材のスペックがどうだというよりも、ここが各アイテムによって差が出てくるポイントでした。それらを比較するため、強めの雨(の再現としてのシャワー)を一定時間浴びながら身体を動かしてみるテストを行いました。

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通常のフィールドでの雨中行動の他、豪雨を再現する為にシャワーを頭から被り続け、この状態から顔や腕を振って擬似的な豪雨を想定し、防水性を測定。

その結果、強い雨の中で最も防水が機能していたのはGORE-TEXⓇ C-Knit BackerのTHE NORTH FACE Climb Very Light Jacket。確かな耐水性と長持ちする撥水性、密閉性の高いジッパーと袖口、大きなツバと頭にフィットさせやすいフードがしっかりと雨を防いでくれます。またRab Flashpoint Jacketは素材こそPERTEX Shield+に変更となったものの、フードを含めた全体的な密閉性を含めた防水性の高さは健在です。一方でBerghaus ヴェイパーライトハイパーシェルジャケットに関しては、フードや袖口は水分を吸い込んでしまいそこから浸水しやすく、そもそも調節不可の小さなフードは強い雨でまったく役に立ちませんでした。これらは雨が本降りになる前に下山できるという想定の下で使用するべきです。

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袖口は想定する用途によって軽さや調整可否等が決められる。ラン中心であれば調整が不要な伸縮性の袖口(左4つ)で問題ないが、ゴムが切れたりへたったりする可能性がある。一方ハードでテクニカルな使用が想定されるなら、ベルクロのみの方が大きく開閉し壊れ難いので何かと安心。

透湿性(換気性能)

夏場や激しい運動に使用することが多いであろう超軽量レインウェアでは、汗をかいたり湿気の多い状況でどれだけ身体をサラサラに(快適に)保ってくれるのかは特に重要です。

ただここでいう「透湿性」とは、ある種の数値で表されるような厳密な意味での生地の湿気(水蒸気や水分子)透過性だけを意味しているわけではありません。それはとても重要な評価ポイントですが、防水透湿ジャケットはこの他、裏地による吸汗(吸湿)、脇の下にあるファスナーからの換気(ベンチレーション)などによっても身体をドライに保ち、衣服内の湿気を排出したりすることはできるわけです。ユーザーの視点で考えればそれらも含めてウェアの透湿・換気性能は評価される必要があるでしょう。

こうした議論を踏まえて最も透湿性が高いと感じられたのは、抜群の透湿性能を有したPolartec Neoshellを採用し、さらにベンチレーションと裏地による吸汗機能もバッチリなTeton Bros. Breath Jacket。その他、高い透湿性能の3レイヤー素材によって中に着る服を選ばず快適なMILLET W7 50000 ST JKTTHE NORTH FACE Strike JacketMONTANE MINIMUS 777 JACKET、THE NORTH FACE Climb Very Light Jacketなどはいずれも現時点でトップクラスの快適さを発揮していました。

また、生地は2.5レイヤーでスペック的に飛び抜けているとは言えないものの、ドデカいピットジップによって抜群の換気能力をもったNORRONA bitihorn dri 1 Jacketも全体的な快適性ではなかなか捨てがたいものがありました。

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ベンチレーションの方法はさまざま。左から脇下ジッパー(大)、脇下ジッパー(小)、脇下空気孔、前面のダブルジッパー。ジッパーは重量と収納性に影響するがダイナミックに換気ができるなど、それぞれにメリットデメリットが存在する。

快適性・機動性

今回ピックアップしたモデルは一般的な登山向けから極端なランニング向けまでやや比較候補を広く設定したため、一口に快適さといっても、想定するアクティビティやインナーに着る服などが違うため求められる快適さが異なり、このため快適性についての評価方法は、今年のテストから大きく変更しています。

ひとつは単純に着たときの肌触りやつっぱり感のなさ、袖口のフィット感、口元のアタリといった、主に雨具を着て歩く際に必要な要素で、これらは「快適性」として評価しました。もう一方は激しい動きに対するウェアのばたつきのなさや伸縮による動きやすさ、腕振り時の衣服ズレやシャリシャリとした音の少なさなど、走る際に求めたい快適さで、これらは「機動性」として新たに独立させて評価しました。

その結果、ハイキングなどの歩きメインで最も快適だと思われたのはTHE NORTH FACE Climb Very Light Jacket。ニット状の裏地がこの上なく快適で、ややゆったり目の裁断(下写真左側上)は中間着を中に着てもストレスなし。フード・袖口も上述の通り良くできています。その他Rab Flashpoint Jacketは立体裁断が素晴らしく、スリムなシルエット(下写真左側下)にもかかわらず想像以上の自然なフィット感と動きやすさでした。

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走りを想定した機動性では、THE NORTH FACE Strike JacketBerghaus ヴェイパーライトハイパーシェルジャケットが頭ひとつ抜き出た感じ。上の写真(右側上下)を見て分かるとおり、薄着のインナーにとってはちょうどよい引き締まった身頃ばたつきを抑え、素材的な特徴もあって行動中ウェアの擦れる音が気になりません。

重量

毎年新製品のとんでもない軽さに驚かされますが、何といっても今回は Berghaus ヴェイパーライトハイパーシェルジャケットの86g(Sサイズ実測)で決まりでしょう。この軽さ、モノでたとえれば下の写真。即席麺1袋が約100gですから、それよりも軽いとイメージしていただければ分かりやすいでしょうか(?)。基本的に100g前半の重さまでのモデルであれば、軽すぎて服を着ている感覚がないくらいに快適です。

ただし、軽さと引き替えに耐久性をはじめいろいろな面で諦めることを覚悟しなければならず、やはり登山など多様な地形で安心して使うなら200g以上程度を目安とするのが賢明かと。

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今回最軽量は86gと即席麺1袋(100g)以下。ただし短距離やレース向きなので、登山を考えると3袋分程度の重さのモデルが望ましいか。

収納性

パッキングサイズの小ささは重量とも密接に関係していますが、実際のところはパッキングの結果(下写真)を見ていただくのがまずは早いと思います。ちなみにスタッフサックが無いモデル(⑤、⑧、⑪)は丸めてフードで包んでいるだけの状態ですので、必ずしも圧縮しきった状態ではありません。それらも含めて収納性抜群のモデルは③Berghaus ヴェイパーライトハイパーシェルジャケット、⑦patagonia Alpine Houdini Jacket、⑨MONTANE MINIMUS 777 JACKET、⑭THE NORTH FACE Strike Jacketでした。握りこぶしよりも小さいのが当たり前となりつつあります。

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①MILLET W7 50000 ST JKT②MAMMUT DRYTECH FREEFLIGHT JACKET③Berghaus ヴェイパーライトハイパーシェルジャケット④MONTANE MINIMUS JACKET⑤Mountain Hardwear Stretch Ozonic Jacket⑥OUTDOOR RESEARCH HELIUM HD JACKET⑦patagonia Alpine Houdini Jacket⑧⑨MONTANE MINIMUS 777 JACKET⑩Rab Flaspoint Jacket⑪NORRONA bitihorn dri 1 Jacket⑫mont-bell バーサライトジャケット⑬THE NORTH FACE Strike Jacket⑭THE NORTH FACE Strike Jacket

耐久性

長期間の使用や限界までの強度試験は現実的に不可能なため、耐久性についてはここで深く正確に言及することは残念ながらできません。このためあくまでも摩擦や引裂強度といった側面を、生地の太さや重量、数回の試用テストを通じての印象から推測するにとどまりますが、それでもまったくここに言及しないのも評価としてふさわしくないと考えた末に評価項目として加えています。

そこで最低限いえることは、全体的に同じ素材であれば生地全体が厚手(デニール数が大きい)であるほど耐久性は高いはず。また少なくとも表地の薄い2.5レイヤー素材は強度を表面に頼るしかなく、その上裏地はコーティングのみのため摩擦に弱いため耐久性の面では不利。その意味でBerghaus ヴェイパーライトハイパーシェルジャケットmont-bell バーサライトジャケットは見た目だけでなく理屈上でも相対的に強度には不安があります。

一方3レイヤーであれば、少なくとも裏地が摩擦によるメンブレンの劣化を防ぐだけでなく、衣服全体の厚みが増すことで強度は相対的に高くなるため、2.5レイヤーに比べれば耐久性の点では有利になります。実際にはその他に繊維の織り方・目の詰まり方(縫製技術?)によっても強度は差が出てくるのでしょうが、そこについてはメーカーから明かされていませんのでなんとも言えません。それらを踏まえ使った印象も含めてTHE NORTH FACE Climb Very Light Jacket、MILLET W7 50000 ST JKTは超軽量レインウェアのなかでは3レイヤーでしっかりとした生地を使い、耐久性的にも高く評価できます。

使い勝手

ここではなるべく印象での評価になることを避ける意味も込めて、主に次の5項目を評価のポイントとしました。

  • ポケットの数・位置
  • ジッパーの開け閉めしやすさ
  • フード・袖口・裾の調節しやすさ
  • 夜間のリフレクター(反射マーク)有無
  • パッキングのしやすさ(スタッフサックの有無、パッカブル仕様など)

これらの点から眺めてみると、すべてを万遍なく揃えているのがmont-bell バーサライトジャケット。やはりこういった眼に見える機能をきっちり揃えてくる部分に関して、モンベルは優秀です。それ以外では昨年のテストで高評価を獲得しているMONTANE MINIMUS JACKETも、大きな胸ポケット、ジッパーの使いやすさ、フードの調節性、リフレクター、スタッフサック付属と、使い勝手ではまだまだトップクラスです。

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フードの調整ができないと、万が一頭の大きさが合わなかった場合フードが視界を遮り不快かつ危険。後頭部にしっかりと調節・固定するドローコードはあるか、写真にはないが前面の顎部分にもフードの高さを調節する機能はあるかどうかで使い勝手が大きく違ってくる。

まとめ

というわけで今年も各ブランドによる覇権争いが熱い超軽量レインウェアをたっぷりと比較してみました。各々のお気に入りの一着は見つけられたでしょうか。

自分にとって最適なレインウェアを選ぶというのは正直簡単な話ではありません。こちらとしてはこの比較によって皆さんのレインウェア選びに少しでも役立つよう、多様で複雑な比較要素をできる限り分かりやすく紐解いてみたつもりでが、どうしてもこちらの都合が入り込んでしまう部分や、物理的な制約からテストが不十分な面もあったかもしれません。それについては引き続き改善して行きたいと思いますので、ご意見やご要望があればお知らせください。

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